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春夏秋冬。

その時々で思いついた妄想文をつらつらと。
二次創作中心。カテゴリのはじめにからどうぞ。

4・現役女子高生。

2010年02月07日 01時18分23秒 | 魔人探偵妄想文。
一年くらい前に書いたもの。
もう完結しない気がするので未完だけど上げちゃいます。(←貧乏性
それでも良いって方はお進み下さい(^^
気持ちネウヤコ。


====


 学校は弥子にとってネウロの目が届かない、ある意味生活の中のオアシスだった。授業開始前の教室のざわめきは夕べのドラマの話、今日の授業や宿題、新しい噂など生徒達の活気ある声から形成される。弥子はジャムパンをかじりながら親友の叶絵のいつもの恋人談義に耳を傾けていた。また恋人と別れたらしいが、傷ついた様子など微塵も無く新たな出会いについて模索している。よくやるなぁ・・と苦笑を浮かべるとマスカラやアイラインで強調された目をじろり。

「そういうヤコはどうなの?良い人いないの~?」
「うーん・・」

 探偵役を引き受けてから様々なタイプの人間に出会い学ぶことは多かった。しかし恋愛と言われるとそんな艶っぽい話など欠片も浮かんでこない現場。ましてや弥子には叶絵ほど恋愛に対し強い興味が無かった。

「多分今は花龍のあんかけ焼きそばに恋してるかな」
「あんた・・それじゃ一生彼氏出来ないよ」

 
 ガックリと脱力したように肩を落とす。でもまぁヤコらしいと諦め半分の視線を向けた。

「そう言えば今日から教育実習生が来るんだってさ」
「へぇ・・季節外れだね」
「男かな?女かな?良い男だと良いなぁ・・」

 うっとりと両手を頬に添えて妄想の世界へ旅立つ親友。弥子はそんな叶絵の整えられた爪に目をやりながらメロンパンの袋を開けた。

「今日の学食は何かなぁ・・」




 始業開始のチャイムとほぼ同時に中年の担任が教室のドアを開ける。ざわめいていた教室は急に静かになり日直が張りの無い声で号令を掛けた。

「え~諸君らも聞いていると思うが今日から教育実習生が来る」

 生徒達の関心が一気に教卓へと向けられる。弥子は大した興味も無く担任の薄くなった頭を眺めた。

「入りなさい」

 担任が声を掛けるとすらりとした長身がドアをくぐる。再びざわめきが強くなる教室。見慣れた金緑の髪が出てきた時、弥子は雷が己の体に落ちてきたのではないかと思った。

「ネウロ!」

 気がついた時にはもう遅い。立ち上がって大声を発した自分に好奇の視線が突き刺さる。水を打ったように静まり返った教室に淡々とした担任の声が響いた。

「何だ、桂木の知り合いか?まぁとにかく座りなさい」

 恥ずかしさで身の置き場も無い。縮こまるように椅子に座って担任の横に立つ男に恨みを込めた視線を送る。

「脳噛ネウロです。担当は数学。短い間ですが宜しくお願いします」

 にこにこと助手顔でありがちな挨拶を述べるネウロ。いつもと違う黒いスーツを身に纏い少し長めの髪を束ねて銀縁の眼鏡を掛けている。

(私の学園天国がぁああああ・・・・)

 頭を抱えた弥子の苦悩を誰一人知らず生徒達は新しい先生の秀麗さにほぅと溜息を吐いた。




 ネウロはホームルームで簡単な挨拶を述べた後教室を出て行った。予想通り休み時間に入ると他の生徒達の質問攻めにあう。知り合い?どういう関係?名前で呼ぶなんて親しげ。どこの大学?モデルさん?恋人は?他多数。頭が痛くなってきた。とりあえず親戚だと説明し授業の合間の攻撃をかわした。
 そして昼休み。質問攻めにあう前に弥子は教室を抜け出し、購買でパンとおにぎりを腕一杯購入すると屋上へ上がった。冷たい風が吹きつけるどんよりとした曇り空のせいか他の生徒の姿は見受けられない。

