上田力 「クロス・トーク」

作・編曲家、ピアニスト:上田力とスタッフが徒然なるまま語ります。

非文化的な形容をしたがるライターに大喝!!

2008-06-30 | diary

先週の日曜、タケシの『誰でもピカソ』にフジコ・ヘミングと上原ひろみが出ていて、二人とも、数週間前、NHKに出演したときと同じ、フジコはベートーベンのピアノ・ソナタ「テンペスト」の第3楽章、上原はガーシュインの「IGot Rhythm」を、それぞれに、またかなり違う味わいで即興性の醍醐味いっぱいに弾きこなしていた。

特に上原は、ブルージーなバラードの前半とアップテンポでスピーディーな後半とのコントラストが圧倒的に鮮やかだったので ゛まるで別な人がいるみたい…゛というタケシ独特のホメ言葉が飛び出した…までは良かったのだが、その後 ゛超絶技巧による速弾きは、まさに神ワザ ゛なんていうナレーションが流れてどっと興醒め…というよりアタマにきちゃったのだ!!

ピアニストたるもの、次々に湧き起こるインスピレーションを意のままに表現しようとすれば、あらゆる場面に合わせられるだけの十分な技術の研さんを積むわけで、結果、表現の一部分では非常に早いフレーズが必要だったりする。

だが ゛速く弾く゛そのことが目的じゃないのだ…ここをカン違いしないで欲しい!! ゛日本のジャズ文化の中で育まれた輝かしい成果だ ゛とまでチック・コリアに云わしめた上原ひろみの、他に類を見ないピアノ・ジャズに水を差すような古色蒼然とした非文化的な形容をしたがるライターに大喝だ!!

上田力のクロストーク ~6月30日~



“西山瞳ふう”

2008-06-19 | diary
今年に入って間もなく、某紙コラムで西山瞳という女性ピアニストのことを知り、とてもピアノを聴きたくなり、会って話しがしてみたくなった。

そのわけは、クラシック出身の彼女が大学でジャズをやり始めて間もなく、イタリアのあるジャズ・ピアニストの、いわゆるアメリカふうとは全く違う、むしろクラシックの展開に近い゛ヨーロッパ風味゛に惹かれ、やりかけていたビート中心の゛アメリカふう゛にキッパリ見切りをつけ、スエーデンまで遠征して現地のミュージシャン・トリオを組み、アルバムも出し、ジャズ・フェスにも出演、賞もとる…という異色の活躍を続けて、最近、ようやく日本でも人気が出始めた…という情報に接したからだ。

早速、スエーデン録音のCD「メニー・シーズンズ」も聴き、吉祥寺の「ストリングス」でのライヴも聴き、この5日にはインタビューも果たして彼女の、かなりの音楽性、人間性に触れてみると、アメリカふう、ヨーロッパふう…とかの区別の仕方が、いかに旧態依然の゛日本ふう゛であるかが分かってきた。

ドギつくないコードワークの流れを主体にサウンドとメロディーを浮かび上がらせてゆく彼女の演奏には、今まで日本では殆ど聴けなかった鮮度の心地良さが漂っており、わざわざ゛ヨーロッパふう゛と呼ぶほど゛没個性゛じゃない…でも敢えて呼ぶなら、やはり゛西山瞳ふう゛しかないハズだ。

上田力のクロス・トーク



さすがだよネ、チック!!

2008-06-14 | diary

去年9月、ブルーノート東京で行われたチック・コリア=上原ひろみデュオのライヴ・アルバムに「フール・オン・ザ・ヒル」が入っており、タイトルを見ただけのときは、それほど気にもならなかったが、音を聴いたトタン゛やっぱり!゛と大ナットク。

そもそも、この曲はビートルズの「マジカル・ミステリー・ツァー」に収録され、アルバムは'67年12月23日付ビルボード誌のチャートNo.1になっているが、この曲自体、当時は話題にもならなかった。が、4作目のアルバム・タイトル曲に、ブラジル風味かくし味の独特なポップ・アレンジで取り上げてから、逆に、ビートルズの原曲を知らない(知ろうとしない…どうでもよい…)という聴き手も含めた幅いポップス・ファンのヒット曲となった。

さぞや゛ワザの競い合い…゛と予想していたチックと上原のデュオは、なんと快適にハグラかされ、チックはホンのチラッと、短いが骨太のソロをとっただけで、あとは原曲とセル・メン・アレンジの双方に含まれるネイティヴな要素をチック独特のベイシック・パターンとして弾き続けながら、上原には好きなだけインプロヴァイズさせるという゛親ごころ゛タップリのアプローチ…。

これって、それぞれの歴史と背景と音楽性とを同時に愛して受け入れるのでなければ出来ないレベル…さすがだよネ、チック!!

上田力のクロス・トーク ~ 6月14日 ~

big band jobim

2008-06-08 | diary

上田 力のクロス・トーク~ 6月 8日 ~

それは衝動的…というより、゛天の声゛とでも云いたくなるような、なにか、とても大きな゛力゛に突き動かされ、自然に゛そうなる゛のが当たりまえ…のようにボクの中に湧き上がってきたアイディアだった。

そうだ、またビッグ・バンドでやろう!!という…今年の12月8日のJobim My Loveのことだ。その時、ビッグ・バンドでやろう!というキモチと同時に、全くそれとシンクロするように聴こえ始めたのが、なんと、あのネルソン・リドルとフランク・シナトラのコンビで創り出した゛限りなくジャズっぽいけれど、ジャズそのものではない…゛という絶妙なコンセプトのポップ・ジャズ・サウンドであり、そのとき既に、それは゛決定的プラン゛としてボクのキモチを占領してしまっていた。

今年最初(4月11日)のJobim My Loveが終わったばかりの時点で、そんなことになってしまったことについて、一つだけハッキリしているのは、リドル~シナトラ・ジャズがボクの大のお気に入りであること以上に、゛さらなるジャズっぽさ゛の中で思いきりジョビンを解放してみたい…ならば、これしか無い!!という想定外の自信に突き上げられたことだ。

まだ半年も先のことだけど、なんだか黙って居られなくて、つい…バカだねェ!!

Big Band Jobimをお忘れなく…。