僕は時々お気に入りの本屋に立ち寄り、美術/映画/音楽書籍、絵本コーナーなどをくまなくチェックして回るのが好きだ。そうすると、たまに魅力的な本に遭遇するという素敵な“出逢い”があり、僕のクリエイティブ脳を刺激してくれる。近所の本屋で言えば、青葉台駅にあるBOOK 1stが田園都市沿線では一番書籍の量と質が充実しているのではないかと思うので、お気に入りだ。
そして先日、美術本コーナーで、こちらのイラスト絵本を見つけた。UIKO IKEDAというボールペン画家が描いた絵本である。絵本と言っても118ページもあるので、イラスト作品集とも言える内容だ。絵をボールペンだけで描いているようで、白黒の絵だが、僕も中学生の頃、漫画を描き始めてから長い間ペン画を好んで描いていたので、どこかでとても親近感があるタッチである。白黒なのに、何だか温かみのあるそのタッチに思わず惹かれてしまい、衝動買いしてしまったのだ。
主人公はゴマという名の黒ネコ。どこかヨーロッパ風な町で自由気ままに暮らすネコという設定。町並みがとても魅力的に描かれている。
ボールペンだけで描いているとは思えない表現力で、白黒の絵なのに、どこかカラフルなゴマの日常が描かれているのが何とも面白い。とても温かみと何とも言えない風合いのある絵、そして各ページにさりげなく書かれている言葉にセンスを感じる絵本だ。とても刺激になる本である。
ゴマは自由きままに、毎日元気に暮らしている。本の帯には、『喜んだり、悲しんだり、飲んだり食べたり、恋したり、お金だって稼がなきゃ。ネコもけっこう忙しい。落ち込んだりもするけれど、本能に負けて浮かれたり・・・・。ネコだから?いえ、ヒトもかも。日々のモヤモヤを解きほぐし、前向きに今日を生きる黒ネコ・ゴマがおくる日々のあれこれ。』と書かれているが、まさにそんなゴマの興味深い日常がカラフルに描かれている。
UIKO IKEDAという画家について調べてみたが、これまでインスタグラムを中心に作品の発表をしているものの、活動拠点や年齢など私生活についてはすべて非公開となっているようだ。絵の投稿の他は一切の活動を行って来なかったにもかかわらず、純粋な作品の魅力により国内外で広く支持を得て、現在フォロワー数は 12万人を超えているらしい。
プロフィールには、『ボールペンで気ままに絵を描くことにしました。趣味です。黒ネコ飼ってます。トラネコ飼ってました』と書かれている。自分の飼いネコをモデルにゴマを描いていると思われ、絵の中にピアノも頻繁に登場するが、ピアノを教えているらしいのだ。何ともさりげなく、イラストレーターとして豊かで、素敵なライフスタイルを送られていると思ってしまった。
僕は普段どちらかと言えば、ネコが主人公の絵本などはあまり興味がなく、犬派としてはワンちゃんの本の方に惹かれてしまいがちだ。なので、ネコの絵本を買ったのは本当に久しぶりではないだろうか。絵本で言えば、『100万回生きたねこ』を買って以来かもしれない。
しかし、このゴマはネコながら、ネコにあらず。まさにネコという形を借りて、人間の人生・日々の生活・喜怒哀楽そのものを表現しているのである。その意味では、大げさに言えばちょっと考えさせられてしまう点も多いし、日々の幸せとは何かを色々と教えてくれる絵本でもある。イラストという意味でも刺激を受けたが、ゴマを通して描かれるライフスタイルという意味でも、何だかとても参考・刺激になった絵本・作品集であった。
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