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クリエイティブが大好きなのに、なぜか商社マンになってしまった私のマニアバース!

雑誌の表紙を彩る芦川いづみをまたゲット!

2024-11-29 21:45:53 | 芦川いづみ

僕の大好きな芦川いづみが表紙を飾った古い雑誌などを相変わらずコツコツ集めている。吉永小百合などに比べて芦川いづみが表紙を飾る雑誌は数が圧倒的に少なく、彼女がメインに活躍した1958年から1960年代始めの雑誌に集中していることもあり、今となってはなかなか入手するのが難しい。これまでにかなりマニアックな『週刊実話』、『コウロン』、『花椿』の表紙を飾る芦川いづみをゲットしたが、基本的に一番多いのはやっぱり映画雑誌である。しかし、この一番多い映画雑誌でも、芦川いづみのものはかなり少ないので、とてもレアとなっている。

そんな中、先日神保町の映画関連書籍で有名な“矢口書店”で、貴重な芦川いづみが表紙を飾る雑誌をゲットすることに成功した。それがこちら1957年(昭和32年)の4月に出版された『近代映画』特別号である。この号の存在はかなり前から知っていたのだが、なかなかこれまで入手することが出来なかったので、今回ゲット出来たのはラッキーである。1957年だけあって、まだ人気と美しさの絶頂期を迎える少し前の、初々しさが残る芦川いづみが見事表紙にキャプチャーされている。

なんといっても66年も前(!)の雑誌なので、背表紙や裏表紙などは多少破れており、決して完璧な状態ではないが、表紙そのものはかなりキレイで、何よりも肝心な芦川いづみの写真はとても良い状態のものをゲットすることが出来たのは奇跡的だ。今となっては流通している部数は殆どないと思われるので、かなり貴重である。

残念ながら、雑誌の中身に芦川いづみは全く登場しないので、この号は完全に表紙だけの起用みたいだが、芦川いづみの表紙コレクションとしてはこれで充分である。

『近代映画』や『平凡』などの映画関連雑誌では、まだ入手出来ていない芦川いづみの表紙号があるので、これから引き続き頑張って地道に集めて行きたいと思う。


芦川いづみ祭り2024! 第10弾 『硫黄島』

2024-08-18 14:38:51 | 芦川いづみ

このシリーズも今年第10弾を迎えたが、これまで随分とたくさんの芦川いづみ作品を観てきたものだ。今年も終戦記念日を迎えたばかりだが、週末に1959年公開のモノクロ日活映画、『硫黄島』をAmazon Primeで観賞した。

『硫黄島』をテーマにした映画と言えば、2006年に公開されたハリウッドの『硫黄島からの手紙』がすっかり有名だが、こちらはそれよりも47年前に日活が撮影した作品。あの日活俳優であった宇野重吉が監督した作品でもある(ちなみに、宇野重吉は多くの日活作品に出演している名優だが、あの寺尾聡の父である)。

映画を観た感想を先に書いておくが、映画の展開としては戦後6年目の現在と、戦争時の硫黄島のシーンを回想する形で交互に描かれる構成となっており、とても良く出来ている。悲惨な戦争をテーマにした反戦映画とはなっているが、硫黄島での生々しい戦闘シーンなどはあまりフィーチャーされていないので、昨今の戦争映画とはやや一線を画した戦後の人間ドラマとなっている点で、なかなか見応えのある作品であった。しかし、基本的には全体的に暗い作品なので、決して観ていて楽しい映画ではない。

物語は、戦後6年経ったところで始まる。人々の脳裏には生々しい戦争の悲惨な爪跡がまだ残っていた。東亜新聞社の社会部に勤める新米記者である武村均(小高雄二)も、そんな一人であった。いつものように行きつけの飲屋“のんき” に顔を出していたが、酔いつぶれていた一人の不思議な男と出会う。片桐正俊(大坂志郎)と名乗るその男は「記事にして貰えませんか」と云って、凄惨極まる話を始めた。人肉の腐敗臭を放つ硫黄島で、全員玉砕という報せをよそに6人の日本兵が生死の境をさまよっていた。昼は米軍の探索を逃れて岩穴に、夜は食物を求めて山野に、“生きたい”という本能だけで生きていた。ある日、上官の命を受けて木谷と食糧を探しに出かけた片桐達を待っていたのは、火炎放射器で焼き殺された4人の同胞の無残な姿だった。数日後、彼らは米軍に投降したのだという。武村は片桐が別れ際に云った言葉が気になった。片桐は、その当時書いた日記を取りに、近々硫黄島に行くというのだ。武村はデスクと相談の上、この記事を載せることにした矢先、「硫黄島には行けそうもありません」と片桐から電話をうけたため、記事は流れた。それから数ヶ月後、片桐が硫黄島で死んだという他社のトップ記事に武村は呆然とする。片桐の動向が解せない武村は、片桐が本当に話したかったことを探る決心をした―。