「くっそ~ネウロめ・・。今日のB定はマグロの竜田揚げだったのにーーー!!!」

 テレビの未成年の主張のように誰も居ないグラウンドに向かって大声で叫ぶ。幾分スッキリとした表情で手摺に背を向けると、そこには今しがた非難した相手が腕を組んで立っていた。ばさばさと腕の中の昼食達が落ちる。

「奇遇ですね。桂木さん」
 
 一見柔らかな微笑を浮かべているが、その瞳の奥には獰猛な光が宿っている。慇懃無礼な口調がかえって怖い。ネウロが屋上の入り口を一瞥すると音も無く扉が閉まった。ガラリと雰囲気が毒気を帯びたものに変わるが弥子にとってはいつものこと。

「どういうこと!?何しに来たの!?」
「謎があるからに決まっておろう」

 そんなことも分からないのかと露骨に見下した顔。他の生徒が見たら、その変わりように度肝を抜くに違いない。

「だからって・・!実習生として潜り込まなくても」
「ふむ。貴様の学園生活も見てみたかったものでな」
「やめてよ!私の楽園が・・・!」

 言った後で後悔した。しまった、こいつは嫌がらせが大好きだった。
 くいっと眼鏡を上げて喜色に満ちた瞳を弥子に注ぐ。

「安心しろ。我が輩とてそう目立つ真似はしない」

 もう十分目立っている・・喉元まで出掛かった言葉を何とか飲み下した。

「謎って?学校で何かが起こるの?」
「近々な」

 嬉しそうなネウロとは反対に弥子の顔は暗くなる。友人や教師が事件に巻き込まれるのだろうか。

「ヤコ。謎は生まれるべくして生まれるのだ。以前教えた筈だが?」
「こういう時は察し良いんだから」

 思わず唇を尖らせる。

「では我が輩は戻るぞ。楽しみにしていろ」




====


ここまでです。
半端ですみませ・・!
この後ネウロが弥子に超難題を他の生徒の前で当てたりとか色々妄想はしてたんですが、いかんせんオチがつかず・・(え?いつものこと?

お付き合い頂きありがとうございました!

3・二人の関係。

2009年02月15日 20時14分46秒 | 魔人探偵妄想文。
ネウヤコお題。種族逆転注意!

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空腹で目が回りそう。
魔界とは違う澄んだ空気に逆に息苦しさを感じる。
真っ青な空には柔らかそうな白い雲。
ヤコはあまりの眩しさに目を細めた。
魔界の常識は通じない世界・・全てにおいて生きにくいこの世界に来た理由は単純明快。
三大欲求の一つ、食欲という欲を満たす為。
食べても食べても満たされないこの胃袋はとうとうヤコを異界にまで誘い込んだ。
不安が全く無いわけではなかった。
だが神経を集中させるとあちらこちらで食べ物の匂い、即ち謎が花開く気配がする。
魔界と比べて食べ物が溢れている、それだけでここは楽園だ。
口許から垂れる涎。
胃袋から食事の催促のコール。
しかし、ヤコには食事の前にしなくてはいけない大きな関門があった。
後ろ髪引かれる思いで街全体を見渡すと小柄な影は地上に降り立った。


人づてに聞いたここは都内でも有数の進学校。
少ない魔力で念のため姿は見えないようにし誰もいない廊下をぶらつく。
授業中らしく窓から見えた大きなグラウンドは閑散としていた。
目的地は三階の端。
選ばれた生徒のみがいる特進学級。
そっと音をたてないように扉を開けて体を滑り込ませた。
ちょうど学生と教師がやりとりしている。
黒板の前に立つすらりと背の高い少年。

「正解。流石だな」
「先生の教え方が良いからですよ」

にっこりと人の良さそうな笑みを浮かべる。
席へ戻る少年がチラリとヤコの方に顔を向けたが目が合ったと思うのは気のせいだろう。
人間にヤコの姿が見える筈が無い。
暫く一部始終を眺めていたが彼はクラスの中でも秀才と言われる部類らしい。
容姿端麗、頭脳明晰、何より誰にでも優しく慕われている様子が窺える。

(・・うん、決めた)

