米国カンザス州出身で、2007年にデビューしたようで、2008年のグラミー賞でも賞を獲得するなど、これまで音楽業界での評価はかなり高いアーティストだったようだが、僕がジャネール・モネイを知ったのはようやく昨年になってからだった。そして、ジャネールは女優としてアカデミー賞を受賞した映画『ムーンライト』に出演しており、役者としての演技力も高い評価を得ているという逸材なのである。
ラジオで彼女の『Make Me Feel』という曲を聴いたのだが、これがあまりにもプリンスの曲みたいだったので驚き、彼女が何者なのかをネットで調べたものだ。どうやらプリンスも生前ジャネールのことをとても高く評価しており、お気に入りだったようで、この曲が収録されている2018年リリースされたアルバム、『Dirty Computer』の制作にも、プリンスが加わっていたというのだ。そう言われてみれば、アルバムのタイトル、『Dirty Computer』というのも、プリンスの初期名盤、『Dirty Mind』を連想させるタイトルである。
そして、『Make Me Feel』は圧涛Iにファンキーな“プリンスサウンド”で、明らかにプリンスのトレードマークが押されていることが明白な1曲である。口で奏でるクリック音が曲を通して流れるが、これはあのプリンスの名曲『Kiss』をも思い起こさせる独特のファンクサウンド。この曲を聴いた時、プリンスの新曲を聴いたかのような感動を覚えてしまった。
しかし、驚くべきなのはこの曲がプリンスサウンドであることだけでは無い。この曲を、ジャネールがその独特な歌唱力で見事に自分のものにしてしまっていることだ。プリンスが彼女の才能に惚れ込んだのも納得だ。
そして、今年のグラミー賞では歌のパフォーマンスで『Make Me Feel』を披露していたのを見て、アルバム『Dirty Computer』が無性に聴いてみたくなり、ようやくダウンロード。アルバム全曲をじっくり聴いてみたが、やはり評判通りの素晴らしい出来映えであった。アルバムに収録されているのは下記14曲。
1) Dirty Computer
2) Crazy, Classic, Life
3) Take A Byte
4) Jane’s Dream
5) Screwed
6) Django Jane
7) Pynk
8) Make Me Feel
9) I Got The Juice
10) I Like That
11) Don’t Judge Me
12) Stevie’s Dream
13) So Afraid
14) Americans
まず、アルバム全体的にプリンスの香りがぷんぷん立ち込めてはいるが、やはり一番プリンス色が濃いのは『Make Me Feel』。2曲目の『Crazy, Classic, Life』も明らかにプリンス色が強く、浮遊感のある曲。ャWティブな明るさに満ちた名曲である。そして3曲目の『Take A Byte』もャWティブなサウンドだが、また雰囲気がガラっと変わり、フレンチャbプスか、Swing Out Sistersかというようなとてもオシャレなサウンドでリスナーを魅了する。
5曲目の『Screwed』 もまた打って変わって、Gwen Stefaniの歌唱法にも似たライトなガールズャbプサウンド。曲の始めのギターサウンドもかなり効いている。7曲目の『Pynk』はシンセを使ったかなりライトで可愛い1曲だが、途中で若干ハードなロックサウンドに変わるのがまた秀逸な構成だ。
9曲目の『I Got The Juice』もGwen Stefani色が出ている曲(以前、ジャネールはGwen Stefaniの所属していたNo Doubtの前座としてツアーで周っていたらしいので、影響を受けた面もあるのかもしれないと勝手に思ってしまった)。そしてあのファレル・ウィリアムズもラップボーカルで参加しており、とてもャbプに仕上がっている。
11曲目の『Don’t Judge Me』も個人的にはこのアルバムの中でとても好きな曲だ。この曲は何ともアダルトコンテンャ宴梶[な雰囲気が強く、曲調はあのマイケル・ジャクソンの名曲『Human Nature』や『Butterflies』にも通ずる美しいメロディーが心に残る名曲だ。あのQuincy Jonesがプロデュースしたと言っても疑わないような雰囲気だし、マイケルが作曲したかのようなメロディーがとても印象深い。
そして最後14曲目の『Americans』は最高に明るく、ノリの良いスケール感のある曲で締めくくられるのも気持ちが良い構成だ。この曲にもプリンスの影響を感じることが出来る。
全14曲はとてもレベルが高く、シングルクオリティー曲が実に多いことに驚かされた。そして全体にプリンスの影響が色濃く反映しつつも、それを完全に自分のサウンドとして昇華しており、それを可能とするジャネールの歌唱テクニックも見事としが言いようがない。プリンスのみならず、Gwen Stefaniやマイケル・ジャクソン的なサウンドも垣間見れて、彼女の実力には脱帽である。
プリンスは残念ながらこの世を去ってしまったが、ジャネールのような新たなアーティストの中で、プリンスイズムがこのように脈々と継承されていることに感無量であった。
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