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春夏秋冬。

その時々で思いついた妄想文をつらつらと。
二次創作中心。カテゴリのはじめにからどうぞ。

【なると】弟の厨二病をどうにかしたいんだが【ちゃんねる】

2015年12月20日 00時18分48秒 | NARUTO妄想文
特殊設定:サスサク夫婦の子供に生まれ変わったオビト。オビトは記憶持ち。少年と青年時が混ざったような感じ。サラダちゃんはブラコン。ボルサラでオビリン。某巨大掲示板方式です。口調とかも微妙に掲示板方式に変えてます。子供世代には普通にパソコンあったから…。顔文字やらwwwやら出ます。苦手な方は要注意。基本ギャグです。



====


弟の厨二病をどうにかしたいんだが

1:名無しの忍
どうしたらいいの
2:名無しの忍
取り合えずコテハンとスペックよろ
3:野菜
コテハンってこれでいいのかな
とりまスペック
野菜:20代。女。黒髪眼鏡。とある国の里の長の補佐的な何かの仕事してる
弟:10代前半。この間中忍になったばっかし。黒髪黒目。基本無表情なのでたまに笑った顔が天使
4:名無しの忍
野菜は弟大好きなのは分かった
5:名無しの忍
10代ならまだ仕方ないんじゃね?
6:野菜
>>4 歳が離れてるからかな。凄く可愛い
>>5 それが小さい頃からずっとなの。いい加減弟の将来が心配
7:名無しの忍
小さい頃からって…
8:名無しの忍
まぁ具体例頼むわ
9:野菜
何かにつけて自分は大罪人だ と言う。こんなに幸せでいいのか と自問自答しやすい。すり抜けできると思い込んで壁や電柱にぶつかる。本当の自分とは何か…と考え込む。何ともない筈の右半身が疼く…とか
10:名無しの忍
うわぁ…
11:名無しの忍
これはまた……
12:名無しの忍
中忍ならぬ中2
13:名無しの忍
邪気眼発症まであと少し
14:野菜
>>13 邪気眼?󾀕󾀕眼ならすでにあるけど
15:名無しの忍
諦めろ野菜。お前の弟はもう無理だ
16:野菜
邪気眼ぐぐった。これはない…と信じたい。俺に構うな、とかはまぁまぁ言う。構い倒すけどね
○○眼は私も持ってる、一族特有のものだから
17:名無しの忍
血継限界?
18:名無しの忍
おい、特定やめろ。野菜もあんまり個人情報出さない方がいいぞ
19:野菜
ごめん。ありがと
20:名無しの忍
話戻すぞ。すり抜け云々は中忍として大丈夫なのか?
21:野菜
あ、それは大丈夫。これは弟がまだ5歳くらいの話。流石に今はないから
22:名無しの忍
5歳!?すり抜け話以外はそれが今までずっと続いているのか?
23:野菜
そうなの。だから心配で弟は2歳で初めて喋ったんだけど、それが「鬱陶しい」だった。ママは卒倒した
24:名無しの忍
なんかマユツバくさくなってきた…
25:名無しの忍
釣り?
26:野菜
釣りじゃないよ。まぁ信じがたいかもしれないけど
27:名無しの忍
何かきっかけとかないのか?
28:野菜
よく分かんない…。とにかく弟はずっとこんな感じ。普段は優しくて困ってる人を見たら手を貸さずにはいられない良い子。だがそのせいで遅刻魔。年寄りに人気が高い。仏頂面はパパに似たのかも。パパも滅多に表情変わらない
29:名無しの忍
そんな奴が鬱陶しいなんて言うか?
30:野菜
言ったのはママの先生に対してなの。そういえば弟はその先生に対してだけツンデレだな。家族に対してはそんなことない
31:名無しの忍
ツンデレkwsk!!
32:名無しの忍
ツンデレキタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!
33:野菜
何この流れ…その先生は弟の名付け親でもあって、まぁすっごく可愛がってくれてるんだけど、弟はそれが気にくわないらしい

「弟ー!遊びにきたよ~♪」
「帰れ」

「弟!ラーメンでも食べに行かないか?」
「……いい」
「N(ママの友達で里の偉い人。超カッコよくて弟もその人のことは好きらしい)もいるぞ」
「…………行く」(眉間にシワ)

「弟!」
「うるさい、クズ」
「まだ何も言ってないけど!?」

「弟!お前もそろそろ年頃だから俺の愛読書を貸してあげよう」(18禁小説)
「うちの愛息子に何見せとんじゃー!!」(ママの鉄拳で先生は星の彼方)

「弟!たまには一緒に風呂でも入るか!」
「クズカゴにでも入ってろ」

こんな感じ?

34:名無しの忍
ちょwww先生wwwwww
35:名無しの忍
弟wwwwwwクズ好きだなwwwwww
36:名無しの忍
ママも良いキャラだなw
37:野菜
なんか子供扱いされるのが嫌みたい。でもたま~~に二人でこっそり話してて、私達家族にも入れないような雰囲気作ってる。弟は切なげに笑ってて胸が痛む。くそ先生むかつく
38:名無しの忍
野菜も結構なブラコンだなwww
39:名無しの忍
┌(┌^o^)┐ホモォ
40:名無しの忍
本日のホモスレはここですか?
41:名無しの忍
ホモは帰れ
ママの先生ってことは見た目じじまごなんだろうが…不思議な関係だな
42:野菜
多分弟はノンケ。好きな子もいる
>>41 弟はあまり子供らしくないから…同年代と遊んでるとこはほとんど見たことがないな。大体年寄りと話している
43:名無しの忍
将来介護士になれるな
44:野菜
あー…実は忍よりむいてるかも。弟は優しすぎる
45:名無しの忍
何で忍一択?
46:野菜
そういう家系ってのもあるけど。ママが医療忍者でね。弟もそっち方面目指して頑張ってる
そういえば何で医療忍者?って聞いたときに「誰かが死にそうになっても今度こそ助けられるだろ」だって。弟マジ天使
47:名無しの忍
野菜www
48:名無しの忍
今度こそ ってのが気になるんだが
49:名無しの忍
何かトラウマでも?
50:名無しの忍
厨二発言もすり抜けと疼く云々抜かせばトラウマっぽい感じがしないでもない
51:野菜
やっぱり?私もそんな気はしてた。とにかく弟のマイナス思考っての?何とかしてやりたい
52:名無しの忍
( ;∀;)イイネエチャンダナー
53:名無しの忍
大罪人とか幸せでいいのかとか野菜の>>46発言見るに、弟は誰か助けられなかったんじゃね?
54:名無しの忍
おお!なるほど
55:名無しの忍
忍あるあるだな
56:名無しの忍
幼児の頃からか?野菜の発言見ると五歳にはすでに言ってたんだろ
57:名無しの忍
oh……
58:名無しの忍
やっとそれっぽかったのに
59:名無しの忍
弟が死にそうな誰かを助けられなかったとかあるのか?野菜
60:野菜
聞いたことないなー。任務内容は一々把握してないけど、厨二発言は忍になる前からだよ
61:名無しの忍
行き詰まって参りました
62:名無しの忍
一旦スペックまとめ弟:10代前半。この間中忍になったばっかし。黒髪黒目。基本無表情、仏頂面。優しい。年寄りに人気。遅刻魔。血継限界もち。先生にだけツンデレ。医療忍者。ノンケ。こんなものか?
63:野菜
天使がない
64:名無しの忍
wwwwwwwww
65:名無しの忍
ブwwラwwコwwンww
66:名無しの忍
弟:10代前半。この間中忍になったばっかし。黒髪黒目。基本無表情、仏頂面。優しい。年寄りに人気。遅刻魔。血継限界もち。先生にだけツンデレ。医療忍者。ノンケ。天使←new!
67:名無しの忍
www
68:名無しの忍
なぁ弟イケメン?
69:名無しの忍
俺も気になった!
70:野菜
んー…まぁ目が大きくて童顔だね。今よりもっと小さい頃は女の子に間違われることも多かった。可愛い顔立ちしてるけど、たまに色っぽい。弟のクセに
71:名無しの忍
イケメン確定
72:名無しの忍
やる気なくした…
73:名無しの忍
10代前半で色っぽいって何事
74:野菜
何か憂えてるな~ていうオーラ?あとは睫毛長いから伏し目がちになると影が出来てなんかエロい。ここはパパに似たのかな…。こういうのはうちの一族には多いらしいけど
75:名無しの忍
チラッ∥^o^)┐
76:名無しの忍
>>75 こっちくんな
ママよりパパの方が色っぽいのか?
77:野菜
うん
78:名無しの忍
即答www
79:名無しの忍
ママwwwwww
80:名無しの忍
まぁ自分の先生に鉄拳制裁するくるいだからなw男らしいママじゃないかww
81:名無しの忍
色っぽい一族か~いいな~囲まれたい
82:名無しの忍
男ですが
83:野菜
うちの一族はとにかく病的なくらい一途な奴が多いらしい。自分はよく分からないけど、まぁ初恋は成就させた
84:名無しの忍
ファッ!!?
85:名無しの忍
リア充か…末長く爆発しろ
86:名無しの忍
病的…ヤンデレか?トゥンク
87:野菜
>>85 ありがとう
誰が名付けたか知らんが愛の一族らしいよ
88:名無しの忍
愛の一族!?wwwwww
89:名無しの忍
愛の一族www
90:名無しの忍
あwwいwwの一族www
91:名無しの忍
他人事www野菜は淡々としてるなww
92:名無しの忍
弟くんも好きな子いるんだっけ
93:名無しの忍
ヤンデレ?
94:名無しの忍
おいおい…いい加減色んな属性持ちすぎだろう…
95:野菜
好きな子はいるよ。明言したことはないけど見てれば分かるくらいバレバレ。仮に花屋のすずちゃんとしよう。弟はヤンデレではない。むしろ大事過ぎて告白すら出来ないチキン
96:名無しの忍
手厳しいなwww
97:野菜
それこそ冒頭の発言だよ「大罪人の俺には彼女を幸せにする自信も資格もない」だと!!意地悪して「ならすずちゃんが誰かと結婚して子供生んで、あんた以外と家庭を持っても後悔しない?」って言ったら「それこそ俺が望む彼女の幸せだ」とか本気で言う!!あー腹立つ!!
98:名無しの忍
もちつけw
99:名無しの忍
やっと本題に戻ったな
100:名無しの忍
100げとーm9(^Д^)そもそも両思いなのか?
101:名無しの忍
そこ大事だよね
102:野菜
私が見る感じではすずちゃんも満更ではなさそうだけどね。すずちゃんは精神感応系の秘術持ち一族だから同じく忍で弟と同期、しかも同じ班。弟は医忍だけど、血継限界もあるし、火遁も得意だから結構突っ走ってしまうタイプ。自分の傷そっちのけで他人を癒したりして、すずちゃんはかなーり怒ってたことある。その時の会話の一部

「弟は自分を犠牲にし過ぎだよ…もっと自分を大事にしてよ」(涙目。超カワイイ)
「……ご、ごめん、すず。でも俺は…」(涙目のすずちゃんに狼狽える弟。赤面ひどい)
(チャクラ切れで自分を癒せない弟の傷の手当てをするすずちゃん)(うーん、ここママが知ったら医療忍者とは…と延々説教だな)(天使が二人いる)(すずちゃんが妹になってくれたらなー)(涙が零れたすずちゃんの目元を弟が拭う)
「ごめん、泣かせたいわけじゃないのに…」
「ほんとだよ。弟が傷ついたら、私悲しいよ…」
「俺は自分が傷つくよりすずが傷つく方が何倍も痛いんだ」
(真っ赤な目で弟を睨むすずちゃん)
「じゃあ私の気持ちは置いてけぼり?」
「え?」(弟、狼狽しすぎで見てられん(笑))
「心配になる。弟はふらっと何処かへ消えてしまいそうで」
「……ごめん」
「謝ってばっかりだね」(泣き笑いのすずちゃん)
「…………」(何か言え!ヘタレ!)
「ちゃんと見てるから。無理しないでね」(弟の手を握るすずちゃん)
このあとあんみつ食べに行ったらしい

103:名無しの忍
カーッペッペッ!
104:名無しの忍
完全二人の世界じゃねーか!!
105:名無しの忍
まじ爆発しろ
106:名無しの忍
これで付き合ってないとか
107:名無しの忍
青い春だなー……
108:名無しの忍
時折野菜の願望が混じってて笑えた。野菜どっから見てたんだよ
109:名無しの忍
これで>>97 は腹立つな
110:名無しの忍
すずちゃんマジ天使
111:野菜
ほんとヤキモキする。何で弟はこうなったんだろう。赤ん坊の頃から見てるのによくわからん
ってことで安価>>120
112:名無しの忍
安価キタコレ!!
113:名無しの忍
安価wwwいいのかwww
114:名無しの忍
弟に直接聞く
115:名無しの忍
すずちゃんに聞いてもらう
116:名無しの忍
先生に突撃する
117:名無しの忍
先生と弟を閉じ込めて会話を盗み聞きする
118:名無しの忍
すずちゃんと弟をデートさせる。そして実況
119:名無しの忍
弟のパンツうp
120:名無しの忍
仮面を着けて物影から「お前の罪は全て知っている」と脅す
121:名無しの忍
すり抜けを弟の前で演出する
122:名無しの忍
なんで右半身が疼くのか聞いてみる
123:名無しの忍
お、出たな
124:野菜
安価、ちょっとだけやってみたかった
>>120 仮面を着けて物影から「お前の罪は全て知っている」と脅す
おk!ちょっと行ってくる!仮面なら物置にあったような…
125:名無しの忍
行ってら~
126:名無しの忍
よりによって一番胡散臭いのになったなw
127:名無しの忍
パンツ惜しかった
128:名無しの忍
逝ってこい!
129:名無しの忍
待ってまーす
130:名無しの忍
保守

~少しの間保守&住人の弟談義~

267:名無しの忍
野菜遅いな~
268:名無しの忍
結構スレ消費したか?
269:名無しの忍
弟と先生の「戦場のボーイズラブライフ」が余計だった
270:名無しの忍
ホモォ持ち込むなよ
271:名無しの忍
やらないか
272:名無しの忍
弟はやらん!
273:野菜
ごめんなさい、遅くなった
274:名無しの忍
野菜きた!!
275:名無しの忍
・:*:・:(*゜Д゜*)キタコレ:・:*:・
276:名無しの忍
待ってました!!
277:名無しの忍
野菜ゆっくりでいいぞ
278:野菜
結構凝り始めたらキリがなかった。取り合えず物置にあったオレンジ色でグルグル模様な右目しか空いてない仮面があったから使ってみた。ママがハロウィンの仮装でつかったボサボサ頭の黒い長髪のかつらも使って、真っ黒いローブみたいなの着て、男の姿に変化してみたよ。チャクラの質は変えられないから、極限まで気配を薄くしてみた
279:名無しの忍
おおう…
280:名無しの忍
思った以上の凝りようだった
281:名無しの忍
弟の反応は?
282:野菜
ちょうど夕べ雷雨だったから雰囲気は充分。任務帰りで一人になった所を暫く後を付けていたんだけど、弟も途中で気付いたらしく私を撒こうと全速力で走るから、うっかり開眼して追ってしまったよ。里の外れ(実は廃墟がある。詳しく言うと里バレするのでいわないが、とある人々が虐殺された曰く付きの場所)まで追いかけて、諦めたのか弟は仁王立ちで私を待ってた。まだ私を撒ける程じゃないんだな~。実力的にはまだまだ私が上だ、と内心にんまり。
「何者だ?」
弟は警戒オーラ凄い。こんな弟初めて見たかもな。ここで安価
「お前の罪は全て知っている」
勿論声色も変えてるよ。弟は元々大きな目が零れそうなくらい見開いていたよ。その時雷が光って、多分仮面の穴から目が見えたのかも。もう言っちゃったから言うけど、うちの一族は特殊な瞳術遣い。見た目ですぐ分かるから、弟が「○○眼…!?」と驚いてた。あーこれはもうバレたな、と思ってすぐ姿を消した。
283:名無しの忍
これは…中々…
284:名無しの忍
本当にバレたのか?
285:野菜
じゃないかなー。あの目見られたら予測付くと思うんだけど。でも今日会って開口一番
「姉ちゃん、何か変わったことなかったか?くれぐれも怪しい奴には気を付けてくれ」
だってさ。なんか「まさか奴がまた蘇ったのか…?」とか言ってる
286:名無しの忍
厨二悪化してんじゃねーか!
287:名無しの忍
奴とは何ぞ
288:名無しの忍
多分弟気づいてないんじゃ…
289:野菜
家族なのに気付かれないのも寂しい
290:名無しの忍
演技力の勝利
291:野菜
嬉しくない
292:名無しの忍
中々前進しないな
293:名無しの忍
また蘇るって厨二じゃなかったら、限られないか?
294:名無しの忍
あっエドテンか
295:名無しの忍
エドテンで蘇ったやつなんて前回の大戦でいっぱいいるぞ
296:名無しの忍
でも目を見て思ったんなら…
297:名無しの忍
マダラ?
298:名無しの忍
えっ
230:名無しの忍
あっ
231:名無しの忍
じゃ、野菜の一族って
232:名無しの忍
まてまて確かに一番有名だが日向のやつとかもいなかったか?
234:名無しの忍
そうだな…
235:名無しの忍
何かごめん、野菜
236:名無しの忍
俺マダラ結構好き
237:野菜
あー…失言したかな…。まぁこれ以上余計なことは言わないでおこう。多分マダラだね (`・д・´)キリッ
238:名無しの忍
野菜www
239:名無しの忍
おまいすきだ
240:名無しの忍
マダラ嫌いじゃないよ。なんか憎めない
241:名無しの忍
柱間VSマダラとかたぎるよな
242:名無しの忍
俺は柱間派
243:名無しの忍
木遁いいよな
244:名無しの忍
九尾の口寄せとか最強だろ
245:名無しの忍
尾獣の擬人化 マダァ-?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン
246:名無しの忍
九尾が実はメスだったら…やばいな
247:名無しの忍
なにそれ素敵
248:名無しの忍
おまいら脱線しすぎ
249:野菜
でも弟はマダラと面識ないよ。私もだけど戦後生まれだし。パパとママはバリバリ戦時の人間だけど
250:名無しの忍
大罪人といったらマダラだよなー
251:名無しの忍
それかオビト、カブト、あとは暁面子?
252:名無しの忍
カグヤとゼツは?
253:名無しの忍
あいつら人間じゃないだろ
254:名無しの忍
生きている奴なら大蛇丸がいるぞ
256:名無しの忍
イタチ
257:名無しの忍
暁格好いいじゃん
258:名無しの忍
あのコートださくね?
259:名無しの忍
確かに異質だよな。抜け忍達で構成された組織なんて、よく五影が許してたもんだ
260:名無しの忍
時代が違うんだよ。あの頃五里は仲悪かったぞ
261:名無しの忍
サソリ好きだがすぐフェードアウトしたよな
262:名無しの忍
結局弟は何なのだ。謎が深まったぞ
263:名無しの忍
俺は最初の誰かを助けられなかった説をまだ信じてるんだが
264:名無しの忍
誰かまとめてくれ
265:名無しの忍
弟(俺は大罪人)
お前の罪を知っている(変装した野菜だが弟はマダラ?だと思った?)
マダラは弟の罪を知っている?
どういうことなの←今ここ
266:名無しの忍
あれ、野菜いるのか?
267:野菜
ごめん、いる
268:名無しの忍
どうかしたか?
269:野菜
さっき出た名前の人間と関係深いというか…弟が
270:名無しの忍
!?
271:名無しの忍
だれ?
272:野菜
ごめん、これ言うと特定されちゃうから言えないけど…ていうかもうされてるかもだけど、うん。半分以上私のせいでもある
273:名無しの忍
え!?
274:野菜
私が勧めたんだよね~…。元凶は先生だけど。関係深いといってもアレが同じなだけで直接の関わりではない。多分。あー…そのせいで大罪人とか言うのかな
275:名無しの忍
わけわかめなんだが
276:名無しの忍
またあの先生か
278:名無しの忍
野菜のせいでアレが同じになった?話の流れからして犯罪者と何かが同じってことだよな
279:名無しの忍
お前のせいじゃないよ、野菜
280:名無しの忍

