写真は、鹿児島散歩 (2010.08.16)からお借りしました。
「介護問題をどう考えるか」については、優れた書物も沢山刊行されていますが、ブログを読んで教わったことを材料に問題を整理してみます。
介護問題には、すぐに対応すべきことと、時間をかけて議論を尽くすこととがあります。
以下、
Ⅰ 今日直ちにしなくてはならないこと
Ⅱ 急ピッチの2012年改正
Ⅲ 「介護保険法」の枠組みを超えて
の順にお話します。
なお、
Ⅳ 地域をどのように介護向きに強化するか?
という大テーマが残りますが、これは「団塊の世代」が大都市に集中して、大都市の若い人の人口はむしろ減少しているという事実を述べるだけにして他日を期します。
* * * *
Ⅰ 今日直ちにしなくてはならないこと
笑わせてなんぼの介護福祉士
など介護現場からのブログ記事やその記事に全国から寄せられるコメントを読みますと、
1 お年寄りが助けを求めている。(極端な場合には、「介護事故」として裁判所で本人や家族から訴えられている)
2 介護家族が助けを求めている。
家族が介護している方のブログには、現在のサービスのあり方では十分な支援になっていない事例が多く報告されている。
3 多数の介護スタッフが仕事の上での悩みを訴えています。
・ 職場の経営者や施設長などの管理者の無理解
・ 行政から流されてくる業務の内容への困惑
・ 関連職種との連絡・強調ができない苦労
* サービスを利用する人との苦労や身分が不安定(パート)、経済的処遇が低い(低賃金)、研修機会が少ないなど、各種調査で判明していることももちろん多く寄せられています。
これらの課題は、いま直ちにそれぞれの立場のものが問題解決に自分の知恵と力をだすべきです。固くいうと「人権」ということになりますが、「人を大事にする」というあたりまえのことを守りたい。
Ⅱ 急ピッチの2012年改正
介護保険法は、日本の介護ステムを決めている基本的な法律です。
2000年から施行され、2006年に大幅な改正がありました。
この10年の間、現場のスタッフがどのように苦労してきたかは、介護支援専門員のブログ記事でも書かれていました。「想い・思い・おもいver.2」で4回のシリーズ。
その1・第466回(2010.05.30)
*以下「その4」まで。第467回・第468回・469回(2010.05.31~06.02)
そして、現在、2012年に行われる改正の作業が急ピッチで進んでいます。
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の資料や議事録がネット上公開されています。
7月26日、7月30日の会議のあと、8月23日に再開されたあと11月はじめまでの会議の日程とテーマが示されています。
介護福祉研究 P 6024 (2010.07.27)
審議会の委員には、家族の利害を代表する委員や介護福祉士や介護支援専門員など専門職を代表する委員が含まれています。
第3817号 (2010.07.28)
審議会の議論を経て、国会に法案が提出されても、専門家による審議を得たということで国会において細かい審議が行われることは予想しにくいのではないかと思われます。
今回の改正の焦点はずばり財政的な見地からの「給付抑制」であることは介護現場の指導的な人々から予見されています。
制度改正の視点はまたも給付抑制(「masaの介護福祉情報裏板」2010.06.30)
そこには、なんといっても先進国でも極端に目立っている日本の財政状況が背景にあります。
「日本の財政関係資料(8月)」財務省。(第3849号、2010.08.04)
Ⅲ 「介護保険法」の枠組みを超えて
以下に、簡単に述べることは、「介護保険法に依存する日本のやり方にはどんな特色があるのか」という「介護保険の枠組みを超える」話です。
国際比較的な方法で少し抽象的になりますので、ここではごく大雑把に私の観察をお話し、各論の詳細は「介護福祉研究」にゆずります。
1 政治の主導と行政への依存
欧米では、法律の制定は、各政党の専門家が行う。アメリカでは、政権が交代すると局長クラスの幹部も交代しますね。ドイツでは議会の専門委員会には局長クラスでも出席はゆるされません。
日本でも最近は「政治主導」が強くなりましたが、テレビで国家中継をみていると役所の担当が作成したメモを読んでいる閣僚が多いですね。
介護保険法に限っていえば、日本では、役所の提案を前提に進めざるをえないのでは?
