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エネルギー効率利用が課題=発展戦略で5カ年計画 北京特派員 高村直人

2007年08月22日 | 産業
■エネルギー消費、年10%超の増加
■節約・環境重視の5カ年計画を策定

中国は2003年以来、連続して10%を超える経済成長を続けている。08年の北京五輪、10年の上海万博を控え、発展の勢いは一段と加速している。一方で、エネルギー多消費型産業の構造改革は進まず、極端な石炭依存、原油の輸入依存度の高さを背景に、成長の基盤であるエネルギー供給の将来に黄信号がともっている。中国政府は、こうした状況を踏まえ、資源開拓、供給体制整備、エネルギー消費効率の向上などに本格的に取り組む構えだ。

  ◇エネルギー消費、年10%超の増加

 中国の国内総生産(GDP)伸び率は03年から二ケタ成長となり、06年は11.1%、07年に入ってさらに加速し、1~6月期は11.5%、4~6月に限ると11.9%の高成長を記録した。中国経済は「01年の世界貿易機関(WTO)加盟で弾みが付き、03年から新たな成長期に入った」(国際金融筋)格好だ。
 WTO加盟の条件として、中国は対外開放と国内の規制緩和を実行したため、製造業を中心に日米欧の企業が東部沿海地区などに相次いで進出。様々な優遇措置を受けて、輸出を急拡大させた。こうした外資の投資と輸出が一つの起爆剤となって、投資、輸出主導の経済成長パターンが出来上がった。
 エネルギーについては、発展の指標として量的な拡大が中央・地方政府を問わず重視された結果、鉄鋼、石炭、セメント、石油化学などエネルギー多消費型で環境汚染度も高い産業で新規参入、設備投資が大幅に増加した。このため、エネルギー消費量はうなぎ上りとなり、ここ数年は、エネルギー供給、環境汚染などへの懸念が急速に高まった。
 国家統計局などによると、期間がWTO加盟で経済活動が刺激された時期と重なる2000年~05年の第10期5カ年計画中のエネルギーの総消費量は、年平均で10.15%増加する一方、エネルギー生産は同9.82%の増加にとどまった。供給の増加が需要拡大に追い付かず、「エネルギー需要が不断に増加する中で、資源上の制約はますます厳しくなっている」(国家発展改革委員会)のが現状だ。
 中国は現在、エネルギーの生産・消費とも米国に次ぎ世界2位。しかし、13億という世界最大の人口を抱えているため、一人当たりのエネルギー資源の総量は、極めて低水準で、石油は世界平均の7.7%、天然ガスは同7.1%にすぎない。
 このため、国民の消費構造の向上に伴うエネルギー消費の継続的な拡大と持続的発展には、安定的なエネルギー資源の確保、効率的な利用、節約がカギとなっている。経済成長率が1%下がると100万人が失業するともいわれる中国では、ある程度高水準の成長が社会安定の必須条件ともいえる。

  ◇節約・環境重視の5カ年計画を策定

 こうした状況を受けて、中国政府は今年4月、2010年までの「エネルギー発展計画」を公布した。エネルギー資源の現状を分析した上で、発展目標を設定し、石炭、石油、原子力、資源節約と環境保護など、重点項目ごとに詳細な規定を盛り込んだ。関係者は「エネルギーの発展戦略に的を絞った5カ年計画は初めてではないか」と指摘している。
 発展計画は、「エネルギー情勢」「方針と目標」「建設の重点」「エネルギー節約と環境保護」「科学技術の進歩」「保障措置」の全6章で構成。
 エネルギーを取り巻く情勢は極めて厳しいとの認識から、「節約を優先し、国内に立脚、多元的に発展させ、環境を保護し、相互利益に基づく国際協力を強化する」ことをエネルギー戦略の基本に据えた。
 具体的な目標としては、年平均のエネルギー消費の伸びを4%に抑制し、10年の消費総量は27億トン(標準炭換算)に設定した。2000~05年に比べ、伸び率を半分以下に抑えることを意味する。大胆な目標設定は、「エネルギー需給に対する中国政府の危機感の表れ」(国際貿易筋)とみられる。
 各エネルギーの構成比率は、石炭と石油を05年比でそれぞれ3.0ポイント、0.5ポイント引き下げ、66.1%と20.5%とするほか、天然ガス、原子力発電を各2.5ポイント、0.1ポイント引き上げ、それぞれ5.3%、0.9%とするとした。
 計画の最大の特徴は、エネルギーの消費効率を向上させるため、節約と環境保護に大きな重点を置いたことだ。結局は経済成長の阻害要因となる環境汚染を無視して開発を続ける地方政府、企業を抑えて、短期的にはコスト高となる省エネ設備、環境保護技術の導入を促進するのは容易ではない。
 国務院(中央政府)は先に、省エネだけでなく、地球温暖化対策についても、温家宝首相をトップとし、関連部門の閣僚が軒並み参加する部門横断的な指導組織を立ち上げ、「中央政府が本気で取り組む姿勢」(同)を示した。
 現行の第11期5カ年計画では、GDP1単位当たりのエネルギー消費を10年までに20%削減するとの目標を設定した。しかし、初年だった06年は、鉱工業を中心とする生産拡大を背景に、未達成に終わった。今後、年間の削減幅を一段と改善しなければ最終目標は達成できず、中国のエネルギーをめぐる環境は決して楽観できない。