彼が一人になる機会を待っていると下校の時間になってしまった。
青い空の端の方から金色の光が差し込み少年の髪に反射する。
友人と別れると薄暗い人気のない路地に入っていった。
早足で進む背中を見失わないよう追いかけた。
シチュエーションは良好。
さてどうやって声を掛けようか。
いきなり「自分は魔界から来ました」なんて言っても信じては貰えまい。
小走りで考えていると彼が急に立ち止まって危うく背にぶつかりそうになる。

「ここなら良かろう」

低い声が思考を遮った。
学校の時とは様子の違うその声音に何故が鼓動が早くなる。
ゆっくりと振り向き射るような視線を投げ掛けた。
魔界道具である「無気力な幻灯機」を使用したヤコの姿は見えない筈だった。

「いい加減姿を現せ。五時間前からずっとつけていただろう」

緑の目はピタリとヤコに向けられている。
恐る恐る発動を解除した。

「えっと・・初めまして」

少年は腕を組んでヤコを見下ろしている。
人間の癖にこの威圧感は一体何だろう。
(圧倒されちゃ駄目!何事も最初が肝心なんだから・・)
魔人としての威厳を保ちつつ自分の言うことをこの人間に聞いて貰わなくてはいけない。
ヤコは大きく深呼吸をして緑の瞳を見返した。

「私は魔人のヤコ。究極の謎を求めて人間界に来たの」
「で?」
「・・・・・・」

あらゆる反応を想定していたつもりだった。
驚愕・疑念・恐怖。
その中には全く含まれない彼の反応に逆に狼狽えてしまう。
自分の姿はどこか可笑しいだろうか。
上手く人間に擬態したつもりだったが・・。

「あ、いや、でね・・貴方に謎を解くのを手伝って欲しくて・・」
「何故?」

動じる気配の無い彼に気持ちが折れそうになる。

「謎を食べる為なんですけど・・」

正確には謎を解いた時に放出されるエネルギーだが。
謎は解かなくては食事にありつけない。
しかしヤコは致命的なことに謎を十中八九解くことが出来なかった。
その為解いてくれるパートナーが必要不可欠なのだ。

「フム・・魔人か」

今の説明で理解出来たのだろうか。
目が合うたび体が硬直する。
進学校の中でも特に優秀な彼ならば容易に謎を解くことが出来るのではないかと思ったが相手を間違えたかもしれない。

「すると貴様は誰かに謎を解いて貰わないと飢え死にする というわけだな」
「え・・」
「良いだろう。協力してやるぞ、ヤコ」

無邪気な笑顔は悪気無く虫をいたぶる残酷な子供を彷彿とさせた。
冷や汗が頬を伝う。

ヤコの苦悩の日々はここから始まった。




====


あれお題・・?
いやいや種族が逆転しても二人の関係は変わらないってことで!(無理矢理
ネウロが高校生ってのが無理あった。
せめて大学生にすれば良かったかなぁ・・。
書いてる方は楽しかった!
小ネタはあるのでまた気が向いたら書くかな♪

8・愛情表現。

2009年02月04日 08時15分59秒 | 魔人探偵妄想文。
ネウヤコお題。甘いかも?


====


ネウロが謎を喰べて事件は解決、事務所に戻った時にはすでに日付が変更していた。
チラチラと闇の中に舞う雪を窓越しに見て、電気をつける。
人工的な光が部屋を照らすと、途端に窓は鏡のように私とネウロの姿を映しだした。
あかねちゃんは壁紙の奥に隠れて眠っているようだ。
今日は私も事務所に泊まっていくしかない。
部屋は暖房を入れておかなかった為ひんやりとした空気が漂っている。

「寒いなぁ」
「この程度で、か?」

コートとマフラーをつけた私に対してネウロはいつものスーツ。
気温の変化を感じないわけでは無いようだが魔人にとっては微々たるものなのだろう。

「ネウロには分かんないだろうけど人間には身に堪える寒さなの」
「脆弱だな」
「あんたと比べたら誰だって脆弱・・」

マフラーを外しながら溜息を吐くと後ろから羽交い締めにされてキリキリと首を締め上げる。

「ちょ・・!暴力反対ー!」
「心外だな。暖めてやろうというのに」

楽しげなネウロの声。
息が苦しくなる直前、私が抵抗出来なくなる前の絶妙のタイミングで力を緩める。
締め上げてはいないが長い腕は首に絡みついたままだ。
私よりも低い体温、遅い心拍。
だが生き物特有の温もり。
確かに少しは暖かい。

