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春夏秋冬。

その時々で思いついた妄想文をつらつらと。
二次創作中心。カテゴリのはじめにからどうぞ。

泡沫の夢。<後>

2010年08月25日 02時29分22秒 | 某国擬人化妄想文。
 日本と別れた後、掛け足でアメリカの姿を探したが50の刻まれたフライトジャケットは何処にも見当たらない。帰ると言っていたが大体道草をくっているのが常なのでまだこの建物の中にいるはずだ。食後のデザートと言って余分なカロリーを摂っているのではないかと予測を立てたがレストラン周辺にはいなかった。まさか本当に帰ったのだろうか。会議はまだ明日もある。アメリカにはその時にも会えるが貴重な時間を無駄にしたくは無かった。お互い多忙な身の上、チャンスは限られている。来た道とは別の方向に足を向けると近づいてくる靴音に気付く。

「あれ?どうしたのさ、坊ちゃん」

 今一番聞きたくない声が背後から届いた。ぐるんと振り向き殺気を込めた視線を送ると予想に違わず引きつった笑みを浮かべた髭面。この顔を見るとどうしても昔の血が騒いでいけない。

「アメリカ見なかったか?」
「アメリカ?さっきカナダと中庭で喋ってたよ」

 長い金髪を指で弄りながら口笛を吹き、あさっての方向に視線を流す。随分機嫌がいいらしい。ムカつく。理由がなくてもムカつく。

「ん?その双眼鏡どうしたのイギリス?」

 にやにやと顎に長い指をそえる。いやらしい想像でもしているのだろう。全くもって不本意だが手に取るように分かるフランスの思考。 
 ん?まてよ・・。不意に舞い降りた名案に頬が緩んだ。そうだ、どうせならこの双眼鏡の性能を調べてやろう。うってつけの相手ではないか。心を読んで罪悪感に陥るような相手でも無い。双眼鏡を両手で掴み金の頭に標準を定める。

「イギリス?双眼鏡向けても中庭の方は見えないよ?」

 覗き込むとフランスの頭の上に文字が書かれているのが分かる。まるで日本の漫画のですのーと?だったか?あれとそっくりだ。英語で書かれているのは日本が配慮してくれたのだろう。えっと、なになに~?

 (何なの坊ちゃん・・怒ったり急にニヤニヤしたり気持ち悪いな~)

 
<間>

 
 気が付くと拳がジンジンと痛み、フランスが仰向けに倒れていた。鼻血が出ている。どうやら口より先に手が出てしまったようだ。

「てめぇに気持ち悪いとか言われたくねぇんだよ、髭」
「お兄さん何も言ってないけど!?」

 ハンカチで鼻を押さえながら、緩慢に起き上がるフランスをまたレンズ越しに見つめる。
・・あぁお兄さんの美しい顔が・・って普段と全く変わらねぇじゃねーか。

「で?その双眼鏡は何?」

 今度は明らかに何かを不審がっている目だ。くつくつと笑いが込み上げる。

「そーだなぁ。条件次第では教えてやるぜぇ」






「おーいアメリカ!」
「あれ?フランス?どうしたんだい?」
「いやぁ・・ちょっとお前に聞きたいことがあってね」

 中庭の噴水の前で自販機で買ったであろう缶コーヒーに口をつけているアメリカにフランスが歩み寄る。双眼鏡を覗きながらアメリカに話しかけては怪しまれるのは必然。そんなアメリカから目的の言葉を引き出すなんて至難の極みだ。だがフランスを使えば全てが解決する。アメリカが俺のことをどう思っているか、それを聞いて貰えばいい。我ながら名案だ。女王陛下万歳。
 俺は緑の茂みに身を潜め、ゆっくりと双眼鏡を覗き込む。心臓が鼓動を早めた。

「なぁ・・最近のイギリス、変じゃないか?」

 くそ・・変ってなんだ。もっとマシな質問しやがれ、髭。

「変?彼はいつも変だろ?」

 心の声は耳に届いた言葉と変わらない。ほんの少しの脱力感。

「いや、そうだけどそうじゃなく」
「俺にはいつものイギリスに感じたけど・・。どこか体調でも悪いのかい?」

 心配そうな顔を見せるアメリカにちくりと胸の奥が痛んだ。心から俺の心配をしてくれている。凄く嬉しい。こんな方法で心を覗こうとしている自分がとても醜いものに感じた。それでも双眼鏡から目が離せない。日本の期待を裏切れないから、そう心に言い訳をする。まさしく言い訳だ。本音はアメリカの本心が知りたいからに他ならない。
 ・・まるでパンドラの箱だな、と自嘲する。開ければ絶望が待っているかもしれない。それでも俺を動かすのは抗いがたい強烈な欲望。

「体調は大丈夫だと思うけど」
「そうかい、それは良かった!彼は大事な同盟国だからね!不況の真っ只中だし」

 口ではそう言ってても同盟国だから心配をしているわけではない。それが“イギリス”だから。双眼鏡越しに伝わるのはアメリカの愛情だった。
 思わず口に手を当てて俯いた。顔が熱くて涙が零れそうだ。自分をこんなにも想っていてくれる存在がいる。「お兄ちゃん」その一言に拘っていた自分がとてもちっぽけに思えた。

「ただイギリスがボーっとしている時が増えたなぁと思ってね」
「そうかなぁ」

 小首を傾げる様が例えようもなく可愛らしく愛しいものに感じた。今すぐ飛び出して抱き締めたい衝動を必死で抑える。

「俺が思うにアレは恋煩いだね!」

 ・・・は?

