「うん」
「うんー」 子供たちが口々に首肯するのを確認して、男がちょっと笑う――彼は十郎のほうに視線を向けると、
「呼んだ?」
「ああ、蘭ちゃんたちが来たからな――ヒナさんは?」
「ヒナ? アルカードさんが犬を連れてきて、あっちの庭でサヤとコトと三人で犬に夢中になってるよ」 十郎の質問にそう答え、トウヤと呼ばれた男が十郎の隣に腰を下ろす。十郎は隣に座った男をぞんざいに親指で示し、
「うちの息子の冬 . . . 本文を読む
*
マリツィカが目を醒ましたのは、翌日五時半のことだった。家が燃え落ちて焼け出され、極限まで疲弊していても、それでも普段の習慣通りに目を醒ます。皮肉なものだ。
そんなことを胸中でつぶやきながらまだ糊が効いて固いシーツを払いのけて上体を起こし、マリツィカは周囲を見回した。
入院病棟の四人用の大部屋、殺風景な病室の部屋に入ってすぐのベッドのひとつ。照明は落とされカーテンは閉じられて . . . 本文を読む