281:名無しの忍
誰だ?
282:名無しの忍
でも弟がかなーり混乱気味になってたぞー。マダラに会った!!って半泣き。幻術!?それとも過去の自分を見たのか!?とか。こういうことだったのね
283:名無しの忍
関係者か?
284:先生
コテハンつけたよ
285:名無しの忍
先生!!!?
286:名無しの忍
噂の先生か!?
287:名無しの忍
先生キタ━━━ヽ(ヽ(゜ヽ(゜∀ヽ(゜∀゜ヽ(゜∀゜)ノ゜∀゜)ノ∀゜)ノ゜)ノ)ノ━━━!!!!
288:名無しの忍
皆の者酒を持てい!
289:先生
あらま、思ったより歓迎されてる?
290:名無しの忍
弟のツンデレはどうですか?
291:先生
そりゃ~少し寂しいけど…照れてるんじゃない?多分
292:野菜
どうしてここが
293:先生
ん?弟が最近姉ちゃんがパソコンばっかりいじってるって言ってたからさ。また目が悪くなるぞーって心配してたよ
294:野菜
流石天使。じゃなくて…理由になってませんよ。よくこのスレ見つけましたね
295:名無しの忍
野菜歪みないww
296:先生
冷静に弟の話聞いてたらね。󾀕󾀕眼と聞いたら限られるでしょ。パパ(笑)はこんなことしそうにないし…そうすると野菜しかいない。ちょっとパソコンの履歴をママに見せてもらったらビンゴ
297:野菜
勝手に履歴見たんですか!?
298:先生
家族用のパソコンでやってるからだよ。ちょーっとあれは弟が可哀想だよ
299:名無しの忍
弟にはバレなかったが話を聞いてた先生にはバレてしまったと…そういうことか
300:名無しの忍
先生に相談するってことは、普段ツンでもやっぱり仲良いんだな
301:先生
まぁね、親友だから
302:名無しの忍
へー!え!?
303:名無しの忍
見た目じじまごなんだよな?
304:名無しの忍
危険な香り
305:名無しの忍
援交?
306:名無しの忍
まさかペド…!!
307:先生
雷切ってあげようか?(ニッコリ)
308:名無しの忍
ガクガク(((( ;゜Д゜))))ブルブル
309:名無しの忍
冗談は置いといて…先生は弟の厨二発言についてどう思う?理由知ってるんだろ?
310:野菜
そうよ!知ってるなら教えて!
311:先生
ん~、困ったなぁ。はっきり言えるのは弟は嘘はついてない
312:野菜
そんなのは分かってる。あの子不器用だもん
313:先生
野菜はさ、前世って信じる?
314:名無しの忍
は?
315:名無しの忍
またマユツバ?
316:名無しの忍
いきなり胡散臭くなった
317:名無しの忍
壺は買いません!!
318:野菜
先生が胡散臭いのは前から
319:名無しの忍
野菜www
320:先生
キミタチね…まぁ信じない方が都合良いけど
321:名無しの忍
そう言われると信じたくなる天の邪鬼
322:先生
簡単に言ってしまえば弟は前世の記憶があってそれに苦しめられてるの。何でおかーさんの腹の中に諸々置いてこなかったのかね~
323:名無しの忍
はぁ…そうですか
324:名無しの忍
厨二病の方がまだ信憑性あるような…
325:野菜
それ本当に?
326:名無しの忍
野菜は何か思い当たることあるのか?
327:野菜
確かに弟は子供らしくないし、変に達観したような悟ったような所はある。でも気になるのはパパとママ含め先生達は前世の弟を知ってるのね?
328:名無しの忍
それ凄く最近になるんじゃないのか?
329:先生
そう。最近だからあんまり深く語りたくないんだよね。変な偏見で見られたくない
330:野菜
やっぱり!!何となく疎外感…
331:先生
ごめんね。でも君たち世代には今の弟を見てあげてほしいんだ。まぁ一番縛られてるのはあいつなんだけど
332:名無しの忍
弟は前世で何やらかしたんだ?
333:名無しの忍
先生よ、ここは匿名掲示板だし、マダラが好きとか言い出す奴もいるくらいの、変わり者しかいない。吐き出しちまえ
334:野菜
先生お願い!弟が苦しんでるなら助けたい。それが家族でしょ
335:名無しの忍
野菜…(´;ω;`)ウッ 
336:先生
俺の主観で少しフェイクはいれるよ。弟の前世…両親のいない孤児だったけど、仲間思いで根っこは凄く優しい愛情溢れた奴だった。とある任務で仲間を助けようとして大怪我をする。他の仲間は完全に彼が死んだと思ってたけど実は生きてた。助けた奴がまあ…よくなかったな。命の恩人を仮にMとする。Mは弟を利用してやろうとしたが弟の性根は真っ直ぐだったので、そこを歪ませるところから始めた。弟が命懸けで助けた仲間を仲間の手を使って目の前で殺した。大切な人を救えず絶望で真っ暗になった弟の視界に自分の手助けをすることが、救済だと巧妙に思い込ませた。今思えば素直な奴だったからな。そこからは…師を騙し、世界を混乱に陥れた。数えきれない人々が犠牲になった。弟はこの頃は何を思ってたんだかな…それは今でも聞けやしない。罪云々はこの事だろうな。心の何処かで間違ってることは分かっていたんだろう。最終的には改心したが(改心というより元に戻ったかな)、Mに利用され死を待つしかなくなった。体を乗っ取られたりもしたが自分を救った男と友を庇って死んだ。遺体も残らないような死に様だった
337:名無しの忍
えっと…
338:名無しの忍
思っていた以上に壮絶だった
339:名無しの忍
…………
340:名無しの忍
野菜大丈夫か?
341:名無しの忍
幸薄すぎだろう…
342:名無しの忍
M許せねぇ
343:野菜
わかった
344:名無しの忍
野菜?
345:野菜
弟は今度こそ幸せにならなきゃいけないことが分かった
346:名無しの忍
同感。前世は前世だ。引き摺る必要はない
347:名無しの忍
・゜・(ノД`)・゜・ウェーン
348:名無しの忍
引き摺るのは今でも優しい証拠じゃないか?
349:先生
その言葉、あいつに聞かせたいよ。ちなみにすずちゃんね、弟が前世で片想いしてた仲間のRじゃないかなと思う。すずちゃんは記憶なさそうだけど
350:名無しの忍
前世からの片想いだと…!!
351:名無しの忍
本当に一途だな!!(泣)
352:名無しの忍
愛の一族は伊達じゃない
353:名無しの忍
愛の一族wやめろww泣き笑いで苦しいww
354:先生
あいつ一人でRを残して転生するわけないと思うからさ。俺のことは待っててくれなかったんだな…。ま!生きて会えたからいっか
355:名無しの忍
先生……(。´Д⊂)
356:先生
じゃ、俺はROM専に戻るよ。野菜、弟のことは暖かく見守ってやってくれ。マダラの件は謝っとけよ。あれからピリピリしてるから。じゃ!
357:名無しの忍
衝撃の事実だったわけだが…
358:名無しの忍
これからどうする
359:名無しの忍
スレ目的は厨二病を何とかしたいだったな
360:名無しの忍
弟!お前は生まれ変わったんだから新たな人生を生きろ!
361:名無しの忍
同感だがここで言っても伝わらないぞ
362:名無しの忍
野菜の冒頭発言で「こんなに幸せでいいのか自問自答する」ってあったな?弟はもう幸せなんじゃないか?
363:名無しの忍
そうだな、少なくとも野菜みたいな姉がいるわけだし
364:名無しの忍
幸せ過ぎて怖いのかもな。だからすずちゃんとのことも進展しない
365:名無しの忍
解放してあげたいね
366:名無しの忍
しかし記憶がある限り罪の意識から逃れるのは難しいぞ。優しい弟なら尚更だ
367:名無しの忍
そういえば野菜は?
368:名無しの忍
ショックだったのかな
369:名無しの忍
よし、取り合えず弟をもっと幸せにするしかない
370:名無しの忍
すずちゃんとくっつけるしかないでしょw
371:名無しの忍
奥手そうだなー弟
372:名無しの忍
なぁ前世から好きで片想いってことは弟は死ぬまで童貞だったのか?
373:名無しの忍
!!!?
374:名無しの忍
そうかも…!!?
375:名無しの忍
あー俄然弟の味方だわ、オレ
376:名無しの忍
急に親近感湧いた
378:名無しの忍
不憫さが増した気もするがな…

~~以下童貞(疑惑)の弟とすずちゃんをくっつけるための方法談義~~

532:名無しの忍
やっぱりすずちゃんから積極的になって貰うしかないんじゃないか?
533:名無しの忍
でも弟には男見せてほしいなぁ
534:名無しの忍
弟は「すずが幸せなら俺も幸せ」的な人間だよね
535:名無しの忍
すずちゃんの幸せって?
536:名無しの忍
さー?
537:名無しの忍
アカン、完全に行き詰まりや
538:名無しの忍
ところでさ、野菜のことをマダラだと思ってたんなら、先生の言ってたMってマダラだよな?
539:名無しの忍
それ思った
540:名無しの忍
マダラに操られてた奴って…
541:名無しの忍
詮索はこれ以上やめとこうぜ。前世なんだから今の弟とは関係ない
542:名無しの忍
同感
543:名無しの忍
どんな物語もさ、悪には悪なりの理由があるんだよ。勝てば悪が正義になることだってあるし逆も然り
544:名無しの忍
時間が立てば、もっとオープンに語られるようになるさ。第四次忍界大戦は祖父母、親世代だから最近過ぎる
545:名無しの忍
こういうのは後世の歴史家が色々分析するだろ
546:名無しの忍
第四次忍界大戦に関して言えば、これがあったから五大国がまとまったとか言う奴は絶対出るな
547:名無しの忍
俺は負けた側が好きになること多いんだよな。例えば源平の平家とか
548:名無しの忍
平家?
549:名無しの忍
東の国の侍の話

~~野菜が消えて数日、住人の雑談場所になりつつあったスレ~~

946:野菜
急に消えてごめんなさい
947:名無しの忍
え!!
948:名無しの忍
野菜!!?
949:野菜
もう皆忘れちゃったかな?
950:名無しの忍
忘れてない!
951:名無しの忍
野菜が帰ってきた!!
952:名無しの忍
皆の者~!!出合え~~!出合え~~!!
953:名無しの忍
おかえり野菜!!
954:野菜
今日は報告に来ました
955:名無しの忍
なになにー
956:名無しの忍
弟元気?
957:野菜
あれから弟に泣きついてしまった。弟は困惑してたけど、私の抱擁を受け入れて背中をさすってくれたよ。ほんと弟天使だわ
958:名無しの忍
野菜、通常運転w
959:名無しの忍
スレ間に合うかな?
960:野菜
このスレのことも話しちゃった。マダラの件は謝ったよ。演技力を褒められた。複雑…でもまぁ笑って許してくれたよ!(笑顔が最高に可愛い)先生が前世を話したと知った時は憮然としてたけどねー。10代のくせに眉間のシワがとれなくなってしまうよ…。あれから先生に対してツン9,95:デレ0,05くらいになったな。元々少ないデレなのに…。
961:名無しの忍
先生がんば!www
962:名無しの忍
0,05ってほとんど無いだろwwww
963:野菜
泣いてたらママが来て私と弟を抱き締めた。やっぱり母親の抱擁には叶わないな。弟も貰い泣きw元々泣き虫だからwww
そこが可愛い (`・д・´)キリッ
964:名無しの忍
弟泣き虫なのか!?
965:名無しの忍
意外…
966:名無しの忍
スペック多すぎるだろw
967:名無しの忍
パパの存在感の無さ…
968:野菜
パパは仕事であんまり里にいないからね~。スレでの皆の言葉も伝えたからね。ほんとありがとう。直ぐに変わるのは難しいけど、見ず知らずの人が自分を許して認めてくれるって大きいと思う
969:名無しの忍
おお!
970:名無しの忍
こちらこそありがとうですよ!
971:名無しの忍
このヌクモリティ…(´;ω;`)ウッ 
972:野菜
で、こっからは私事なんですが…先日結婚式をしまして
973:名無しの忍
ええーーーー!!
974:名無しの忍
結婚式!!?
975:名無しの忍
式近いのにスレ立ててたのかww
976:野菜
やっぱり弟が心配でねぇ
977:名無しの忍
例の初恋の相手?
978:野菜
そう。パパ同士が親友だから幼い時から交流あって幼馴染みってやつかな。まぁ私の話は置いといて…(=゜ω゜)ノすずちゃんも式に呼んでたんだけど可愛かった~。薄いピンクのドレス着てて薄茶の髪と瞳によく合ってた。弟は目も合わせられないくらい赤面して照れてたww
979:名無しの忍
弟も通常運転ww
980:名無しの忍
すずちゃん相変わらず天使
981:野菜
ブーケトス、本当は反則かもしれないけどすずちゃんにあげたかった。私の手裏剣術をナメるな!って感じはおくびも出さすに軽く放り投げた。すずちゃんのところへジャストミート
982:名無しの忍
ナイスwww
983:野菜
「わっ」(可愛らしく両手でキャッチするすずちゃん)(頬を染めて喜んでる)(カワイイ…)
「ブーケを受け取った人が次の花嫁さんになれるんだよ、すず」(ナイスアシスト!先生!)
「ほんと…?私も花嫁さんになれるかな…」(行け!行くんだ弟!!)
「あ、当たり前だろ!すずなら良いお嫁さんになれる!」(それだけじゃないだろ!行けよ!ヘタレ!)
「花嫁さんかあ」(へにゃ~と笑うすずちゃん可愛すぎる)
「おっ俺が絶対!すずのこと幸せにするから!!」(よくやった!!)
「え?」(二人してトマト並みに赤面)(先生にやにや)(私もにやにや)
「弟~それってプロポーズ?」(ナイス先生!!さっきからいいぞ!)
「死ね!!バ󾀕󾀕󾀕!!」(先生の弁慶の泣き所を蹴る弟)
いやぁ…いいもの見た
984:名無しの忍
やばいwwによによ止まらんwww
985:名無しの忍
同じくww
986:名無しの忍
これは時間の問題だなwww
987:名無しの忍
末長く幸せになる呪いをかけた
988:野菜
ほんと皆ありがとう!スレ立てて良かった!
989:名無しの忍
【悲報】おいスレもそろそろだぞ。恒例の行くか
1000ならすずと弟は結婚する
990:名無しの忍
久々にほっこりした。泣いたし笑った。ありがとう
1000なら弟が畳の上で孫に囲まれて死ぬ
991:名無しの忍
こちらこそ、この数日楽しかったよ!
1000ならハッピーエンド間違いなし!
992:先生
いや~めでたいめでたい☆
1000なら弟のデレが増える
993:名無しの忍
先生!!?www
1000なら野菜一家はいつまでも幸せ!
994:名無しの忍
野菜!弟が結婚したら報告よろ!
1000なら世界平和
995:野菜
最後に弟から一言!無理やりパソコンの前に座らせたw弟はアナログ人間だからこういうの苦手ww
996:名無しの忍
弟!?
997:名無しの忍
弟ついにキタ━(゜∀゜)━(∀゜ )━(゜  )━(  )━(  )━(  ゜)━( ゜∀)━(゜∀゜)━!!
998:名無しの忍
頑張れ負けるな弟!!
1000なら脱☆童貞!!
999:名無しの忍
>>998 おいwwお前は一人じゃないからな!繋がりを大事にしろって、偉い人が言ってた!
1000なら…おまいら皆幸せになれ!
1000:野菜
あーっと姉貴が迷惑かけたみたいで…。これちゃんと書き込めてるのか?俺はこれからも罪の意識から逃れることは出来ないと思うけど、自己犠牲はもう止める。すずが泣くからな。幸せになるのを諦めないよ。
1000なら姉貴が火影になって皆が手を取り合える優しい世界になる


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サスサク夫婦の子供に生まれ変わったオビトの話

2015年12月20日 00時13分50秒 | NARUTO妄想文
「名付け親?」
「そう、カカシ先生にお願いしようと思って」
そう、サクラはふんわりと笑って言った。もうすぐ臨月に差し掛かろうとする腹を愛しげに撫でる。母親の顔だった。
「それ、サスケは知ってるの?」
里にいることのほうが少ない部下を差し置いて名付けなどしてもいいものか。
「勿論許可は貰ってますよ。ねぇサラダ?」
サクラを守るようにくっついてきたサラダは赤色の眼鏡を人差し指で押し上げる。
「名付け…名付けねぇ…」
困ったように考え込む師にサクラは軽く笑う。
「ナルトも四代目の師であった自来也様が名付け親だそうですよ。何でも由来は自来也様の小説の主人公だとか」
自来也の本のファンであるカカシは勿論知っている。巻末に『主人公の名前はラーメンを食べていて思い付いた』と書いてあったのを思い出して、マスクの下で苦笑いした。だがそのナルトも今や英雄の名前だ。里の赤ちゃんの名前ランキング男の子部門上位に毎回食い込んでいる。
「キラキラネームだけはやめて下さい」
サラダがむっつりした口調で言う。流行りの名前は確かにカカシから見ると派手な印象があった。アリエルとかジュゲムとかシーザーとか。
(そんなのは全くもってこの二人には合わないよねぇ。名字とも親和性が良くて…語呂が良くて…)
「うーん…うちは、うちは、うちは……………うちは…オビト」
しん、と部屋が静まり返る。サクラは若干顔が引き攣った。よりにもよって大罪人…いや百歩譲ってそれはいい。カカシの脳内ではうちは=オビトなのか。山といえば川、ツーと言えばカーと言うような……
(どんだけオビトが好きなのよ、しゃーんなろー!!)
カカシも失言したと思ったのか、あーだのうーだの繰り返している。だがオビトに代わる名前は中々思い付かないらしい。
「オビト!!良い名前!!」
サラダがキラキラした目で追い討ちをかける。
「オビト…少し古風だけどそこが良いわ。首長、統率者って意味ですよね。うちは一族の再興はパパの悲願みたいだけど、私はいつか嫁に行くかもしれないし…その夢をその子に託すって意味ならピッタリじゃない?ね、ママ?」
すっかり乗り気のサラダにサクラは頭を抱える。
(まぁ男の子とは限らないし…サスケ君に何て言おう)