 感動が半分吹き飛び、顔を上げる。

「あの坊ちゃん、実はあの年になってまで真実の恋を知らずにきたのさ。思えば兄貴達に疎まれ愛を知らずに育ってきた不憫な子だからね~。肉親の情と恋愛感情がごちゃ混ぜになって自分でもわけが分からなくなってる」

 ぞわっと肌が粟立つ。

「分かる?お相手は幼少の頃から大事に大事に可愛がっていた掌中の玉。それが手元から転げ落ちて数年、見違えるくらいの輝きを放っていたんだからね。そりゃあ扱いに困るだろうさ」

 一体何を言っているんだ?一瞬の放心後、沸きあがったのは猛烈な怒りの感情だった。早くあの髭の口を封じなくては。茂みから身を乗り出すとポンと背中を叩かれる。あぁ?一体どこのどいつ・・

「イギリスさん」
「うぁあああああああああ!!!!!ごめんアメリカ俺は全く全然そんなつもりはなく・・!!」

 気配も無く届いた声に俺は失神寸前だった。はずみで双眼鏡を落とし、ガラスにひびが入る。驚いた表情のアメリカがそこに立っていた。俺は目を逸らしてはいないのにどうしていきなり背後に・・!

「いやだなぁ、カナダですよ」
「・・・カナダ?」

 よく見ればふわふわの金髪に穏やかなバイオレットの瞳。苦笑しながら「怪我は無いですか」と差し出す白い手に掴まった。立ち上がりながらスーツについた汚れを叩き落としてくれる。

「サンキュ」
「いえ。こんなところでな・・」

 不自然に言葉の途切れたカナダを見上げる。カナダの視線は俺の背後に注がれていた。あれだけ大声を出して気付かれないほうが奇跡というもの。背中に冷たい風が吹き付けているのが分かった。


「で?どんなつもりだったのか教えてくれるかい?」

 
 涼やかな声音に恐る恐る振り返ると三日月型のスカイブルーが俺の目に飛び込んだ。

 割れた双眼鏡が空しく足元に転がっていた。




====


「お兄さん、しーらない・・」


うとうとさんに捧げます。
こんな駄文ですが貰ってやってください。

おまけ(?)というより蛇足。

※日本とイギリスは正座させられています。
「君って人は!!そこまでして言って欲しいのかい!!」(←兄ちゃんがバラした
「・・・悪かったよ・・」
「まぁまぁアメリカさん」
「日本っ!!君が入れ知恵したんだろ!?」
「・・・はい・・すみません・・」
「俺はぜっったいに言わないんだぞ!!」
こんな感じで赤面しつつポコポコ怒るアメリカを想像してました。
まだコレはいい方です。
私の中のアメリカは完全に怒ってしまったら逆に笑顔になります。おそろしい子!
「そんなに言って欲しいなら言ってあげるよ。“お兄ちゃん”これで満足かい?じゃあさよなら」
なんてバージョンも考えてました。
イギリスは「ッ違う!俺が望んでたのは・・!!」みたいな展開になってめんどくさくなるのでやめました(笑
日本は内心赤面アメリカさんktkr!!!って感じ?
あ、当然壊れた双眼鏡分の見返りは要求すると思います。

兄ちゃんは正直じれったくて恋のキューピッドになろうとしてました。
実はイギリス本人よりイギリスのことを知っている。
メリカはイギリスが自覚してないのにフランスの口から言われて腹立ててる。

なんか色々背後考えてたけどこの辺にしとこう。
解説が必要な小話って・・。

泡沫の夢。<前>

2010年08月13日 02時18分01秒 | 某国擬人化妄想文。
うとうとさんリク「アーサーとアルで、アルにどうにかしてゲルマン兄弟のとこみたく“兄さん”って呼ばせたいアーサー」です(^^
多分ギャグ。
あっ菊がオタです。


====




 時間通りに会議が終わり友好国と談笑を始める国々を横目でちらりと見た。ちょうど右隣の席にはドイツが座っていて、プロイセンと何事か話し合っている。ドイツ語なのでうまく聞き取れないが今回の会議で決まったことをどう国内に反映するか、という内容らしい。真面目な国だ。持参した紅茶に口をつける。ふわりと上品な香りが鼻腔へと広がった。ティーバックだが俺がこだわり抜いて選んだものだ。その辺のカフェで飲むよりもよっぽど美味しい。

「・・で、どうだろう兄さん」
「おおっ!さすがヴェスト!俺様の弟凄すぎるぜー!」

 話はまとまったようだ。ドイツも心なしか嬉しそうな顔をしている。いつも怒った顔ばかり見るがこんな顔も出来たんだな。兄さん、か。視線を落とすと赤い液体の水面にはしかめっ面の自分の顔が映っている。・・別に羨ましいなんて思っていない。無性にイライラするだけだ。紅茶を口に含んで気分を落ち着かせるよう勤めた。相変わらず会議室は喧噪に満ちている。