「ね、元に戻ってみてよ」
「ム、何故だ」
「やれば分かるから」

顔は見えないが不服そうな様子が伝わる。
駄目かな と諦めかけると顔の横からスベスベの黄色い嘴が覗く。

「うーんと・・もう少し」
「どういう意味だ」
「ネウロの翼が見たいの」

ぐにゃりとネウロの腕が歪んだかと思うと大きな二枚の翼が其処にはあった。
紫かがった形容しがたい羽根の色。
私の体はすっぽり翼の中に納まっている。

(ふふっ、天然羽毛♪)

絹のような光沢と肌触り。
柔らかくて軽くて暖かくて。

「貴様、今我が輩と布団を同列にしたな?」
「!!!・・・えっ、と」

何でこういう所は察しが良いんだろう。
考えてみればネウロが私のおねだりを何も言わず叶えるなんて皆無に等しい。
報復を予感してダラダラと冷や汗が流れる。

「ウジ虫が考えそうなことだ」
「だって暖かいんだもん!」

露骨に嫌がるか、黒い笑顔で嫌がらせをするかと思ったが意外にもネウロの声は穏やかだ。
多分に呆れが含まれてはいたが。
動かないネウロを見て体を覆っている翼におずおずと手を伸ばす。

「綺麗だなぁ」
「綺麗?」
「うん」
「面白いことを言う」

興味深げに呟く。
思ったことをそのまま言っただけでどこが面白いのか私には分からない。
そのまま暖かな腕に身を委ねる。
寝静まった街は雪の音とネウロの心音しか耳に届けない。

(あ、やばい)

気持ちよくて眠ってしまいそうだ。
親鳥に守られる雛鳥はこんな気持ちなのかな と溶けそうな脳味噌で考える。

「さてヤコ」
「ん」
「今度は我が輩を暖めて貰おうか」

くるんと体を反転させられ床に押し倒される。
いつの間にかネウロはいつもの人間スタイルに戻っていた。
翡翠の目が悪戯好きの子供の様に煌めく。
しかし子供には出来ない艶やかな笑みを浮かべた顔を見て一気に頭が冴えた。

「え・・ちょっと待っ」
「問答無用」
「あんた寒くないんでしょうがぁあああーー!!」

真夜中の事務所に轟く悲鳴。
助ける者など誰もいなかった。




====


何だかんだいっても弥子は幸せ。
自重しないとこう↓なります(逃


====

~おまけ~

顔の横からスベスベの黄色い嘴が覗く。

ぐぎゅるるるる

「・・・・」
「・・貴様」
「あっいや別においしそうなんて」

====

~美少女は見た!~

深夜の二人の様子を見ていた者が一人・・。

「なんだこれは。脱がせにくいな」
「~~~~っバカっ////」
「まぁ良いか」

ビリビリ

「ああーー!!お気に入りだったのに!!」

(探偵さん・・ムードの欠片もない・・)ホロリ

9・魔界へ帰る。

2009年01月24日 03時11分37秒 | 魔人探偵妄想文。
ネウヤコお題。死にネタ注意!


====


「え?」
「だから魔界に帰ると言ったのだ。一回で理解しろ」

色素の薄い瞳を見開いて驚きの表情を隠さない。
年の割に幼い顔立ちが更に幼さを増して不安げに瞳が揺らぐ。

「えっと・・そっか・・限界なんだね」

魔力が尽きた。
シックスとの戦いに終止符は打たれたが謎も無く極限にまですり減った力はすでに地上で回復するのは難しい。
ヤコは父親が死んだ時のような力の無い笑顔で我が輩を見る。

