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「忠泰《デン》」
ベルトの腰周りにつけた超小型無線機の送信ボタンのホールドをはずしてからあらためて軽く押し込み、アルカードは神田忠泰を呼び出した。
「はい、師よ――音声はモニターしていましたが、御無事ですか?」
「健在だ」 アルカードはそう答えて、足元に視線を落とした。
足元で斬り斃された最後の吸血鬼の体が、音も無く塵へと変わってゆく――その光景から視線をはずして、アルカード . . . 本文を読む
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がらっと音を立てて引き戸を開けると、湿度の高い生暖かい空気が肌に触れた――ありがとう、また来てねーという柊の声に送り出されて店の外に出たところで、軒下にいたデルチャと香澄がそろってこちらを振り返る。
「アルカードは?」
「フィオを連れ出そうとしてます」 と、デルチャの質問にそう答えておく――パオラがリディアの介助をするぶんには両側に手摺のついた狭い階段は昇り降りがむしろ楽なのだ . . . 本文を読む