Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/27(土)三大協奏曲/ヨコスカ/上村文乃:ドヴォルザークVc協/鈴木愛理:メンデルスゾーンVn協/田村 響:ラフマニノフP協2番

2018年01月27日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ
第50回記念演奏会「三大協奏曲」


2018年1月27日(土)16:00〜 よこすか芸術劇場 S席 1階 A・A列 16番 4,950円
指 揮:高関 健
チェロ:上村文乃
ヴァイオリン:鈴木愛理
ピアノ:田村 響
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:戸澤哲夫
【曲目】
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104(上村)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64(鈴木)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18(田村)

 横須賀芸術劇場で2000年に始まった「フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ」というリサイタル・シリーズがあって、才能があり将来性が認められる若手の音楽家を支援するためのコンサートを開催し続けてきた。通算50回目の開催にあたり、過去に出演した中から現在活躍も著しい3名のアーティストが選ばれ、「三大協奏曲」として開催されることになった由。
 横須賀は私にとってはかなり遠方なので、このシリーズについてはまったく知らなかったのだが、三大協奏曲のコンサートともなれば情報も入ってくる。出演者と曲目を見て、スケジュールをすぐに確認してチケットも確保した次第である。何しろ、私にとってはお馴染みの上村文乃さんがドヴォルザークのチェロ協奏曲を(久し振りに)演奏するというし、鈴木愛理さんがメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を、田村響さんがラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏するという豪華プログラム。これを聴き逃してはいかにも惜しい。


左から、上村文乃さん(Vc)、田村響さん(Pf)、鈴木愛理さん(Vn)。

 文乃さんのチェロは、自由度が高い。テンポ感やフレージングを自在に操り、ソリストとしてのスタンスをしっかりと固めて、ご自身の解釈と感性をそのまま表現してくる。その点では妥協はない感じ。ただしオーケストラとぶつかるのではなくて、1対1で向き合ってより高い次元の音楽へと昇華させようという前向きの意志が感じられるのである。音質は一言で言えば「明瞭」。基本的には明るめの音色で艶やかな質感を持つ。音の立ち上がりがキリッとしているし、音が平板ではなくしなやかに流れるような、造型がハッキリしているイメージだ。そして今日、あらためて感じたのは、スケール感が増したこと。音楽が一回りも二回りも大きくなったように感じた。文乃さんのドヴォルザークを聴くのは何回目になるだろうか。だんだん角が取れて来ている一方で、豊かさが増しているような演奏だったと思う。

 鈴木愛理さんを聴くのは、2011年12月28日の「第九と四季」以来2度目。聴く側としてはまだ特定のイメージが固まらない段階で、どいうったタイプの演奏家なのかが掴みきれない。メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」という誰でも知っている名曲に対して、愛理さんは真正面から受け止め、非常に素直に、端正に、この曲のあるべき姿を表現しているという印象だ。その解釈はスタンダードで、特に変わったところがあるわけでもなく、王道を行くものである。つまり、普通に演奏しているのだが、それがまた実に上手いのである。艶やかでまろやかな音質は聴いていても心地よいし、造型が非常にシッカリしているのでスタンダードな解釈と表現であっても単調な感じはないし、演奏自体のクオリティは高く感じられる。高関健さんのオーケストラ・ドライブも実に的を射たもので、この名曲をスタンダードのまま高品質の音楽に仕上げている。少なくとも、マイナス要素がまったく感じられない、とても聴きやすい演奏であった。

 田村 響さんのラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。文乃さんと愛理さんのために最前列を取ったので、ビアノ協奏曲を聴くにはツライ位置になってしまった。ところが田村さん、かなり抑えめの弾き方で、さほど聴きづらいことはなかった。逆にピアノの正目で聴いているので、すべての音が聞こえてくる。田村さんのピアノはとても丁寧で、ディテールのニュアンスまでもシッカリと作られている印象だ。強く押し出すこともなく、全体的にはやや速めのテンポ設定とスムーズな流れの中で、甘美で感傷的な主題を描き出している。その意味では彼もスタンダードな解釈で、この名曲に臨んでいるということになる。強烈な印象を残すようなタイプの演奏ではないが、楽曲の持つ世界観をストレートに表現しているので、聴いていても安心感があった。