一ヶ月後サクラは玉のような男の子を産んだ。







「オビト、おいで~」
二歳になったばかりの我が子を両手を広げて、相好を崩して呼ぶ師にサクラは笑いを噛み殺す。サラダの時は現役の火影だったのでカカシは多忙だった。今は少し時間があるのか暇があればオビトに会いに来る。うちは一族特有の真っ黒な髪は子供故か柔らかく触り心地がよい。ぱっちりとした二重瞼。濡れたような黒曜石の瞳。うん、親馬鹿と言われてもいい。文句なしに可愛い。
(私とサスケ君の子だしね!)
あの後、名付け問題はサスケが猛反対した。オビトにするくらいならイタチにする!とブラコンぶりを発揮していたが、サラダがすっかりオビトという名前を気に入って腹の中の胎児に話し掛けるものだから、自然とサクラもそう呼ぶようになってしまった。どこの家庭も母と娘のタッグには勝てないらしい。サスケは渋々「男だったら」と条件を付けて二分の一の確率に賭けていたが、結果は言わずもがな。
「よしよし」
オビトを抱き上げて膝の上に乗せるカカシはどうみても孫に喜ぶおじいちゃんだった。溶けそうなくらいデレデレだ。オビトもカカシになついて雛のように後ろをついて歩いたりしていたが、最近はどうも嫌がる素振りを見せる。この時期になって人見知りだろうか。照れているのか。カカシに対してだけ顕著な気もする。今も頬擦りしようとしたカカシをオビトは手で突っぱねていた。カカシは気にする様子は全くないが…。サクラは小さく溜め息をついた。急な人見知り以外にオビトは二歳になっても言葉が全く出てこない。サラダの時は早すぎるくらいだったのに。男の子は遅いと聞くが…心配は尽きなかった。


「カカシ」
「え?」

サクラは初めて聞く意味のある単語に心臓が飛び跳ねた。この舌ったらずな高い声はまさか……。両親を差し置いて名を呼ばれたカカシは一瞬天にも昇る心地になったが、次の瞬間地に叩き落とされる。

「鬱陶しい。やめろ、このクズが」

二歳児とは思えぬ言葉にカカシは石のように固まりサクラは泡を吹いて卒倒した。

とある男の半生 2 (血界戦線)

2015年12月19日 23時53分06秒 | その他妄想文。
 街の中は悲惨な有り様だった。血塗れの人々が地面に蹲り、動いているのはグールだけだ。既に人間とは思えない肉片があちらこちらに散らばっている。真っ青な空がおどろおどろしい風景に全く似つかわしくない。近寄ってくるグールを成るべく避けながら、教会を目指す。この街では一番高い建物だ。血界の眷属の目的ははっきりしないがあの目立つ建物を見逃す筈がない。
「クラウス、こんな時に悪いが」
「む?」
「もし子供達がいたら彼らの前で僕の名前を出さないでほしい」
「それは…」
「頼む」
 クラウスが言い終わる前に口を挟む。緑の瞳には疑問が浮かんでいるが、切羽詰まった感のあるスティーブンの声に飲み込んでくれたようだ。
「承知した」
 祈るような気持ちで教会の裏手の小さな孤児院へ向かった。この時間なら子供達は自室で勉強しているか、もしくは外で畑仕事をしている筈だ。感慨に浸る間もなくスティーブンは扉を乱暴に開けた。
「誰かいないか!?」
 スペイン語で叫ぶスティーブンの声に反応する者はいない。一つ一つ部屋の扉を開けるが何処にも人の気配はなかった。部屋の中は慌てていたのか少し散らかってはいたが、部外者に荒らされた跡はない。
「大丈夫かね、スティーブン。酷い顔色だ」
「…ああ…」
「まだ死体がない。皆で避難したのかも…」
 死体がなくてもグールになっているか、最悪転化させられたか、避難した可能性よりそちらのほうが余程現実味があった。
「ここには誰もいないようだ。教会のほうに行ってみよう」
 クラウスの言葉に従って教会のほうへ回り込む。災害時など何かあった時に避難場所となる教会は堅牢な造りになっている。地下には大量に備蓄があるはずだ。誰かが避難していてもおかしくはない。
 正面一ヶ所しかない真っ白い扉は固く閉ざされて、乾き始めた血液が大量に付着していた。一見して致死量だと分かる。スティーブンは絶望的な気持ちに陥った。
「しっかりしたまえ。まだ希望はある」
 クラウスが体が通るだけの扉を開き、慎重に中へ飛び込む。スティーブンもそれに続いた。教会の中は窓が閉められているため薄暗い。正面のステンドグラスだけが光を取り込み、床に色彩を溢している。
 祭壇の奥、貼り付けにされたイエスの像の前に子供が佇んでいた。後ろ姿からでも服は血塗れだと分かる。クラウスが急いで子供に近付き手を差し伸べた。
「無事で良かった」
 ゆっくり子供が振り返る。短く揃えた銀色の髪に大きな深紅の瞳。少年のようだ。人形のように整った顔立ち。スティーブンの記憶の中にその姿は見当たらなかった。うっとりしたような笑みを浮かべて血色の瞳を輝かせる。
「離れろ!!クラウス!!」
 スティーブンの声と同時にクラウスは飛び下がったが、袈裟懸けに切られた傷が血飛沫を上げる。
「つっ…!」
 少年は手に付着した血液をペロリと舐める。途端に顔を大袈裟にしかめた。
「うえええ、まずい。君達牙狩り?」
 鈴を転がしたような声だった。首を傾げる姿は愛らしい。スティーブンは持ち歩いている鏡で少年の姿が写るように翳す。案の定少年は鏡に写っていない。スティーブンの背中に汗が流れた。血界の眷属だ。
「何故この街を襲った?」
 時間稼ぎのつもりでスティーブンが問う。少年の姿をしていても相手は自分達より遥かに長い年月を生きている。
「え?知らないの?」
 知るかよ、と悪態付きたくなる気持ちを押し殺す。幸いクラウスの傷は浅そうだ。孤児院の子供達がいないのならここから早々に撤退すべきだった。出来るかどうかは別にして。
「ここは牙狩りの卵達がいる場所でしょ?」
「え」
 ふふふ、と笑う少年の言葉に目を剥く。そんなこと聞いたことない。心臓の鼓動が早まる。どくどく、と音が体の中で響くようだ。
「可哀想に。知らないで助けに来たの?そういえば援軍、全然来ないねぇ?僕が最初の牙狩り達を殺して24時間は経つよ?」
 スティーブンは混乱した頭で、何処か冷静な自分が納得しているのを感じていた。この孤児院は非合法に集められた牙狩りの才能を持つ子供達の巣だ。能力に目覚めてトントン拍子に里親が決まったことも、スティーブンにはずっと疑問だった。牙狩りは慢性的な人手不足だ。血筋による継承は現代のように近親婚が許されない時代、血が薄まり難しくなっている。突然変異で生まれた子供達をそれとなく牙狩りとして養成する為に人攫い同然に親から引き離す。当然発覚すれば本部は非難を免れない。本部の上役達はそれを隠蔽するためにこの街を見捨てたのだ。
「そんなことが許されるとでも…!!」
 呆然としていたスティーブンの横でクラウスの怒気が膨れ上がる。怒りの矛先は血界の眷属ではない。
「あはははは!!残念だったね!」
 甲高い嘲笑が教会の内部にこだまする。
「でもさぁ…肝心の牙狩りの卵達は中々出てこなくて困ってたんだ。お兄さん達、引っ張り出してくれない?」
 その言葉に弾かれたようにスティーブンは顔を上げた。まだ生きている…!!
 パキッと足元が凍りつく。これで逃げるという選択肢は無くなった。
「彼女がそこを退いてくれなくてさ」
 少年が顎で示した場所には力なく座っている女性がいた。修道服を血に染めて俯く姿はスティーブンが良く見知った姿だった。背後には地下室に続く扉がある。彼女が身を呈して扉を守っているのは明白だった。スティーブンは少年を明確な殺意を持って睨み付ける。
「殺してないよ。まぁ死ねないだけだけど」
 少年は祭壇にあった鋭利な燭台をシスターに向かって投げつけた。腹部に深く突き刺さった燭台はまるでフォークのように見える。シスターは苦しそうに呻き、燭台を引き抜く。動脈を貫いた傷は水道の蛇口を一気に開放した時のように血が吹き出すが直ぐに再生される。
「まさか…」
「そ。彼女はもう僕の仲間だよ。神に遣えるシスターが吸血鬼なんて背徳的で良いじゃない?」
 にんまりと笑う少年の唇から人外の牙が覗く。
「シスターに殺される子供…ってのが見たかったんだけどね。彼女、転化したのに僕の言うことを聞いてくれないんだ」
 参っちゃうよ、と肩を竦める少年は少しも困っているようには見えない。スティーブンは怒りで頭が変になりそうだった。教会全体がひんやりとした冷気に包まれる。
「エスメラルダ式血凍道」
「ブレングリード流血闘術」
 少年の足元に鋭利な氷の刃が出現し、頭上には巨大な深紅の十字架が迫る。
「わお!綺麗だねー」
 少年は笑いながら教会天井近くの梁によじ登った。まるで体操選手のようにくるくる回って着地する。
「もう少し遊びたいけど…そろそろ時間だ。彼女、あれだけ血を流したんだからもう限界だと思うし…後は任せるよ。生きていられたら、また会おうね。お兄さん達」
 少年は戯れのようにスティーブンとクラウスの肩を叩いて一瞬で扉から出ていった。ぱたん、と扉の閉まる音が背後から聞こえ、気配が完全に消えてしまう。
「くそっ!」
 まざまざと力の差を思い知らされた。大切な人が傷付いているのに全く手も足も出なかった。唇を噛み締めると鉄の味が広がる。その刹那。
「スティーブン!!」
 クラウスが叫ぶと同時に修道服が翻り、スティーブンの顔を大きく抉った。迸る血に左目が見えなくなる。咄嗟に左手で傷を強く圧迫した。手の平がぬるついて仕方ない。
「つっ…!ビンタにしては強烈すぎるなぁ…!」
 衝撃に頭がグラグラする。スティーブンの軽口も姿もシスターには見えていないようだ。
「私…子供達を守らなきゃ…」
 シスターの瞳は虚ろで譫言のようにぶつぶつと繰り返す。手には先程の燭台がぶら下がっている。転化してなお、子供達を守ろうとしてきた。それは多量の出血により吸血衝動が高まっている今も、無意識下で刻まれているようだ。かつん、と靴音を響かせて膝を付いているスティーブンに近づく。
「ブレングリード流…」
「クラウス!待ってくれ!」
 制止の言葉にクラウスの動きが止まった。その直後シスターは躊躇うことなくスティーブンの肩に燭台を突き刺した。 
「ぐっ…!」
 激痛に苦悶の表情を浮かべる。シスターは黒髪を包み込むように腕を回して首筋に噛みつこうと、昔はなかったはずの牙を剥き出しにした。スティーブンは目を瞑る。

「守れなくてごめん。シスター(母さん)」
     
 ピタリとシスターの動きが止まる。スティーブンは彼女を強く抱き締めた。こんなに華奢だっただろうか。昔は大きく見えていたのに。
 シスターの手が優しくスティーブンの髪を撫でた。記憶にある手つきと全く変わらない。シスターを離して瞳を覗き込むとそこには先程と違い確かな理性が光っていた。
「エステバンなの…?」
 シスターの手が優しく頬を包み込む。左頬の傷が痛んだが、彼女の手にそっと自分の手を重ねる。懐かしい響きだ。
 少しの逡巡の後、スティーブンは口を開いた。
「そうだよ」
 シスターの薄茶色の瞳から大粒の涙が溢れた。
「間に合わなくてごめん」
 ふるふると頭を振る。
「…本当に居てほしい時にはちゃんと来てくれる。間に合ったよ。みんな無事だと思う」
 ふわりと優しく笑ったシスターはスティーブンのよく知るシスターだった。
「顔をよく見せて」
 頬に走った大きな傷に、痛ましげに瞳を伏せる。ボロボロじゃない…とシスターは小さく呟く。
「ずっとエステバンに謝りたいと思っていたの」
「?」
「貴方を牙狩りにしてしまったこと」
 孤児院は牙狩り組織の一部で、能力の鱗片が見えたら本部へ報告することがシスターには義務づけられていた。だが子供達の未来を縛り付けることにはならないか、ずっと悩んで苦しんでいたという。
「ケイにもね、兆候があったの。あの子も牙狩りとしての才能がある」
 だがシスターはそれを隠蔽した。牙狩り本部に。それは裏切りと捉えられかねない。スティーブンの脳裏には暗い想像が過ぎった。
「私を殺して」
 このままでは、いずれまた理性を失う。そうなる前に早く、と。スティーブンにも頭では分かっている。転化したてであれば滅殺は可能だ。彼女を救うにはそれしかない。だが情けないくらい体が震えてしまった。走馬灯のように幼い頃の記憶が甦る。
「スティーブン」
 傍観していたクラウスがゆっくりと近づいてきた。その瞳は揺らぎない。
「彼女のフルネームを教えてくれないかね?私は彼女を封印することが出来る。君に母殺しの大罪は似合わない」




 シスターはいつも礼拝堂で祈りを捧げる時のように跪いて指を組み瞳を閉じている。それは清廉な儀式のようだった。
「アリシア・アルマス・セラーノ」
 滔々とクラウスの声が教会に響く。まるで懺悔する罪人の声を聞く神父のような佇まいだが神父にしては闘気に溢れすぎている。目を細めてスティーブンはその光景に見入った。

「憎み給え

 許し給え
 
 諦め給え

人界を護るために行う我が蛮行を

ブレングリード流血闘術 999式  久遠棺封縛獄」

 封印される直前シスターは目を開いてスティーブンに向き直る。にっこりと安心させるように微笑んだその目尻には優しげな笑い皺が刻まれていた。
「何でも一人でやらずに友達を頼りなさいね」
 昔と少しも変わらない声音。
 
 後にはカランとした音と共に真紅の小さな十字架が転がっていた。





 
 最期まで人のことばっかりだったなぁ…。

 回想の海から浮上して手の中の血色の十字架を握り締めた。本来なら血界の眷属を封印した十字架がこの場にあることは有り得ない。牙狩り本部の厳重な管理下に置かれて、外に持ち出すことはまず不可能だった。それが可能だったのはクラウスがこの密封のことを誰にも話さなかったからだ。
「この十字架は君が持つのに相応しい。きっと君を守ってくれるだろう」
 そう言って十字架を渡された日を決して忘れることは無い。

****

 本部に連絡しグールを一掃して安全を確かめてから子供達を解放した。地下への扉を開けた瞬間、鉄パイプが振ってきたのは驚いたが。教会の地下で震えていた子供達を守るように先頭にいたのは金髪の少女だった。まるで猫の仔のように威嚇する瞳が懐かしい。少女はスティーブンを認めると訝しげな表情を浮かべた。
「大丈夫だよ。助けに来たんだ」
「お兄さん達、誰?」
 年少者を抱き締めていた見知った少年が不信感を露に問いかける。クラウスは少し驚いたようにスティーブンを見た。グレーの瞳が一瞬だけ寂しそうに瞬いたが、直ぐに優しげな表情を作る。警察関係者だと子供達を言いくるめて、実際に後始末に乗り込んできた牙狩り組織の者に子供達を引き渡す。一旦は病院に入って検査をしてから、各々身の振り方を決めなくてはならないだろう。
「シスターどこ?」
 スティーブンが孤児院にいた頃はまだ赤ん坊だった少女が涙声で話す。胸が締め付けられるようだったが振り向かずにその場を後にした。



「スティーブン」
 気遣わしげなクラウスの声に何時ものような笑顔が出てこない。何故だか無性に誰かに打ち明けてしまいたかった。この真面目な若者はきっと誰にも言わないでくれるだろう。スティーブンは小さく溜め息を吐く。
「彼らは俺のことを知っているけど、知らないんだ」
「…どういうことかね?」
 スティーブンは血塗れのTシャツを脱ぎ捨てた。そこには首から心臓に繋がる紅の刺青が白い肌を犯すように伸びている。クラウスは見事な刺青だと思いながらも、何処か禍々しさを感じずにはいられない。
「足の先まで伸びてるよ」
 そう言いながら汚れたTシャツを再度着直す。
「血凍道関連のものかね?」
「そう。13歳の時だったかな。これを入れたのは」
 13歳の頃、確かスティーブンが初陣を飾ったのと同時期だ。
「氷を使う俺達の術は自身の細胞も痛め付ける。それを戦闘の支障になら無いようにするためのものさ。この術式があるから、エスメラルダ式血凍道はあまり使い手がいないんだ」
 絶対零度とは即ち-273度だ。とても人間の体が耐えられる温度ではない。通常であれば一瞬で足が使い物にならなくなる。
「細胞を活性化させて代謝を促進させる。壊死した細胞もそれを上回る早さで甦らせる。けれど人間の細胞分裂の数は限られているだろ?」
 クラウスは今までの疑問が繋がって答えが見えた気がした。スティーブンが実年齢よりも老けて見えること、同じ孤児院の子供達がスティーブンのことを分からなかったこと…。知らず拳を強く握り締める。
「それは君が望んで入れたものなのか?」
 スティーブンは微笑んだまま答えなかった。クラウスは頭を殴られたような衝撃を感じる。牙狩り組織への不信感は拭いようもない。
「ただ、物理的な攻撃にはあまり効かなくてね。血凍道によるダメージしか回復させてくれないんだ。まぁ例外はあるけど」
 スティーブンの顔と肩の傷は痛々しい包帯に覆われている。先程交換したばかりなのに、もう鮮血が滲んでいた。
 彼の技は文字通り寿命を削る。強ければ強いほどその代償は大きい。悲痛な表情を隠そうとしないクラウスにスティーブンは軽く腕を叩いた。
「血液を武器とする牙狩りはみんな命を磨り減らして戦っている。俺だけのことじゃないさ」
「……」
 遠い目で空を仰ぐスティーブンにクラウスは押し黙る。
「シスターはよく俺のことが分かったと思うよ。多分昔の知り合いに会っても誰も分からないんじゃないかな」
「…それは彼女が母親だったからだろう」
 彼は軽く目を見張ってエメラルドの瞳を見返す。そうだね、と微かに聞き取れるくらいの声で呟いた。

****

 式は終盤だ。まさか彼女の人生の晴れ舞台に呼んでもらえるとは思っていなかったので素直に嬉しかった。他の兄弟達の顔も見える。それとなく彼らのその後を見守ってはいたが、顔を合わせたのは何年ぶりか。勿論スティーブンが一方的に知っているだけだ。大半がラインヘルツ家の援助している孤児院に入れてもらうことが出来、今では半数が結婚して家庭を持っている。クラウスには感謝してもしきれない。まともな教育が受けられたおかげで就職先にも困らなかったようだ。子供達は牙狩りの血を覚醒させた者も多かったが、組織に属したのは彼女…ケイだけだった。シスターが守った命だ。本音を言えばこの世界とは無縁のまま生きていて欲しかった。
 本部で再会した時は問答無用で顔面を殴られた。女の子なのにグーは無いだろう、と抗議したスティーブンに今度は愛銃を突き付けてきたので、言い訳する機会を失ってしまった。彼女とはそれから何度も一緒に仕事をしたが、あの時のことは一度も触れてこない。知らないはずはないのに。
「スティーブン。君はそろそろ名乗り出てもいい頃じゃないかね?」
 クラウスとの付き合いも長くなった。顔を見ただけで何となく言いたいことが分かるくらいには。
「俺は彼らから母親を奪ったも同然だ。今更言えないよ」
 自嘲気味になってしまうのは許して欲しい。柄にもなくしんみりしているのが分かる。
「それは私も同罪だ。君一人の罪ではない」
「クラウス、それは違う。君のお陰で俺もシスターも救われたよ」
「そうだ。君がいたからシスターは救われたのだ」
「……」
「少なくとも彼女はそれを理解している」
 クラウスの言葉に視線を上げると、彼女…K・Kは離れた位置にいるスティーブンに向かって大股で歩いてくる。置き去りにされた夫は優しく微笑んで、K・Kの背中に手を振っていた。
「私の結婚式で辛気臭い顔しないでくれる!?」
 睨み付けてくる青い目は昔と変わらない。
「ちょっとK・K…」
 苦笑いしたスティーブンの手にブーケを押し付けた。
「次はアンタの番よ、エステバン」
「はい?」     
 流暢なスペイン語で話したK・Kとスティーブンにすっかり大人になった兄弟達が集まってフラワーシャワーをかける。驚きを隠せないスティーブンに、ようやくK・Kは溜飲を下げたのかにんまり笑った。
 年齢からしてエステ兄でしょ、早く兄ちゃんの結婚式に出たいなぁ、いや無理無理、顔は良いのにねぇ、いっそクラウスさんに貰ってもらいなよ、いやエステ兄は仕事が恋人でしょ、まだまだ難しそうねぇ、
 飛び交う懐かしい言語に一瞬過去に戻ったかのような錯覚。髪についた花びらがはらはらと落ちる。
「お前達…」
 握り締めた十字架が脈打つように温かい。

 兄弟達が積年の想いを込めてスティーブンを泣かすまで、あと5分。





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どうでもいいあとがき。

 本当はシスターを殺したのはスティーブンで孤児院の子供達には最後まで正体が知らされないENDにしようかなーと思っていました。そのほうがスティーブンがクラウスに依存するかなーなんて思ったりして。。
 でもウルフウッドがあーいう感じだったから・・スティーブンを幸せにしたかったんです。それだけ!
 ここまでお読み頂きありがとうございました!
 
