COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

改訂「放射線と付き合って、生きていくために」~ある有識者の提言

2011-06-29 11:29:56 | Weblog

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福島第一原発の事故後100日を越えました。未だに収束の見通しはつかず、すでに大量の放射性物質が放出され、多くの地域に汚染が広がっていることも分ってきました。我が国の狭い国土の中では、放射性物質と生きてゆかねばならないという現実を踏まえて、元気象研究所の増田義信先生と酸性雨調査研究会の権上かおるさんが「放射線と付き合って、生きていくために」という論文をメールで発信しておられます。「放射線と付き合って、生きていくために」という論文をメールで発信しておられます。多くの方々に知っていただきたい有益な情報と考え、著者の方々にご了解をいただいて、6月26日に当ブログに掲載しました。本日著者の方々から一部修正のご連絡をいただいたので、改訂版をアップします。文責は著者の方々にありますので、ご質問・ご意見等は、以下の論文中にあるコンタクト・アドレスにお願いします。

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2011.6.16記述、6月29日修正
放射線とつきあって、生きていくために
酸性雨調査研究会
増田善信・権上かおる
hzb04137@nifty.com

 私たちは3月11日の福島原発事故直後、メルトダウンも放射性物質の大量放出の事実も知らされていない時期に、いち早く放射線に対処する方法として、「おそれて、こわがらず」を公開した。外出時の服装、放射性ヨウ素に汚染された水の使用法など放射線に対する対処法を提案した。これは多くの方から共感を持って受け止められ、各地で利用されてきた。
 しかし、3ヵ月経過する中で、既に大量の放射線が放出され、多くの地域が放射線に汚染されているという事態も分かってきた。わが国の国土は狭く、逃げる場所などあるわけがない。まさに、今後長く放射線とつきあって生きていかなければならない事態である。そこで、再びその方途を提案する。もちろん、まだまだ不十分な点があると思うが、前回同様、ホームページ等に自由にアップして利用して頂き、皆さんの力でより使いやすいものにしたいと思う。この提案が、放射線による被害を最小限にするため利用されることを期待する。

基本は「おそれて、こわがらず」
 放射線は目に見えないから、どれだけの放射線を受けているかは測定器を使わないと分からない。しかも、大量の放射線を短時間で受けても、弱い放射線を長時間受けても病気になり、場合によっては死亡するから、極めて危険である。従って、「安全だ」「安全だ」というのは間違い。しかし、弱い放射線の場合は病気が出るのも確率的だから、「危険だ」「危険だ」と危険性だけを煽るのも間違い。
 どの放射性物質も有害であるが、特に有害な放射性物質は下表のようなものである。ここで物理的半減期とは、放射性物質の量が半分になる期間のことで、生物学的半減期とは、排泄作用、主として大小便で排泄される速さ、実効半減期とは、人体に入った放射性物質が物理的半減期と生物学的半減期の両方で半分になる期間のことである。。



国・事業体への原発事故対応の提言
1)事故は何時収束するか分からず、少なくとも3年間は冷却水を注入し続けなければならないであろう。汚染水浄化プラントで浄化した水を使うことが計画されているが、雨水が入って溢れるおそれがある。汚染水を流出させて、沿岸漁業を台なしにするようなことは絶対やってはならない。
 ビキニ水爆実験の時には「汚染マグロ」を黒潮に海洋投棄したことがある。1983年以後は実施していないが、外国では長年海洋投棄を行っており、例えば、イギリス、オランダ、スイス、ベルギーは、1977~1982年に、スペイン沖の深度約5,500mにOECD/NEA協議監視制度の下でβ線とγ線の低レベル廃棄物39,283テラ・ベクレル(テラは1兆倍)、α線の低レベル廃棄物330.3テラ・ベクレルを投棄している。
 東京電力の6月3日の発表によると、高濃度汚染水10万5100 トンの放射能量は約72万テラ・ベクレルに上るという。1トン約7兆ベクレルである。従って、1兆トンの水で薄めれば、7ベクレルになる。黒潮の速度を毎時5キロ(与那国島付近では毎時3.7~5.6キロ)とすれば、2時間かけて、100 kmの幅で、100 mの深さの黒潮に流せば、70ベクレルに薄められる。従って、もちろんIAEAの許可を受けた上であるが、積むときにフィルターを通して徐染をして、昔の木造の「オワイ舟」に積んで、タグボートで曳航して行き、黒潮の流の強いところを見計らって流すことを考えるべきである。これ以外に原発を安定的に冷却する方法はないと思う。
2)家畜―汚染の強いところの牛・馬・豚などは北海道か九州で預かって貰う。もちろんその費用は国が負担する。ペットも避難方法を確立させる。
3)何時またヨウ素131が放出されるような事態が起るか知れないので、ヨウ素剤をすべての家庭に配布させ、そのような事態が生まれたら国の指示で一斉に服用させる。
4)現在の20キロ圏内でも、原発南西域のような汚染の低いエリアへの帰宅の検討を。
5)関東圏の小中学校、保育園・幼稚園、市民センターなどにも放射線計を配って、放射線の実態を正確に把握すること。


生活上の注意点―関東圏を中心とした記述のことをご了承ください―
「おそれて、こわがらず」という態度で、「確率を上げるようなことはしない」という姿勢で臨むのが鉄則。以下の対処法はそういう観点で提案されたもの。

