ポートフォリオ(Portfolio)とは・・英語で『書類を運ぶ平らなケース』イタリア語で『札入れ』を意味する語句で、金融業界においては投資家が “自らの資産を複数の金融商品に分散投資する事“ を指します。しかし 現代では 貨幣市場そのものを事業として取り扱うために、金融経済学や数理ファイナンスを用いた金融工学によってはじき出される「安全資産と危険資産の最適保有率」を、リスクマネージメント的に考慮する手法として、このポートフォリオという言葉が使われるケースが多くなりました。
つまり、収益がある程度確定していて、リスクの少ない安全資産(預金・国債など)と、市場価格の変動による キャピタル・ゲイン(capital gain)【債券や株式などの資産価格上昇による利益のこと】とキャピタル・ロス(capital loss)【逆に価格が下がって損をすること】が発生するリスクの高い商品との“組み合わせ”を論理的に事業化する事。これがポートフォリトと呼ばれてるわけです。
その反対の言葉として、コミットというものが使われたりしますが、これは正確には コミットメント(commitment)となり、誓約・約束・公約・確約・義務・深入りなどの意味を有し、経済用語では「決意表明」と訳されることも多いようですね。これを簡単に申し上げれば、責任を伴う約束になり、この中には、責任を負う者の約束に対する強い決意や覚悟が含まれていて、近年では多くの企業トップが、株主、顧客や従業員、あるいは広く社会に対して自社が果たすべき役割をコミットメントと表明しています。
さて、ここからが本題ですが、人生にとって このポートフォリオとコミット。どちらが大切なのでしょうか? もちろん両方とも重要ですね。簡単に言えば、ポートフォリオは数学や科学であり、コミットは人の内面を示す自己認識と表現できるかもしれませんが、コミットの分析に面白いものがありますので、参考までに記載しますと・・・ 外部からの強い圧力で形成されたコミットメントは、十分に機能しない可能性が高い。なぜなら、外部からの圧力には、コミットメントが実現されなかった場合の人事的評価や処遇だけでなく、実現された場合の魅力的な報酬も含まれるからだ。つまり 昇給や賞与の増加である。要するに これらは 外部からの圧力に答えるための動機を外部の評価や物に求める行為であり、あくまで一時的効果しか生み出さないものである。よって 外部からの圧力は、一時的に人に何かをさせることはできても、本人の責任感を引き出すことにはつながらないものなのだ。社員のコミットメントを引き出すには、以下の5つのパターンがある。(1)組織のミッション、価値観、誇りを共有させる(2)業績・業務プロセスの透明性を高める(3)社内に幅広くチャンスを提供して起業家精神を鼓舞する(4)社員の個人的なビジョンの達成支援を行う(5)あらゆる機会を通じて社員の成果を認め称える 企業特性に応じて、これらのアプローチを組み合わせて実施することで、社員の内発的なコミットメントが促されるが、重要なのは、あくまで外部からの圧力ではなく、自らの意志で判断したのだと感じさせるプロセスを経て初めて、本当の意味でのコミットメントが形成されるという点である。そのようにして形成されたコミットメントを通じてはじめて、社内の意気高揚も長期的に効力が発揮されることになるだろう。
上記の分析で最も重要なのは『外部からの圧力ではなく、自らの意志で判断したのだと感じさせるプロセスを経て初めて、本当の意味でのコミットメントが形成される』という箇所でしょう。つまり、継続性を持ちえるための真の目的設定とは 【自らの意志で決意したコミットメント】ですから、これを第三者が自立支援する場合には相手に「これは自分自身が判断したことである」と感じてもらう事が重要とされるのですね。だからこそ、自らの意志でコミットメントしてもらうためにポートフォリオが重要となってくるのでしょうが・・つまり、ポートフォリオとは『安全資産と危険資産の最適保有率を、リスクマネージメント的に考慮する手法』ですから、この安全資産とは・・現状維持であって、従来から続く事象の保全にあたりますし、危険資産とは・・まさしく新しい事であり、以前とは異なる行いに挑戦していくことを指します。そして、以前に申し上げた通り、Risk management とは・・不測の損害を最小の費用で効果的に処理するための手法なので、これらをまとめますと【現状維持と新しい事とのバランスをとりながら 効果的に人生を送る】ことこそが、個人においてのコミットメント&ポートフォリオと成りえ、そのどちらが欠けても現実適応は困難を要するように思われるのです。
しかし、たまたま戦後からの数十年間「預金は勝手に増えていく。給料は年々増加する。土地は勝手に値上がりする。インフラ上昇で 借金はタダ同然になる」といった時代が続いてきたので、幸か不幸か 世間のスタンダードは安全資産を維持することだけに偏ってしまいました。でも 現代はどうでしょう? 預金は増えないどころか、給料は年々減少し、年金も健康保険も破綻寸前で、土地の価格は下がり、デフレで国や個人の借金はいっこうに減っていきません。どの職も産業も長続きせず、数年後には存在するかどうかさえも危うくなってきています。したがって、今後はこれまで不要だった ポートフォリオやコミットメントがどうしても必要になってくるはずなのですね。
ゆえに、これまでは受け身で良かった。しかし、ここからは能動的でなければ生活が成り立たない!ということになりますが、いったい何を現状維持し、どこを変えていけばよいのか? そういった選択と集中。自発的な自己啓蒙のやり方について、日々のあり方そのものを検証していくための指針として、ポートフォリオとコミットメントを活用するのも有意義なことではないでしょうか。