海流のなかの島々

狭く浅くな趣味のあれこれを
波の彼方から語ります

「あわれ彼女は娼婦」 @シアターBRAVA! 8/11

2006-08-13 20:28:16 | 演劇
作:ジョン・フォード
演出:蜷川幸雄

ジョヴァンニ   三上博史
アナベラ     深津絵里
ソランゾ     谷原章介

舞台はイタリア、パルマ。
ジョヴァンニとその美しい妹アナベラは、近親相姦の罪を犯す。
やがて兄との子を身ごもるアナベラ。
その事実を隠すため、多くの求婚者のなかからソランゾを選び結婚する。
新妻が不義の子を妊娠していることを知ったソランゾは名士を集め宴を開く。
その事実を公衆の面前で暴き、2人に復讐するために。

ジョン・フォードはシェイクスピアと同時代の作家だそうです。


友との共通の感想は、「脚本が面白くない」。
演出が悪いとは思わないし、芝居もまあまあ。
舞台装置や照明は素晴らしい。
でもつまんないんだよなぁ。
盛り上がらないまま淡々と話が進み終わってしまった。

舞台装置は、円柱のある二層の回廊のような感じ。
それが照明によって石造りにも見えるし、
金箔を貼ったようにも見えるし、
教会の中のようにも見える。

ラストの宴会のシーン。
「最後の晩餐」のように長いテーブルに居並ぶ人々。
先日見た「タイタス・アンドロニカス」のラストシーンとなんとなく似ている。
そこへ妹を刺し殺したジョヴァンニが現れる。
タイタスのラストシーンが「白」のイメージだったのに対して、こちらは「赤」。
ジョヴァンニの白いシャツは血で赤く染まり、
手に持つ短剣には妹の赤い心臓が突き刺さっている。
燭台に揺らめく無数のキャンドル。
こういう美しさがやはり蜷川さんの舞台の真骨頂ですね~。

ジョヴァンニは妹を愛したのではなく、実は妹を通して自分自身を愛したのではないか?
私はそういうナルシシズムを感じたんですが、
「acteur」の三上さんのインタビューを読むと、そうでもないみたい。
この時代の教会権力に対する反抗が込められている作品のようですが…。
まあ、自分の感じたものが全てだから、どっちでもいいか。


個々の役者さんについて。

※三上博史
   友は「自分の世界に浸ってる」と言う。
   確かにそういうところがあってそれがナルシシズムに
   繋がってくるのかもしれないけど私は好きですね~。
   妹の心臓を突き刺した短剣を持って客席から舞台へと走る。
   一瞬客席を振り返って台詞を言ったときの表情が美しかったなぁ。
   ウエストの細さを協調する衣装も素敵でした。

※深津絵里
   言われたことを忠実に演じている、という感じ。
   それが伸びやかさを失わせているのかも。
   今後に期待!

※谷原章介
   自分が台詞を言ったあと、相手の台詞や芝居を受ける演技がちとぎこちない。
   狂言回しでもある従僕役の役者さん(石田太郎)があまりに上手くて、
   ちょっと霞んでしまった。
   でも背が高くて舞台映えするし、コスチュームプレイにはバッチリハマってますねぇ。
   声もよく通るし、これからが楽しみです。

※高橋洋
   金髪のオカッパ頭に、エリザベスカラー付きの衣装。
   「メタルマクベス」の元きよしかと思いました
   ちょっと頭の足りない求婚者の役で、舞台上で何度もすっ転ぶ。
   最初はやり過ぎかな、とも思ったけど、だんだん愛着が湧いてきた。
   従僕と一緒にチュチュを着けてバレエを踊りながら台詞を言うシーンは楽しかった。
   早々に死んでしまった後は淋しかったわ。


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