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アメリカの皆保険待ったなし【クルーグマン第11章】

2008-08-09 11:41:05 | 地球→ドイツブログ
アメリカの経済学者ポール・クルーグマン
THE CONSCIENCE OF A LIBERAL, 2007
を読んでいます。

第11章 THE HEALTH CARE IMPERATIVE pp.214-243
'imperative'には、「待ったなし」という感じがこもっていますね。

クルーグマンは、ニューヨークタイムスのコラムの執筆者として知られていますが
日本語訳となった経済学の教科書も広く読まれています。

2007年に刊行されたこの本は、一部日本語訳もでていますが、2008年に行われるアメリカ大統領選挙の重要な争点となることが見込まれる医療保険問題をテーマとした本です。

これまで、このブログで、1章ずつ、読みながら考えてきました。
この第11章は、30ページと長く、時間がかかりましたが、以下のように、専門家にはよく知られている事実を整理して、アメリカにとって、今、つまり今度の政権にとっていかに医療保険問題が重要かを説いています。

○ アメリカには、1935年に民主党政権下でできた「社会保障法」があり、これは「社会保障」をタイトルにもつ世界最初の法律として注目された。
1935年法では、医療給付を保険事故とすることはできなかった。

○ 1965年、ジョンソン政権(民主党)のもとで、高齢者(65歳以上)と低所得者を対象とする公的保険が導入された。(メディケアとメディケイド)

○ この2つの公的保険以外の人には、公的なシステムはないから、人々は、民間の保険会社の医療保険に加入した。会社に勤務するものには、保険料の補助があったが、それ以外の人々は、保険料を払うことができなくて、一切の医療保障がない状態だ。その数は、人口の15%にのぼる。

○ アメリカは、GDPの16%もの医療費を投じていて、これは世界でもダントツの比率だ。一人当たり医療費では6000ドルを超え、イギリスの2500ドルの倍以上だ。(2004年)これに対して、健康の総合指標ともいえる平均寿命は、イギリスの78.5歳に対してアメリカは77.5歳と低い。

○ 民間の保険会社の行動パターンは、まず、加入の段階で、病気がちのものを除き、今度は、医療給付を支給する場合には、その条件を厳しく審査する。企業の行動としての経済合理性はあるが、これでは一般の国民はたまらない。

○ アメリカの保守政権(共和党。現在のブッシュ政権も共和党)は、この「国民皆保険」構想には、常に反対してきた(その詳しい経過が、本書の第10章までで述べられていた)。「社会保障は国家を滅ばす」という考えを維持してきた。

○ 1940年度後半のトルーマン政権、1992年のクリントン政権(いずれも民主党)では、この国民皆保険構想を提案したが、実現はしなかった。この間、州政府のなかには独自に公的医療保険を構想したところもある。

○ この章の後半では、国民皆保険を成功させている隣国カナダ、予防給付で成果を挙げているフランス、公的システムと民間保険とをうまく組見合わせているドイツの制度などを紹介しつつ、議論を本格化する緊急性を説いている。

・・・key domestic priority for modern liberals p.243
(公的医療保険は)現在のリベラルとしては、内政の最大の課題だ。

・・・society should help its less fortunate members p.243
 社会は、もっとも恵まれない人々を助けるべきである(というニューディールの思想)

・・・Every other wealthy coutry has universal coverage. p.242
 先進諸国は、みんな公的医療保険制度をもっている。

*写真は、昨日夕方、近くの鹿児島大学農学部を散歩して。
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