大相撲名古屋場所の12日目、ラストの千代大海と白鵬の取組で、立ち上がりざま、千代大海は(のど輪)で先制したが、白鵬の下半身はビクともせず、不全の右四つで寄り切り“流れのまま、相手の引きだけを注意していた…”と云ってのけているし、千代大海の方は“何とか腰を浮かせようと思ったが歯が立たなかった…”と、完敗を振返っている。
そして、この日の解説者、九重親方は、こうゆう相手に対しては、先ず“重く当たって、素早く動かなくちゃダメだ…”と、鋭いが、とても分かりやすい指摘をしている。
だが、この九重親方の言葉を耳にしたトタン、これはどうも“相撲の取組”だけに当てはまる教訓じゃないと思えてきたのだ。
“重く当たる”というのは、ピアノの鍵盤を、重力の法則どおり、深く確実なタッチで上下させることに共通するし、そのあとモタつかずに音の粒立ちを揃えるには、“重く当たる”のとは正反対の、指、手首、腕のバネの利いた“素早い動き”が欠かせないわけで、この相反する“動き”を、どうすれば瞬時に切り替えられるかが“表現”を左右する重要なポイントになってくるからだ。
でも、目下ず~っと続けているプライベート・レッスンの生徒諸君は、この難しい大原則の“体験的納得度”をごく自然に高めつつあり、これは近頃、掛け値無しに“嬉しくなってくるハプニング”の一つだ。
上田力のクロストーク 7月27日