 結局3曲ともなかなか素敵な演奏となり、十分に満足のいくものだったと思う。東京湾をぐるりと回って来なければならないので横須賀はさすがに遠かったが、それでも来て良かった、そう思える素敵なコンサートだったといえる。
 終演後には、3名のソリストによるサイン会も開催された。せっかくここまで来たので、私も並んでプログラムにサインをいただいた。




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1/26(金)日本フィル/東京定期/アレクサンドラ・スムのシベリウスVn協奏曲とコバケン渾身のブルックナー交響曲7番はちょっと残念

2018年01月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
日本フィルハーモニー交響楽団 第697回 東京定期演奏会《第1夜》

2018年1月26日(金)19:00~ サントリーホール A席 1階 2列 18番 3,500円
指 揮:小林研一郎[桂冠名誉指揮者]
ヴァイオリン:アレクサンドラ・スム*
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
ゲスト・コンサートマスター:徳永二男
【曲目】
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47*
《アンコール》
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 より「アンダンテ」*
ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB107

 ゲスト・コンサートマスターに徳永二男さんという大御所を迎えて、日本フィルハーモニー交響楽団の東京定期演奏会を桂冠名誉指揮者の小林研一郎さんが振る。喜寿を迎えたコバケンさんを記念してのブルックナーの交響曲第7番だ。しかもソリストには人気のヴァイオリニスト、アレクサンドラ・スムさんを迎えてのシベリウスのヴァイオリン協奏曲。何とも豪華な定期演奏会となった。
 最近好調を堅持している日本フィルだけに、期待も一入で出掛けたのだが、演奏の方は・・・・正直に言えば少々残念なものになってしまったようだ。いや、演奏自体は良かったと言えるが、指揮の方がいささか問題を残すカタチとなっていたと思う。
 プログラムはシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」とブルックナーの「交響曲 第7番」の2曲で、コンサートとしてはやや長尺の方になるだろう。

 シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」では、スムさんのテンポ感とコバケンさんのテンポが合っていないように思えた。オーケストラだけの部分はやけにテンポが遅くドロドロとドラマティックに持っていこうとする。一方でカデンツァの際のスムさんはかなり速いテンポで超絶技巧的に押し出したりする。だから両者が合わさる部分ではスムさんの側にイライラ感が募るようなところがある。どうも最近のコバケンさんはテンポが遅くなって来ているようだ。もちろんそれでも間延びした感じなどは全くないのだが、協奏曲の際は、若手のソリストとはテンポ感が合わないことが多くなってきている。今日も終始そんな感じなので、スムさん側が不完全燃焼だったのではないだろうか。

 後半のブルックナーの「交響曲 第7番」は、日本フィルの濃厚なサウンドと質感の高い演奏は、聴き応え十分といったところ。ただし、コバケンさんの音楽作りがいささか重厚に過ぎたといった印象。全体的にテンポが遅めの設定で、オーケストラを十分にならしているのは良いが、やや冗長に感じられてしまう。音量もたっぷりと出してドラマティックに盛り上げて行くのだが、やややり過ぎな感が強い。つまり壮大で劇的なブルックナーになっていて、信仰の領域があまり感じられないのである。ブルックナーの音楽はピュアな精神的な境地が描かれ、天から目映い光が降りてくるイメージ。純音楽ではあるが、明らかにキリスト教の世界観が背景にあるわけで、標題性ではなく精神性の音楽である。コバケンさんの音楽はある意味で人間味が強く、極端な言い方をすれば俗っぽいところがある。世俗の負の要因を捨て、アタマを真っ白にして聴いていれば、やがて光りが降りて来る・・・・ことはなかった。
 あくまで人間くさいコバケン節のブルックナーであったが、演奏自体はかなり高品質だったと思う。金管も木管も各パートの音色も質感も高いレベルで、しっとりと厚みのある弦楽と混ざり合う日本フィルのアンサンブルとサウンドは、オーケストラの醍醐味でいっぱいだ。

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1/25(木)二期会モーニングディーヴァ/高品綾野&中川香里/次世代のスターが若さ溢れる瑞々しい歌唱

2018年01月25日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第15回 二期会モーニング ディーヴァ、ディーヴォ
-二期会新星トップ6名による、ときめきのデビューコンサート!


