バンド『きのこ帝国』のボーカルであった佐藤千亜紀が、2019年からソロアーティストとして独り立ちした。僕はきのこ帝国時代から、なかなかいいボーカルだなあ、と思って、ソロアルバム『PLANET』を2019年にリリースした時、なんとなくiTunesでダウンロードしていたが、実はあまりしっかりと聴かないままになっていた。
しかし、先日ブログ紹介した小川糸の小説、『とわの庭』を読み始めた時、電車の中で読むにあたり、何か音楽を聴きながら読もうと思っていたところ、偶然にも佐藤千亜紀のアルバム『PLANET』のことを思い出し、聴いてみようと思い立った。そして、結果的にこのアルバムが小説『とわの庭』の世界観・空気感と見事にハマってしまい、佐藤千亜紀を再認識するに至ってしまったのだ。
アルバム『PLANET』には下記12曲が収録されている。
- STAR
- FAKE/romance
- 空から落ちる星のように
- You Make Me Happy
- 大キライ
- lak
- Summer Gate
- Lovin’ You
- Spangle
- 面
- キスをする
- PLANET
佐藤千亜紀は良く見るとなかなか可愛い。ちょっとだけ、乃木坂の山下美月にも似ているような気がする。そして声も魅力的でいい。ソロとしてもっと売れてもいいと思うが、きのこ帝国でもほぼ全ての曲の作詞作曲を手掛けており、ギターも弾いて、ボーカルもこなす実力派なのだ。
このアルバム全体の世界観がとても心地良い。『きのこ帝国』の時のバンドサウンドとはまた違い、女性ソロアーティストとしてのサウンドとして見事に昇華されており、聴いていて爽やかだし、歌詞も巧みだ。特に歌詞が秀逸なのは5曲目の『大キライ』。キライ、キライと連発することで、逆に如何に彼のことが好きだったかが強調される別れソング。メロディ的に大好きになった曲は『Summer Gate』と『PLANET』だろう。どちらも佐藤千亜紀のボーカルとしての魅力を余すことなく表現している。明るくてポップな曲としては、『You Make Me Happy』がまさにタイトル通り、ハッピーな1曲となっている。バラードとして一番秀逸なのが、『空から落ちる星のように』で、シングルクオリティの美しいバラードに仕上がっている。
小説を読む時は、だいたい電車の中で読むことが多い。自分的には移動中の車内が一番集中して読める場所だ。そして、車内で小説を読んでいるとどうしても音楽も欲しくなる。これまでも小説と音楽が見事に自分の中でハマった例として、『いま、会いに行きます』の作者、市川拓司が2003年に発表した小説、『恋愛寫眞 もうひとつの物語』を読んでいた時、BONNIE PINKのアルバム『Even So』を聴いていたが、これが見事にハマってしまい、今でもこのアルバムを聴くと、小説のことを思い出してしまう。小説では無いが、Anderson Paakのアルバム『Ventura』をヘビロテで聴いていた頃に、芦川いづみの映画をDVDで頻繁に観ていたので、今でもAnderson Paakを聴くと芦川いづみが連想されてしまうのだ。記憶の結びつきというのは不思議なものであるが、昔聴いていた曲を聴くと、ある特定の思い出が蘇ってくるのとも似ている感覚だろう。