 次からはおまけです。
 K・Kとスティーブンは兄妹っぽいと思っていたので更なる捏造を重ねました。。



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 ヘルサレムズ・ロットの高級レストランでスティーブンが接待しているのは、牙狩り組織における幹部の一人だった。灰色の頭髪を後ろに流して、丸い眼鏡をかけており、歳は70半ばといった具合か。ワイングラスを持つ手には深い皺が刻まれている。
「聞きしに勝る魔境だな、ここは」 
「恐れ入ります」
 営業用の完璧な笑顔でスティーブンは応対する。相手は既に現役を退いたとはいえ組織の上役を長年勤め上げている曲者だ。
「で?ライブラは牙狩り本部の手を離れたいと?」
「ええ。暖簾分けという形になるでしょうか。勿論今後も血界の眷属に対しては協力が必要不可欠ですから、そこは今まで通りにご高配を賜りたく存じます」
「上から目線だな」
 鼻で笑う老人がワインを一口含む。ごくりと枯木のような喉が上下した。
「資金はともかく人材はどうする?今でも本部から人材を派遣されているだろう。牙狩りの血を持つ者は少ない。育てるにも時間がかかる」
「そう言えば貴方は後継者対策に奔走されていましたね」
 スティーブンの口調が変化しグレーの瞳が剣呑な光を湛えて笑む。からん、と老人がフォークを取り落とした。
「ヘルサレムズ・ロットは世界の覇権を握る場所と言われている。その中で我々ライブラが活動する意義は大きい。知っていますか?本部の精鋭の殆どが今やライブラに属しています。またここは人間だけではない。異界の住人が多数暮らしている。神と呼ばれる者も、不本意ながらその恩恵にあずかった者も。牙狩りの血だけが必要とされる時代は終わったのですよ」
 返答はない。胸を押さえて脂汗を流す老人にスティーブンは微笑む。
「貴様…何を盛った…っ…!」
「何のことです?ああ、ここのワインはお口に合いませんでしたか?異界産のフルーツで出来ているそうですから」
 老人の唇は紫色に変色してきている。手足が痺れて普通に座っていることも困難だった。
 そうそう、とわざとらしくスティーブンが老人に明るく声をかけた。
「私も貴方のお陰でここまで来れたのですよ。感謝しています」
 最後のプライドなのか床に這いつくばるのを拒否してテーブルにすがり付く。
「はっ…そうか…!貴様、は…あの小娘の…」
「お喋りが過ぎたようですね。ご老体にはそろそろ隠居をお勧めします」
 喘ぐような呼吸の中、老人はスティーブンを睨み付けた。
「こんな、ことをして、身の破滅だとは思わん、のか…!」
「ここでは些細な出来事ですよ。何が起こるか分からない場所ですから」
 何処にでもありそうなリボルバーの銃をスーツの懐から取り出して撃鉄を起こす。 老人の目が限界まで見開かれ、恐怖の色が浮かんだ。

 そう、この街では銃で撃たれるなど蚊に刺されるくらい良くある話だった。





「おやまあ、スティーブンせんせーじゃないの?」
 半分以上は私怨での一仕事を終えて外に出ると真っ赤なコートを翻した金髪の美女が立っていた。スティーブンの顔が引き攣る。
「K・K。君何故ここに?」
 スティーブンの質問には答えず襟を掴んで引き寄せる。くん、と匂いをかいで端正な顔をしかめた。
「硝煙の匂いね」
 その言葉に天を仰いで額に手を当てる。
「血凍道を使うとアンタだと直ぐにバレる。賢いやり方だと思うわ」
 にっこりと弧を描いた唇に、スティーブンは「あ、まずい 」と思った。そのままパァンと小気味良い音が響く。
「いった~~~」
 頬の傷の上から見事なくらいの紅葉が咲いた。
「はっ、いい気味ね。スカーフェイス」
「酷いじゃないか、K・K」
「酷いのはどっち!?どうしてアタシに声をかけないの!?何でも一人で抱え込んで…!!アタシにも復讐する権利はあると思うけど!!?」
「シィー!声が大きいってK・K!」
 なんだなんだ痴話喧嘩か?そんな言葉と視線を集めて更にK・Kが憤る。
「こんな男と痴話喧嘩ですって!?冗談じゃ無いわよ!!」
 哀れな通行人はK・Kの怒気に当てられて顔面蒼白だ。
「まぁまぁ…」
 青い目がきつくスティーブンを睨み付ける。
「何も無かったよ。本当だ」
「この嘘吐き男…!」
 K・Kは苦い顔で吐き捨てる。溜め息をついて金髪をかき上げた。
「で?独立の話は本当?」
「何処で聞いてくるのかなぁ…」
 スティーブンは呆れたように呟く。
「クラっちは知っているんでしょうね」
「僕の独断で決められるわけないじゃないか。心配しなくても、今はまだ牙狩りの傘下にいるよ。今はね」
「この腹黒が…」
 取りあえず戻ろうかと言ってタクシーを捕まえ、K・Kと並んで後部座席に乗り込む。何やら戦隊モノのような音楽が流れて、横を見ると彼女の携帯からのようだった。
「ハァイ、ママだよー」
 猫なで声のK・Kに苦笑いすると鳩尾に肘が入る。スティーブンが腹を抱えて痛みに耐えている間に要件は終わったようだ。
「君は結婚したら家庭に入ると思っていたよ」
 目をぱちくりしたK・Kはスティーブンの言葉に呆れ返る。
「それはアンタの願望でしょ。私は辞める気は無かった。大切なものを守りたくてこの力を手に入れたんだから」
 そこには一切の迷いは感じられない。守れなかったものが彼女をここまで大きくしたのだろう。
「男らしいなぁ」
「さっきから喧嘩売ってんの?」
 降参の意を込めて両手を上げて肩を竦める。
 守りたいもの、か。スティーブンは思考の海に沈み込んだ。  
 子供の頃は無論あの日溜まりのような場所だった。スターフェイズ家に来て牙狩りになってからは、あの子達の平穏を守りたいと思っていた。あの事件の後からは正直何の為に戦っているのか分からないことが多かった。今はどうだろう。
 ライブラのあるビルに到着して、見た目は何の変哲も無いエレベーターへ乗り込む。幾重にも刻まれたセキュリティや術式をくぐり抜けるとようやくいつもの執務室だ。
 ソファーの上ではレオナルドとザップが珍しく仲良く昼寝をしている。ツェッドは水槽だろうか。チェインは人狼局の仕事だっけ。紅茶の香りがするからギルベルトさんはキッチンだろう。クラウスは・・観葉植物に水を上げている後ろ姿が見えた。振り返って、エメラルドの瞳が穏やかに細められる。
「おかえり、スティーブン」
 耳に馴染む低い声。    
 
 ああ、分かったよ。  
 この一言の為に、守りたいのはこの世界だ。

とある男の半生 1 (血界戦線)

2015年12月19日 23時27分56秒 | その他妄想文。
もしスティーブンがウルフウッド(トライガン)のような生い立ちだったら なif話。
クラステ風味です。


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 真っ白な教会に鮮やかな緋色のカーペット。新たな門出を祝うように青い空が広がり色とりどりの花弁が風に舞う。愛しい伴侶と共にゆっくりと階段を下る彼女は最高に幸せそうだった。太陽の光だけではない、あまりの眩しさにスティーブンは目を細める。マーメイドラインの純白のドレスは細身の彼女によく似合っていた。
「もう少し前に行ったらどうかね?」
 気遣わしげなよく知る相棒の声にスティーブンは苦笑した。
 あまりに場違い過ぎてね。
 そう言えば否定してくれるだろう相棒の言葉が容易に想像出来て、「大丈夫」と言うに留める。不服そうなエメラルドの瞳に気づかないふりをしながらフラワーシャワーの中を歩く彼女を遠くから見つめた。
 スティーブンの胸中は複雑だった。喜びと寂しさと後悔が混じりあい…この式に出たくて堪らなかったであろう人を想う。
 目を閉じると在りし日の光景が浮かんできた。明るい太陽と青空、漆喰の壁が遠い故郷を思い出させたせいかもしれない。

****

 スティーブンは実の両親のことを全く知らない。だがそれを寂しいと思ったことはなかった。周囲は似たような境遇の子供達ばかりだったし、母親代わりの優しいシスターがいたからだ。シスターは教会での仕事をしながら小さな孤児院を切り盛りしていた。明るい茶色の髪を三つ編みにして、化粧っ気のないそばかすだらけの顔はお世辞にも美人とは言いがたかったが、愛嬌があり、母性愛に溢れた人だった。子供達はシスターを慕ったし、貧しい孤児院では皆が助け合って暮らしていた。
 スティーブンは一番年長だったためシスター不在の間は下の子供達のおしめを変えたりミルクを与えたりしたこともある。ザップ辺りが聞いたら、目を剥きそうだ。レオナルドは「スティーブンさん、子供嫌いそうなのに」、ツェッドは「一人っ子かと思いましたよ」と言いそうなので、実は大家族だった、というのはクラウスと極一部の人間しか知らない。
 スティーブンがまだ「スティーブン・A・スターフェイズ」と名乗る前の話だ。





「エステ兄!!」
 泣き声混じりの子供の声がして振り向くと強烈なタックルを食らわされた。受けとめきれずに後頭部を強打し、生理的な涙が溢れる。
「いった~」
 痛みに悶えるエステバンには構わず抱きついた子供は自分の主張をまくし立てる。
「ケイが僕のクレヨンを返してくれない!」
「ルイスが悪いのよ!!あのクレヨンはヨハンナのものでしょ!!」
 ケイ…ファーストネームの頭文字がいつの間にか呼び名になってしまった金髪の少女はエステバンの後ろに隠れた少年をきつく睨み付ける。まぁまぁと宥めようとしたエステバンにも火の粉がかかるのは何時ものことだった。
「ヘラヘラしてるんじゃないわよ!!その顔…むかつく!!」
「えー…」
 ケイはエステバンの2つ年下で金髪と青い目、整った顔立ちがまるで人形のような少女だった。その幼くも美しい顔で怒ると凄く怖い。曲がったことが大嫌いな彼女は孤児院の中でも目立つ存在だった。すぐに手が出るのが玉に傷だが。
「あらあら、どうしたの?」
 困ったような声でシスターが顔を覗かせる。ケイの声は小さな孤児院には響き渡る音量だった。シスターを見ると途端にしゅんとなる二人の子供にエステバンは思わず口許が緩む。膝を折り、子供の目線で双方の言い分を聞くシスターは神に遣えるというよりも母としての色が濃い。ケイはシスターの言うことはよく聞く。すでに青い目には薄い膜が張っているようだった。エステバンはこっそりキッチンに向かって、籠の中から収穫したてのトマトの皮を剥き始める。説教のあとは泣き晴らした目の兄弟たちがお腹を空かせてくるだろう。食事をして一晩寝てしまえば、いつの間にか仲直りできるのが兄弟というものだ。トマトを潰して、鍋に入れて、あとは適当に具をいれて…そうこうしているうちにパタパタと足音がしてシスターが戻ってきたことが分かる。キッチンに立つエステバンを見て薄茶色の瞳を軽く見開いた。
「エステバン、いつもありがとう」
 ふんわり優しく笑ったシスターがエステバンの柔らかい黒髪を撫でる。少し照れ臭くて顔を背けた瞬間、包丁で少し指を切ってしまった。じわりじわりと滲む血液がポタリとまな板に落ちた瞬間、ピシリと血液の形そのままに薄氷が張る。
「え?」
 氷は一瞬にして溶けたため、エステバンは首を傾げた。見間違えたのかとも思ってシスターの顔を仰ぎ見る。
 シスターは見たことないくらい顔面蒼白になっていた。




 エステバンに里親が見つかったのはそんな出来事があってから半年後のことだった。スターフェイズというアメリカ屈指の大富豪。兄弟たちは皆で喜びあい、エステバンの為に細やかなパーティを開いてくれた。手作りの飾りや温かな料理、いつもはめったに食べられない甘い甘いケーキ。これからは毎日美味しいものが食べられる、好きなことを学べる、畑仕事で手がささくれることもない、喜ぶ皆をみてエステバンは寂しさと不安を押し殺して笑顔を作った。皆、家族というものに憧れている。それが戸籍上のものでも里親が見つかるというのは喜ぶべきことだった。
 それが分かっていてもエステバンは何故か胸に鉛が落ちたように苦しかった。突然こんな片田舎の孤児に里親の話がきて茫然とした。養父母は未だ会いに来てもいないというのに、どうして僕が?
「っ…!!いい加減にしなさいよ!」
 ケイが大声を張り上げて、騒がしかったパーティ会場が水を打ったように静かになる。エステバンを真っ直ぐ睨みながら、つかつかと靴音が不自然に響く。ケイはピンと背を伸ばしてエステバンの真向かいにくると胸元を掴み引き寄せた。
「何で笑ってるの!?辛いなら泣きなさいよ!あんたのその貼り付けたような笑顔がだいっきらい!!」
 ぽかんと思わず口が空いてしまう。ケイは泣きそうな顔をしている。手も心なしか震えていた。
「あんた達もよ!何エステバンが居なくなることを喜んでるのよ!…っ!馬鹿じゃなっ…」
 言葉は尻切れて勢いを無くす。同時に青い瞳からぽろぽろと涙が溢れる。ケイの涙に連鎖するように静寂が破られた。
「~~~エステ兄!行っちゃやだよー!!」
「兄ちゃん、行かないで!」
「アメリカなんて遠いよ…」
 堰を切ったように泣き出した子供達にエステバンも限界だった。俯くと見慣れた床板に小さな沁みが増えていくのが分かる。
「いつでも帰って来たかったら帰って来なさい!!ここがホームなんだから」
 ケイがエステバンに抱きつく。胸の中の鉛がじんわりと溶けていくのを感じながら、エステバンはなんて幸せだろうと思った。今日のことを思い出せばきっと生きていける。  一番後ろで子供達を見ていたシスターは肩を震わせ誰にも悟られぬよう懺悔した。
「ごめんなさい、エステバン…」
 愛し子達の泣き声に紛れてシスターの声は誰にも届くことはなかった。




 スターフェイズ家は牙狩りの中でも五本の指に入る名家だった。元を辿ればイギリスの爵位を持つ家に連なるらしい。だがアメリカに渡ってきた経過を考えれば本国にいられなくなった没落貴族なのだろう。アメリカで商才を伸ばし巨万の富を得るのと同時に牙狩りとしての能力は著しく低下していった。
 その血は絶える寸前とも言える。本家筋の老夫婦にはすでに子供は望めず、分家にも牙狩りとしての素質を持った者はいなかった。苦肉の策でとったのが才能のある子供を養子として迎えることだった。
 そうして牙狩り本部から紹介されたのはスペイン片田舎の孤児である少年。古くさい伝統を重んじ、名家としてのプライドだけは高いスターフェイズ家の人々が苦虫を噛み潰したのは言うまでもない。英語は喋れるのか?訛りは酷くないか?基本的な礼儀は身に付いているのか?そもそも本当に牙狩りとしての素質があるのか?とても歓迎する雰囲気とは言いがたかった。
 だが英語圏に合わせてスティーブンと名乗った子供は想像以上に優秀だった。スターフェイズの姓を与えられてすぐにスティーブンはアメリカの本家ではなくイギリスの全寮制の寄宿舎に入れられた。昼間は学業をこなしつつ夜は牙狩りとしての訓練。望まれていたのはスティーブン個人では無く牙狩りの血のみだった。老夫婦はスティーブンを邪険に扱うことはなかったが、基本的には無関心だったし、始めは煩かった分家の人間もスティーブンが力をつけていくに従い掌を返すように媚を売るようになった。スティーブンは冷めた目で滑稽な親戚達を見ながら社交辞令だけが上達していくのを感じた。
 三年後には己の血の特性を理解し、エスメラルダ式血凍道を極めて、史上最年少で初陣を飾った。
 血凍道にもいくつか流派がある。その中でスティーブンがエスメラルダ式を選んだのは懐かしい言葉と足技がかっこいいから、という子供らしさを残した理由だとは実は誰も知らない。





 クラウス・V・ラインヘルツには長い間、顔も性格も知らないが気になっている人物がいた。牙狩りの世界にその名の通り流星の如く現れた彼はクラウスとほぼ同年代だった。史上最年少で牙狩りとして多大なる戦績をあげて今や4年目になる。名家の出でありながら社交界の場には一切顔を出さず、黙々と血界の眷属を狩る彼は何時しかクラウスの憧れのようになっていた。
 ラインヘルツの滅獄の血を持つ者として厳しくも温かい環境で育てられたクラウスは16歳にしてようやく前線に出ることを許された。それは遅くも早くも無かったが、前例がある分、クラウスには遅く感じられた。
 
