上田力 「クロス・トーク」

作・編曲家、ピアニスト:上田力とスタッフが徒然なるまま語ります。

東京ジャズ・レポート~1~

2008-10-13 | diary

今年はBS2で「東京ジャズ・フェス2008」のほとんどの演目が観られたのだが、その中で特に印象的だった中の一つが、「日本のグレゴリー・ハインズ」などと評価されている熊谷和徳のタップ・ダンスと、また一段と創造性と即興性を深めた上原ひろみとのデュオ・パフォーマンスだ。

タップといえば、いまだにフレッド・アステアの、あの ゛軽妙で美しい舞い ゛への惚れこみから脱け出せないでいる自分だが、百歩ゆずっても、上原と熊谷の場合は、折角の ゛ピアノとタップ ゛という組み合わせの妙味が満喫できなかったように思う…というのも、そもそも、1+1が2にしかならないようではデュオは成立しないものだからだ。

とても大きく、タイトに、しかも盛大にインプロヴィゼイションも加えた『ラプソディ・イン・ブルー』を弾きこんでゆく上原のピアノ・ソロに対して、熊谷は、全く別な角度からのタップを対峙させて ゛二人だけのイメージ ゛を別次元まで広げようとするのではなく、逆に上原のソロ・フレーズと同じ動きで ゛合わせてしまう ゛ステップに終始していたように見えた。が、これでは1+1が2ではないデュオの醍醐味は生まれようがない!!

でも実は、もっと面白くやれるはずの熊谷のオリジナリティを封じこめてしまったのは、余りにも自由奔放にガーシュインを取り込んでしまえる上原のピアノの方だったとすると…さて…?