昨日1月15日、名古屋での中国社会福祉研究会に出席しました。発表も中身の濃いものでしたが、自由討論やそれに続いた懇親会での甲論乙駁は堅い頭を叩いてくれました。
P 7721
昨日の研究会は、まとめの自由討論が面白かったですね。司会の王文亮先生(金城学院大学)の手際のよい問題整理も議論の混迷を救っていました。
私は、1965年から1968年の間、(当時の)厚生省保険局に配属されていて医療費政策の末端を担当したのですが、そのときの体験から、今日に至る日本の医療費政策の原点がある・・
といった話をしようとしたのですが、1965年6月1日、当時保険局長だった小山進次郎さん(故人)からは辞令をもらえなかった(当の局長が同日厚生大臣から罷免されたため)話に時間がかかってしまい、雑然とした報告(持ち時間は20分)となって反省しきりです。
【2つの問題】
医療費問題を考える際には、
「国民経済の中から医療費にどの程度を割くのか?」という枠組みの問題と
「提供される医療サービスの質を維持・改善するためにはどうすればよいか?」
という2つのレベルの問題がある。
前者の問題は、政治の決断の問題で
後者の問題は、専門分野の研究・教育の蓄積が重要だ
というストーリーは話したと思います。
中国の若い研究者の皆さんには、「1960年代の日本の失敗(経済成長に見合う社会政策を行わなかった)と1990年代以降の日本の失敗(公共事業への無駄な投資)とを繰り返すな」といいたいです。
【藻谷浩介の氏の提案】
P 7722
で簡単に書いたのですが、
団塊の世代が高齢期に入ってきたことを念頭に置いた政策転換の必要性を説いていて啓発されます。
この著作に関しては経済学の専門家からは批判が多いようですが、日本の各地を自費で取材してきた蓄積が活かされています。
このような提案に対して、社会福祉や社会保障の専門家は対応していない。
となれば、国民サイドからの具体的な方向付けがあってよいのでは?
昨日、中国社会福祉研究会のまとめの方で、王先生は、日本の国民は、自分の国の社会保障や社会福祉についてあまりに無知であるといったおられたことを思い出しました。
*先生が「社会保障論」を講義されての実感とのこと。
【政治家の道筋】
昨日の私の発表のポイントは、
「国民皆保険制度の実施という大きな政策の決断は、当時大蔵大臣だった池田勇人によってなされた」という報告です。
これは、当時厚生省国民健康保険課長だった伊部英男氏(故人)から私が直接お聞きしたことです。(アメリカのスタンフォード大学から同氏へのヒアリング結果がミネルバ書房から刊行されている本に書かれています)
「戦後」を点検する(講談社現代新書2072)
は、保坂正康(1939生まれ)と半藤一利(1930生まれ)の対談ですが、
池田勇人の「所得倍増計画」構想の背景とそのブレーンのことに触れています。P.249
(以下2行は、ブログ管理者の感想)
・当時としては、タイムリーな構想となり、その構想を上回る経済成長が達成された。
・1990年代以降については、政治家とブレーンとの連携という構図は崩れた。
【危険な消費税頼み】
昨日の研究会では、
医療や介護のための消費税の引き上げ・・という議論もありました。
大議論ですが、
現在の消費税の実績:税率5%で10兆円
を、社会保障給付100兆円という支出額との対比で冷静に考えてみるべきです。
つまり、
仮に、現行程度を維持するのに消費財だけで充当すれば、単純計算で50%の税率が必要になりますね。現在の消費税議論はこんな簡単な事実も踏まえていませんね。
ここ数年、国民の目に明らかになってきた、中央政府、地方公共団体の浪費の実態はヨーロッパにはみられない規模と悪質なもので、私は、消費税の引き上げは当面無理だと観測しています。
*財政破綻とインフレの懸念については、第4105号 (2010.12.16) で触れました。
*写真は、昨日1月15日午前、徳川園で写す。ぼたんの銘は「八千代椿」とありました。
P 7721
昨日の研究会は、まとめの自由討論が面白かったですね。司会の王文亮先生(金城学院大学)の手際のよい問題整理も議論の混迷を救っていました。
私は、1965年から1968年の間、(当時の)厚生省保険局に配属されていて医療費政策の末端を担当したのですが、そのときの体験から、今日に至る日本の医療費政策の原点がある・・
といった話をしようとしたのですが、1965年6月1日、当時保険局長だった小山進次郎さん(故人)からは辞令をもらえなかった(当の局長が同日厚生大臣から罷免されたため)話に時間がかかってしまい、雑然とした報告(持ち時間は20分)となって反省しきりです。
【2つの問題】
医療費問題を考える際には、
「国民経済の中から医療費にどの程度を割くのか?」という枠組みの問題と
「提供される医療サービスの質を維持・改善するためにはどうすればよいか?」
という2つのレベルの問題がある。
前者の問題は、政治の決断の問題で
後者の問題は、専門分野の研究・教育の蓄積が重要だ
というストーリーは話したと思います。
中国の若い研究者の皆さんには、「1960年代の日本の失敗(経済成長に見合う社会政策を行わなかった)と1990年代以降の日本の失敗(公共事業への無駄な投資)とを繰り返すな」といいたいです。
【藻谷浩介の氏の提案】
P 7722
で簡単に書いたのですが、
団塊の世代が高齢期に入ってきたことを念頭に置いた政策転換の必要性を説いていて啓発されます。
この著作に関しては経済学の専門家からは批判が多いようですが、日本の各地を自費で取材してきた蓄積が活かされています。
このような提案に対して、社会福祉や社会保障の専門家は対応していない。
となれば、国民サイドからの具体的な方向付けがあってよいのでは?
昨日、中国社会福祉研究会のまとめの方で、王先生は、日本の国民は、自分の国の社会保障や社会福祉についてあまりに無知であるといったおられたことを思い出しました。
*先生が「社会保障論」を講義されての実感とのこと。
【政治家の道筋】
昨日の私の発表のポイントは、
「国民皆保険制度の実施という大きな政策の決断は、当時大蔵大臣だった池田勇人によってなされた」という報告です。
これは、当時厚生省国民健康保険課長だった伊部英男氏(故人)から私が直接お聞きしたことです。(アメリカのスタンフォード大学から同氏へのヒアリング結果がミネルバ書房から刊行されている本に書かれています)
「戦後」を点検する(講談社現代新書2072)
は、保坂正康(1939生まれ)と半藤一利(1930生まれ)の対談ですが、
池田勇人の「所得倍増計画」構想の背景とそのブレーンのことに触れています。P.249
(以下2行は、ブログ管理者の感想)
・当時としては、タイムリーな構想となり、その構想を上回る経済成長が達成された。
・1990年代以降については、政治家とブレーンとの連携という構図は崩れた。
【危険な消費税頼み】
昨日の研究会では、
医療や介護のための消費税の引き上げ・・という議論もありました。
大議論ですが、
現在の消費税の実績:税率5%で10兆円
を、社会保障給付100兆円という支出額との対比で冷静に考えてみるべきです。
つまり、
仮に、現行程度を維持するのに消費財だけで充当すれば、単純計算で50%の税率が必要になりますね。現在の消費税議論はこんな簡単な事実も踏まえていませんね。
ここ数年、国民の目に明らかになってきた、中央政府、地方公共団体の浪費の実態はヨーロッパにはみられない規模と悪質なもので、私は、消費税の引き上げは当面無理だと観測しています。
*財政破綻とインフレの懸念については、第4105号 (2010.12.16) で触れました。
*写真は、昨日1月15日午前、徳川園で写す。ぼたんの銘は「八千代椿」とありました。