「元気になったら戻ってくる?」
「魔界の謎は喰いつくしたのでいつかは戻ってくるが・・恐らく貴様と会うことはもう二度とあるまい。地上と魔界とでは時間の流れが違う」
「そっか・・」
「分かったらさっさと消えろ。貴様の顔は見るに耐えん」
「・・どういう意味!?」
「牛乳を拭いた便所雑巾のような顔という意味だ」
「~~っ!最後の最後まで!いいよ、もう!じゃあね、ネウロ!」

舌を出して走り去る後ろ姿を見送る。
パタパタと軽い足音が遠ざかるのを確認して事務所のソファに倒れ込んだ。
まるで糸が切れたかのように押し寄せる倦怠感。
じわりと体中から血が滲む。
唇から溢れた血を拭って仰向けのまま掌を見つめた。

「馬鹿め・・。限界だと言っただろう」

ここには居ない少女に向かって一人ごちる。
魔界に戻る体力なんてあるわけが無い。
まぁこれから先辛気臭い顔で生きていかれるよりはましだろう。
我が輩は優しい主人だな、ヤコよ。

睡魔が襲ってくる。
このまま眠ったら目覚めないかもしれない。
究極の謎が喰えなかったのは癪だがなかなかに面白い人生であった。
このまま息が絶えても人間共には分からないよう細工は施した。
何の問題も無い筈だが・・何故かあのウジ虫の顔がチラついて仕方がない。
本当に重症のようだな。
重い瞼に抗うことなく目を閉じるとすぐに視界は闇に染まった。




・・・?
暖かな感触にふわりと意識が浮上する。
髪を梳くように規則的に頭を撫でる小さな手は覚えがある。
残った気力を総動員して瞼をこじ開けると予想通りの少女の顔。

「・・・何をしてる」
「ばかネウロ。あんたの考えなんてお見通しだよ」

琥珀のような瞳に涙を溜めて今にも溢れ出しそうだ。
泣くな、笑えと何度言ってもこの単細胞には通じない。
視線を部屋の中に彷徨わせ、時計に目をやる。
先程ヤコと別れてから一時間弱というわけか。
ヤコは俗に言う膝枕をしている状態で我が輩を見下ろしている。

「貴様・・その貧弱な足は何とかならんのか」
「なっ・・!悪かったね!」

肉付きの悪いヤコの太股は硬くて寝心地が良いとは言えないが子供のように高い体温は心地良い。
冷えていく体に少しの熱を与えてくれる。
眼球を包む涙の膜を手の甲で拭って、少女は問うた。

「何とかならないの?私・・謎探してくるよ?」
「それで何とかなるなら疾うにそうしている」

ヤコの唇がまだ何か言いたげに動いたが言葉が発せられることは無かった。

「ヤコ、貴様は帰れ」
「やだ」

顔が見え辛い。
逆光のせいだろうか。
命令を無視する奴隷にはきつくお灸を据えねばならないが、喋ることも目を開けていることも億劫で体が良しとしない。
脆弱になったものだと自嘲する。

「ずっと一緒だったんだから最期まで側に居させてよ・・!」

ぽたりと顔に雫があたる。
視界がどんどん暗くなる。
ヤコの醜く歪んだ顔が見られないのは幸か不幸か。
髪の毛があたってヤコが覆い被さっているのが分かった。

「こんなの・・ネウロらしくないよ・・!」

我が輩らしい?
ナメクジが生意気なことを言うようになったものだ。
朦朧とした頭に降ってきたのは最期の意地悪。
鉛のように重い腕を持ち上げてヤコの頭にのせ引き寄せる。
お互いの息がかかる距離。




ヤコ。




「     」




耳元で囁いてやった言葉にヤコはどんな顔をしているのか。
それが見られないのが少々悔しい。
しかし気配で瞠目しているのが分かった。


「・・・っ今までで一番残酷な言葉だ よ ・・・ !」

遠ざかる意識の中で聞こえた少女の涙声に満足の笑みが浮かんだ。




====


開口一番、すいませんでしたっ!(土下座最中
原作が終わる前にやっちまおうと思って・・。
最後のネウロがエックスの星ちゃんっぽい ってのは突っ込まない方向で!

