海流のなかの島々

狭く浅くな趣味のあれこれを
波の彼方から語ります

「樫の木坂四姉妹」

2012-06-10 13:07:35 | 演劇

俳優座公演です。

作:堀江安夫、演出:袋正

出演:大塚道子、岩崎加根子、川口敦子、武正忠明ほか

 

大塚さん、岩崎さん、川口さんは三人とも紀伊国屋演劇賞受賞者。贅沢な舞台です。

 

戦時中の長崎。樫の木坂の葦葉家では三女の弾くピアノに乗せて楽しい歌声に満ちあふれていた。優しい父と母、立派な軍人の長男、しっかりものの長女、軍国少女の次女、無邪気な双子の三女と四女。戦時下といえども仲良く幸福な七人家族。原爆投下のその日までは。

 

そして2000年。その樫の木坂の家には年老いた3人の老女が住んでいた。

 

長男は戦死。母と三女は被爆死。その後父も亡くなり、生き残った三姉妹が身を寄せ合って暮らしている。傍若無人に振る舞う次女に振り回されながらも、ギリギリのところで均衡は保たれている。しかし3人ともが被爆にまつわる苦しみから抜け出せず、その苦しみは姉妹であっても胸に秘められたまま。やがてそれが爆発し、ぶつかり合う中で苦しみを共有できるようになる。そのあたりの見せ方が秀逸。

原爆の語り部となった長女が中学生に語り合う姿に、かつての葦葉家7人が楽しそうに歌う姿が重なり合って、幕。ベタかもしれないけど心に響くラストシーンで引き込まれました。たくさんの人、特に中高生に観て貰いたい。いや、海外の方にも是非ご覧いただきたい舞台でした。



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1 コメント

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いわれなき差別を防ぐべき (大戸 斉)
2014-06-06 09:29:06
俳優座による「樫の木坂四姉妹」は長崎に暮らしていた明るく楽しい家族にも戦争の影が落ちた。今は老境にある三姉妹、原爆と戦争の体験を穏やかに、しかし内心は強く振り返る、心打つ佳作かと思っていた。しかし、期待は失望と悲憤に変わっていった。かつていわれなき多くの風評が広島と長崎の被爆者のこころを傷つけてきたと聞く。作者「堀江保夫」氏は三姉妹の次女がかつて生んだ「脳性マヒ」児は被ばくが原因であるかのように描いている。この記述には根拠がなく、明らかに間違いである。大量殺りく兵器原爆による死亡の多くは熱線と熱風による火傷が原因であった。被曝によって脳性マヒが増加した事実はない。
こうした悪意を伴わない風評は人々の心のひだにすんなり入ってゆき、膠着した深層心理を形成する。「樫の木坂四姉妹」は福島に住む者には、この上なく差別的演劇と評されるべきである。
参考までに被災後福島では、異常妊娠も先天異常児も増えてなく、全国平均と全く差がない。若い女性たち、お母さんたち、安心して福島で子供を産んで、子育てをしてほしい。はるかに高線量を被ばくした広島と長崎でも異常児や異常分娩は全く増えていない。
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