11日10時15分、ユナイテッドシネマ豊橋18スクリーン。
「宇宙人ポール(原題:PAUL)」
[あらすじ]
英国人の駄目駄目コンビ、SF作家のクライヴとイラストレーターのグレアムは、アメリカのコミコン(コミック・マーケットだが、会場は日本のコミケよりはSF大会に近い)へ参加した。
憧れのアメリカのコミコンに参加して、その後はUFOゆかりの地を次々に巡るという夢のRVの旅だ。ところが、エリア51あたりで、ポールと名乗る宇宙人をひろってしまい・・・。
~
さて、映画が始まり、羨ましいくらいにSFちっくなコミコンのシーンが映った時、唐突にあのネコを踏んづけたようなヴォーカルが聴こえてきた
ジ・オンリーワンズの「アナザーガール・アナザープラネット」だ♪
そうかこれか~!この映画だったのか~!
独特のサウンドが、コミコンのコアだけど活気のある雰囲気にとてもよく似合っているので、これは良い選曲だったと妙に共感してしまった。
その後も、様々なシーンで、いい感じの音がしばしば流れてくるので、洋楽好きとしては、ニヤニヤすること頻りである。
RVを運転しているクライヴが、ELOの「ドント・ブリング・ミー・ダウン」を流しながら、歌おうぜとグレアムを誘い、二人がご機嫌で歌いだすシーンでは、スクリーンのこちらでも一緒に歌いたくなる衝動にかられるし、アメリカ在住60年で完全にアメリカナイズされている宇宙人のポールは、マーヴィン・ゲイがお気に入りで、三人で踊りだすシーンも楽しい。
他にも、BGMに、トッド・ラングレン、THE B-52'sなどが使われ、「ショーン」同様、この映画は選曲が単純明快で面白い。
ちなみに、本劇中2曲も使われたELOは、英国では、初期のロックンロールや宇宙的に響く分厚いサウンドが素直に愛されている存在だと思うが、日本ではDAICON(SF大会が大阪開催される際の呼称)のオリジナルアニメに2回使用されて以来、ややSFヲタ系との認識があるアーティスト扱いされるようになり、「電車男」で、やはり「トワイライト」が使用された後は、そのイメージがより定着してしまったような気がする。(ELOファンとしては、些か心外だが…)
~
さて、この「宇宙人ポール」、早い話が英国製今世紀版「E.T」だと言える。
今世紀版「E.T」といえば、本家のスピルバーグ氏がプロデュースした「スーパー8」が昨年の夏に日本でも公開されたが、同じような「E.T」系作品でありながら、この英国製「E.T」にスピルバーグ氏は気を悪くするどころか、自ら声で出演していた。
まさかのスピルバーグ氏が、劇中でポールと、電話で意味深な会話を交わすシーンがあるので、これは要チェック。
(会話の内容は、映画を見てのお楽しみ・・・ということで。)
出演といえば、「グリー(Glee)」のドSなスー先生ことジェーン・リンチが、SFマニア憧れの“リトル・エイリアン・イン”の女主人として、女性らしいいでたちで登場している。
そして、あのSF界の女帝も堂々登場するので、それがこの作品の存在価値をよりビッグにした気がする。
全編が「未知との遭遇」などのSF映画への熱きオマージュに満ち溢れ、SF系の小ネタが満載な点も見逃せない。
クライヴは度々クリンゴン語を発するし、なにげにスターウォーズの挿入曲が演奏されるし、コミコン参加者のコスプレも、主人公のTシャツの柄も、アレにもコレにもソレにも小ネタが・・・(笑)
もちろん、そのテの知識がない若い子でも十分に楽しめる内容だけど、そのテの世界に慣れ親しんできた大人には、まるでSFテーマパークで遊んでいるようなワクワク気分になれる、そんな奥深い作りになっている傑作映画だった。