片桐が硫黄島に戻って、謎の死を遂げたことから、小高雄二扮する新聞記者の武村が、片桐が亡くなった理由などを探る為調査を開始する。その中には同じく硫黄島で片桐と共に生き残り生還した同僚の木谷(佐野浅夫)や、片桐と恋仲にあった看護婦の森(芦川いづみ)などにも会って、片桐のことを聴取していくことで様々な事実が判明していく展開に。

お目当ての芦川いづみは、上記の通り片桐との恋仲となる看護婦役だが、実は硫黄島で亡くなった同僚、山内の妹で、実は片桐が山内を極限状態で殺してしまったのではないかという疑惑もあり、恐らくその自責の念から、妹の面倒を見ることにしたようなのだが、詳細はあまり語られないので、やや映画では消化不良。森から片桐との距離を詰めた時、片桐は彼女とは結婚できないと伝え、硫黄島で自殺を図るのであった。

芦川いづみの登場シーンはそう多くないものの、相変わらず彼女が出演しているシーンは本当に華があり、この暗い作品のハイライトとも言える貴重なシーンが満載だ。まずは看護婦姿の美しい芦川いづみ。

美しい涙を流す芦川いづみ。

遊園地で遊ぶ、レアな芦川いづみ。

清楚なブラウスが眩しい、キレイなお姉さんの芦川いづみ。横顔も美しい~。

サンドイッチを食べたり、嬉しそうにはしゃぐ、キュートな芦川いづみ。

大坂志郎とのレアなラブシーンを演じる芦川いづみ。

このように、短い時間ではあるが、本作でも美しい芦川いづみを楽しむことが出来る。それもその筈。この映画が公開された1959年と言えば、まさに芦川いづみがその“絶頂期”とも言える1960-1963年に差し掛かる直前の作品なので、美しさは既に完成されているからである(完全な持論だが(笑))。尚、芦川いづみは看護婦に扮している映画としては、『その壁を砕け』、『街から街へつむじ風』、『君は恋人』など比較的多いが、今回の看護婦姿もかなり可愛いので必見である。

小高雄二は芦川いづみとの共演作も多いが、今見るとなかなか味のある日活俳優である。裕次郎や小林旭ほどの主役を張るまでには至らなかったが、本作も主演級作品である。良く見ると、上地雄輔にもちょっと似た雰囲気だ(笑)。また本作にはその後昭和のテレビドラマで頻繁に見かけていた大阪志郎、佐野浅夫、高田敏江、芦田伸介も登場しており、そして僕の好きな渡辺美佐子もちょい役で出演しているのが嬉しい。

またラストシーンで監督の宇野重吉もちょい役でカメオ出演している(ヒッチコック的な登場である)のも面白い(画面の右側)。

繰り返しにはなるが、映画全体としては地味で暗い映画ではあるものの、戦争をテーマにした“人間ドラマ”としてはなかなか良く出来ており、また芦川いづみの美しさを確認する意味でも、一見の価値がある映画であった。


芦川いづみ祭り2024!第9弾 『人間魚雷出撃す』

2024-08-11 23:43:09 | 芦川いづみ

毎年夏の終戦記念日が近づくと、多くの戦争関連番組などがテレビで放送される。そして僕も不思議と戦争に関する映画を観たくなる。あの悲惨で痛ましい戦争の中で多くの命が奪われた。戦争映画などを通して、この悲惨な過去のことを決して忘れてはならないと、毎年強く思い知らされる。

そんな中で、石原裕次郎、芦川いづみが共演した映画に『人間魚雷出撃す』という1956年に公開された日活のモノクロ映画がある。これまでDVDを買って持っていたものの観るのを後回しにしてしまっていた。しかし今年の夏に観たい戦争映画として、ついに観賞した。

『人間魚雷出撃す』は、あの人間魚雷と言われた“回天”で出撃した特殊部隊の若者たちを描いた作品で、『太陽の季節』の古川卓己監督作品だ。回天をテーマにした映画は何本か存在するが、これはその中でもかなりドキュメンタリー性が強く、淡々と事実関係を描いていく作品。海での戦闘シーンや潜水艦内部のシーンなど、かなりのスケール感とリアリティで描かれており、どこまでがセットなのかと思ってしまうほどなかなか良く出来ている。1956年の映画としてはレベルが高い。

