かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

ストーカー?!

2008年04月07日 | 昼下がりの外来で
「センセイ、Sさんは要注意ですよ!ストーカーになりそうだったから、阻止しときました」

禁煙外来についていたナースが、なにやら物騒なことを言う。

『えっ?なになに?!』

先ほど帰ったSさんのことらしい。
2回目の受診の際に、ナースに禁煙の励みにするからとアタシの写真を所望したらしい。

「そんなのありません!ってはっきり断っときました。危ないですよネエ」

写真を所望されたのはこれが初めてじゃない。
ときどきこういう人はいる。
それだけ禁煙は不安を伴うもので、心の支えが必要とされているいうことなのだろうということにしておく。

Sさんは他の病院での禁煙治療を受けた経験がある。
けれどそこではニコチンパッチをただ処方されただけで、サポートがまったくなかったそうで、「だから禁煙できなかった」と怒り心頭で2ヶ月前ウチの禁煙外来へやってきた。

仕事を数年早く退職し、昔から好きでやっていた手品をあちこちで披露してまわっている。

「孫の世話なんかしてても、人生の悦びなんて感じないですよ!長生きしたいなんてこれっぽっちも思わないです。人の世話になんかなりたくないし、年寄りは社会の邪魔者だと思ってますから。あと5年も生きられればいいと思ってます」

だけどタバコはやめたいのだそう。

「ここのセンセイはピカイチだって評判を聞いて予約とりました」

こう言われちゃうと、素直ぢゃないアタシは過剰に反応してしまう。

『あの先生だったからダメ、このセンセイならきっと大丈夫・・・と禁煙できるできないを人のせいにしてはダメですよ』と初顔合わせで一喝してしまった。

やはり医者と患者も人間同士。
相性というのがある。
内心Sさんの禁煙をうまくサポートできるかなあと思っていたけれど、まあまあ順調に禁煙は続いている。
けれど、もう今日で受診は最後という話をしているのに、Sさんはスッキリしていない様子。

「ここに来なくなると思うと不安なんですよ・・・」

ここで優しい顔をするとダメになるパターンと読んだ。

『何言ってるんですか。もっと自信を持ってくださいよ。今では以前と違って自分で自分をきちんとコントロールできるようになったわけだし、手品だってタバコ吸わなくても失敗しないことがわかったでしょう?』

「ハイ。あとはタバコを買わない、もらわない、だけですから・・・」

鳩を出す手品が得意というSさん。
これからの人生を大いに楽しんでくださいよ。





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