 初任務は南フランスの穏やかな農村でのことだった。夜になると青白い光が墓地を包み、死体がいつまでも瑞々しいのだという。とある事件で亡くなった被害者の遺体が埋葬後に必要になりフランス警察が墓を暴いたところ発覚した、フランス警察からの依頼だった。
 つまり現代の科学捜査でははっきりした原因が分からず、もしかしたら血界の眷属が関わっているかもしれないということだ。グールの可能性もある。クラウスは牙狩り本部から送られてきた情報に目を通すと、作戦メンバーの中にある人物の名前を見つけた。スティーブン・A・スターフェイズ。
「ふむ」
 顎に手をあてて考え込むクラウスの姿は落ち着き払っており、とても16歳とは思えぬ貫禄だ。だが幼い時から側にいる老執事にはクラウスの気持ちが手に取るように分かった。
「嬉しそうですね、坊ちゃま」
「うむ。やっと彼に会えるようだ。ギルベルトの紅茶も暫く飲めなくなるな」
 クラウスの言葉ににっこりと微笑んだ執事は、これから戦場に行く主の為にとびっきりの紅茶を淹れた。




 フランスに到着するとクラウスを待っていたのは一人だけだった。まだ血界の眷属が関わっているかは分からない調査の段階なのでメンバーはたったの四人。ツーマンセルで行動することになり、うち二人はフランス警察に事情を詳しく聞きに行ったという。やはり文書だけでは分からないことも多いのだろう。
 クラウスと組んだのは柔らかそうなブルネットの髪にグレーの瞳をした、すらりと背の高い男だった。
「クラウス・V・ラインヘルツです。御指導御鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます」
 一番経験の浅いクラウスは先輩に失礼のないよう頭を下げる。相手は困ったように笑いながら頭をかいていた。
「そんなに畏まらなくていいよ。僕はスティーブン・A・スターフェイズだ。宜しく」
 その名を聞いてクラウスは巌のように固まった。確か彼は自分と同じくらいの年代の筈だ。だが目の前の男はどう見ても10代には見えない。黒いシワのないスーツを着て、青いネクタイをしている。首には赤い爪痕のような刺青がちらりと見えて、その姿は20代半ばか後半ぐらいに見える。
「失礼だが牙狩り史上最年少で前線に出たというスターフェイズ氏、であっているだろうか」
「スティーブンでいいよ。よく知ってるね。まぁ早く一人立ちしたかっただけだよ」
「では、私のこともクラウスと。宜しくスティーブン」
 クラウスが差し出した手を軽く握ってニコリと笑った。柔らかく笑みを浮かべてはいるが全く隙のない身のこなしだった。クラウスは深く考えるのをやめた。あまり詮索するのも失礼に当たるし、人を見掛けで判断してはいけない。クラウス自身も年齢相応に見られたことがないので、そう思えば気にならなくなった。
「早速だけど現場に行こうか。運転は僕がするよ」
 スティーブンはキーホルダーのついた鍵をくるくる回して、近くに停めてあったワゴン車に近づいた。
「君は大きいなぁ。後ろの席を使ってくれ」
 助手席はクラウスの体格では狭いと判断したスティーブンは後部座席を指差す。そのままスティーブンは運転席に座って慣れた仕草でエンジンをかけた。運転席から後ろの窓にはスモークが貼られておりトランクには大量の重火器が隠されている。車内は微かに火薬の匂いがした。
 会話という会話もなくクラウスは広がる景色を車窓から眺める。暫くはのどかな葡萄畑が広がっていた。色彩の乏しい窓からは分からないが、恐らくたわわに実った黒みがかった紫の果実が風に揺られているのだろうと想像する。あの木の形からして品種はマルベックだろうか…。図鑑並みに植物のことを記憶しているクラウスの脳が明後日の方向に回転し始めた。窓を開けたら甘い香りがしただろう。
「この辺はワインの産地らしいね」
 スティーブンは黙りこんだクラウスが緊張していると思い、軽い感じで話しかける。
「血のように赤いワインとして有名だ。この地域には昔から吸血鬼伝説がある」
「それは…」
 ヨーロッパでは珍しくもない話ではある。一般に吸血鬼伝承というのは医学が発達していなかった時代に仮死状態の人間がたまたま蘇生したことや、黒死病の蔓延などによって生まれたとされている。だがその伝承の中にほんの一握りの人間が血界の眷属に遭遇し、結果吸血鬼としての形がはっきり浮かび上がった。
 その土地に伝承があるとしても大昔の話なので、当てにならないことの方か多い。それでも不吉な予感を助長させるには充分だった。
「ワインは格別らしいから、君の初仕事が終わったら乾杯しようか」
「それは是非」
 灰色の瞳がミラー越しに微笑む。ドイツでは16歳から飲酒可能であり、社交界デビューを済ませたクラウスはワインやビールなら一通り飲むことが出来る。
 そういえばスティーブンは社交界の場には一切出てこない。身のこなしは洗練されており、甘い顔立ちはパーティの華となりそうであるのに。その疑問を口にするとスティーブンは困ったように笑う。
「パーティは嫌いじゃないけど…そうだな、一度経験してみてもいいかもな。クラウス、君がいるなら行こうかな」
「心にも無いことは言わないことだ、スティーブン」
 クラウスの言葉にスティーブンは目をぱちくりさせた。クラウスは言ってから、初対面の人間には不適切な言葉だったかと思い至る。だが自分は嘘やお世辞は苦手だった。
 スティーブンが先程から自分に気を遣っているのが分かる。ラインヘルツ家の家名は重く、そういうのは今までも幾度となくあったが、スティーブンが言っているのはまた違う種類のような気がする。誰をも魅了するような笑みを浮かべながら、その実、一歩も内面には踏み込ませない氷のような壁。
「私はまだまだ若輩だ。そのように気を遣わず思ったことを率直に話して欲しい」
 呆気に取られたような顔から、スティーブンは吹き出した。それは素の顔のように感じた。
「君は真っ直ぐなんだなぁ」
 眩しいものを見るような瞳がクラウスに注がれる。
「お偉いさんの集まる堅苦しい場所は苦手なんだ。でも君がいるなら行こうかな、というのはたった今本音になったよ」
 悪戯っぽく笑う彼は少しだけ幼く見えた。



   
 現場の墓地に着いたのは既に日が沈もうとしている頃だった。オレンジ色の光が白い墓石や十字架を染め上げて、影を伸ばしている。発端となった生きているかのような遺体は警察が持っていった。そちらは他の二人が見に行っている。蘇生しては大変なので厳重な封印が掛けられているが、今のところ封印が破られたという連絡はない。他の場所も掘り返してみたいが当然ながら納得出来るだけの理由がないと遺族が許さなかった。
「おたくの家族が吸血鬼かもしれないから墓を見せてくれ、って言えばいいのにねぇ」
 少しばかり剣呑な空気を漂わせてスティーブンが呟く。先程のクラウスの話に猫を被るのをやめたのか、少なくとも遠慮は感じられなくなった。
 科学の時代に吸血鬼の話をすれば、新手の詐欺師かと思われる可能性がある。牙狩りの組織はアンダーグラウンドでは有名だが、流石に一般市民は聞いたことないだろう。そう話すとスティーブンはふふん、と鼻を鳴らした。
「甘いなクラウス。20世紀に入ってからも吸血鬼事件というのは起こってる。トチ狂った村人が死人の心臓に杭を打ち込んだ事件だ。血界の眷属じゃなくてつくづく良かった。こういう閉鎖的な村で、吸血鬼伝説があれば、意外と了承してくれると思うんだがなぁ」
「だがそれでは村の人々を余計な混乱に巻き込むことになる」
「真面目だね」
 スティーブンも本気で村人を巻き込もうと思っているわけではなさそうだった。クラウスを揶揄する響きはない。掘り起こしてから「吸血鬼では有りませんでした」となれば問題は避けられない。それをスティーブンが分かっていない筈がなかった。彼なりの冗談(それにしてはブラックジョークだが)なのかもしれない。
 例の遺体が掘り出された場所は、既に土がならされて墓石も元の位置に戻されていた。資料がなければ分からなかっただろう。特に変わった所は何処にも見当たらない。
 スティーブンは墓地の中をフラフラと歩いている。クラウスには彼が何を見ているのか良く分からなかった。全く別の関係のない墓場の墓石を指でなぞったりしている。色とりどりの花や果物が供えられた墓石の数々。太陽はその身を潜めて薄闇が視界を覆い始めた。
「ふぅん…」
「スティーブン、何か分かったのかね?」
「んー多分ね。今夜2時にまたここに来ようか。少し準備するものもあるし」
 



 スティーブンはクラウスに少し仮眠するように言ってから、何処かへ出掛けて行った。小さな古びたホテルにぽつんと残されたクラウスは改めて今回の資料を読み直したり、南フランスの吸血鬼伝説などを調べていたが直ぐに手持ち無沙汰になってしまった。言われた通り仮眠をしようとも中々寝付けない。
 スティーブンはクラウスの想像とは全く違う不思議な人だった。何となく神経質そうで生真面目、厳格、そんな人柄を資料の上で想像していた。
 彼が部隊を率いる立場になってからの過去の戦歴は緻密な作戦が前提とされていることが殆どだった。大胆な実力行使の時も充分な勝算があり、無謀と呼べるものは見当たらない。スティーブン自身も相当な戦力になる筈だが、その頭脳はむしろ参謀向けだ。クラウスは彼の立てる作戦に、完成されたチェスのゲームを見たときのような高揚を不謹慎ながら感じることがあった。これが10代の少年がやったことなのだから、驚きを禁じ得ない。 日付が変わろうする頃、スティーブンは漸くホテルに戻ってきた。スーツ姿からTシャツとジーパン、その上にカーキ色のジャンパーというラフな格好に着替えている。そうすると幾分か若々しく見えた。
「おかえりスティーブン」
 そう言うとスティーブンは少し目を見張ってから微笑んだ。
「ああ、ただいま。遅くなってごめん。早速だが例の場所へ行こうか」
  

  
 車の中でスティーブンはゴーグル付きの解毒マスクのようなものをクラウスへ手渡す。状況が掴めずにいるクラウスに笑って車を出す。
「この目で見るまでは確定出来ないが、恐らく今回のことは血界の眷属じゃないよ」
「確かに不可解なことは多かったが」
「異界の生き物がこちらに迷い混むことはそんなに珍しいことじゃない。牙狩りの仕事はこういうことも多いんだ。血界の眷属相手にドンパチやるほうが実際は少ないかもな。僕もエルダークラスにはまだ当たったことはないよ。そんなに頻繁に出没していたら、人類などあっという間に滅んでしまうだろう」
「今回は異界の生き物が原因だと?」
「多分ね。きっと良いものが見れるよ」


 車を下りて暫く、墓地が近づいてくる。あたりは街灯もなく、今夜は新月だ。星以外に照らすものはなく闇が深い。スティーブンがマスクを着けるよう指示する。ゴーグルを着けた瞬間、急に視界が明るくなった。暗視ゴーグル…というわけではなさそうだ。光源は墓地の方からだった。思わずスティーブンの方を見ると彼はゴーグルだけ着けている。
「マスクはしないのかね?」
 解毒マスクをする、ということは毒か何かが空気に含まれていることなのだろう。訝しげなクラウスの視線にスティーブンは軽く両手を挙げる。
「僕は特殊な体質でね。耐性があるから大丈夫。ほらもうすぐ着くよ」
    
 墓地全体を覆う青白い光にクラウスは目を疑った。それは何百何千という蝶の大群だった。青く光る蝶がふわふわと頼りなげに浮いている。一見すると異界の生き物には思えない、形だけならこちらの世界にもいそうな蝶である。
「ゴーグルだけ外してごらん」
 言う通りにすると光は消え失せて、あたりは漆黒の闇に包まれる。ゴーグルをつけ直すとまた蠢く蝶の群れと眩しすぎる位の光。成る程、通常の人間の目には見えないらしい。
「地獄蝶、夜光蝶、黒骨蝶…などなど色んな呼び名があるけどね。古来蝶は死者の魂を運ぶとされている。これがもしかしたら伝承の元なのかもしれないね」
「では遺体が瑞々しかったのは…」
 ここまでくればクラウスも文献で読んだことがあった。夜になると発光し、死臭に群がる蝶の群れ。その燐粉には強力な防腐作用がある。死体収集家の間で高値で取引されており、生きた人間には毒にもなる違法薬物だ。
「どうして分かったのかね?」
「報告書に青白い光が、ってあっただろ。そこでもしかして、とは思っていたんだ。波長の合う人間には見えることもある。あとは現場に行ってから、供えられた花や果物すべてが瑞々しく美しかった。1つも萎れてないのはかえって不自然だ。あとは墓石に少しだけ燐粉が付着していた」
「成る程素晴らしい観察眼だ」
 探偵のように根拠を述べるスティーブンに素直に感嘆する。
「血界の眷属じゃなくてガッカリしたかい?」
 クラウスの能力は血界の眷属相手に特化している。自分の力を試したいと思うのは人間の性だ。
「いや、穏便に解決出来るのならそれが一番望ましい。それにこんなに美しい光景を見ることが出来た」
「君は…何て言うか僕が今まで会ったことない人種だなぁ」
「?」
 苦笑したスティーブンは直ぐに表情を真面目なものに変えた。靴の感触を確かめるようにタンタンと地面を叩く。
「野暮な警察が墓暴きなんてしなかったら、まだまだ君達はここにいられたかもしれないのになぁ。でも知ってしまったからには俺は君達を排除しなければならない」
 蝶に話し掛けるというよりは独り言に近い呟きだった。放っておけばいずれ近隣住民に悪影響が出るだろう。燐粉の状態ではそこまで強力な毒ではないが、体内に蓄積していけば確実に健康を害する。
「エスメラルダ式血凍道」
 スティーブンの足元からふわりと冷気が漂ったかと思うと一瞬で周囲が氷付けになった。宙を漂っていた蝶も残らず氷の柱に閉じ込められている。標本と化した蝶はすでに発光していない。黒い羽に青と白の紋様が不可思議に走っているのが分かった。氷に閉ざされた蝶は完成された彫刻のように美しかった。辺りが静寂に包まれ暗闇が戻ってくる。星の光が氷に移りこんで、きらきらと光った。





 蝶の回収は牙狩り本部へ依頼した。燃やしてしまえばそれまでだがスティーブンの方法だとどうしても死骸か残る。それを悪用しない輩がいないとは限らない。まぁ後始末だけだ。面倒なことは押し付けてしまおう。
「スティーブンの技は美しいな」
 帰りの車の中で唐突に話し出すクラウスに面食らう。これがお世辞なら「そうかい?ありがとう。君の技も見てみたいな」と言って、必要なら手の甲にキスでもしてやるのに、彼の場合はそれが本心からのようでどうにも調子が狂う。エメラルドのような澄んだ瞳はどこまでも見透かされそうで少し怖い。育ちが良いとはこういうことを言うのだろう。自分のような紛い物とは全然違う。
「ありがとう」
 結局単純に礼を言うだけに留まる。どうやら彼は社交辞令を嫌うようだし。気付いているのかいないのかは分からないがスティーブンが気持ちのこもらない上辺だけの言葉を述べると彼の威圧感が増すのだ。自分の言葉の真意がこうも相手に伝わりやすいのも問題だ。
(うーん、ちょっとめんどくさい…)
 そういえば彼女にも貼り付けたような笑顔が嫌い、と何度も言われたっけ。思い出すと自然と口元が緩んだ。 


   
 風が吹けば壊れるまでは言わないが充分年期の入った安いホテルに泊まらなくてはならなかった。お貴族様にはさぞ不自由だろうと思ったがスティーブンの予想に反してクラウスは一言も不平不満は口にしなかった。まぁ言われた所で変える気は毛頭なかったが。戦場に出たら野営や野宿だってあり得る。雨風が凌げる場所とベッドがあるだけありがたい。クラウスが何か言えば彼の評価はスティーブンの中で確実に下がっていただろう。 まだ出会って一日も経たないがクラウスは中々頑固者のような気がしてきた。思ったことははっきり言うし、自分が正しいと思ったことは疑わない。多少の傲慢さは上に立つ者としての天性のものか。16歳とは思えぬ立派な体格はベッドをかなり小さく見せたが、明け方まで動き回っていた二人は直ぐに眠りについた。

 リリリリリ…

 目覚ましよりも早くスティーブンの携帯電話が鳴る。初期設定そのままの機械音にクラウスは既に目を冷ましてスティーブンの方を伺っている。他人の携帯電話に出るわけにも行かず、だが鳴り続ける電話にクラウスは少し困っているようだった。低血圧ぎみのスティーブンの寝起きはあまり良くない。繕うことも忘れて不機嫌さを丸出しにし、電話に出る。二、三言葉を交わすうちに彼の顔色はみるみる蒼白になった。
「エルダークラスが出現した」

 スティーブンとクラウスは服を着替えて素早く車に乗り込む。場所はスペイン南部。フランスの国境を越えて直ぐだ。残りの二人は南フランスにいる他の牙狩り達を集めてジェット機で向かうという。
「小さな街だ。住民の殆どがグールとなっている。潜行チームは既に全滅。僕らは援軍チームに合流する予定だが…現地とは連絡が取れないらしい。とんだ初陣だな、クラウス」
 スティーブンは笑おうとして失敗する。街の名前は知りすぎるくらい知っていた。自分の中の数少ない優しい記憶はそこで育まれたものだ。何故あんな田舎町が。本部からの報告は最悪の想像を掻き立てた。アクセルを踏む足に知らず力が入る。
 街の手前まで来たところでスティーブンは車を下りた。空を見上げると毎日眺めていた青空に映える教会の十字架が見えた。あの別れの日からスティーブンは一度もここに訪れてはいない。自分は変わってしまった。それを兄弟達には見られたくなかった。
 牙狩りの仕事を始めてからは、稼ぎの殆どを教会へ匿名で寄付した。自分のことはスターフェイズ家が惜しみ無く援助をくれる。待望の牙狩りが漸く家から出せたのだ。それも充分な実力を伴って。そのくらいは許されるだろう。
 貧しかった孤児院が少しでも潤いますように、皆が平穏に暮らせていますように、それがスティーブンのささやかな願いだった。
「クラウス、君はここに残って後から来る部隊に合流しろ。僕は一足先に偵察に行ってくるよ」
 血界の眷属と戦ったことは何度もある。だが今ほど恐怖を覚えたことはない。声は震えていないだろうか。彼に心配をかけてはいけない。
「スティーブン、私の目を見て言ってほしい」
 はっとして顔を挙げる。エメラルドの瞳には不安げな顔をした自分が写っていた。クラウスは真っ直ぐにスティーブンの目を見て告げる。
「潜行チームは全滅したのだろう。ここで二手に別れるなど危険だ。私も行こう」「…!!」
 本当は二人でここに残り仲間を待つのがベストだ。二人だけではエルダークラスには太刀打ち出来ない。滅獄の血を持つクラウスがいても諱名が分かっているわけでもない。彼は牙狩りとしては新人でまだ子供だ。平素の自分なら迷わず待機しただろう。だが家族を目の前にして立ち止まることはスティーブンには出来そうになかった。
 クラウスもスティーブンが“らしくない”のは分かっているのだろう。はぁ、と溜め息をついてスティーブンは覚悟を決める。
「この街には僕の家族がいるんだ。僕は養子でね。10歳までこの街で暮らした」
 クラウスは少し驚いたように目を見張る。だが直ぐにその目は強い光を取り戻した。スティーブンは苦笑する。
「ならば急がねば」
「そう言うと思ったよ」
 理由を話せばますます一人では行かせてくれないだろう。短時間しか一緒にいなかったがクラウスの人となりが何故か良く分かってしまった。巻き込むなら理由を説明しなければフェアじゃない。
「生きて帰れないかもしれないぞ?」
「やってみなければ分からない」
「すまないな、クラウス」
「ワイン、奢ってくれるのだろう」
 エメラルドの瞳がきらきらと光った気がした。敵わないな、とスティーブンがスペイン語で呟いた。