「終わったのなら長居は無用だ。帰るぞリヒテン」
「はいお兄様」


「ヴェ~手伝ってよ兄ちゃーん」
「うるせえ!はげ!」


「兄さんはどこ?兄さんの姿が見えないわ・・。兄さん結婚結婚結婚結婚結婚結婚…」


「兄貴ー!兄貴の起源は俺なんだぜ!」
「あーはいはい。分かったある」



 ・・・・・・・・・・・。


「アメリカ」
「嫌だね!」
「~~~っ!まだ何も言ってねぇだろ!ばかぁ!」
「君が考えていることなんてお見通しなんだぞ!」

 左隣りに座っていたアメリカは食べ終えたハンバーガーの紙屑を撒き散らし、音を立てながら紙コップでアイスコーヒーを飲んでいる。口が汚れてるぞ。おいコラ、ストローをかじるんじゃねぇ。ハンカチを取り出し口を拭いてやる。アメリカは青い目をぱちくりさせ大人しくしていた。こういうところは昔と変わらず素直でいい。・・・兄さん、兄様、兄貴、お兄ちゃんかぁ・・・。

「ヨダレ出てるんだぞ。全く。だいたい、いらないって言ったのは君だろ」
「うっ」

 取り付く島もない。確かにその通りだった。“お兄ちゃんって呼ぶね”そう笑った天使に何故肯定の意を示さなかったのだろうと後悔した日は星の数ほどある。アメリカはコーヒーを飲み終えるとにっこり笑ってぐしゃりとコップを握り潰した。

「じゃあ俺は帰るよ。明日も早いしね。君もくだらない妄想はやめて早く帰りなよ!」

 いつものジャケットを羽織り颯爽と出ていく後ろ姿を見つめる。俺の庇護を必要としていた時代とは違う。世界中の期待を背負った大きな背中だ。はぁ、と思わず溜息が零れた。

「お悩みですね」
「うわぁああ!」

 真横から耳元に届く囁き声。いつの間にかドイツの姿は無く至近距離に日本が立っていた。気配が無かったぞ・・?

「失礼。驚かせてしまいましたね」
「い、いや大丈夫だ」

 紳士的に振る舞う日本を見ると何故か胸がドキドキする。心なしか目が輝いているように見えた。日本は素直に話が出来る数少ない友人のひとりだ。これまでもアメリカのことで何度か相談にのってくれたことがある。優しく背中をさすってくれる日本に零れそうになる涙を押し留めながら先程の出来事をかい摘まんで話した。

「イギリスさんはアメリカさんに兄と呼ばれたいのですか?」

 珍しくストレートに聞いてくる日本に言葉が詰まった。呼ばれたくないと言えば嘘になる。例えるなら夢。一夜の夢でもいい。確かに俺達は兄弟だったんだという証が欲しい。一言アメリカの口からその言葉が聞けるなら・・・彷徨い続けた心にきっとがケリがつく。根拠はないがそんな気がした。漆黒の瞳を見つめてこくりと首を縦にふる。日本には何故か素直になれた。

「わかります。上目遣いでお兄ちゃんは男の夢ですからね」

 にこりと笑う日本。

「いいものを貸して差し上げます」

 日本が鞄から取り出したのは黒い双眼鏡だった。

「これは覗くと人の心を読むことが出来ます。我が国の最先端技術を搭載したドラ○もんもびっくりな双眼鏡です」
「人の心を・・?」
「アメリカさんは口では絶対に言ってくれないと思います。貴方に似てツン・・じゃなかった。要は心で思わせるんですよ」
「・・そんなことが・・」
「イギリスさんなら出来ます!」
「日本・・!」

 日本に言われると出来る気がしてきた。双眼鏡を受け取り手応えを確かめる。見た目はどこにも変わったところはない。横側に試作品と書かれている以外は。

「こんな大事なものを借りてもいいのか?」
「ええ。そのかわりと言っては何ですが・・」

 躊躇いがちに言葉が途切れる。伏し目がちなのが妙に色っぽい。

「言ってくれ、日本」
「では・・アメリカさんとのやり取りがどうだったか教えて頂きたいのです」
「やり取り?」
「はい。しんかn・・いえ、心配なのです。あなたもアメリカさんも」

 ここまで親身になってくれる友人を俺は他に知らない。感動で思わず涙が零れた。歳を取ると涙もろくなっていけない。

「どうしてここまで・・」
「私達友達でしょう?」
「・・っ・・!」

 生まれてこの方こんな言葉を貰ったのは初めてだ。滝のような涙が出て自然と感謝の言葉が口をついた。日本ははにかむように笑う。

「ご武運をお祈りしています」

 日本に見送られながら双眼鏡を胸に抱えて、俺はアメリカを追いかけた。




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最終兵器「私達は友達でしょう?」
これでイギリスはイチコロです(^^