とうのも、これまでは欧米のように介護政策に詳しい政治家も介護政策を研究しているシンクタンクも稀だからです。(厚生労働省が全国ネットでもっている情報量にかなわない)
2 社会政策の中での介護政策の位置づけ/縦割りの日本
ドイツの介護保険法は、「社会保障法典」という統一法のもとに第11章に定められています。医療保険(第5章)、公的扶助(第12章)などの関係は、この統一法で明確に定められています(第1章総則)。
日本では、「介護保険法」「老人福祉法」「生活保護法」「社会福祉法」の全体を統一的に位置づけた法律はありません。これは、日本の法律が各省各局レベルの縦割りで作成・改正される仕組みだからですね。どうしても制度の隙間が生じてしまいます。
3 費用調達の選択肢は政治が決めるもの
先に、2012年改正も赤字財政の圧迫があるといいました。
イギリスでは、現在、「国民介護サービス法案」を構築すべく専門的な検討の最中です。戦後、NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)として医療を国有化したときになぞらえて介護のサービスの新しいシステムを構築しようとしています。
その検討材料であるイギリス政府の青書には、財政の選択肢として5つの方法をあげています。
・一番極端な、全額を自費負担するいわばアメリカ方式と
・全額を税負担でまかなう北欧型
を、両極端として退け、中間に3つの案を提示しています。
2010年度予算ベースで、日本の介護給付費は7.5兆円ですから、おのずとこれをどのように負担するかは(行政的な視点ではなく)政治の場で決定してゆくべきものです。
*消費税は、現在の5%で10兆円の税収ですから、年金・医療費を含む社会保障費100兆円を仮に全部消費税と計算すれば、50%になりますね。もちろん、このようなことは日本では非現実的です。
4 専門職の社会的認知
日本では、
・介護サービスの主力として介護福祉士を
・介護保険の給付管理を介護支援専門員が行っています。
介護の専門職は、各国まことにさまざまですが、この介護福祉士と介護支援専門員と同様の公的資格はないようです。
日本の場合、ソーシャルワーカーが高齢者部門では実質的に脆弱なために、介護支援専門員が代行しているといった側面があると思います。これが、社会保障審議会の委員に職能代表として、介護福祉士と介護支援専門員が選ばれている理由でもあるでしょう。
なお、医療施設のトップが医師と法定されているように、そろそろ、介護保険の事業体には介護支援専門員あるいは介護福祉士を充てるということも法定すべき段階です。
「介護問題をどう考えるか」については、優れた書物も沢山刊行されていますが、ブログを読んで教わったことを材料に問題を整理してみます。
介護問題には、すぐに対応すべきことと、時間をかけて議論を尽くすこととがあります。
以下、
Ⅰ 今日直ちにしなくてはならないこと
Ⅱ 急ピッチの2012年改正
Ⅲ 「介護保険法」の枠組みを超えて
の順にお話します。
なお、
Ⅳ 地域をどのように介護向きに強化するか?
という大テーマが残りますが、これは「団塊の世代」が大都市に集中して、大都市の若い人の人口はむしろ減少しているという事実を述べるだけにして他日を期します。
* * * *
Ⅰ 今日直ちにしなくてはならないこと
笑わせてなんぼの介護福祉士
など介護現場からのブログ記事やその記事に全国から寄せられるコメントを読みますと、
1 お年寄りが助けを求めている。(極端な場合には、「介護事故」として裁判所で本人や家族から訴えられている)
2 介護家族が助けを求めている。
家族が介護している方のブログには、現在のサービスのあり方では十分な支援になっていない事例が多く報告されている。
3 多数の介護スタッフが仕事の上での悩みを訴えています。
・ 職場の経営者や施設長などの管理者の無理解
・ 行政から流されてくる業務の内容への困惑
・ 関連職種との連絡・強調ができない苦労
* サービスを利用する人との苦労や身分が不安定(パート)、経済的処遇が低い(低賃金)、研修機会が少ないなど、各種調査で判明していることももちろん多く寄せられています。
これらの課題は、いま直ちにそれぞれの立場のものが問題解決に自分の知恵と力をだすべきです。固くいうと「人権」ということになりますが、「人を大事にする」というあたりまえのことを守りたい。
Ⅱ 急ピッチの2012年改正
介護保険法は、日本の介護ステムを決めている基本的な法律です。
2000年から施行され、2006年に大幅な改正がありました。
この10年の間、現場のスタッフがどのように苦労してきたかは、介護支援専門員のブログ記事でも書かれていました。「想い・思い・おもいver.2」で4回のシリーズ。
その1・第466回(2010.05.30)
*以下「その4」まで。第467回・第468回・469回(2010.05.31~06.02)
そして、現在、2012年に行われる改正の作業が急ピッチで進んでいます。
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の資料や議事録がネット上公開されています。
7月26日、7月30日の会議のあと、8月23日に再開されたあと11月はじめまでの会議の日程とテーマが示されています。
介護福祉研究 P 6024 (2010.07.27)
審議会の委員には、家族の利害を代表する委員や介護福祉士や介護支援専門員など専門職を代表する委員が含まれています。
第3817号 (2010.07.28)
審議会の議論を経て、国会に法案が提出されても、専門家による審議を得たということで国会において細かい審議が行われることは予想しにくいのではないかと思われます。
今回の改正の焦点はずばり財政的な見地からの「給付抑制」であることは介護現場の指導的な人々から予見されています。
制度改正の視点はまたも給付抑制(「masaの介護福祉情報裏板」2010.06.30)
そこには、なんといっても先進国でも極端に目立っている日本の財政状況が背景にあります。
「日本の財政関係資料(8月)」財務省。(第3849号、2010.08.04)
Ⅲ 「介護保険法」の枠組みを超えて
以下に、簡単に述べることは、「介護保険法に依存する日本のやり方にはどんな特色があるのか」という「介護保険の枠組みを超える」話です。
国際比較的な方法で少し抽象的になりますので、ここではごく大雑把に私の観察をお話し、各論の詳細は「介護福祉研究」にゆずります。
1 政治の主導と行政への依存
欧米では、法律の制定は、各政党の専門家が行う。アメリカでは、政権が交代すると局長クラスの幹部も交代しますね。ドイツでは議会の専門委員会には局長クラスでも出席はゆるされません。
日本でも最近は「政治主導」が強くなりましたが、テレビで国家中継をみていると役所の担当が作成したメモを読んでいる閣僚が多いですね。
介護保険法に限っていえば、日本では、役所の提案を前提に進めざるをえないのでは?
