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傑作ジャズアルバム、スティングの『Bring On The Night』!

僕は1980年代の大半をアメリカで過ごした。80年代のポップミュージックにどっぷりハマっていて、今でも80’s音楽を聴くと、多感であったハイスクール時代の当時を思い出す。

 

そんなハイスクール時代の1984年に、大好きだったブリティッシュロックバンドの『ポリス』が活動停止を宣言。しかし、その翌年の1985年にはボーカルのスティングがソロ活動を発表し、ファーストソロアルバムの『Dream of the Blue Turtles』をリリースした。このアルバムはとても印象に残っており、当然ロックアルバムなのかと思っていたところ、内容としてはかなりジャズ寄りの音楽でびっくりしたのを覚えている。当時はまだ“ジャズ”という音楽ジャンルに殆ど触れたことがなく、今振り返れば、これが僕にとってのジャズへの入り口だったような気がする。

 

 

そしてその後、スティングはライブジャズアルバム、『Bring On The Night』を発表し、と同時にこの新たなジャズバンド編成の誕生をドキュメンタリーとして収めた同タイトルの映画も公開された。僕は当時このライブアルバムのカセットテープを購入し(上記写真にも写っているが、今でも大切に保管している)、何度も聴いているうちにすっかりジャズの世界にハマってしまったのだ。ちなみに、当時このドキュメンタリー映画もケーブルテレビで観た記憶があるが、最近DVDで再度購入して、約40年ぶりに観賞した。

 

Bring On The Night』はその後僕の大好きなアルバムの1枚となった。人気ロック歌手によるジャズアルバムとして、当時生粋のジャズファンからは批判の目で見られることも多かったと思う。どうせスティングの気まぐれでしょ、と。しかし、元々スティングはポリス結成の前は前身のバンドでジャズを演奏していた経験もあったし、当時のポップミュージックへの危機感、そしてメッセージ性を込めた音楽を世界に届けたいという思いを強く持っていた。そして当時はまだまだジャズは黒人のものという意識が根強く、白人の英国人のスティングが奏でるジャズを認めたくないとする向きも結構あったと思う。しかし、この『Bring On The Night』の為に集められたバンドメンバーを見ると、如何に当時スティングの取り組みが本気で、且つジャズにも、ロックにも、ポップス業界にも一石を投じる、革新的であったかを伺い知ることが出来よう。

 

 

バンドメンバーとして集められたのは、サックスにブランフォード・マルサリス。彼は当時大きな注目を集めていた弟のウィントン・マルサリスのバンドメンバーで、ハービー・ハンコックのアルバムにも参加していた本格サックスプレイヤーであった。ベースのダリル・ジョーンズはマイルス・デイヴィスのバンドで活動しており、またドラムのオマー・ハキムは人気ジャズバンド、ウェザー・リポートのメンバーであった。つまり、スティングはなんちゃってジャズ風バンドを組んだわけではなく、当時ジャズの最前線で活躍していた一流のジャズミュージシャンを大胆にも一気に引き抜いて本当の”ジャズアルバム”を作ってしまったのだ、これはマイルス・デイヴィスのようなジャズ界の大御所でもなかなか集めるのに躊躇してしまう編成であり、逆に変なしがらみがないスティングだからこそ起こせた革命だったのかもしれない。また集まったメンバーも、スティングの思いに賛同したのと同時に、何かジャズ界にも新しい風を持ち込みたいと思っていたのかもしれないが、これは今振り返ってみれば、何とも豪華で大胆な試みであったと言わざるを得ない。

 

 

そんなある意味歴史的な人種混同・クロスオーバージャズバンドによるライブアルバム『Bring On The Night』はとてもジャジーでクールなアルバムに仕上がっており、スティングのボーカルやギターのみならず、特にバンドメンバーの演奏テクニックとライブの臨場感が堪能できる、傑作ジャズアルバムに仕上がっている。

 

僕もこのアルバムが好き過ぎて今でも良く聴いているが、なんとあまりにも好き過ぎて、全メディアをコレクションしてしまった(中身は全部一緒だか・・)。まずは1985年に購入していたカセットテープは今となっては貴重だし、自宅でじっくり聴くならレコード、車で聴くならCD、外出中はiTunesでも聴けるようにデジタルダウンロードもしている。そして、ドキュメンタリーDVDも持っているので、目で楽しみたい場合はやっぱりDVDだ。これでこのアルバムの全てのメディアを制覇してしまった。アルバムジャケットのアートデザインも、ジャズの躍動感と、華やかな音の“彩“がカラフルに表現されており、そのデザイン性という意味でもかなり気に入っている。

 

 

 

ロック歌手によるジャズアルバムと侮ることなかれ、『Bring On The Night』は今聴いても、なかなかクオリティの高いライブジャズアルバムである。

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