(1)外出
○天気予報、特に風の予報に注意し、福島原発の方から風が吹いている日は出来るだけ外出をさける。

放射線量の高い場合には、
○外出時はマスクを着用し、帽子をかぶる。
○帰宅後は露出していた顔、手足を良く水洗いする。シャワーも有効。
○毛羽だった衣類は出来るだけ避け、平滑な布地(ナイロン、レザー等)の服を着る。
○フードの縁の毛皮部分は外して着用する。
○雨の日は、出来るだけビニール製の傘やレインコートを着て、帰宅したら戸外で脱ぎ、水道水で洗う。
○雨、特に降り始めの雨は、汚染物質を多く含んでいるので濡れないように努力する。
○雨の日でなくても、外出から帰ったら、先ず一番外側に着ていた上着やズボンなどを脱ぎ、洗濯機で水洗いする。
○洗濯物は乾燥機か室内で乾燥させる。


(2)周辺環境
i) 子どもの通学や通園・運動―放射線の強い通学・通園路、校庭・園庭、砂場などは、放射線量を確かめ、心配される濃度であれば、‘天地返し’(表面を剥ぎ、穴をほって下土と上土を入れ替えること。土壌の遮蔽効果を利用するもの)をする。
ii) この措置をしたのち、風が福島原発方向から吹いていない日は、可能であれば線量計にて確認後、戸外で遊ばせる。
iii) プール―まず水を入れ替え、放射線を測定して、安全を確かめた上で使う。終わったら、シートをかぶせて、放射線による汚染を防ぐ。
iV) 個人住宅でも心配な場合は、水で屋根や壁・樋などを洗浄して堆積物を流し、庭は‘天地返し’で放射能を減らす。


(3)食物への対応


 厚労省は上表のような暫定基準値を決めているが、放射線を減らす方法を(財)原子力環境整備センター「食品の調理・加工による放射性核種の除去率」(1994)から抜粋する。

コメ
精米するとストロンチウム90は約80~90%が、セシウム137は65%除去され、さらにとぐ(水洗)ことで、いずれも50%が除去される。


製粉するとセシウム137,ストロンチウム90などは20~50%が除去される。

野菜
「焼く、揚げる」より、「ゆでこぼす、煮る、漬ける」で調理すると、大幅に除去される。キュウリ、ナスは、水洗するだけでストロンチウム90の50~60%が、葉菜のホウレンソウ、シュンギク等は煮沸処理(あくぬき)でセシウム、ヨウ素などの50~80%が除去される。小さいキュウリの酢漬け(ピクルス)では放射性降下物の90%が除去される。鞘を取った豆類は比較的安全。

牛乳
放射性物質はバターやチーズにはほとんど残らない。しかし、それらを取った後のホエー(乳清という)は乳清飲料やパン・菓子等の添加物に使われる。そこに大部分残るので、特に子供用ホエーは使用制限が必要である。


冷凍肉を解凍したときに出る肉汁は捨てる。酢と水(1対2)の漬汁に肉1,漬汁3の割で2日漬けると放射能の90%が除去される。ただし、漬汁は捨てる。肉と水1対1の冷水処理と、塩を水の1%入れて肉と水1対1の煮沸処理をするとセシウム137は約50%除去される。ただし、オーブンでの処理では10~28%しか除去されない。

淡水魚
ボイルするとセシウム137の約50%が除去され、オーブンで焼くとせいぜい20%程度。塩漬けでは40%前後、酢漬けでは50%前後除去される。

海水魚
内臓を除くだけで70~80%除去される。ルーム貝は沸騰したお湯で10分茹でるとほとんど除去出来る。

味噌、醤油
2年間以上寝かすので、当分は心配いらない。

  
 一方、日本放射線安全管理学会による「放射性ヨウ素等対策に関する研究成果報告」が2011年5月17日に発表された。メンバーに農学や食品関係の方は見られず、工学系の研究者ばかりだが、この中で参考になることを以下に記す。野菜への放射性物質の付着には2通りある。
・ほこりのような乾性沈着:スポット的に付着して、比較的洗浄などで除去しやすい。
雨のような湿性沈着:全面的に付着し、除去しにくい。
・化学的洗浄(洗剤、酢などの意)の方法では、還元剤の使用が最も効果が認められた。還元剤の代表はチオ硫酸ナトリウム(金魚水槽の塩素抜き)1%溶液(茶さじ軽く1杯を500mLの水に溶かした位)、3分程度ではレタスの鮮度は落ちなかった(実験は24時間浸漬)。


*以下は、これまでに基本的な事項として述べたこと
 原木栽培の椎茸や山菜は、濃縮されやすい。子どもには、しばらく避けたい/野菜の種類・産地などを変化させること/結球するキャベツ、白菜などの外葉は、2-3枚捨てる/野菜は、よく洗う。漬け洗いにも心がける/野菜のキズついた部分は、丁寧に除く(重要)/葉物はお湯でゆで、電子レンジでゆでるのは避ける /ゆでこぼすことも有効。

 (4)飲料水・水道水への対応
 東京都の水道水は、5月4日以降はヨウ素、セシウム2種の不検出(0.2Bq/kg以下)が続いている。この状態であれば、心配はないであろう。また深井戸は、問題がない。
ヨウ素131に汚染された場合の水道水対策は、以下である。
○汲み置き、冷蔵庫でも冷凍庫でもよい-ヨウ素の半減期は8日間だから1日程度おいておいてもかなり減衰する。
○沸騰させ、雑菌をなくした後の汲み置きはさらに有効―冷蔵庫なら4日くらいまでもつので、ヨウ素131はほとんどなくなっている。

-本文は、記述の文献の引用を中心として情報提供いたしました。情勢は刻々と変化し、状況によって対応も変化する場合もあることをご了解ください-      (以上)

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