物語だが、昭和20年7月初旬、すでに敗戦の色濃い頃、瀬戸内海の特別基地で若き“回天”特攻隊員たちは出撃に備えて連日猛特訓を行っていた。そして出撃を控えた彼らは故郷へと帰っていった。その中の一人、黒崎中尉(石原裕次郎)は、空襲で両親を失い、身寄りは兄だけになってしまった妹・洋子(芦川いづみ)と最後の別れを惜しむのだった。そして4人の若き特攻隊員たちは潜水艦伊58号で戦地へと向かう。回天4基を携えて….。

4人の特攻隊員たちを演じるのは、当時の日活人気俳優たち。若き石原裕次郎、葉山良二、長門裕之、杉幸彦。伊58号の艦長には森雅之が扮し、渋い演技を見せている。また、貴重なのは長門裕之が故郷に里帰りしたシーンで、弟として登場するのが実の弟でもある津川雅彦。この兄弟共演もかなり珍しい。映画全体としては、艦長の森雅之と石原裕次郎が主役、そして葉山良二と長門裕之が準主役くらいの位置付けだろう。そして、僕のお目当ての芦川いづみは、石原裕次郎演じる黒崎中尉の妹を演じている。また本作は、アメリカの戦後軍事裁判のシーンから始まるのだが、艦長が証言台に立っており、その通訳を若き岡田真澄が演じている。今観るとなかなか豪華な俳優陣である。

映画を観終わった感想だが、伊58号の中での隊員たちの様子や人間模様が上手く描かれており、回天の物語としてはなかなか良く出来ているが、ドキュメンタリー的なリアリティで描かれていることもあり、逆に映画として過度にドラマチックな演出もない。その分、映画としてのエンターテインメント性は思ったほど高くなかった。回天の特攻隊員になった過程や、トレーニング過程などをもっと丁寧に描いていれば、感情移入が出来たかもしれない。この点でちょっと物足りない作品であった。

石原裕次郎は、特攻隊員4人の中では最後に出撃する役で、機械トラブルでなかなか出撃出来ない時のもどかしさや、故郷に残してきた妹を思う複雑な思いなども交錯しながら、お国の為に命を捧げることを胸に誓いながら敵艦に突っ込んでいく姿を捉えている。しかし、石原裕次郎主演作品としての華々しい“見せ場”がやや少ないので、彼の魅力があまり発揮されていないようにも感じたが、これは裕次郎のキャリアでも比較的初期の作品なので、そもそもそのような企画ではなかったかもしれない。

そして最後に、最大のお目当てであった芦川いづみについてだが、彼女もまだこの時期は本格ブレイクする前の作品。ちなみに、芦川いづみは古川卓己監督作品への出演が本作を含め全部で5作品ある。『人間魚雷・・』では里帰りした石原裕次郎が、妹を演じる芦川いづみと対面するシーンと、回想シーンにチラッと登場するくらいで、決して出演シーンは多くない。兄を思って彼女が制作した小さな人形をお守りとして渡すが、裕次郎はこの人形をもって伊58号に乗り込む。しかし残念ながら、この兄妹最後の対面となるシーンや回想シーンもあまり大きな感動は生まれない。それでも、若い彼女の登場は映画で唯一の華をもたらしており、初々しいキュートな笑顔も一瞬見せてくれるのが大きな収穫ではあった。

全体としては、戦争映画としての見どころもあり、ドキュメンタリー的な上手さは光るものの、映画としての面白さはイマイチであると感じてしまった。折角の良い俳優陣も、そのキャラクターの背景をあまり描いていないことと、ドラマチックな演出をあえて抑えていることで、イマイチ感情移入が出来ないのが残念。それでも芦川いづみ出演作をまた一つチェック出来たことや、若き石原裕次郎の主演作として観賞出来た貴重な作品となった。        

尚、DVDには撮影のレアな舞台裏写真なども何枚か収録されており、芦川いづみのこんな可愛い笑顔の写真も収録されていた。これはなかなか嬉しい貴重な1枚である(笑)。


平凡特別編集『20世紀のビッグスタア』!

2024-07-28 21:54:35 | 芦川いづみ

マガジンハウスから2000年頃に、計6冊の“平凡特別編集 『20世紀のビッグスタア』と題した写真集が出版された。この写真集の存在をつい最近知ってしまったのだが、この6冊の内、第二巻が『裕次郎と日活アクション』、第三巻が『銀幕の名花』をテーマに取り上げており、僕の一番好きで興味のある内容だったので、早速ネットで状態の良いものを見つけて購入した。裕次郎と日活映画が好きだからではあるのだが、もちろん一番のお目当ては、いつものように”芦川いづみ“の面影を探すことなのだが(笑)。

まず一冊目の『裕次郎と日活アクション』だが、タイトルの通り、裕次郎を中心に日活のスター俳優を贅沢に取り上げており、特に裕次郎、小林旭、赤木圭一郎の3名にたくさんの紙面を割いている。当時はこの3人に和田浩治などを含め、”ダイヤモンドライン”と呼ばれていた。