2018年1月25日(木)11:00〜 Hakuju Hall 自由席 A列 7番 500円
ソプラノ:髙品綾野
メゾ・ソプラノ:中川香里
ピアノ:木下志寿子
【曲目】
ドリーブ:歌劇『ラクメ』より「マリカよ、いらっしゃい~ジャスミンが咲くドームへ」(花の二重唱)(高品/中川)
朝岡真木子(詩:西岡光秋):花のなみだ(高品)
マーラー:ハンスとグレーテ (中川)
マーラー:ぼくの歌を覗きこまないで(中川)
プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』より 「私の名はミミ」(高品)
ロッシーニ:歌劇『チェネレントラ』より「悲しみと涙のうちに生まれて」 (中川)
J.シュトラウス:喜歌劇『こうもり』より「チャールダーシュ(故郷の歌を聴けば)」(高品)
R.シュトラウス:歌劇『ばらの騎士』より「光栄にも気高く美しき花嫁に」 (高品/中川)
《アンコール》
 ドリーブ:カディスの娘たち(中川)
 オヴァーレ:青い鳥(高品)
 木下牧子:『愛する歌』より「海と涙と私と」(高品/中川)

 日本最大のオペラ団体、「二期会」のオペラ研修所を優秀な成績で修了し、この後晴れて二期会会員としてデビューすることになる若手のオペラ歌手たちによる「二期会モーニング ディーヴァ、ディーヴォ」シリーズ。Hakuju Hallで開催され、午前11時から1時間のコンサートである。毎回2名の新人歌手によるデュオ・リサイタルの形式で、今回はソプラノの高品綾野さんとメゾ・ソプラノの中川香里さんがの登場となる。


《左がメゾ・ソプラノの中川香里さん、右がソプラノの高品綾野さん》

 といっても、このシリーズを聴くのは初めて。何しろ平日の午前11時からだし、自由席だから良い席を確保するには早く行って並ばなければならない。それができる環境の人なら、500円のワンコインで楽しめるコンサートなので、オペラ好きには将来のスターを発見する絶好のチャンスになる。今回はうまくタイミングが合わせられたので、初見参。したがって、高品さんも中川さんも初めてであった。早く行く予定だったのに電車のトラブルで出遅れ、会場に着いた時には既に開場していたが、偶然にも最前列に1席空いていてもぐり込むことができたのはラッキーだった。

 女声のオペラ歌手(しかも若手)の方たちはとっても華やか。新人とはいえ、目映いばかりの光彩を放っている。お二人とも見目麗しいだけでなく、やはり人の声の持つチカラは聴く者の心にダイレクトに届くからだろう。最前列で聴いていれば尚更だ。
 プログラムは、ソプラノとメゾ・ソプラノのデュオの曲としては、『ラクメ』の「花の二重唱」と『ばらの騎士』の「献呈の場」というのが嬉しい。後は歌曲を交えてオペラの名アリアを各自がソロで歌った。
 ソプラノの高品さんは、クセのないとても綺麗な声の持ち主で、清純な役柄が似合いそう。『ラ・ボエーム』の 「私の名はミミ」は儚げな雰囲気を持ちつつ叶わぬ憧れを切々と歌う情感が素敵。『こうもり』の「チャールダーシュ」では陽気で楽しげな雰囲気を弾けさせる。深くゆったりとしたヴィブラートに特徴がある。高音域の輝かしい伸びも若さが溢れていてなかなか良い感じだ。
 メゾ・ソプラノの中川さんはスラリと背が高く、深みのある声質のメゾっぽさよりも、ソプラノの音域をそのまま低くしたような感じで、華やかなオーラがあり主役を歌って欲しいイメージだ。『チェネレントラ』より「悲しみと涙のうちに生まれて」ではコロラトゥーラ系の軽快な装飾的な歌唱を披露し技巧の確かさも聴かせてくれた。声量もあるし、瞬発力もある。
 デュオで歌った『ばらの騎士』の「光栄にも気高く美しき花嫁に」では、青年貴族のオクタヴィアンというズボン約の役柄には中川さんはかなりピッタリのイメージを作れそう。あまり太くないメゾの声質が、倒錯的に美しい。是非、この役を舞台で実現して欲しい。その時は絶対に聴きに行くと思う。一方、高品さんの素直な声質もゾフィーの清純さをうまく表現していたし、高音域も力まずに出ていた。

