犬髑、骸髑、綱骸風味 かも?
====
「犬」
クロームは小さな声で呼びかけたと思うとスッと黄色いリボンが巻かれた箱を差し出す。
犬はポカンと舌をだらしなく出したままだ。
「なんら?」
「チョコ。千種も」
彼女は必要最低限しか喋らない。
自分に差し出されたのは緑色のリボンの箱。
・・・めんどい。
仕方なく小さな箱を受け取る。
「何?なんなのら!?」
犬は訳が分からないといった顔で俺を仰ぎ見る。
クロームは説明する気が無さそうだ。
説明するのも面倒だが犬がこれ以上煩くなるのも気分が悪い。
「今日はバレンタインデーだよ」
「ばれんたいん?」
舌っ足らずに聞き返す。
「そう。日本のお菓子業界の企みが成功した日」
顔に疑問符が浮いている。
「ますますわかんねーのら!」
イライラしたように言う。
もう・・なんでこんな面倒なこと・・。
ちらりとクロームに目線で説明するよう促した。
俺達はそもそも行事とは無縁の世界で生きてきたんだ。
「・・日本じゃ相手に感謝や好意を伝える時にチョコレートをあげるの」
真っ直ぐな瞳で告げる。
「好意・・?」
クロームが頷く。
犬の顔がみるみる朱に染まる。
「顔赤いよ、犬」
「うるせぇ!」
ああ、本当にめんどいな・・。
****
今日は土曜日。
折角のバレンタインだっていうのに学校は休みだ。
京子ちゃんにも会えない・・。
家に居ても落ち着かないのでぶらりと外へ出て並盛商店街を目指す。
もしかしたら・・なんて淡い期待を抱きつつ。
商店街は活気づいていた。
チョコレートが当日のせいか10%オフになっていて沢山の行列が見える。
「凄い人だなぁ」
「うん」
独り言に返事が返ってきた。
ギョッとして声の聞こえた方向を見やると特徴的なシルエット。
こんな頭の人間は二人しか知らない。
「くっ、クローム!?」
「久し振り、ボス」
彼女はにこりともせずオレンジ色のリボンの箱を差し出した。
「えっ・・これ」
コクリと頷く。
顔に熱が昇るのが分かった。
うわぁああ女の子にチョコ貰っちゃった!!
いつもは母さんがくれるくらいで一度も同年代の子に貰ったことなんてない。
まぁ今年はちょっと期待してたけど。
義理だと分かっていても嬉しい。
「あっ、ありがとう」
「うん」
胸の鼓動が治まってくるとクロームのいつもの無表情さに翳りのようなものが交じっている気がした。
「・・どうかしたの?」
大きな瞳が揺らめいて困ったように歪む。
「骸様にも・・」
言葉は其処で途切れたが何となく察しはついた。
骸にもチョコレートを渡したいが方法が分からずに困っているのだろう。
力になって上げたいけど・・。
「ボス、お願い。私の代わりに骸様に渡して欲しいの」
「ええっ!!」
大きな藍色のリボンが結ばれた箱を胸に押し付けられる。
俺が貰ったチョコより大きい・・なんて思ってる場合じゃ無いよ!!
こういうのは本人が渡さなきゃ・・!
「今骸様に変わるから」
クロームがまるで電話を替わるような気安さで呟く。
制止する間も無く大きな瞳を瞑った。
次に瞳を開いた時には彼女の可憐な空気は消え失せて、悪寒が背筋を這い上る。
妖気、とでもいうのだろうか。
姿形は変わらないのに雰囲気が全く違う。
妖しく瞳が煌めいた。
「・・何か用ですか?」
目が泳ぐ。
今だ慣れない彼独特の空気。
「ええっと・・」
「早くして下さい。僕も暇じゃ無いんです」
前髪をかき上げる仕草も様になってる。
じゃなくて!やばい、イライラしてるよぉおお!
「あのっ、これっ!」
クロームが置いていった箱を渡す。
明らかに本命な感じの高級感溢れるチョコだ。
うらやまし・・いやいや比べるのが間違っているよな。
「・・・」
骸はびっくりしたように目をぱちくりさせている。
あ、そんな表情も出来るんじゃないか。
「いやだぁ~逆チョコ~?」
「良いわねぇ若いって」
いつの間にか周囲には人だかり。
他人の恋愛に興味津々のおばさんたち。
クロームの容姿は目立つし・・俺も大きな声を出していた。
・・・・・って、逆チョコだって!?
意図せず顔に血が上る。
「いやっ・・その・・!」
骸に視線を戻すと彼も真っ赤な顔をしていて。
・・あれ?クロームじゃないよね?
思わず分からなくなる。
こんな顔クロームも骸も見たこと無いよ?
そのまま踵を返して逆方向に走り去った。
引き止めようとした手が中に浮く。
えっ、やばい、これは、ちょっと・・!!
「クロームのチョコなのに~~~!!」
今だ、ドキドキが治まらず。
====
チョコと言えば骸様!
