未来へ向かって生きる私たちだからこそ・・グランドデザイン【grand design】に基づいた ライフデザイン【life design】が重要になってきます。つまり 結婚や子育て・お仕事・暮らし・老後などの個人的な事象についても、私たち一人ひとりが「長期にわたる大規模な社会全体の未来像」に従った「独自の人生計画を立ててゆかなければならない」ということですが・・
しかしこれまで こういったライフプランについては、たいてい他人まかせで、政治や行政・経済人にメディア、はたまた保険会社の方など、いつも第三者に設計してもらってきたのが常ではないでしょうか。でも ここで留意すべきは、彼らの提案には まず間違いなく“何かしらのバイアス”がかかっているという点かもしれません。
つまり、政治家なら選挙。経済人なら自社の利益。メディアなら広告主。保険会社なら営業マンの成績。というふうに“そこには必ず彼らの利益が盛り込まれている”ので、他人まかせにする行為はすなわち「私たちの益ではなく 提示した側の益を優先させる」ということにもなりかねません。もちろん こういった事には 私たちも薄々感づいてるのでしょうが、だからこそ これまで私たちはいつも“そこそこマシな選択が賢い選択だと思い込んできた”節がある。でも選択って 本当にそれでよいのでしょうか?
コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は「選択にも方法がある」と【選択を科学】していらっしゃいますし、スタンフォード大学のティナ・シーリグさんは「ありふれたものに価値はない」と学生に【デファクト・スタンダードの創出】を求めて日々熱弁をふるっています。彼女たちの描く若者像は、自ら想像した未来を自らの手で創造するといったものであり、誰かの手で作られた未来を何も考えず ただ生きることではないとしています。
しかし「でも」と誰もが考えることでしょう。そういうのは優秀なアントレプレナーたちが習得すべきものであって、一般の人には関係ないと。もし そうだとしても・・前述したように、のちに成長したアントレプレナーたちが提示するものも「まさしく彼らの益に准じたもの」に違いはなく、それを享受する側の益とは成りえないのは同じ。要するに、自身の益は自分にしか作れない! それが現実ということになります。
では、他人まかせにせず 自身の力でライフプランを立てるためにはどうすべきか? それにはまず リスクに対する考え方を学ばねばならないでしょう。IMFのクリスティーヌ・ラガルドさんは「すべてを一度に手にすることはできないのだから、人生のどの時期に何を得るためにどんなことををするか? そういった優先順位を決めるべきだ」とおっしゃっていましたが、まさしく そのとおり。
つまり“人生設計とはトータルで描くものであり、全部を一度に得るために立てるものではない”と明確に自覚しておく。これがリスク・マネージメントの基本になると思われます。これは男性ならば「サラリーマンと経営者のスタンスを一度に叶えるには、出世して取締役になるしかない」と考えるだけでなく、一時期 サラリーマンをやって、その後 退職してから経営者になるといった道筋だってあると想像することだったり、それが女性なら「子育てと家事と仕事の両立ではなく、最初からすべてのバランスを目算して、それぞれの時期で重点を置くべき点を考慮したライフプランを立てておく」といった感じになるかもしれません。
すなわち、選択を単一的にして、その場の状況に応じ臨機応変に生活してるような“行き当たりばったり”はやめて、あらかじめ外枠の大きなガイドラインを設定したうえで、その中身をその都度 詳細化していけるような生き方を学ぶということになりますが、その際には当然「何ためにそうするのか? といった目的」を明確にしておく必要がありますし、同時に「その時期ごとに、どこへ重きをおき、何をしていくのか? という時間設定」も決めておくべきなのです。
もう気づきのように、上記の二点【目的と時間設定】がないと、すべてが その場しのぎの人生で終わってしまいかねません。なぜなら“はっきりしていないものには リスクの取りようさえない” したがって それでは自然発生的に すべてを一度に手にしようとしていることと何も変わらなくなってしまう。つまり“何も決めないことこそが最大のリスク”であり、きちんと自分の人生を自分で決めるために何を学ぶのか? が最も重要になってくるように思われます。
シーナ・アイエンガー/コロンビア大学 ビジネススクール教授。クリスティーヌ・ラガルド/フランスの政治家、弁護士。国際通貨基金(IMF)専務理事。ティナ・シーリグ/スタンフォード大学 アントレプレナーセンターのエクゼクティブディレクター。