 終演後は、お二人がロビーに出て来られたので、面識はまったくないのだが、少しお話しさせていただいた。オペラ歌手も日本ではなかなか仕事がない職種なので、将来の展望も厳しいものがありそうだが、お二人とも才能は十分に認められるので、後はチャンスを得てものにするしかない。私も機会があれば是非また聴かせていただきたいお二人である。彼女たちの将来に期待しよう。


《清純派の役柄が似合いそうな高品綾野さん》


《オクタヴィアンのイメージがピッタリの中川香里さん》


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1/25(木)東京フィル/サントリー定期/チョン・ミョンフン/鋭いキレ味・研ぎ澄まされた感性で超弩級の名演「幻想交響曲」

2018年01月25日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第900回 サントリー定期シリーズ

2018年1月25日(木)19:00〜 サントリーホール A席 1階 1列 21番 5,355円(会員割引)
指揮:チョン・ミョンフン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:近藤 薫
【曲目】
モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品11

 東京フィルハーモニー交響楽団の「第900回 サントリー定期シリーズ」は、名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさんが登場。プログラムはいたってシンプルに、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」と、ベルリオーズの「幻想交響曲」である。最近好調を維持し、毎回素晴らしい演奏を聴かせてくれる東京フィルだが、チョン・ミョンフンさんが指揮する時は、濃厚なサウンドにキレの良いリズム感が加わって、独特のエネルギーを発するような演奏になる。本日もまた、素晴らしい演奏であった。

 「ジュピター」は、モーツァルトの時代の音楽を再現すると言うよりは、明らかに現代の音楽環境に適した演奏スタイルを目座射たもので、やや重厚さを持ち、堂々たる構えの音楽を構築する。音色は濃く、豊かな響きを持ち、情感を豊かに現すロマン的な表現だ。殊更強調されているわけではないが、相変わらずリズム感が良く、またメリハリの効いたオーケストラ・ドライブだ。第4楽章の緊密な構造感の中で疾走する感覚などは見事としか言いようがない。ただ、サントリーホールの豊かな響きの中では、音が大きく広がり若干キレ味が鈍くなってしまっている印象を受けた。

 「幻想交響曲」は、マエストロのフランスでの豊富な実績やオペラ分野での力量が遺憾なく発揮され、このような標題音楽系の曲の描き方は実に上手い。まるで元気付随音楽のように、ストーリーを雄弁に語り、その場の情景をリアルに描いていく。分厚く濃厚なサウンドを持つ東京フィルの音が、一段と色彩感を帯びている。例のイデー・フィクス(ライト・モチーフの原型)は人の息遣いを感じさせるように旋律を歌わせ、オーケストラの全合奏になるとパンチを効かせたドラマティックな演奏でホールの中が劇場と化したような雰囲気で満たされる。チョン・ミョンフンさんの指揮は、内に秘めたる激情を感じさせ、エネルギーが爆発スレスレまで膨らむ。そんなスリリングな演奏であった。まあ、文句の付けようのない素晴らしい演奏だったと思う。

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1/23(火)Kissポートクラシック/ラヴェル:ピアノ協奏曲(開原由紀乃)と千住明の歌劇『万葉集』(小林沙羅・谷口睦美ら)

2018年01月23日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
フレッシュ名曲コンサート
第26回 Kissポートクラシックコンサート


2018年1月23日(火)19:00〜 サントリーホール S席 2階 LB3列 9番 3,800円
指 揮:大友直人
ピアノ:開原由紀乃*
ソプラノ:小林沙羅**(額田王)
ソプラノ:隠岐彩夏**(十市皇女)
メゾ・ソプラノ:谷口睦美**(鏡王女)
テノール:吉田浩之**(中大兄皇子/天智天皇)
バリトン:福島明也**(大海人皇子/天武天皇)
管弦楽:東京交響楽団
合 唱:ミナトシティコーラス
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
【曲目】
千住明:Our Home Port(Kissポート財団設立20周年テーマ曲)
ラヴェル:ビアノ協奏曲 ト長調*
千住明:歌劇『万葉集』〜明日香風編〜(改訂版2011/台本: 黛まどか/演奏会形式)