少女の涙と魔人の慰め。(ヤコ視点)

2009年01月20日 01時39分18秒 | 魔人探偵妄想文。
注:ネウロ視点を読んでからお読み下さい。


====


朝から暗く落ちていく気持ちを周りに悟らせないよう振る舞っていたつもりだった。

「まさか自分のせいだと思っているわけではあるまいな」

ネウロにこうも痛いところを突かれるとは。
どくどくと自分の心臓が早鐘を打つ。
その方面の人間の心理は疎いはずじゃなかったの。
そう反論しようとしたがまるで何かが詰まったように上手く言葉が出てこない。
最近のネウロは人間の心を読めるようになってきた気がする。
それは特にずっと側にいる私に対して顕著だ。

「下らん」

心底呆れたような声。
普段なら流せる筈なのに頭に血が昇る感覚。

「・・ネウロには分かんないよ!」

気が付くと声を荒げて本音をぶちまけていた。

「私が!お父さんの子供じゃなかったらきっと・・殺されなかった」

無数の刃で貫かれ息絶えた父。
こんな無惨な死に方をしたのは少なくとも私がきっかけだ。
あのレストランに行かなければ。
父をあの時間一人にしなければ。
そもそも・・私がいなければ。
今も父と母は幸せな時を一緒に過ごしていたかもしれない。
何度思ったか分からないほどだ。

「そんなのは分からん。仮に貴様以外の子供でも殺されてたかもしれんし、貴様が別の親の元で生まれても今度はその親が殺されてたかもしれない。そもそも別の親という時点で桂木弥子にはなりえない。こんな例え話は無意味だ」

無機質で冷たいネウロの声。
絞り出した言葉は虚しく空を切り激しく頭の中が掻き乱される。
胸を押さえて俯くとポンと軽く頭を叩かれた。
いつもとは違う感触に魔人の顔を仰ぎ見ると緑の目が優しげな光を湛えている。

「ヤコ。両親は貴様が生まれて喜ばなかったのか?」
「・・・!」

思ってもいなかった言葉に熱いものがこみ上げ瞳から溢れた。
(喜んでくれた よ)
在りし日の父と母と自分の姿が脳の中に鮮明に蘇った。
三人だったからこそ幸せだった日常。
当たり前だった日常。

「ヤコ。明日は裁判の傍聴に行け」
「・・怖いよ。本当は憎くて憎くて堪らないの。こんな黒い感情が自分の中に有るなんて思わなかった」
「それでも貴様の進化には必要なことだ」

今まで事件と向き合おうとせず、ずっと逃げていた。
忘れることで痛みから逃れようとしていた。
ネウロが言っているのはそんな自分を乗り越えろということ。
分かってはいても溢れる涙が止まらない。
いつになく優しい魔人のせいだと思うことにした。
こんなネウロは真夏に雪が降るくらい珍しい。
頭に置かれた手の温もりが消えたかと思うと長い指が私の顎を掴んで上を向かせる。
ザラリと猫の舌のような頬を這う感触に体中が総毛立った。
ぐちゃぐちゃだった頭の中は一瞬で真っ白になる。

舐められた?

理解するまでに数秒の時間を要す。
ネウロはにんまりと悪そうな笑顔。

「ネ、ネ、ネ・・!」

先程とは違う血が頭に昇り顔面が熱い。
確信犯、こいつは確信犯だ・・!

「バカバカ変態、セクハラ魔人ー!」

ありったけの抗議の言葉も虚しくネウロの足元を通過する。
動悸が収まらない。

「感謝しろ。貴様の壊れた頭と目を修理してやったのだぞ?」
「別の意味で壊れたよ!」
「そうか、そんなに嬉しかったか。では次は何処が良い?」
「そんなこと言ってないっつーの!!」

駄目だ、これ以上はネウロを楽しませるだけだ。

「これで裁判に行けるな」

どこをどうすればこういう結論に達するのか。
しかし恐怖や鬱屈した気持ちは霧が晴れたように感じられない。
決意と少しの諦めが今度は私を支配する。

「分かった、行くよ」
「よろしい」

満足げに魔人が笑む。

「ね、ネウロ」
「何だ」
「明日一緒に来てくれない?」

軽く混じる驚きの色。
後から浮かぶのは興味、好奇心、期待。
そして目も口も三日月の形になってはいたが深緑の瞳の奥はやっぱり優しい色が浮かんでいた。




====


「さてこの借り、どうやって返して貰おうか」(極上の笑顔)