髑髏はボスからチョコを渡させること事態が骸へのプレゼントという確信犯だった・・のかもしれない?(笑
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「犬」
クロームは小さな声で呼びかけたと思うとスッと黄色いリボンが巻かれた箱を差し出す。
犬はポカンと舌をだらしなく出したままだ。
「なんら?」
「チョコ。千種も」
彼女は必要最低限しか喋らない。
自分に差し出されたのは緑色のリボンの箱。
・・・めんどい。
仕方なく小さな箱を受け取る。
「何?なんなのら!?」
犬は訳が分からないといった顔で俺を仰ぎ見る。
クロームは説明する気が無さそうだ。
説明するのも面倒だが犬がこれ以上煩くなるのも気分が悪い。
「今日はバレンタインデーだよ」
「ばれんたいん?」
舌っ足らずに聞き返す。
「そう。日本のお菓子業界の企みが成功した日」
顔に疑問符が浮いている。
「ますますわかんねーのら!」
イライラしたように言う。
もう・・なんでこんな面倒なこと・・。
ちらりとクロームに目線で説明するよう促した。
俺達はそもそも行事とは無縁の世界で生きてきたんだ。
「・・日本じゃ相手に感謝や好意を伝える時にチョコレートをあげるの」
真っ直ぐな瞳で告げる。
「好意・・?」
クロームが頷く。
犬の顔がみるみる朱に染まる。
「顔赤いよ、犬」
「うるせぇ!」
ああ、本当にめんどいな・・。
****
今日は土曜日。
折角のバレンタインだっていうのに学校は休みだ。
京子ちゃんにも会えない・・。
家に居ても落ち着かないのでぶらりと外へ出て並盛商店街を目指す。
もしかしたら・・なんて淡い期待を抱きつつ。
商店街は活気づいていた。
チョコレートが当日のせいか10%オフになっていて沢山の行列が見える。
「凄い人だなぁ」
「うん」
独り言に返事が返ってきた。
ギョッとして声の聞こえた方向を見やると特徴的なシルエット。
こんな頭の人間は二人しか知らない。
「くっ、クローム!?」
「久し振り、ボス」
彼女はにこりともせずオレンジ色のリボンの箱を差し出した。
「えっ・・これ」
コクリと頷く。
顔に熱が昇るのが分かった。
うわぁああ女の子にチョコ貰っちゃった!!
いつもは母さんがくれるくらいで一度も同年代の子に貰ったことなんてない。
まぁ今年はちょっと期待してたけど。
義理だと分かっていても嬉しい。
「あっ、ありがとう」
「うん」
胸の鼓動が治まってくるとクロームのいつもの無表情さに翳りのようなものが交じっている気がした。
「・・どうかしたの?」
大きな瞳が揺らめいて困ったように歪む。
「骸様にも・・」
言葉は其処で途切れたが何となく察しはついた。
骸にもチョコレートを渡したいが方法が分からずに困っているのだろう。
力になって上げたいけど・・。
「ボス、お願い。私の代わりに骸様に渡して欲しいの」
「ええっ!!」
大きな藍色のリボンが結ばれた箱を胸に押し付けられる。
俺が貰ったチョコより大きい・・なんて思ってる場合じゃ無いよ!!
こういうのは本人が渡さなきゃ・・!
「今骸様に変わるから」
クロームがまるで電話を替わるような気安さで呟く。
制止する間も無く大きな瞳を瞑った。
次に瞳を開いた時には彼女の可憐な空気は消え失せて、悪寒が背筋を這い上る。
妖気、とでもいうのだろうか。
姿形は変わらないのに雰囲気が全く違う。
妖しく瞳が煌めいた。
「・・何か用ですか?」
目が泳ぐ。
今だ慣れない彼独特の空気。
「ええっと・・」
「早くして下さい。僕も暇じゃ無いんです」
前髪をかき上げる仕草も様になってる。
じゃなくて!やばい、イライラしてるよぉおお!
「あのっ、これっ!」
クロームが置いていった箱を渡す。
明らかに本命な感じの高級感溢れるチョコだ。
うらやまし・・いやいや比べるのが間違っているよな。
「・・・」
骸はびっくりしたように目をぱちくりさせている。
あ、そんな表情も出来るんじゃないか。
「いやだぁ~逆チョコ~?」
「良いわねぇ若いって」
いつの間にか周囲には人だかり。
他人の恋愛に興味津々のおばさんたち。
クロームの容姿は目立つし・・俺も大きな声を出していた。
・・・・・って、逆チョコだって!?
意図せず顔に血が上る。
「いやっ・・その・・!」
骸に視線を戻すと彼も真っ赤な顔をしていて。
・・あれ?クロームじゃないよね?
思わず分からなくなる。
こんな顔クロームも骸も見たこと無いよ?
そのまま踵を返して逆方向に走り去った。
引き止めようとした手が中に浮く。
えっ、やばい、これは、ちょっと・・!!
「クロームのチョコなのに~~~!!」
今だ、ドキドキが治まらず。
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チョコと言えば骸様!
髑髏はボスからチョコを渡させること事態が骸へのプレゼントという確信犯だった・・のかもしれない?(笑