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団(Kissポート財団)が毎年開催している「Kissポートクラシックコンサート」が、公益財団法人東京都歴史文化財団(東京文化会館)が主催して東京都内各地で開催する「フレッシュ名曲コンサート」シリーズと兼ねるカタチで開催された。

 「フレッシュ名曲」は「東京音楽コンクール」の上位入賞者に演奏機会が与えられて、在京のプロ・オーケストラと協奏曲を演奏するプログラムが組まれる。今回は大友直人さんの指揮による東京交響楽団のコンサートとなったわけだが、港区が共催のため会場がサントリーホールという贅沢なものとなった。ソリストとして共演するのは、2016年の「第14回東京音楽コンクール・ピアノ部門」第3位入賞の開原由紀乃さんだ。

 プログラムの前半は、開原さんをソリストに迎えてのラヴェルの「ビアノ協奏曲 ト長調」。いつもとは違って、2階のLB3列という席で聴いたので、かなり聞こえ方が違うこともあって、いつもとは少々違った印象を持った。開原さんの演奏は、室内楽で何度か聴いているが、「東京音楽コンクール」の本選会は聴かなかったので、協奏曲を聴くのは初めてである。その意味では、ラヴェルは聴く上でも難しいところがある曲だ。もともと極めて「感覚的」な曲であるし、ピアノもキラキラと煌めくものの明確な主題を独奏する部分が少ない。どうもピアノがオーケストラに埋もれがちになる、そういう曲なのだと思う。だからピアノとオーケストラのバランスという点では、2階の席ではピアノが少し弱く感じる。開原さんのビアノは、キラキラとした透明感があり、とても美しい響きと表現を持っているが、全体の調子としては室内楽的な演奏のタイプであったように感じた。ここでは小編成になる東響も、もともとパワフル名演奏をするオーケストラではないので、全体的に美しいけれども大人しい印象の演奏であった。

 一方、プログラムの本編では、港区生まれの作曲家、千住 明さんのオペラ『万葉集』の「明日香風編」を演奏会形式で演奏する。この『万葉集』というオペラは、元々は2009年に「明日香風編」が初演され、2011年には「明日香風編」の改定と、続編となる「二上山挽歌編」が作曲された。いずれも小ホール向けで室内オーケストラ仕様の作品だった。それらがフル・オーケストラ版に拡大編曲され、2013年1月13日に東京オペラシティコンサートホールで改訂版初演された。東京交響楽団の定期シリーズでのことである。ソリストも今回と同じであった。私はその時に聴いていて素晴らしい作品だと思い、ぜひまた聴きたいと思っていた。その後再演されたが、チケットを持っていながら家庭の事情で当日急に行かなくなってしまい、非常に残念な思いをしたと記憶している。だから今回は、「明日香風編」のみではあるが再び聴くことができて感無量であった。
 演奏の方は、千住さんの親しみやすく美しい音楽が、繊細なハーモニーのアンサンブルで描かれていく。やや力感が足りない印象だ。歌手陣では何といっても小林沙羅さんの歌唱が光る。もともとあまりクセのないキレイな声質であることは今や誰でも知っていることと思うが、日本語の発音が明瞭な歌唱になっているところが素晴らしい。オペラ歌手の皆さんは、とくにイタリアやドイツ・オーストリアなどに留学した人は、ヨーロッパの語法による歌唱が身に付いていて、かえって日本語がうまく表現出来ないことが意外に多い(歌曲は良いが、オペラの場合は・・・)。その点、沙羅さんは各国語の使い分けが上手く、日本語の歌唱も上手い。オペラだから声を張らなければ遠くまで届かないが、その上でも美しい日本語が生きていて、とくに『万葉集』の古典的で雅な世界観を強く、優しく表現していた。素晴らしい歌唱であったと思う。
 他の歌手陣はまあまあの出来、といったところか。
 合唱は、港区の主催で地元の「ミナトシティコーラス」という合唱団が合唱を受け持ったが、女声が多く男声が少ないというアマチュア合唱界の通例通りで、今ひとつピリっとしなかったような気がした。

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