上田力 「クロス・トーク」

作・編曲家、ピアニスト:上田力とスタッフが徒然なるまま語ります。

尚子に文句なしの天っ晴れだ!!

2008-10-28 | diary

ほとんど期待してなかったけど、想定外に痛快だったのは、寺井尚子が飛び入り参加したリシャール・ガリアーノの「タンガリア・カルテット」だ。ピアソラと共演したことを ゛お墨付き ゛として大事にしているガリアーノは、バンドネオンで古典タンゴも弾くが、いかにもフランス生まれらしく、ヨーロッパ特有のクロマチック・アコーディオンでシャンソンからジャズも一応はこなす才人だ。

それが今回は予定した奏者が急に来日不能となり、寺井に代役がまわったというわけだが、ステージでは、代役というイメージは全く無く、むしろ寺井のバイオリンがメインで、ガリアーノは共演者じゃないのか~と思えてしまう演奏が展開された。

だがこれは、 ゛ひいき目 ゛をどんなに差し引いても、寺井が ゛出しゃばり過ぎていた ゛からではなく、ガリアーノの方に、終始 ゛前に出てこないモタつき ゛が付いてまわっていたからだ。クロマチック・アコーディオンがジャズ向きであるか無いか~なんてことではなく、ガリアーノの表現姿勢そのものの、ある種の ゛生ぬるさ ゛が生み出した ゛違い ゛ではなかったか?

゛初めて弾く曲を、いかに体の中に入れ込むかという作業が必要…とにかく、今日は思いっきり、すべてを忘れて楽しもう…それだけの思いで来ました… ゛ この寺井のコメントが、すべてを云いつくしている…尚子に文句なしの天っ晴れだ!!




東京ジャズ・レポート~2~

2008-10-20 | diary
今回、対照的で面白かったのは、ハンク・ジョーンズのトリオで一人ずつがコメントした時、一番若手のドラマー、ビリー・キルソンが、90才のハンク、64才のジョージ・ムラーツに向かって ゛この二人はボクにとっては雲の上の人たちだ、一緒にやらせてもらえるだけで光栄だョ ゛なんて、テレ笑いしながら、そのくせ、しなやかにシンプルなリズムをたたき出し、普通はバカげた超アップテンポで演奏されがちの『オレオ』を、カッコ良く抑制の効いたビートで支えきっていたし、もちろん、ジョージの正確無比なベースラインがあってこそのコラボレーションなんだが、それに加えて ゛見事!!゛としか云いようがなかったのは、このリズムに対するハンクのピアノだ。

90才というトシなど全く感じさせない<遊び心タップリ>のタッチと、一切余計な音は出さない選び抜かれたフレージングによる、ただ<速い>だけではない心地よいスピード感…そして、形は8ビートをとっているが、それがそのまま4ビートを感じさせる名人芸ともいえる『マーシィ、マーシィ、マーシィ』など、大ゲサにではなく
、本当に ゛何気なく ゛伝わってくる実感は、まさに ゛ジャズの王道 ゛そのものだったこと。

一方、これも名曲『ジャイアント・ステップ』に猛スピードで立ち向かったミシェル・カミロ・トリオは…そう、味もそっけもない ゛まだそんなことやってるのかい? ゛と絶句してしまうような迷演奏だったこと…!!

東京ジャズ・レポート~1~

2008-10-13 | diary

今年はBS2で「東京ジャズ・フェス2008」のほとんどの演目が観られたのだが、その中で特に印象的だった中の一つが、「日本のグレゴリー・ハインズ」などと評価されている熊谷和徳のタップ・ダンスと、また一段と創造性と即興性を深めた上原ひろみとのデュオ・パフォーマンスだ。

タップといえば、いまだにフレッド・アステアの、あの ゛軽妙で美しい舞い ゛への惚れこみから脱け出せないでいる自分だが、百歩ゆずっても、上原と熊谷の場合は、折角の ゛ピアノとタップ ゛という組み合わせの妙味が満喫できなかったように思う…というのも、そもそも、1+1が2にしかならないようではデュオは成立しないものだからだ。

とても大きく、タイトに、しかも盛大にインプロヴィゼイションも加えた『ラプソディ・イン・ブルー』を弾きこんでゆく上原のピアノ・ソロに対して、熊谷は、全く別な角度からのタップを対峙させて ゛二人だけのイメージ ゛を別次元まで広げようとするのではなく、逆に上原のソロ・フレーズと同じ動きで ゛合わせてしまう ゛ステップに終始していたように見えた。が、これでは1+1が2ではないデュオの醍醐味は生まれようがない!!

でも実は、もっと面白くやれるはずの熊谷のオリジナリティを封じこめてしまったのは、余りにも自由奔放にガーシュインを取り込んでしまえる上原のピアノの方だったとすると…さて…?

西の洞のライブを終えて…

2008-10-05 | diary

9月28日の『Jobim My Love~46~』は、ボクだけが12年ぶりで、吉田クンほかのメンバー全員は「西の洞」初出演だった。でも ゛こりゃ感じの良いところだナ゛という声が多く、それぞれに気分は上々だったようで、それが先ずホッとしたことの一つ。

もう一つは、友情参加の小山洋子が、ピアノとキーボードで「イパネマの娘」「ワン・ノート・サンバ」の2曲を、とてもタイトなグルーヴで、いつもとは味わいの違う雰囲気を漂わせてくれたこと…。

そしてもう一つ、全体を通して演奏の安定感に絶大な役割を果たしてくれたのが、高橋正俊クンのPA調整だった!!高橋クンに対しては、メンバーのほとんどが、「B♭」でのライブで ゛お馴染み ゛であり、高橋クンの方もツーカーのコミュニケーションのとれる ゛間柄 ゛だったこともあって、サウンド・チェックの段階で、すでにメンバーからの注文もほとんど出ないという、今まで他のライブでは体験したことのない ゛超現象 ゛が出現した。

もちろん本番では、厄介なファゴットの集音なども含めて何の不具合もなく、全員が当たり前のように自然な演奏で終始できた…これは、店の状況で器材搬入が遅れたり、予想外にステージが窮屈だったのに、テキパキとした高橋クンのPA手腕と、なによりも、メンバー全員との信頼感の強さとによるところが大きかったからでは…まさに感謝!そしてブラボー!!