MARKETER’S BLOG【小太郎がゆく】

【小太郎がゆく】はマーケター小太郎がいろんなところで出会うさまざまなヒトやデキゴトについて等身大で描いていく日常見聞ログ

【小太郎がゆく】巻の七

2002年04月22日 | エッセイ【小太郎がゆく】
「小太郎がゆく巻の七」まえがき

前回はお酒がテーマだったため、多くの方からお酒に対する
思いや情報をお寄せいただきました。
お酒の話と聞いて黙ってはいられない(笑)皆さまが多く、
頼もしく、うれしく思います。深謝。

そんな中に「酒の色気のある飲み方」についての情報がありました。
ただし、残念ながら、まえがきでは紹介できない内容でしたので
お問合せいただいた方に、個別でご案内しようと思います(笑)。

それでは【小太郎がゆく】はじまり、はじまり。
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【小太郎がゆく】巻の七

「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」


◆一本の電話

「流通や外食のマーケティングの視点で
マンションの企画を提案してもらえませんか」

先月、酒席で名刺を交換した広告代理店の営業マンからの電話。

聞けば、マンション広告の企画がマンネリ化してきているので、
業界とは違った観点の提案が欲しいという。
広告主(ディベロッパー)へのプレゼンは十日後。
「食」と「住」、分野は違えども「人」や「市場」が主体であることに違いはない。

さっそくマンション予定地へ向う。
中目黒で東急東横線に乗り換え、ドア付近に立つ。
車窓を眺めながら、ある民俗学者を思い出した。


◆旅する巨人の、旅の心得

善十郎は、東京に旅立つ息子に語った。


「汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ。
田や畑に何が植えられているか、育ちがよいか悪いか、
村の家は大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうところをよく見よ。
駅へ着いたら人の乗り降りに注意せよ。
そしてどういう服装をしているかに気を付けよ。
また駅の荷置場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。
そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、
よく働くところかそうでないところかよくわかる」

この言葉に送られて旅立った息子『旅する巨人』宮本常一は、
旅についてこう語った。

「人に逢う旅であったといっていい。
そして私自身はよく調査にいくとか調査するとか、
調査地などといっているけれども、
実は正真正銘のところ教えてもらったのである」と。



◆東急東横線、とある駅の風景

午前八時の改札。仕立てのいいスーツに身を包んだパワーエリート、
初老の紳士、日経新聞を片手に足早にホームへ急ぐOL…。

一方で、カジュアルないでたちの大学生が改札を出る。

時計の針は正午。駅前のコーヒーショップの2階から広場を見下ろす。
路線バスから降車する人以上に目立つのは、タクシーから降り立つ人。
つい今し方も、入園式らしき母娘がタクシーから降りていった。

街を歩き再び午後七時の駅前。
改札を抜けて家路につく人波に、街へ繰り出す若者の姿が混じる。
夜の浅い時間帯でありながら、タクシー待ちの行列は二十人を切ることはない。
サラリーマンの中に、子どもを抱きかかえ、
スーパーの袋を提げた若いお母さんの姿も見える。


◆とある駅から、街の風景

駅前の広場から放射状に広がる小道を歩く。
クリーニング店のガラス張りの店頭には「二度洗いの店」の文字。
「コーヒー35種」に効能をうたったPOPを掲げるコーヒーショップ。
いずれも「こだわり」のある顧客へ訴えている。

吉野家の斜向いには行列のできるラーメン店「よってこや」、若い人でにぎわっている。

古くからの反物屋の静かな佇まいもあれば流行のライフスタイルショップもある。

住宅に目を転ずる。
手入れの行き届いた五葉松を擁する純日本風の邸宅には天然石の門構え。
打ちっぱなしのコンクリートのシンプルな質感をたたえた洋風住宅もある。
すぐとなりの更地は、よく見ると大谷石の石垣が境界に残る。
住宅地の新陳代謝もまた次の街並みをつくっていく。

◆コンセプトはノイエ

「ものすごく古くて伝統のあるものが、溜めに溜めて、
最後の最後に新しいものをフッと出してくるというような(中略)
そういう感覚をドイツ語では『ノイエ』というのだそうです」
(藤原和博著「『自分』プレゼン術」)

大正十五年に開設された駅を中心とした街並みは随所に充分な伝統を見せる。
そして、私大のキャンパスを抱える環境が、その伝統を常に新しいものに変えている。

歩きながら、街並みを見て、生活者を見て、実感した。

この企画のコンセプトは「ノイエ(neue)」で行こう。
このコンセプトに辿りついたとき、企画の大半が終わったと思った。

もうすぐ黄金週間。皆さんもよき発見の旅を。

次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!

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Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
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