三千年前から愛してる

2015年12月19日 23時12分51秒 | 七つの大罪妄想文。
設定として
団長は魔神族と女神族のハーフ
エリザベスは女神族と人間のハーフでドルイドの始祖→転生繰り返す→∞→リズ→エリザベス・リオネス 
捏造甚だしいですね…(;´_ゝ`)
団長と始祖エリザベスは幼なじみみたいな感じ。14巻の120ページ2コマ目はそういう伏線じゃないかと信じて!←
団長が謎だらけなのが悪い!気になるじゃんよー!!
女神族は何となく幽白の氷女のようなイメージしてます。女だらけの集団。
よろしければお進み下さいm(__)m



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 朝を知らせる鳥の声が新緑の枝の奥から聞こえてくる。木の根元に寝転がっているのは金色の髪をしたまだ年端もいかない少年だった。目を閉じて耳を澄ませ彼女の軽い足音が近づいてくるのを待っている。
「メリオダス?起きてる?」
 予想通りの柔らかい声音が優しく耳朶に触れる。彼女がそっと隣に座ったのが気配で分かった。
「もう!狸寝入りでしょ」
 細く柔らかい金の髪に指を絡める彼女が少しだけ怒ったような、拗ねたような声を出すので自然と口角が上がってしまった。ゆっくりと瞼を押し開くときらきら光る銀色の髪が目の前に揺れている。
「おはよ。エリザベス」
 ふわり、と優しく笑ったメリオダスにエリザベスは少し頬を赤らめた。色彩の異なる左右の瞳を少年から逸らすと、その隙にちゃっかり膝の上に頭を乗せてくる。手を伸ばしてエリザベスの頬を包み込み、顔を覗き込む翡翠の瞳。魔神族は皆、漆黒の瞳をしているが彼だけは違う。それが彼の母から譲り受けたものであることは周知の事実だった。
「綺麗な瞳だ」
 エリザベスの思考をなぞったように少年は笑った。エリザベスは自身の目があまり好きではない。右目は女神の力を受け継いだ証。人間と女神の間の子であることを示している。
「右目は夕焼けの色、左目は晴れた空の色だな」
 幼い顔立ちで大人びた表情をするメリオダスに心臓の鼓動が高鳴る。昔は同じくらいの背丈だったのに、今のエリザベスは頭1つ分くらい彼よりも大きい。年を取らないのは魔神族の血によるものだろうか。いや、女神も魔神族も寿命は同じくらいだ。すると成長の差は自分に流れる人間の血によるものか。女としては自分だけ年を取るのは面白くない。そしてその果てに待つのは……。
 ぶるりと身を震わせたエリザベスにメリオダスは身を起こして首を傾けた。外套をエリザベスの肩に掛ける。 お互い半端者同士、いつの間にか気を許せる唯一の相手になっていた。こうして二人でのんびり出来る機会は残り少ないことは口に出さなくてもわかる。
 戦争が近い。女神にも魔神族にも疎まれているメリオダスはどうするのか、聞きたいけど怖い。エリザベスは何度も言葉を飲み込んだ。
「メリオダス…」
「ん?」
 翡翠の瞳に映る自分の目は不安に満ちていた。それを汲み取ったかのように小さな唇がエリザベスの額に優しく触れる。
 このまま時が止まってしまえばいいのに  
 エリザベスはそう思わずにはいられなかった。





 封印のレリーフの前にメリオダスは呆然と立ちすくんでいた。魔神族の気配も女神族の気配もしない。愛しい人の気配も。
 震える手でレリーフに触れる。何故自分は封印を免れたのだろうか。この身に流れる女神の血のせいだろうか。だがメリオダスは女神から疎まれている存在であり、彼女達が見逃すとは思えなかった。女神の力は基本的に女性しか使えない。自分には禍々しい魔力以外の力はなく封印に抗う力はないように思えた。レリーフに額を寄せるとまるで生きているかのような鼓動が聞こえる。そしてこの温かな力は…
 翡翠の瞳に涙が浮かぶ。
「エリザベス…」
 封印の人柱となったエリザベスの力がメリオダスを助けた。それ意外に考えられなかった。
 膝の力が抜けてその場に踞る。守れなかった。自分とは、戦争とは関係の無い場所で暮らしていて欲しかった。
 彼女が戦いに身を投じたのはきっと家族の為なのだろう。風の噂で人間の男性と結婚し子供にも恵まれたと聞いていた。胸が締め付けられるような思いだったが、彼女とは時の流れが違う。最後に別れを告げた時の泣き顔が鮮明に思い出される。オッドアイが涙に濡れて美しいと思った。彼女に出会わなければ出来損ないの魔神族の一人として、殺戮を繰り返していたかもしれない。愛しくて愛しくて、だから遠ざけた。
 それなのに彼女に流れる女神の血が戦いから逃れることを許さなかった。人柱となったエリザベスは転生を繰り返し、その身は封印を解く為の鍵となる。未来永劫、封印を解こうとする輩に狙われ続けるだろう。ならば…
 爪が掌に突き刺ささるくらい強く拳を握りしめる。翡翠の瞳に決意の光が灯った。
(俺の命が尽きるまで、お前を守り続ける)





 深い森の奥にはドルイドと呼ばれる人々が暮らす集落があった。彼らは余所者を恐れ、外部との接触を極端に嫌がる、女神を崇める一族。始祖は女神と人間の混血児だったが二千年もの月日は女神の血を薄れさせており、「巫女」と呼ばれる少女以外はほぼ普通の人間と同じだった。
 そのドルイドの森に一番近い村にメリオダスは住んでいた。
「今度の生も大丈夫そうだな」
 二千年エリザベスの魂を見守り続け、ばらばらに崩したレリーフの一部である常闇の棺を肌身離さず持ち歩く。全ては魔神族を蘇らせない為、彼女の想いを受け継ぐ為だった。基本的にメリオダスはエリザベスと会うことはない。転生した彼女には彼女の生を歩んで欲しい。わざわざ平和な暮らしをしているエリザベスの生活に水を差す必要も無いだろう。エリザベスがすくすく成長して、大人になって、結婚して、子供を生んで、孫に囲まれて死ぬ。その姿を何度も何度も見てきた。時には病で早世することもあったが、それは自然な出来事として手を出すことはしなかった。メリオダスが手を出すのはエリザベスの生が不自然に歪められそうになった時だけ。魔神族を蘇らせようと企む不届き者は二千年の中で皆無というわけにはいかなかった。
「しかし、我ながら魂のストーカーだなぁ」
 フライパンにある肉が美味しそうな音を立てて焦げ目を付けていく。それをさっと味付けして皿に乗せた。
「何ぶつぶつ言ってんだ?メリオダス」
 ぴょこん、と耳を立てて薄茶色のウサギが顔を出す。罠に捕まって泣き叫んでいるところを助けたら、そのままこの家に住み着いてしまった。背中には白くクローバーのような形の模様がある、お喋りなウサギだった。
「よく肉なんて食えるな。人参くれ」
「はいはい」
 収穫したばかりで葉のついた人参を押し掛け相棒の茶碗に乗せてやる。自身は焼いたばかりの肉にかぶり付いた。
「うーん、まずい」
「焼くだけなのに何でまずいんだよ」
 呆れたような突っ込みをするウサギは人参を葉っぱまで食べ終えると、ぴょんと窓の外を覗き込んだ。先程からゴウゴウと音がする。
「すげぇ雨だな」
 バケツをひっくり返したという形容がぴったりなほどのどしゃ降り。メリオダスが窓の外に目を向けた瞬間、突然地響きを立てて建物が大きく揺れた。咄嗟に相棒の首を掴んでテーブルの下に潜り込む。がしゃん、と食器が壊れる音がした。数分もすれば揺れは収まったが胸騒ぎがする。
「ここにいろ!」
 ペタンと耳を倒したウサギにそう告げて、メリオダスは大雨の中を駆け出した。

****

 悪い予感ほど当たるものはない。ドルイドの村にたどり着いた時、集落の半分は土砂に押し流されて、見るも無惨な様子だった。慎重に神経を研ぎ澄まし忘れることの無いエリザベスの魔力を探るが見つからない。泥だらけの人々を助けながら、巫女の行方を確認するとちょうど土砂に埋もれた場所、神殿にいたはずだ、と教えてくれた。
「おい、あんたあっちは危険だ!」
 ドルイドの人達が叫ぶ。この大雨では二次災害の危険があった。だがメリオダスはエリザベスを探さずにいられない。この土砂崩れは自然現象なのだから天命なのだ、と割りきることが出来なかった。
 …数日後に彼女は結婚する予定だった。幸せの絶頂にいたはずだ。
 神殿から土砂の流れた方向を祈るような気持ちで探すと、ほんの僅かエリザベスの魔力が凪いだ水面に落ちる水滴のような形で感じる。その源の元へ飛び出しそうな心臓を抑えて向かった。
「エリザベス!」
 エリザベスは放り出されたような形で木の上に引っ掛かっていた。木の板に乗って土砂に流されたのか体はあまり汚れていない。メリオダスはエリザベスを抱えて、近くの洞窟へ避難した。

****

 大雨のせいで体が冷えきっていた。洞窟の中で少しでも乾いている枝を探し火を付ける。 エリザベスの顔は蒼白だった。外傷はなさそうだが、何処かを打ったのかもしれない。息が浅く今にも止まりそうだ。
「エリザベス」
 濃厚な死の香りがした。メリオダスは優しくエリザベスの冷たい頬に触れる。金茶の髪が濡れて張り付いておりいつもは髪に隠れてる右目が露だった。メリオダスから伝わる僅かな温もりにエリザベスは朦朧としながらも意識を取り戻した。
「泣かないで…」
 メリオダスは耳に馴染む柔らかい声音を久し振りに聞いた。エリザベスは瞼を開けたが視線は定まらず茫洋としている。橙と空色の瞳。髪の色は違うが瞳の色は変わらない。死の淵にいて尚、他人を思いやることが出来る心も。
「何で泣いているって思うんだ?」
 恐らくエリザベスの目はもう見えていないだろう。俯いたメリオダスの姿を見てはいない。仮に見えていても自分のことがわかるはずがなかった。
 エリザベスは質問には答えず独白のように語り掛ける。
「ずっと誰かを待っているような気がしていました。やっと会えた…」
 喘ぐような呼吸の中で必死に言葉を紡ぐ。
「ずっと、あなたに会いたかった」
 堪えきれない感情が溢れてメリオダスはエリザベスを抱き締めた。土砂をかき分けた時に出来た細かな擦り傷がみるみる癒えていく。どうしてその力を自分に使わないのか、メリオダスは唇を噛み締めた。口腔内にじんわりと広がる鉄の味がエリザベスの魔力が弱まっていることを教える。力の抜けていく体にどうすることも出来ない。
 そのままエリザベスは二度と瞳を開けることはなかった。





 千年前、目の前でエリザベスを看取ってからメリオダスはエリザベスの魂を追いかけるのを止めた。その代わり各地を騎士として点々と旅をし、少しでも魔神族に繋がりそうなことがあれば片っ端から潰していった。そうして今は何の因果か、ダナフォールの聖騎士長に収まっている。
「団長、敵国の女騎士を捕らえたそうですよ」 
「へー」
 興味無さそうに紅茶を飲んでいるメリオダスを他所に、部下達は気ままに話し続ける。
「凄い美人だって噂」
「見てみたいなぁ」
「俺は凄い男勝りだって聞いたぞ」
「やっぱり処刑されるのかな」
「確か名前は……」
「エリザベス」
 メリオダスが紅茶にムセて咳き込む。
「なんだって…?」
 珍しい団長の姿に騎士達の視線が集まった。

****

「どうせ私の体が目的なんだろ!?近づくな!」
 まるで猫の子のように毛を逆立てて威嚇するリズをメリオダスは軽く往なしてセクハラしつつ食事を勧めた。散々ストーキングしたツケなのか、彼女とは切っても切れない繋がりがあるのだと実感し、こっそり溜め息をつく。
「溜め息ついたな!?溜め息つきたいのはこっちのほうだ!!」
 目敏くメリオダスの仕草を指摘するリズに笑いが込み上げる。そうしてますます血を昇らせるリズが可愛くてしょうがない。
(また随分毛色が変わったもんだな) 
 短く揃えた赤毛と同じくらい顔を赤らめてるリズ。どうやら今世はドルイド生まれじゃなさそうだ。もしくはドルイドの巫女が行方不明になったとか?しばらくエリザベスの魂から離れていたメリオダスには見当もつかない。
「まぁまぁ飯食おうぜ」
 席に座るよう促すと嫌々ながらも着いて食事に手を伸ばす。口にした瞬間、彼女の顔がみるみる青ざめた。
「うーん、やっぱりまずいか」
 その日から料理の一切はリズが取り仕切るようになった。





 エリザベスの魂とここまで深く交わったのは初めてだった。リズと暮らしていて自然と懐かしさや愛しさが込み上げてきた。表面的には違うように見えても根っこの部分は変わらない。魂に深く刻まれた想いというのはあるのだろうか。
「リズ…」
 真っ赤な血が雨と共に流れていく。すでに生気を無くした瞳をそっと指で閉じる。   
 どうして守れなかった?守ると誓ったのに。側にいたのに。     
 
 リズの最期の言葉がずっと頭の中に響いていた。





「メリオダス、それが俺の名前だ」

 にかっと笑うメリオダスの前には空色の瞳から大粒の涙を溢すエリザベスがいた。
 幼少の頃から見守っていた小さなエリザベスは国を憂いて再び自分を見つけた。今度は偶然ではない、エリザベスの意思で。誰かを思いやる優しい心根が変わらないことが嬉しかった。
(エリザベスに出会ったあの日からずっと、俺のやるべきことは決まっている)

 今度こそエリザベスの想いを、魂を守る。





『三千年前から愛してる』

拝啓 愛しい親友へ (ハイキュー)

2015年12月19日 23時01分11秒 | その他妄想文。
死にネタ注意。岩及。


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拝啓 岩ちゃんへ

 
 桜の美しい季節になりました。桜を見ると切なくなるのは日本人の性なのかな。岩ちゃんと見た桜のこと、昨日のことのように思い出せます。
 俺達の高校には校舎裏に大きくて古い桜の木があったよね。及川さんにとってはよく呼び出しをくらう場所でもありました。(呼び出しは勿論女の子からのだよ!)4月、みんなバラバラの大学へ進学する前に少し早咲きのこの桜の下で宴会したね。お弁当を持ち寄ってのお花見。本当に楽しかったなぁ。国見ちゃんはいつもより饒舌で金田一は目を潤ませてた。次こそ全国へ行くって言う後輩達は頼もしかったなぁ。岩ちゃん、あの時ほんとはもらい泣きしそうだったでしょ~!及川さんの目は誤魔化せないよ。青城でバレーが出来て良かった。心からそう思うよ。
 大学では岩ちゃんのいない生活にぽっかりと胸に穴が空いたようだったよ。いつも側に居てくれた岩ちゃんの存在の大きさを実感しました。
 勿論バレーは続けた!あっ聞いてよ!何とウシワカちゃんと一緒の大学だったんだよ!?知らなかった…及川徹一生の不覚。昨日の敵が今日の友とはね…。それでも同郷だから、それなりに仲良くしたよ。たまには地元の方言も聞きたいじゃない。決して東京での独り暮らしが寂しかった訳じゃないよ。ウシワカちゃんは愛想ないけど天然なのかな。今時珍しい人種だったわ。及川さんとは正反対な感じ。六年苦しめられた天敵なのに俺のトスであのスパイクが決まると気持ちいいね。ゾクゾクする。
 あーっと…怒らないでね、岩ちゃん。時々お母ちゃんみたいな岩ちゃんの小言が脳内で聞こえることがあって(笑)夜更かしは程々に、バランスの良い食事を心がけて、練習もオーバーワークにならないよう気を付けました。その甲斐あってバレーはかなり良いとこまで行けました♪
 大学卒業後は実業団に入ることが出来たよ!やっぱりレベルが違う。ここでも不本意なことにウシワカちゃんと一緒ですっかり宮城コンビの愛称までついてしまったよ。うーん不本意(大事なことなのでry)
 パンパカパーン!!あっ、引かないで!なんと東京オリンピックの代表に選ばれたよ!!素直に嬉しい!!(*^▽^*)世界のアスリート達の祭典!わくわくしたね~!
 結果は残念ながら銀メダルだったけどね。でも今までは2位ばかりに甘んじてるという悔しい気持ちが多かったけど、こんなに全力を出しきって清々しい2位は初めてかも。ウシワカちゃんが泣いてるの初めて見たよ。次の日の新聞はウシワカちゃんがトップ記事で泣いてるから思わず切り抜いてしまった。勿論及川さんは凛々しく写ってます。
 四年後のオリンピックも目指したかったけど、膝やっちゃってね。引退を決めました。最後の試合は今でも思い出す。何だか凄くスローモーションに見えてね。俺の上げたトスでスパイクが決まって終了。決めたのはウシワカちゃん。も~なんの因縁なんだろうね。岩ちゃん妬けるでしょ?(^o^)金メダルはウシワカちゃんに託すことにしました。あのトビオちゃんがセッターとして入ってきたから、まぁ大丈夫でしょ。高校時代は考えられなかったよね。
 バレーを辞めたら少し俺は放心状態になっちゃった。燃え尽き症候群ってやつ?岩ちゃんのいない穴をバレーに打ち込むことで埋めていたのにまた穴が出来ちゃった。及川さん、繊細だからさ~。
 色々考えて、また一から勉強し直すことにしました。まだ一応アラサーだし若い若い!大学受験、今度は医学部。
 岩ちゃん、俺医者になったんだよ。専門は整形外科。そうスポーツ医。
 やっぱりどこかで関わっていたかったんだろうね。故障に悩まされた俺になら患者の気持ちが少しは分かると思って。思い上がりかな?…でもそう思ったんだ。
 お陰様で今や引く手あまたの名医及川先生です。自分で言うなって?バレーに限らず、野球やらテニスやら、スポーツでキラキラしている若者の相談にのって治療をしてきた自負はあります。おこりんぼの岩ちゃんもこれなら誉めてくれるでしょ。
 

 岩ちゃん、岩ちゃん、岩ちゃん。
 

 岩ちゃんのことを考えない日は無かったよ。あのお花見のあと、線路に倒れていたお年寄りを助けて、俺の前から姿を消した岩ちゃん。かっこよくて岩ちゃんらしくて涙が出ちゃうよ。どうしてあの日に限って一緒に帰らなかったんだろう。俺の用事なんて些細なものだった。一緒にいればそれこそ阿吽の呼吸で助けられたんじゃない?その事ばかりぐるぐるぐるぐる考えてしまう。
 岩ちゃんはいつだって俺に道を指し示してくれた。姿が見えなくなっても、いつも俺の中で語りかける岩ちゃんの声が聞こえた。ボケ及川クソ及川って叱咤激励してくれる。
 その感謝を伝えたくて慣れない筆をとりました。やっぱり面と向かっては照れちゃうからね。
 次に会った時にこの手紙を渡します。
 待っててね、岩ちゃん。
    


 超絶信頼関係で唯一無二の相棒 及川徹より






 陽光に満たされたテラスで手紙を書いていた手が動かなくなった。シワだらけのその手はかつてボールを操り、メスを握って、数多くの人の人生に影響を与えてきた。年季の入った万年筆が転がり落ちて、それに気付いたふわふわの茶色い髪をした男の子が老人の顔を覗き込む。
「おじいちゃん寝てるの?」
 老人のお気に入りのテラスは庭の桜の木が目の前に見える。ひらひらと薄桃色の花弁が青空に舞う様をリクライニングチェアーに座り眺めるのが、この季節の祖父の楽しみだった。少年はいつもの居眠りかと思い、ゆっくりその場を離れた。
 
 天才ではない、と言われたその人は二度と瞳に桜を写すことはなかった。

敗北宣言

2015年12月19日 22時54分54秒 | 七つの大罪妄想文。
メリエリ、バンエレ前提のバンメリです。むしろバン→メリ?