ネウロが優しすぎておかしいので↑は付け足し(^^;
恐らく悪魔の様な見返りと要求が弥子を待ってますよ。

少女の涙と魔人の慰め。(ネウロ視点)

2009年01月17日 12時27分17秒 | 魔人探偵妄想文。
注:ネウヤコ風味。


====


ヤコの食欲が無いなど真夏に雪が降るくらい珍しい。
といっても出会った時のように全く食べないというわけでは無く、いつもより少し量が少ないといった微々たる変化だ。
今も蜂蜜色の髪の少女は事務所でたい焼き三個とおにぎり五個とたこ焼き三パックとホットケーキ十枚とスルメ二つを食べて一息ついていた。
いつもならデザートと称してケーキやクッキーなどを更に追加している筈だがそんな様子は微塵も無く、あかねのいれた紅茶を啜っている。

「もう食わんのか」
「・・・相変わらず目聡いね。いいの。晩ご飯食べれなくなるし、ダイエット中だし」

明らかな嘘。
そんなこと気にするタマではあるまい。
ヤコは表情を読まれまいとしているのか横を向いて話の矛先を変えようとする。
面白くない。
つかつかと歩み寄り軽い頭を掴んで無理矢理視線が交わるよう首を捻った。
ヤコが潰れた豚のような間抜けな声を上げる。

「本当のことを言わんと手を口に突っ込むぞ?」

笑顔で鋭利な刃物と化した右手を突き付ける。
引きつった顔をした奴隷は首をさすりながら涙目で渋々口を開く。

「・・・お父さんの裁判の判決が明日出るの」
「ほう」

地上に来て二番目の謎だった。
大したインパクトも量も無く薄味な食事だったがヤコが奴隷第一号として確立した事件。
その後の犯人の行方など全く興味は無い。

「ネウロは裁判なんて関心無いでしょ」
「よく分かっているではないか。貴様は気になって仕方ないようだな」

食欲が落ちるくらいなら相当なのだろう。

「死刑になってほしいか?」
「・・・・ほんと思い切ったことを聞くなぁ、ネウロは」

質問には答えず少し無理のある笑いを見せる。
ヤコが裁判の傍聴に行ったことなど一度も無い。
すべてあの快活な母親に任せているようだった。
犯人に会うのが怖いのか、事件を思い出したく無いのか。
少なくともあの事件はヤコの心に深い影を落としたようだ。

「まさか自分のせいだと思っているわけではあるまいな」
「・・・・!」

大きな目を見開く様は肯定の意。

「やっぱりな」

溜息が出る。
あの犯人はヤコの悲しむ表情が見たい、ただそれだけの理由で父親を殺した。
全く理解できないししようとも思わない。
犯人の心理も自分のせいだと思うヤコの心理も だ。

「下らん」
「・・ネウロには分かんないよ!」

やれやれ、今度はヒステリーか。
全く女という生き物は理性よりも感情が先に物を言うようだ。

「私が!お父さんの子供じゃなかったらきっと・・殺されなかった」
「そんなのは分からん。仮に貴様以外の子供でも殺されてたかもしれんし、貴様が別の親の元で生まれても今度はその親が殺されてたかもしれない。そもそも別の親という時点で桂木弥子にはなりえない。こんな例え話は無意味だ」
「そんなのは分かってるよ!それでも・・!」
「ヤコ。両親は貴様が生まれて喜ばなかったのか?」
「・・・!」

茶色の瞳が潤んだかと思うと大粒の涙が零れ落ちる。
本当に今日は珍しいことづくしだな。

「ヤコ。明日は裁判の傍聴に行け」
「・・怖いよ。本当は憎くて憎くて堪らないの。こんな黒い感情が自分の中に有るなんて思わなかった」
「それでも貴様の進化には必要なことだ」

細い肩と握りしめた拳が震えている。
まるで壊れた人形のように次から次へと零れる透明な雫をペロリと舐め取ってやる。
全く何処にこんな水分を隠していたのか。
ヤコはまるで茹でたタコの様な顔をして口をパクパクさせている。
ふむ、これはこれで面白い。
涙の引いたヤコが色々と叫んでいるが無視した。


