かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

誰がためにボタンは押される

2017年12月11日 | 昼下がりの外来で

ちょっとやっかいなことに取り組む際に大切なのは、モチベーションをいかに上げるかということだと、常々思う。

自分のやる気スイッチはどこにあるのか?

スイッチのボタンはどうやったら押せるのか?

ボタンにはアメリカの核爆弾みたいに、鍵が付いているかもしれない。

そうなると、なかなかボタンは押されにくい状況にある。


今日、禁煙治療に来た患者さん。

人は見かけで判断しちゃいけないと思うが、診察室に入ってきたその人は、まるで世捨て人かと見まごう風体で、なんだかちょっと頑固そうで、とっつきにくい感じのする人であった。

けれど話してみれば、スムーズに会話ができ、こちらが発した軽い冗談にも笑ってくださり、和やかに治療の相談がすすんだ。



『どうして禁煙しようと思ったのですか?』

帰りがけにサラリと聞いてみた。


「飼っている犬のためです」

『はっ?! 犬のため?』


「13歳の犬がいて、毎日一緒に寝てるんですが、そいつよりも先には死ねないと思ったんです。だから、酒もタバコもやめて、健康的な生活をして病気にならないようにしようと、一大決心しました! 家族より犬のためです(笑)」


『それはそれは! お犬様もきっと嬉しいでしょうねえ』


「外で吸ったって、タバコの臭いは服とかにつきますよね。今まで申し訳なかったなって思います」

『ですね。』

 

やる気スイッチを押してくれたお犬様に感謝である。

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