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“いいぜ 殺せよ”

そう言って笑った団ちょにどうしようもなく泣きたくなった。
王都での戦いが終わってから団ちょは王女サマにベッタリだ。王女サマはまだ目を覚まさない。団ちょは変わらず振る舞っているが、見ていてこっちが苦しくなる。譲れないものがあると団ちょは言った。俺にとってのエレインが団ちょにとっては王女サマなんだろうかとぼんやり思う。
リオネスの紋章が入った白い扉から団ちょが出てくる。金の髪が目にかかって表情を窺い知ることが出来ない。
「団ちょ♪」
「バンか」
上げた顔はらしくなく疲れた表情をしていたがそれも一瞬だった。トンファーをくるりと回して肩にかけると苦笑いをする。
「終わったら決着をつけようと言ったのは団ちょだぜ♪」
「ああ、分かってる」
場所を変えようと団ちょは言って背を向けた。その背は小さい筈なのに大きい。唯一背を預けて安心できる相手だった。
街外れの森に着くと団ちょは振り向いて真っ直ぐ翡翠の瞳で俺を見た。揺らぎのない美しい瞳だと思う。これは浮気になるか、エレイン?
「どうした、バン」
一向にかかってこない俺をいつもの口調で呼ぶ。団ちょとの喧嘩はいつも胸が踊って熱くて楽しい。こんな重い気持ちになるのは始めてだ。
「バン?」
首を傾げた金髪に愛しい妖精の姿が重なって、もうだめだな と思った。
「エレイン…」
師匠が言ってた言葉が頭の中でリフレインする。エレインを亡くしてから抜け殻になってた自分を救い上げてくれたのは団ちょだ。エレインを生き返らせたい。だが団ちょを殺すことなんて出来ない。分かっていたから考える時間を自分に与えなかった。こうして時間が空いてしまったのは大きなミスだ。トンファーががらがらと音をたてて地面に転がる。
「おーい、バンさん?」
両手を伸ばし小さくて暖かい体を抱き締める。団ちょは殺気を消した自分の行為を抵抗せず受け入れた。そうして、いつも通りの声で名前を呼ぶから苦しくて堪らない。どくん、と心臓の鼓動を感じて生きてることを実感する。エレインは抱き締めても暖かみも心臓の音もしない。腐ることのない妖精の死体はまるで人形だった。笑う声も笑顔もない。取り戻したい気持ちに変わりはないのに。
「……」
とんとん、と優しく団ちょが背中を叩く。まるで赤ん坊をあやすように。物心つく頃から一人だった。母親なんて記憶にない。太陽を知らない孤独とエレインという存在を知って、亡くしてからの孤独は後者のほうが耐え難かった。死んで会えるなら死んでもいいと願うくらいに。
…きっと似ている。俺と団ちょは。
団ちょも大きな何かを抱えて、それでも笑っている。何故笑えるのか自分には分からないが、メリオダスという男を形作っている器。
…それにどうしようもなく惹かれるのだ自分は。
(惚れた方の負け…ってか…♪)
柔らかい金の髪を指に絡める。団ちょは何も言わずされるがままになっている。矛盾した気持ちが渦巻いて頭の中がぐちゃぐちゃだ。
…もう側にはいられない。
何年ぶりか分からない頬を伝う温かみは、まだ自分が枯れてはいないことを嫌でも教えた。

小学生の会話

2015年12月19日 22時50分28秒 | 七つの大罪妄想文。
バンメリで下ネタ注意報。


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 閉店し片付けもそこそこに終わった豚の帽子亭ではいつもの酒盛りが始まっていた。団ちょが自分の飲みたい分だけ酒瓶を持ってきて手酌する。俺はその横からちょこちょこ酒を拝借した。お、これは林檎のエールじゃねぇか。辛党の団ちょにしては珍しい。
「林檎のエールならオイラにも頂戴」
 キングがジョッキを差し出すので継いでやった。コイツは見た目通りの甘党でフルーツの酒には目がない。そういう俺もどちらかと言えば甘いほうが好きだが。
「これディアンヌも好きそう」
 女共は早々に寝てしまったので今夜は三人だけだ。酒の弱いキングはすでに顔が赤い。飲ませすぎると泣き出して絡むのでとても面倒だが団ちょがいるから別にいいか。俺も遠慮なくエールを飲む。体がぽかぽかして気持ちが陽気になる。やっぱり酒は良い。団ちょは全く顔色を変えず水でも飲むかのようだ。
「団ちょって酔っぱらったことねぇの?」
 単純な疑問。酔ったとこも泣いたとこも見たことない。良くも悪くも喜怒哀楽がはっきり分かるキングとは正反対だ。
「んー・・酔うって感覚がよく分らない」
 ザルにも程があんだろ。ザル通り越して枠か?なんだかもったいねぇ。
「んだよ、その顔」
「別に~♪」
 少し団ちょがムッとした顔をする。ああ、楽しい。
「なぁ、酔うってどんな感じだ?」
 俺を差し置いてキングに話を振る。キングはいつもより三割増しでぽやんとした面だ。
「そうだなぁ・・胸がドキドキして体が熱くなって気持ちいい感じ」「なんかエロいな、それ」
 真顔で言った団ちょにキングがエールを吐き出す。俺は盛大に吹き出した。
「確かにイク時の直前の感じに似てるか♪流石むっつりキング♪」
「違うって!!」
 キングは酒だけのせいではないだろう、耳まで真っ赤だ。笑いが止まらない。ふと、にやにやしている団ちょとキングを見て単純な疑問が頭を霞めた。躊躇わずそのままの疑問を口にする。
「なぁ、二人とも精通してんの?」
「精通?何に?」
「そっちの精通じゃなく、射精できんのかってこと♪」
 キングは再度エールを盛大に吹き出した。団ちょの顔に向かって。金の髪がぺったり頬に張り付いてぽかんとしている。よけなかったってことは団ちょも少なからずびっくりしたらしい。
「ばばばばばば、バン!!君って奴は!!」
 狼狽するキングが面白くて堪らない。だって実年齢はともかく見た目はお子様だ。疑問に思わないほうがおかしくねぇか?自分が精通したときの年齢を指を折って数える。うん、微妙な感じだ。ただキングはおっさんに変身できるからなぁ。そもそも生まれてからずっと子供の姿で過ごす妖精族の繁殖方法がよく分かんねぇ。エレインに聞いてみれば良かったかな。 団ちょに至っては妖精でもないのに子供の姿なのがよく分からん。聞いたことはあるがいつもはぐらかされる。ただこういう話が通じるあたり人間の自分と大差無いだろうと思う。キングはプリプリ怒っている。何だかんだ中身は乙女だ。これを言うと今度はシャスティフォルを戦闘体形にしそうなので黙っておく。
「まー童貞なのは確かだな」
 タオルを持ってきた団ちょがガシガシ頭を拭いてキングに向かって言う。自分のこと・・では無いな。明らかにキングのことを言っている。もしかしたらエールをぶっかけられた事を根に持っているのかもしれない。団ちょは表情が変わらないから分かりづらいんだよ。
「団長まで!ひどいや!」
「何をいう、キングさんや。童貞が悪いことなのか?否。だが千歳越えて童貞というのは魔法使いの遥か上をいくレベルだな」
「流石妖精王♪」
 キングは言葉に詰まって目がうるうるしている。図星だから怒るんだということを分かっているのかいないのか。
「おっ、オイラはディアンヌに操を立ててるんだーーーい!!!」
 肯定の言葉を残してクッション型のシャスティフォルを抱き、飛び去るキング。やっぱ乙女だな♪団ちょは何事もなく飲み直している。ジョッキではなく透明なコップに純度の高いアルコールを注いだ。上手いこと逃げたな~団ちょ。だが一度思った疑問は解消しないとスッキリしないタチなんだ。
「で?団ちょは~~~?」
「ふむ」
 流石に団ちょは顔色を変えることなく、言葉を区切って酒を一口飲む。考えなくても分かるだろーに。
「試してみるか?」
 頬杖をついて笑った姿にゾクゾクした。濡れた髪が艷めいて見えて、どうもかなり酔っているようだと自覚する。幼い容姿に似合わない笑みで躊躇いなく唇を合わせる。柔らかい感触を楽しもうとした瞬間刺すような痛みと強烈な焦熱感があり、それが過ぎると仄かな甘味が舌に転がった。
「スピリタスだよ、バン」
 ゴクリと嚥下してから、体がカッと熱くなり同時にぐらりと視界が歪む。嬉しくないことにそのまま床とお友達だ。最後に見たのはおやすみと手を振る団ちょの姿だった。


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スピリタス;世界最強のお酒。

ユーベルブラット風七つの大罪(解説)

2015年12月19日 22時46分41秒 | 七つの大罪妄想文。
ちょっとした解説。ユーベルブラット未読の方は注意。

<七つの大罪>女神と共に魔神族を封印した七人。死に物狂いで戦って帰還すると逃げた筈の七人がいて不意討ちを受けて殺された。(と思われる)

<七英雄>魔神族との戦いで怖じ気付いて逃げ出した七人。使命を果たしぼろぼろになって帰ってきた七つの大罪を殺して手柄を横取りした。七つの大罪に裏切り者の汚名を着せ、英雄として凱旋。それぞれ広大な土地を与えられ治める。七英雄の治める地以外は辺境と呼ばれ治安が悪い。

<六聖人>戦いの最中、命を落とした者達。七英雄の従者扱いされている。

メリオダス
七つの大罪の一人。種族バラバラな二十人の騎士団を率いた団長。この頃は人間であるにも関わらず妖精族、巨人族にも好かれ、懐の広い人物だった。容姿は三十半ばの中年男性。(手配書の団長の姿)リオネス王国最強の剣士と呼ばれ刀匠(ブラットマイスター)の称号を持つ。元リオネス王バルトラとは旧知の仲。六聖人のリズとは恋人同士。魔神族との戦いの後、大怪我を負い、更に七英雄の裏切りにあって殺されたと思われていたが、魔神族と融合して生き延びた。融合後は子供の姿になり成長が止まる。魔神族の特徴であった黒い煉獄の炎を使う。

エリザベス
七英雄が治める土地の王女だったが、父親が七英雄と対立し難癖をつけられて辺境へ追いやられた。辺境で細々と暮らしていたが姉のマーガレットが七英雄との交渉に出掛けたきり帰ってこず、それを探しに行ったベロニカまで行方不明となる。姉達を探すため城を出た16歳の少女。辺境での戦いのあとは七英雄の真実を見極めるためにメリオダスに同行する。

バン
七つの大罪の一人。人間。六聖人のエレインがバンに不死の力を授けていたため死なずに生き残った。

エレイン
六聖人の一人。妖精族。魔神族との戦いで死んだと思われているが、実は七英雄の一人が不死の泉の杯を狙ってエレインを殺した。今際の際でバンに杯を託し亡くなる。

リズ
六聖人の一人でメリオダスの恋人。実は女神族だったが正体を隠して騎士団に潜り込んだ。戦いの最中に行方不明、死んだと思われている。

さらに蛇足(七つの大罪単行本未収録ネタバレあり)

ユーベルブラットを読んだ方ならご存じですが…辺境でのバンは実は七つの大罪の名を語った偽物です。本物は七つの大罪とは知られずに別の罪かなんかで投獄されてる…のかも?
ケインツェルの立場に団長を追い込んでみたかったんですが復讐に燃える団長というのが何とも想像出来ない。と言うかエリザベス関連以外で怒ってる団長が想像出来ない!←汚名を着せられてもそれで平和なら、まぁいいか ってなりそうな団長…。仲間の敵討ち…というのもしっくり来ないなー。結局は誰かの為に戦う人なんですよね。真顔で淡々と復讐する団長も怖いですけど。その場合エリザベスには復讐する姿は見せたくないと思ってそうですね。あと自分が率いる騎士団の中で裏切り者が出たので、自分で始末をつけるとも思ってそう。
七英雄が結構クズ揃いなので七つの大罪で当て嵌めれるキャラが中々いない。取り合えずヘンドリクセンとドレファスは決まりかなぁ。
エリザベスはエルーニュとアトが混ざりあった立場だったり。アトも何だかんだ王女ですからね…。死にかけのエリザベスに団長が力をあげて(ユーベルブラットのこのシーン実に悶えます)秘めていた治癒の力に目覚めたりしたら良いですね!!エリザベスとリズは多分何処かで関係あるんでしょうが…団長が本編で言ってた「ずっと一緒に戦ってきたあいつの為にも」のあいつって誰なんでしょう。
結局はメリエリで冒頭のあのシーンがやりたかったことが大きい(笑)

ユーベルブラット風七つの大罪

2015年12月19日 22時24分48秒 | 七つの大罪妄想文。
豊穣の地ブリタニア。かつてこの地は神の一族が治めていた。神と言っても他の三種族、妖精族・巨人族・人間よりも魔力が強く優れているというだけで寿命も感情もあり万能ではなかった。三千年前、神の一族の首領、ブリタニアの王とも言える者が狂気に染まり暗黒の時代を迎えた。他の種族は永遠とも思われる永き時間を抑圧されて過ごす。そんな中、神の一族の中でクーデターが起きる。率いたのは若く美しい女神だった。真っ二つに分かれた神の一族をいつしか人々は自分達から見て悪を魔神族、正義を女神族と呼ぶようになった。戦いは拮抗し千年にも及ぶ。勝敗を分けたのは他種族の存在。抑圧された妖精族・巨人族・人間が女神族に力を貸したことが大きな分かれ道となった。三種族の中でも特に勇敢な二十人の騎士達、彼らは彼らの王に神器と使命を与えられ直接魔神族の討伐へ向かう。だが強大な魔神族の力を恐れ、また魅せられて七人が裏切った。死闘の末六人が死んだ。魔神族は多大なる犠牲の果てに封印され、力を使い果たした女神族は永き眠りにつく。裏切り者の七人は討たれ<七つの大罪>と呼ばれた。生き残った七人はブリタニアに平和をもたらしたとして<七英雄>と崇められた。
そうして三種族と七英雄による栄光の時代が始まる。





穏やかな陽光に緑豊かな森の木々がさわさわと揺れる。気持ちのよい木陰を歩きながら、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。よい午後だ。近くには川があるのかゴウゴウとした音が聞こえる。音からして流れが速そうなので、もしかしたら滝でもあるのかもしれない。少し汗をかいたので水浴びでもするか、そう思ったメリオダスは川の方へ足の向きを変えた。しばらくすると谷間が見え、少し古いが頑丈そうなつり橋が架かっている。つり橋に向かって道なりに歩いていると橋の前には美しい森に似合わない武骨な鎧に身を包んだ騎士らしき者が二人、仁王立ちしていた。何だか面倒なことになりそうだな…と思いつつ進路を変えることはしない。
「おい、そこのガキ」
「何?」
メリオダスは足を止めて騎士を見上げた。本当はガキではないのだがそんなことがこの騎士達に分かる筈もない。無遠慮にじろじろと人の顔を見る男を特に気にした様子もなくとぼけた顔をする。
「金髪に碧の目だな…」
「ちょっと来い!!」
メリオダスの腕を引っ張り森の中へ連れ込む。涼しげな日陰で先程の二人よりは高価そうな黒い鎧を纏った男が木の箱で作った即席の椅子に座っている。鎧の胸には狐の紋章。見る人が見ればわかる、<七つの大罪>強欲の罪バンの紋章だ。
「アリオーニさん!こいつどうですか!?」
「ふん…」
メリオダスを引っ張りだし跪かせるとアリオーニと呼ばれた男は血走った目で顎を掴み顔を向けさせた。蛇が這うような視線でメリオダスを見たあと、溜め息をつく。
「確かに金髪碧眼だが…まだ子供じゃないか」
そう言うとメリオダスを突き飛ばした。軽く尻餅を着いたが、気にした様子もなく平然と立ち上がりコートの土を払うメリオダスにアリオーニの眉がピクリと動いた。
「おい、ガキ。その剣を見せてみろ」
メリオダスの背にはドラゴンの形の柄をした剣があった。何も言わずに剣を鞘から引き抜く。後ろの二人がゴクリと唾を飲み込んだが、すぐにその剣を見て嘲笑を浮かべた。
「刃折れの剣じゃねーか」
「なんだ、見かけだけかよ」
メリオダスはチラリと後ろを見て剣を鞘にしまった。
「護身用だからな。柄だけでもあればそれなりに見えるだろ」
子供らしく無邪気に笑う。
「…百人隊を潰したのは黒い剣だと聞いている。こいつは違うだろう」
「もう行っていいか?」
ひらひらと手を振るメリオダスを見てアリオーニの額に青筋が浮かんだ。
「…お前、気に入らないな。その余裕ぶった態度。一応殺しておこう」
スラリと剣を抜くと鏡のように磨かれた刀身にぱちくりした碧の目が映った。
「おいおい、一応で殺すなよ」
ここまで脅しても怯えない子供にアリオーニは迷いなく剣を降り下ろす。間違いなく刃は脳天をカチ割る筈だったが、次の瞬間メリオダスの姿が消えて剣は地面を抉っていた。上にも下にもいない。数メートル先にメリオダスは立っている。
「…?」
「逃げるが勝ちっ」
唇に人差し指を当て、にしし、と笑う子供。アリオーニは限界まで目を見開く。
「あのガキを捕まえろ!!」
静かだった森に怒声が響き、小鳥達が一斉に羽ばたく。指示された二人が走り出した時、メリオダスはすでにつり橋を渡ろうとしていた。アリオーニは怒りのまま風の魔力を放つとその中の一つがつり橋のロープに当たり、ぐらりとメリオダスの視界か反転する。
「ん?」
小さな体はまっ逆さまに川へ落ちていった。