そう貴様は泣くのではなく笑うべきだ。




====



ネウロ視点難しい・・!
何考えてるか分かんないんだもん!
ネウロって結構何でも舐めるよな・・と思って始まった妄想です。
唾液が強酸だっていうのはスルーの方向で(笑
いやでもきっとネウロは自在に酸性値を変えれるよ!
じゃないとちゅー出来n(死
近々ヤコ視点バージョンも上げます。
上下セットでネウヤコリクエストをくれたふっちへ捧ぐ。
ネウヤコ書くの楽しかったわ!

魔人観察。

2009年01月09日 22時52分25秒 | 魔人探偵妄想文。
「ふぁああ、寒かった~」

冷たくなった手をすりあわせ事務所の扉を開ける。
じんわりと暖かな空気にほっと息をつくと優秀な秘書が紅茶を差し出した。

「ありがと、あかねちゃん」

コートと鞄を所定の場所に置いて新調して間もないソファに座り込む。
赤茶の液体を口に含むとほのかな甘みと芳ばしい薫りが広がった。
湯気が肌に心地よく体の中から暖まる。
あらかた飲み終わるといつもは降ってくる暴言が全く無い事に気付く。
蒼い影は先程からトロイの前で微動だにしない。

「あれ・・?もしかして寝てるの?」

あかねちゃんに問うと頷くようにおさげを揺らした。
そっと物音をたてぬように近づくと机の上で頬杖をついたまま器用に寝ているネウロの姿。
死んでいるのかと思うほど呼吸の音も無く静かだが僅かに揺れる肩が私を安心させる。
最近ネウロは寝ていることが多くなった。
以前は私が居る間は全く眠ることなど無かったのに・・。
深く思考するとどうしても暗い答えに到達してしまう。
“思考することを止めたら進化は止まる”そんな魔人の声が聞こえてきそうな気がしたが、私は考えることをそこで止めた。
窓から差し込む夕日が金色の髪に反射する。
光と見る角度によって微妙に色の変わるネウロの髪。
(何ていうんだっけ・・こういうの)
貝殻の裏のような。
ネウロが聞いたらまた馬鹿にされそうな喩えしか頭に浮かばない。
起きていれば常に不敵な笑みを浮かべているが今は人形のように動かない作り物めいた綺麗な顔。
眠っている姿が人形のように見えるのは、端正な顔立ちの他、一番はあの目が見えないせいか。
瞳が閉じられているだけで顔の印象は著しく変わる。

「何をジロジロと見ている。このミジンコめ」
「うわあっ!」

急にカッと目を開けるものだから心の準備ができていず、つい大声を出してしまった。

「起きているなら早く言ってよ!」
「今起きた」

疑惑の目を向けるとネウロがさも心外だといった顔をする。
ぐるぐると螺旋を描く深い緑の瞳。
まるで見る者を深淵に誘うような底の見えない目だ。
その瞳に浮かぶ思惑をまだまだ読みとれないことも多いが、そこには確かにネウロの感情が宿る。

そう今は・・

「む、近くで謎の気配がする。行くぞヤコ」
「ええー!今帰ってきたばかりなのに!せめてあかねちゃんの紅茶のおかわりとお茶菓子くらいは食べさせてよ!」
「なら我が輩が食べさせてやろう。鼻から」
「・・・・・分かった。すぐ行く」

嬉々として光を増す緑の瞳。
前言撤回。謎を前にすると何と分かりやすいことか。
まぁ私も食べ物の前では同じような目をしている自覚があるので深く触れないでおこう。

「さっさとしろ、ナメクジ」
「はいはい」

頭を捕まれて引きずられては敵わない。
ネウロの歩調に合わせて小走りに後を追いかける。

どうやらこの緑の呪縛からは易々と逃げ出せないらしい。




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結局何を書きたいのかよく分からなくなった。(いつものこと
だんだんよろず化してきました(^^;
皆様今年もよろしく!
次は正月絡みにするよ★(遅