とうのも、これまでは欧米のように介護政策に詳しい政治家も介護政策を研究しているシンクタンクも稀だからです。(厚生労働省が全国ネットでもっている情報量にかなわない)
2 社会政策の中での介護政策の位置づけ/縦割りの日本
ドイツの介護保険法は、「社会保障法典」という統一法のもとに第11章に定められています。医療保険(第5章)、公的扶助(第12章)などの関係は、この統一法で明確に定められています(第1章総則)。
日本では、「介護保険法」「老人福祉法」「生活保護法」「社会福祉法」の全体を統一的に位置づけた法律はありません。これは、日本の法律が各省各局レベルの縦割りで作成・改正される仕組みだからですね。どうしても制度の隙間が生じてしまいます。
3 費用調達の選択肢は政治が決めるもの
先に、2012年改正も赤字財政の圧迫があるといいました。
イギリスでは、現在、「国民介護サービス法案」を構築すべく専門的な検討の最中です。戦後、NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)として医療を国有化したときになぞらえて介護のサービスの新しいシステムを構築しようとしています。
その検討材料であるイギリス政府の青書には、財政の選択肢として5つの方法をあげています。
・一番極端な、全額を自費負担するいわばアメリカ方式と
・全額を税負担でまかなう北欧型
を、両極端として退け、中間に3つの案を提示しています。
2010年度予算ベースで、日本の介護給付費は7.5兆円ですから、おのずとこれをどのように負担するかは(行政的な視点ではなく)政治の場で決定してゆくべきものです。
*消費税は、現在の5%で10兆円の税収ですから、年金・医療費を含む社会保障費100兆円を仮に全部消費税と計算すれば、50%になりますね。もちろん、このようなことは日本では非現実的です。
4 専門職の社会的認知
日本では、
・介護サービスの主力として介護福祉士を
・介護保険の給付管理を介護支援専門員が行っています。
介護の専門職は、各国まことにさまざまですが、この介護福祉士と介護支援専門員と同様の公的資格はないようです。
日本の場合、ソーシャルワーカーが高齢者部門では実質的に脆弱なために、介護支援専門員が代行しているといった側面があると思います。これが、社会保障審議会の委員に職能代表として、介護福祉士と介護支援専門員が選ばれている理由でもあるでしょう。
なお、医療施設のトップが医師と法定されているように、そろそろ、介護保険の事業体には介護支援専門員あるいは介護福祉士を充てるということも法定すべき段階です。
お久しぶりです!
介護の現場ただ今
4週間の実習中です。
現場のいろいろなこと
先生のブログをみていて
なるほどと思うこと多々
あります(;_;)
考えものですね…
ですが今わたしは
実習で精一杯なので
そちらのほう毎日
欠かさずいきたいです!
それではお体に気をつけてお過ごし下さい\(^O^)/
久しぶりですね。
コメントありがとうございます。
かっての受講者からのコメント
一番嬉しいですよ。
終わったら
体験談を
聞かせてくださいね。
今年の夏は
いつもにも増して暑いですね。
健康には気をつけて
実習の残りを
がんばってください。
如何に、日本の私たちが、現場力を持っていないのか、
と、最近つとにおもいます。
そして、それは、
介護支援専門員のように、
行政主導でつくられた資格にあるからではないか・・・と。
本来、何をしなくてはならないかということを考えなく業務に就き、
行政に踊らされてきて、今日まできてしまった。
でも、本当に、今までの10年で、
それ相応の現場力も着いてきたと思います。
仮にも、
専門職として、介護支援専門員とはどうあるべきかについて、
さんざん、厚労省から聞かされてきました。
そして、今、その教えられてきたことを
実行に移すべき時ではないかと・・・
最後に
Yukoさんのコメント。私も嬉しくよませていただきました。
それで、少々、とっちらかって、コメントさせていただき、
コメントもまとまりません。
yukoさんも、実習にでられ、眼の前の事に必死だと思います。
今は、それでいいのだと思います。
そして、これから、少しずつ社会の扉を広げられていかれる課程の中で、
そういえば、そんなことがblogで話題になっていたな・・・
と立ち止まって下さる時が大事なのだとおもいます。
10年の間に
蓄えられたものは
汗と苦悩だけではなく
次の時代への展望も
あると思います。
日本の役所の
護送船団といわれる
パターナリズムとは
そろそろ決別しないと・・・
Yuko1989さんにも言及いただきました。
*「介護福祉研究」P2121
2009.10.29
には、彼女のコメントを収載しています。