エリザベスは川の流れの緩やかな所で水浴びをしていた。流れるような銀の髪がしっとりと濡れて光を反射する。ここはエリザベスのお気に入りの場所だった。今日は特に緑と木漏れ日が綺麗だ。小鳥の囀りに耳を傾けて目を細める。腰までの川の水はとても澄んでいて冷たくて気持ちがいい。手で水をすくって顔にかける。もう一度同じ動作をしようとして、ふと水が濁っていることに気付いた。何だか赤いような…?背後からぱしゃんと音がして振り向くと突然川の中から少年が現れた。全身ずぶ濡れで金の髪がペッタリと頬に張り付いている。キョロキョロと辺りを見回してから、青い瞳と碧の瞳が交差した。
「ふむ」
ジーッとエリザベスの裸体を眺める少年にようやく驚愕よりも羞恥が上回り、エリザベスは小さく悲鳴を上げて川の中へ身を隠す。改めて少年を見ると肩がざっくりと割れて血が流れていた。少年の周囲の水は濁って夥しい出血だと気付く。
「あっ、あの…!大丈夫ですか?」
「んー?大丈夫大丈夫」
大して痛そうな表情も無く真顔で、かえってエリザベスが戸惑ってしまう。少年はぐるりと頭を巡らせてから、ざばざば音を立てて岸へ上がると突然糸が切れたようにばったりと倒れた。



エリザベスはそっと少年の目にかかる髪を払った。眠る横顔はあどけなく、まだ大人の庇護を必要とする年齢に見える。ぐっしょり濡れた体は出血も相まってかなり冷えており、エリザベスは暖炉に薪をくべて部屋を暖め、ありったけの毛布を少年に巻き付けた。この村の唯一の医者であるダナ医師に傷を見てもらい薬も貰ったので、あとは少年が目を覚ませば飲ませてやりたい。エリザベスが飲み物でも用意しようと側を離れると微かに少年の呻きが聞こえた。慌ててまだ幼い顔を覗き込むと金色の睫毛が震えて、宝石のような碧の瞳が現れる。
「…リ…?」
乾いた唇が動くがエリザベスには聞き取れなかった。精彩を欠く少年の目に徐々に確かな光が戻ってくる。
「大丈夫ですか?」
「ここは?」
「私の家です。辺境領ゴルムバルクにある村の中の」
「あんたが助けてくれたのか?」
はい、とエリザベスは答えようとして飛び出してきた影に遮られる。
「そーだ!このホーク様が運んだんだぞ!」
「…喋る豚肉?」
「ブ・タだ!!」
ピンク色の大きな豚がエリザベスを庇うように立ちはだかる。
「チビのくせに重かったぞ!」
「そっか、ありがとなポーク」
「ホークだっ!!人に名乗らせておいて自分は名乗らんとは…エリザベスちゃんもトンだ拾い物をしたものだぜ」
「エリザベス?」
少年の目がエリザベスに向けられる。一人と一匹のやり取りを聞いてクスクスと笑っていたエリザベスは居ずまいを正して少年に向き直った。
「エリザベスです。よろしくお願いいたします」
「俺はメリオダスだ。ありがとな。お陰で助かった」
「メリオダスって…」
エリザベスが青い目を見開く。
「おい!あの<七つの大罪>と同じ名前じゃねーか!」
「まぁな」
「悪いことは言わねー。この辺じゃその名前は名乗らない方がいいぜ」
「何で?」
首を傾げるメリオダスにホークは鼻息を荒くする。<七つの大罪>メリオダスは三種族連合騎士団を率いる団長にも関わらず魔神族につき人間を裏切り<七英雄>に粛清された、と言うのが世間一般の知識だ。だが二十年前の話であり、ここにいるメリオダスは生まれてすらいないだろう。エリザベスもホークも疑うこと無くそう思った。
「だだの同名にしても誰もが知る大罪人の名前なんて縁起が良くない…が、この辺境じゃもっと良くない理由がある」
エリザベスの表情が翳る。
「<七つの大罪>不老不死のバンのことは知っているな?二十年前討たれた筈の奴が生きていて、この辺境でまるで王様のように振る舞ってやがる。女、子供をさらって略奪の限りを尽くす。だから皆<七つの大罪>の名を聞くだけで震え上がってしまうのさ」
「ふーん」
メリオダスはホークの話を聞きながらベッドから下りて俯いてしまったエリザベスの顔を覗き込む。青い目からは涙が零れ落ちそうになっていたが、メリオダスに気付いたエリザベスは慌てて涙を拭った。
「お、お茶でも入れますね!!」
そそくさと背を向けて暖炉の上のケトルを持ちキッチンへ飛び込んだ。摘み立てのハーブと輪切りにしたオレンジをポットに入れて湯を注ぎ茶器を整える。エリザベスは胸に手をあてて小さく深呼吸を繰り返した。あの澄んだ翡翠の瞳に見つめられると何故か心臓が苦しくなる。病気だろうか…あとでダナ先生に相談してみよう…。蒸らし時間を確認してトレーに茶器を乗せ隣室へ運んだ。メリオダスとホークはここ最近の辺境のことなど話しているようだった。
「どうぞ」
「サンキュ。温かいな」
大人びた笑顔でメリオダスは器を受け取った。エリザベスはホークにも水を用意してやる。
「あ、お前勘違いするなよ!そういう意味じゃねーからな!」
ガブガブ水を飲んでいたホークが突然メリオダスに向かってプゴッと鼻を鳴らした。水滴が一緒に跳ねるが器用に避けてハーブのお茶に口をつける。
「何の話?」
「この村では女の器を借りた奴は夜這いに行かないと腰抜け呼ばわりされるんだぜ!」
「ほほう?」
メリオダスの目が輝いたように見えた。エリザベスが慌てて真っ赤な顔でホークの尻を押す。
「ホークちゃん!!お仕事は!?」
「あ、そうだ。そろそろ残飯の時間だ!」
ホークはとんとこスキップでもするように器用にドアを開けて出ていった。顔面紅潮したエリザベスはメリオダスの顔を直視出来ず固まる。…夜這い?そう言えばこの村に来てすぐにそんな注意を聞いたような気がした。不自然な沈黙が苦しくてエリザベスは無理矢理話題を変えようと笑顔を作る。
「ホ、ホークちゃんは近くの酒場で残飯処理の仕事をしていて…」
不意に手を取られて気がつくとベッドに体が沈み込んでいた。声を発する間もなく唇に温かいものが触れる。驚いて開いた唇にぬるりとした感触、甘いオレンジの香りがしてエリザベスは頭の中が真っ白になった。するりと服の下を這う手に肌が粟立つ。上手く息が出来ない。まるで自分が自分で無くなるような感覚に目眩がした。エリザベスが酸欠になる一歩手前でどちらのものかわからない唾液が糸を引いて、ようやく唇が解放された。
「気が付かなくてごめんな、エリザベス」
酸欠ぎみのエリザベスの頭には中々メリオダスの言う意味が伝わらない。ただ押し倒されているのに恐怖を感じていない自分が不思議だった。どうやらこの目に弱いらしい。どこか懐かしさを感じる碧…。
「続きをしたいけど…どうやら客らしいぜ」
ちゅ、とリップ音が額から聞こえてエリザベスの意識はようやく浮上した。いつの間にか服のボタンが外れて豊満な胸が零れ落ちそうになっている。顔が熱いなんてものじゃない。慌てて服の前をかき合せてベッドから起き上がるとコンコンとドアを叩く音がしてエリザベスは跳び跳ねた。
「エリザベスちゃん。いる?」
「セネットさん?」
服を整えて扉を開けると眼鏡をかけた禁欲的な美女が籠いっぱいの林檎を持っていた。ダナ医師の一人娘で何かとエリザベスを気にかけてくれているセネットだった。
「父さんが持っていけって。あと怪我人にこれを」
軟膏のようなものと一緒に新しい包帯を渡す。
「傷に縫ってから包帯を新しいものにしてね。明日また見に来るって父さんが。熱が出るかもしれないから一応熱冷ましもね」
「何から何までありがとうございます。上がって行きませんか?」
「もう暗いから遠慮しとく。林檎早めに食べてね」
そう言うとセネットはフードを被って来た道を戻る。エリザベスはセネットの姿が見えなくなるまで見送った。この小さな村の人々は本当に暖かさに満ちている。本来なら余所者である筈の自分を助けて受け入れてくれた。林檎が入った籠を抱えて嬉しさと切なさが滲んだ表情で部屋に戻る。パイにしようか、たくさんあるからジャムも良いかもしれない…パチパチとはぜる暖炉を横切り、林檎をキッチンへ、薬と包帯は寝室へ。入口からベッドが見えた瞬間、数分前の出来事が蘇り体が硬直した。一瞬でも忘れていた自分を恨みながら、そっと寝室に足を踏み入れるが何も反応がない。ベッドを覗くとすやすや寝息を立てた少年の姿にエリザベスは脱力する。じっと顔を見ても可愛らしい寝顔の子供にしか見えない。先程までの青ざめた顔には赤みがさしており、そう言えば熱が出るかもしれないとセネットが言っていたことを思い出す。少し迷いつつ、メリオダスの頬に手を当てる。ふっくらとした子供の柔らかさと体温。エリザベスには経験のないあの大人顔負けの濃厚な口付けは夢だったのかという気がしてくる。だとしたら、初めてなのにどれだけ自分は欲求不満なんだろう…。エリザベスの百面相を見ている者は誰もいなかった。





メリオダスがこの村に来て五日がたった。ホークに言わせればセクハラ三昧らしいが、あれから口付けをされることはなくエリザベスにとっては何事もなく日常が過ぎていった。メリオダスの傷も順調に回復しており、エリザベスは止めるのだが「働かざる者食うべからず」と言って薪割りや水汲みなどを手伝ってくれた。メリオダスは不思議な少年だった。外見からして年下の筈なのに、大人びた言動や態度でエリザベスを翻弄する。怪我をしているメリオダスにベッドを譲ってソファで寝る筈が、いつの間にか言いくるめられて同じベッドで寝ていたり、エールの種類に詳しかったり、辺境の人間は殆ど行くことが出来ない<七英雄>の地について詳しかったり…。だが自分のことについてはあまり語らなかった。
「エリザベス。終わったぞー」
薪割りが終わってひょっこりとドアから顔を出す。エリザベスはバスケットにサンドイッチと紅茶、林檎を入れて外へ出た。穏やかな風が長い銀の髪を揺らす。
「天気が良いので外で食べませんか?丘の上に見せたいものがあるんです」



エリザベスは村が見渡せる小高い丘にメリオダスを案内した。ちょうど木陰になる真っ白な木の側に敷物を引いてバスケットを置く。長い枝には緑の葉が生い茂り、差し込む陽光にメリオダスは思わず目を細める。両手を広げても、とても届かない大きな幹には十字に傷が刻まれていた。
「これは?」
溝をなぞりながら訪ねる。ほんの微かに魔力を感じた。
「二十年以上前に魔物と戦った<七英雄>の一人が刻んだ傷だと言われています。夜になるとぼんやり光るんですよ。この木があるお陰で村には<七英雄>の加護がある、と言われています」
エリザベスの表情は硬い。村の人間ならば加護があることを喜ぶのではないだろうか。メリオダスはバスケットから林檎を貰って一口かじる。程よい酸味と甘味が口の中に広がった。咀嚼と嚥下を繰り返して林檎が芯だけになると、世間話でもするような軽い口調で問うた。
「エリザベスは何処から来たんだ?」
「え?」
「この村の人間じゃないだろ?」
青い目が大きく見開かれて零れ落ちそうだった。
「どうして…」
「キスした時の反応だな。誘っているのかと思いきや、反応がウブなんだよな」
白い肌がみるみる赤みを帯びていくのをメリオダスはにんまり眺める。
「あとは、そのイヤリング。見たことある紋章だ。確かリオネス王家のものだな」「…!」
太陽と月と星を描いた王家の紋章を身に付けられる者は限られる。それをつけているということはエリザベスの身の上が国王の直系であることを意味していた。
「リオネスの紋章が分かる人がまだいるなんて…驚きました。お察しの通り、私はこの村に来てまだ1年にもなりません」
「出身はリオネス?」
「はい。今は亡き王国です」
リオネスは二十年以上前はブリタニアでも屈指の大国だった。だが当時の国王バルトラが<七つの大罪>の一人を送り出したとして責任を問われ、その地位を追われた。<七つの大罪>を擁護したことも周囲には理解されず追放に拍車をかけた。四年間もの争いののち、今では辺境の領主の一人として一族細々と暮らしている。リオネス王国はその名を変えて今では<七英雄>の一人ヘンドリクセンが治めていた。
「私が生まれた時、国は荒れていました。姉から聞いた話ですが、父は魔神族からようやく自由を勝ちとったのに何故また争わなければならないのか…苦悩していました」
エリザベスは左耳のイヤリングに触れる。一瞬迷うように瞳が揺れたが覚悟を決めたのか真っ直ぐメリオダスを見つめた。
「メリオダス様は<七英雄>について、どうお考えですか?」
<七英雄>はブリタニアの救世主であり、その存在は疑い無きもの。少しでも批判するようなことを口にすれば異端の目で見られる。エリザベスが投げかけた問いは危険なものだった。
「<七英雄>か…」
大樹を見上げる碧の明るい瞳が翳ったように見えた。
「はっきり言えるのは俺には<七英雄>の加護なんて無いってことだな」
青い目を見て淡々と答えるメリオダスの表情からは何も読み取れなかった。エリザベスは小さく息を飲み込んだ。
「何故この村に?」
「姉を探しているんです」
エリザベスが物心つく頃には辺境で父と姉と共に暮らしていた。バルトラは領主として領地の安寧に力を注ぎ、他の辺境に比べて格段に治安も良くささやかだが豊かさがあった。だが一年前、死んだ筈の<七つの大罪>の一人バンが山賊の類いを集めてゴルムバルク周辺で挙兵、領民を略奪と暴力によって苦しめ、その影響は辺境の中で確実に広がっている。
「ゴルムバルクは父の治める領地と隣接しており、ゴルムバルクの領主に援軍を送りましたが、ことごとく捕らえられ……。姉は<七英雄>に援軍を求める為に出かけたきり帰って来ません。その姉を探しに出た二番目の姉も行方不明です」
使者を何度送ったか分からない。<七英雄>からの返事は「王女など来ていない」ということだった。そもそも<七英雄>に国を追われた王女が<七英雄>に援軍を求めることは、屈辱を伴うことの筈だ。それでもバルトラは民を守ることを第一としたのだろう。だが王女は帰らず<七英雄>からの援軍も未だに来ない。辺境の民は見捨てられたのかと思い始めている。エリザベスは膝の上においた手を強く握った。
「途中で賊に捕まっている可能性もあります。私は居ても立ってもいられずこの村で情報を集めていたのですが…」
エリザベスが話終える前に耳をつんざくような爆発音が響いた。同時に大きく揺れる大地に耐えきれず体を伏せる。村の方角から火の手が上がるのが見えた。
「あれは…!」
「フォックスシンだ」
メリオダスが言い終わらないうちにエリザベスは村へ駆け出した。




黒煙が天高く舞い上がる。逃げ惑う人々の悲鳴に、つい先程まで静閑だった村は地獄絵図と化していた。
「金髪碧眼、黒い剣の男を探せ」
狐の紋章を掲げた男達が村の家々を壊して金目の物を漁る。小さな村の診療所も例外ではなかった。患者を庇おうとした壮年の医師が血塗れで横たわり、その娘が傍らで茫然と蹲っている。
「ヘェ、上玉じゃねーか」
セネットに気付いた男達がその顔を見るなり下卑た声を上げた。父親にすがる娘を無理矢理羽交い締めにして彼らの首領の元へ連れていく。
「アリオーニさん!この女どうですか!?」
アリオーニはそう言った部下の顔を鼻が曲がるまで殴り付けた。鮮血が飛び散り、セネットは怯えた表情で顔を背ける。
「金髪碧眼の男だと言っただろう…だが、これは中々良い」
セネットの顎を掴み顔を向けさせる。潤んだ瞳と紅い唇が扇情的だった。
「父さん…」
アリオーニは大粒の涙をこぼす娘を抱き寄せて、無表情にその頬に舌を這わせる。
「喜べ、今日の俺の伴侶にしてやろう」
命令に慣れた傲慢な口調。男の手がセネットの衣服にかかった時、目の前に銀髪の少女が躍り出た。
「セネットさんを…離しなさい!」
途中で転んだのか衣服が泥だらけで息の整わないエリザベスを周りの男達はニヤニヤと眺める。アリオーニの眉がピクリと不快げに持ち上がった。エリザベスに勝算などない。だが世話になった人々を見殺しにして逃げるという選択肢は頭にはなかった。
「やれ」
アリオーニの一声でエリザベスに群がる男達。とんだカモだな、これだけの別嬪なら高く売れる、その前に頂いちまおう、傷物にするなよ、といった声がエリザベスの耳に飛び込む。服を引き裂いて伸びてくる手と欲情した濁った目に鳥肌がたった。
「おいおーい。エリザベスの初めては予約済みなんだが?」
場を壊すような少年の声がして、気が付くとエリザベスはメリオダスの腕の中にいた。エリザベスにのし掛かっていた男達は苦悶の表情を浮かべて蹲っている。
「貴様…あの時のガキ」
アリオーニはセネットを突き飛ばしてスラリと剣を抜く。
「よく生きていたな。今度こそ殺してやろう。目障りだ」
言い終わるやいなや鋭利な風の刃がメリオダスに向かっていく。エリザベスを抱えて横に逸れると地面が大きくえぐれた。人一人の重さなど感じさせない動きでレンガ造りの家の影に来るとメリオダスはエリザベスを離して、自身のコートをふわりとかけた。
「無事か?エリザベス」
「は、はい」
よしよしと頭を撫でる手に、ようやく恐怖が襲ってきて目に涙が浮かぶが、エリザベスは頭を振って感情を振り払おうとする。
「逃げて下さい!あなたを巻き込めません!」
「いや、あいつらは俺を探しているんだ」
「え?」
堪えきれなかった涙が湖水のような瞳から溢れる。それを拭って少年は安心させるように笑う。
「ここに隠れてな。エリザベス」
青い目が驚愕に見開かれる。剣を抜いた左腕に輪になったドラゴンの紋章があった。
アリオーニは手当たり次第カマイタチを放って村を破壊していた。自身の魔力の破壊力に酔ったかのように恍惚の表情を浮かべている。
「あんまり壊すなよ。片付けが大変だ」
「ん~~?」
背後から聞こえた子供の声にアリオーニは血走った目を向けた
「貴様、一度ならず二度までも!何故生きている!!」
「避けたのかどうかも分からねぇなんてな」
メリオダスは折れた剣を構え魔力を込める。刀身が黒く燃え上がった。
「く、黒い剣だと…!!」
小さな子供の外見からは考えられないくらいのプレッシャーを感じ、後退りをする。
「百人隊を潰したのはお前か!!」
「ご名答」
魔力が膨れ上がる。黒々とした煉獄の炎は人ならざる力。少しでも力のある者なら分かる圧倒的な魔力にアリオーニは身震いする。
「何故俺達を狙う!」
「俺が分からねぇか?バンの配下なんだろ?」
メリオダスが軽く剣を振るとアリオーニの体が吹き飛んだ。マントに黒い炎が燃え移り奇声を上げる。叩いても転げ回っても炎は消えない。無表情で見下ろすメリオダスに耐えようのない恐怖が込み上げる。
「貴様一体…!」
口元だけ笑みの形を作ったメリオダスは小さく耳打ちする。アリオーニの表情は驚愕と恐怖に染まった。
「嘘だ。何故そんな姿で…。頼む助け…」
後退りしながら命乞いをするアリオーニに小さなはずの影が大きく膨れ上がるように見えた。
「ままごとは終わりだ」
アリオーニの伸びた手がぱたりと地面に落ちた。黒い炎が収まった後は煤けた地面以外何も残ってはいなかった。