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聖教新聞 (2018/11/24) 〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 信仰体験 里親として生きる

2019年04月01日 22時08分18秒 | コラム・ルポ

〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 信仰体験 里親として生きる

2018年11月24日 聖教新聞

北海道・幕別町 中野敏勝さん
26人の“わが子”に教わったこと
十勝地区里親会の会長 地区の未就学児委託率は100%
 
長女一家と公園で遊ぶひととき(後列左から時計回りに、妻・美栄子さん、中野さん、長女・福田由紀子さんと夫の憲司さん、孫の悠里乃ちゃんと想乃衣ちゃん)
長女一家と公園で遊ぶひととき(後列左から時計回りに、妻・美栄子さん、中野さん、長女・福田由紀子さんと夫の憲司さん、孫の悠里乃ちゃんと想乃衣ちゃん)
 

 現代社会の課題を見つめる「グローバルウオッチ」。現在、日本では、さまざまな事情で自分の家族と暮らせず、社会的な養護を必要とする子どもが、約4万5000人いるといわれる。こうした子どもたちを家庭に迎え入れ、成長をサポートする「里親」の重要性が注目されている。今回は、里親として30年以上にわたり、26人の子どもたちを育ててきた夫妻を取材した。多様な親子関係を経験してきたその生き方に、共生の未来へのヒントを探る。(記事=掛川俊明、野田栄一)

 中野さんが養育里親になったのは、自衛官として働いていた1987年(昭和62年)のこと。一人娘の長女・福田由紀子さん(45)=地区婦人部長=が中学生になり、2人目の子どもができなかったこともあり、妻・美栄子さん(71)=県婦人部主事=と相談して、里子を迎えることにした。

 「娘も手が離れるし、少しでも社会に貢献できれば、と軽い気持ちだった」
 しかし、現実は――。初めてやって来たのは、生後7カ月の女の子。不安定な家庭環境で育っていたのだろうか、少しの物音で目を覚ます。「一日に3時間も寝ないもんだから、こっちはクタクタで」
 由紀子さんの助けも借りながら、懸命に家族で面倒を見ていくと、1カ月ほどでぐっすり眠るように。「家庭の環境で、ここまで子どもは変わるんだと実感した」
 その子が引き取られていくと、今度は2歳の知的障がいがある女の子が来た。「どう育てていいか、本当に悩んだ」。夫婦で真剣に祈り抜く中で、“この子は、わが家を選んで来てくれたんだ”と思えるように。
 「ありのままを、そのまま受け入れよう」と決め、真っすぐ子どもと向き合った。障がい児を持つ親の会にも参加し、中学生になるまで養育した。
 「3歳児くらいの知能指数しかなかったけれど、何でも自分でやって、普通学級に通ったんです」
 今は、障がい者施設で暮らしているが、盆と正月は帰ってきて、中野さん夫妻と“わが家”で過ごす。
 里子たちは、それぞれ複雑な事情を抱えている。親の育児放棄。両親を亡くした子もいた。虐待などのトラウマ(心的外傷)からか、風呂に入ることや車から降りることに、強い拒絶反応を示して暴れたり、泣き叫んだり。
 「でも、子どもたちは何も悪くない。一緒に暮らすうちに、だんだん落ち着いていく」
 児童養護施設から受け入れた子もいた。施設では、1人分の食事が配膳されるため、大皿の料理を家族で分ける習慣が身に付いておらず、驚いた。
 「特に未就学児童は、家庭と同じ環境で育てることが大切だと思うんです」
 中野さんは今年から、十勝地区里親会の会長を務める。長年、役員として、里親と里子で参加するキャンプを催すなど、里親のサポートや制度普及に尽力。現在、地区内の未就学児童の里親委託率は100%だという。
 「最近は、里親になる人が増えている。一方で、自分では育てられなくなっても、里親には預けたくないという実の親が多い」
 だからこそ、里親の必要性を広く社会に訴えたい。町内会長などを務め、地域に尽くす中で、近隣の住民も理解を深めてくれた。里子と一緒に散歩した際、呼び止められて話し込んだり、お菓子をもらったりしたこともある。「子どもたちは未来からの贈り物。だから、“地域”で育てるって意識が大切なんです」
 実は、美栄子さんは母親を早くに亡くし、養子として育てられた。自身の経験から、「人の家で育つ子は、こっちがどう思っているかを敏感に感じてしまう。だから、わが家に来た全員を“わが子”だと思ってきました」と。
 しかし、わが子として接するからこそ、悩まされることも多い。思春期になり、家で会話しなくなった男の子。何とか話をするために、夫妻は携帯電話をスマートフォンにして、LINE(通信アプリ)でやり取りを。美栄子さんは71歳になった今も、高校生の里子のために毎朝、弁当を作る。「『今日のおかずは微妙』って文句を言われることもあるけどね(笑い)」
 池田先生はつづっている。
 「たとえ子どもが悩みの種となっていたとしても、それによって親や家族が信心を深める契機となれば、その子は、実は親孝行しているのと同じです」
 夫妻は今まで、26人の“わが子”を育ててきた。10年以上も養育している子もいる。「子どもたちのことで悩んだ分だけ、たくさん題目をあげさせてもらった。子育ては、自分を成長させてもらえる“親育て”なんです」
 2007年(平成19年)、美栄子さんが子宮体がんを患った時は、「子どもたちがみんな、見舞いに来て、応援してくれた。本当にありがたかったですよ」と。夫婦で祈り抜き、子宮の全摘出手術を乗り越え、11年がたった。
 26人の子育て、病との闘い。何があっても、夫妻は学会活動から一歩も引かなかった。今では、苦労してきたことが、人の悩みに寄り添い、励まし抜く原動力になっている。
 多くの子どもたちと接してきた経験から紡がれる夫妻の言葉には、深みがある。
 「力まず、焦らず、自然体で子どもを受け入れることが大事。“育ててあげてる”と思ったら、自分の思い通りにさせたくなる。でも、“一緒に成長しよう”と受け止めれば、思い通りにならないのも当たり前だなって」(美栄子さん)
 「ちょっとした会話が大切。思春期になったら、何でも聞き出そうとしたら駄目なのさ。子育ては急いだらできない。待つ心がないとね」(中野さん)
 夫婦で歩んできた道には、未来を紡ぐ一歩一歩が刻まれている。

 なかの・としかつ 定時制高校を卒業後、陸上自衛隊に入隊し、定年まで勤めた。妻・美栄子さんと共に、養育里親として30年以上にわたって、多くの子どもたちを育ててきた。本年、十勝地区里親会の会長に。地域に貢献し、幕別町果樹研究会の会長や町内会館の管理者も務める。74歳。幕別支部、分県主事。

 【里親制度】

 18歳までの子どもを家庭に受け入れて育てる「養育里親」、原則6歳未満の子どもを特別養子縁組を前提として育てる「養子縁組里親」がある。他にも、数日間から数カ月の短期の里親、虐待などの専門的なケアを行う「専門里親」、両親を亡くした子どもを親族が育てる「親族里親」などがある。現在、日本には親と暮らせない子どもが約4万5000人いるが、そのうち里親家庭やファミリーホームで暮らす子どもは18.3%にとどまる。この現状を受け、昨年夏に厚生労働省は、未就学児の里親への委託率を7年以内に75%以上とする目標を掲げた。

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里親…とても興味があるけど… 

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