ヱビスビール記念館で、夏目漱石の小説に恵比寿ビールが登場するという展示が有りました。
それは『二百十日』です。文庫本を引っ張り出してみました。
1906年に掲載された小説には確かに恵比寿が登場します。そのまま書き出してみます。
「・・・ 姉さん、ビールも序で(ついで)に持ってくるんだ。玉子とビールだ。分ったろうね」
「ビールは御座りまっせん」
「ビールがない? ― 君ビールはないとさ。何だか日本の領地でない様な気がする。情けない所だ」
「なければ、飲まなくっても、いいさ」と圭さんは又泰然たる挨拶をする。
「ビールは御座りませんばってん、恵比寿なら御座ります」
「ハハハハ愈(いよいよ)妙になって来た。おい君ビールでない恵比寿があるって云うんだが、その恵比寿でも飲んでみるかね」
「うん、飲んでもいい。 ― その恵比寿はやっぱり壜に這入ってるんだろうね。姉さん」と圭さんはこの時漸く下女に話しかけた。
「ねえ」と下女は肥後訛りの返事をする。
「じゃ、ともかくその栓を抜いてね。壜ごと、ここへ持って御出」
「ねえ」
下女は心得貌に起って行く。・・・
地方では『恵比寿』がビールの代名詞だった、いやビールそのものの名称だった時代を示す会話ですね。
明治三十九年(1906年)と言うと 八幡では製鐡所に火が入って5年、日露戦争の終戦から1年の頃です。
それは『二百十日』です。文庫本を引っ張り出してみました。
1906年に掲載された小説には確かに恵比寿が登場します。そのまま書き出してみます。
「・・・ 姉さん、ビールも序で(ついで)に持ってくるんだ。玉子とビールだ。分ったろうね」
「ビールは御座りまっせん」
「ビールがない? ― 君ビールはないとさ。何だか日本の領地でない様な気がする。情けない所だ」
「なければ、飲まなくっても、いいさ」と圭さんは又泰然たる挨拶をする。
「ビールは御座りませんばってん、恵比寿なら御座ります」
「ハハハハ愈(いよいよ)妙になって来た。おい君ビールでない恵比寿があるって云うんだが、その恵比寿でも飲んでみるかね」
「うん、飲んでもいい。 ― その恵比寿はやっぱり壜に這入ってるんだろうね。姉さん」と圭さんはこの時漸く下女に話しかけた。
「ねえ」と下女は肥後訛りの返事をする。
「じゃ、ともかくその栓を抜いてね。壜ごと、ここへ持って御出」
「ねえ」
下女は心得貌に起って行く。・・・
地方では『恵比寿』がビールの代名詞だった、いやビールそのものの名称だった時代を示す会話ですね。
明治三十九年(1906年)と言うと 八幡では製鐡所に火が入って5年、日露戦争の終戦から1年の頃です。