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聖教新聞 (2019/ 7/13) 〈スタートライン〉 作家・エッセイスト 岡田光世さん

2020年02月20日 20時49分02秒 | コラム・ルポ

〈スタートライン〉 作家・エッセイスト 岡田光世さん

2019年7月13日 聖教新聞

Just keep going and enjoy life.
とにかく、歩き続けよう。そして人生を楽しんで。
 
 

   

 アメリカのニューヨークには、“魔法の瞬間”がたくさんあるという。地下鉄の中で、街の通りで、公園で、スーパーマーケットで……。たまたま居合わせた人と、自然に心と心が通い合うドラマ。5月刊行の『ニューヨークの魔法は終わらない』(第9弾)をもって完結した人気エッセー「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫)の著者・岡田光世さんに、人と人が打ち解け合うヒントを聞いた。

That’s New York!

 昨年のこと、ニューヨークのマンハッタンで地下鉄の階段を下りていくと、軽快な音楽が聞こえてきました。そこには仕事帰りのような服装でジャズを演奏しているトリオが。すると、電車を待っていた5、6人が思い思いにリズムを取り始めました。他人同士でも「一緒に踊ろう」と手を差し伸べ、笑顔で応じているのです。iPadで動画を撮っていた私のところにも、男性が踊りながら近寄ってきました。照れながら私が踊りだすと、ホームから歓声と拍手が聞こえてきました。
 そして踊り終わると、皆がそれぞれ別の方向に立ち去っていくのです。去り際に、私を誘った男性が叫びました。
 “That’s New York!(これがニューヨークだよな!)”
 このような、日々の何げない暮らしのなかで、人の心と心が触れ合い、ふわっと温かくなる瞬間を、私は「魔法」と呼んでいます。
 ニューヨークでは、地下鉄の中で路線図を見ていると、たいてい誰かが声を掛けてくれます。同じ場所、同じ時間に居合わせたというコミュニティー意識が強く、自分と他人の間の垣根が低い。そして、ユーモアが日常のいたるところに溶け込んでいるのです。

ひとりぼっちだった私

 留学のため、初めてアメリカを訪れたのは10代でした。田舎町の高校で、日本人は私だけ。みんな私を宇宙人か何かのように見るけれど、話し掛けてくれる人はいません。英語もろくに話すことができず、自分から友達を作ろうにもうまくいきませんでした。当時はつらい経験でしたが、この時にマイノリティー(少数派)の立場に立ったのは、かけがえのない体験だと感じています。なぜなら、相手の立場に立って物事を考えることができるようになったからです。
 ひとりぼっちだった状況から抜け出すきっかけになったのは、小さな勇気の一歩でした。思い切って“Hi!”と声を掛けると、笑顔が返ってきました。私は新たな世界へと飛び出すことができたのです。
 後々聞いてみると、「話し掛けたかったけれど、何て声を掛ければいいか分からなかったの」と。アメリカ人も同じなんだなって思いました。

外へ飛び出して

 ニューヨークは人種のるつぼですが、人種だけでなく年齢の枠を超えて、人と関わっているように見えます。
 気の合う仲間と一緒にいるのは、価値観が似ているから居心地がいい。それを否定するわけではありませんが、そこにとどまっていては、あまり成長がない。多種多様な価値観の人と触れ合うことで、多くを学び、視野も広がります。
 外に出て人と触れ合えば、日本が、自分が、もっと見えてきます。そして、客観的に見つめることができるのです。外に飛び出し、世界を見ると同時に、日本の良さ、自分の良さを深めてほしいですね。
 異なる価値観を持つ相手を、そのまま受け入れ、人として尊重し、思いやれる。そして、対等な立場で話をできる人が、本当の国際人ではないでしょうか。

日本は魅力的な国

 アメリカで生活していると、日本人であること自体がスペシャルなのだと感じます。象徴的だったのは、東日本大震災が起こった時に、被災地で、どんなにつらい思いをされたとしても、食料の配給を列に並んで待ち、じっと耐え忍ぶ日本人の姿でした。周囲の人の気持ちを考えて行動するという日本人の国民性は、とても貴重なものだと実感しました。
 ニューヨークでは、人々の多くが自分の思ったことや感じたことを真っすぐに言葉にします。自身の信条や理念をしっかり持つことは大切ですが、自分が正しいと思うことを主張することが、常に良いとは限りません。たいして大事なことではないなら、自分が譲れる部分は譲る方が、賢明な場合もあるのです。
 日本人のもつ“謙虚な心”、白黒はっきりさせない“あいまいさ”は、実に魅力的であり、円滑な人間関係を築く上で大切な要素なのです。
 日本人だからこそ、世界平和に貢献できることもあるのではないでしょうか。

みんなスペシャルな存在

 私は日本が大好きで、日本人であることに誇りを持っています。どこにいても、どこへ行っても、日本人であり、今この地球に共に生きる地球人であり、そしてたった一人の私である――。一人一人が、スペシャルな存在なのです。
 卑下することなく、おごり高ぶることなく、同じ地球に住む一人として、対等に世界の人と向き合えるようになったら、素晴らしいと思います。
 Just keep going and enjoy life.
 とにかく、前を向いて歩き続け、そして人生を楽しんでください。一歩外へ出れば、あなたの持っている“当たり前”が、変わって見えてくるかもしれません。そしてきっと、新しい“あなた”との出会いが待っていますよ。

 おかだ・みつよ 東京生まれ。青山学院大学卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。「読売アメリカ」記者を経て、作家・エッセイスト。高校・大学時代に1年間ずつ米中西部に留学。その後ニューヨークに住み始める。主な著書に人気エッセー「ニューヨークの魔法」シリーズや「奥さまはニューヨーカー」シリーズ、『アメリカの家族』など。

 【編集】安孫子正樹 【インタビュー写真】宮田孝一 【レイアウト】清水湧揮


何だかワクワクするような記事!

これも明日への糧になるねぇ。


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