裕次郎の写真集は他にも何冊か持っているが、他の写真集にはない写真なども多く、かなり興味深い。映画のみならず、プライベートの写真などもかなり取り上げられている。

タフガイ裕次郎に対して、裕次郎に次いで当時人気があったのが、マイティガイこと小林旭。拳銃アクションなど、多くの日活アクション映画に主演し、当時の日活を支えた人だ。3人の中では今でも健在なのは小林旭だけとなった。

もう一人忘れてはならないのが、トニーこと赤木圭一郎。正直3人の中で一番のイケメンではないかと思うが、日本人離れした顔立ちと恵まれた体格はスターになることを約束されていたが、若くして車の事故で亡くなってしまったのが残念である。

この3人ほどではないが、同じく当時人気のあった宍戸錠、二谷英明、和田浩治、浜田光夫、高橋英樹、渡哲也なども取り上げている。この中では今も活躍中の高橋英樹が一番好きであったが、裕次郎の継承者という意味ではやはり石原プロの社長となった渡哲也だろう。和田浩治は風貌が裕次郎に似ていたこともあり、”ミニ裕次郎”とも呼ばれていたが、結果的には似ていたからこそ個性が出し辛かったかもしれない。

もう1冊の『銀幕の名花』は、日活のみならず、昭和を彩ったスター女優たちを大勢取り上げており、特に日活の北原三枝(のちの裕次郎夫人)、芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、加賀まりこ、和泉雅子、そして東宝の星由里子などを大きく取り上げている。

最後に、薬師丸ひろ子、原田知世の角川女優も取り上げられていた。

お目当ての芦川いづみもちゃんと大きく取り上げられていたのには感動した。また今まで見たことのない写真や、渡哲也の横で写っていたお正月カレンダー用の着物ショットなども収録されており、イズミストとしては大きな収穫となった(笑)。

この2冊の写真集を見ていてやっぱり思うのは、昭和の(特に1950-60年代の映画黄金期)俳優界は本当に華やかで、ビッグスターが多かったことだ。当時は映画が最大の娯楽であった為、年間の公開映画数も半端なく多かったし、みんなが映画館に足を運んだものだ。1970年代に入って、メインステージはテレビに映り、裕次郎もまた映画から『太陽にほえろ』などテレビに移って行ったし、日活も映画から撤退して次第に衰退していく時期を迎えてしまったのだ。黄金時代は日活、東宝、東映、松竹、大映など多くの大手映画会社があり、各映画会社でそれぞれスター俳優システムを形成していたが、“五社協定“により、同じ俳優が違う映画会社の作品に出ることは出来なかったし、違う映画会社のスターが共演することもなかった。この問題に風穴を開けたのが東宝/三船敏郎と日活/裕次郎の『黒部の太陽』だったのだが、皮肉にも結果的にこのシステムの崩壊が、映画の黄金時代の終焉を招いてしまったのかもしれない。そんな映画界の歴史などに思いを巡らせながら、大好きな芦川いづみの面影を確認出来るという意味で、なかなか嬉しい写真集2冊となった。


芦川いづみ祭り2024!第8弾 『哀愁の園』

2024-06-30 14:04:05 | 芦川いづみ

第7弾に続き、立て続けに第8弾を。今回は1956年の日活モノクロ映画、『哀愁の園』を観賞した。この作品は、南田洋子と葉山良二の初競演作で、かなりコテコテのメロドラマである。元々ラジオのメロドラマを映画化したものなので、戦後に流行った『君の名は』的な雰囲気が漂う作品でもある。

物語は下記の通りだが、一言で言ってしまえば女性の立場があまりにもまだ弱い時代の産物であり、レイプにより、純潔を失ってしまったヒロインの女性が、恋人にその理由を告げることなく彼のもとを去っていくという悲しい物語だ。色々と突っ込み所満載の映画ではあるが、まず当時の南田洋子(後に、長門裕之の奥さん)の主演作品で、やっぱり当時の若い彼女は実に美しい。そして、石原裕次郎作品を始めとする多くの日活映画にも主演していた葉山良二は、いつもいい人役が多いが、この映画でも恋人を一途に愛する真面目な男性を演じていて、まさに彼の定番の配役である。

(あらすじ (日活のウェブサイトより))

日東毛織の社員・速水達也(葉山良二)は蓼科にいる母の希望で牧場を経営するため、会社を辞めることになった。彼の恋人・津村みゆき(南田洋子)は日本橋の老舗・山一商店の一人娘として生まれ、何不自由なく過ごしてきたが、昨今の経営不振でみゆき自身も働かなければならなくなった。そんな時、達也と同窓で日東毛織の若社長である小松原道隆(相原巨典)とその愛人・江口沙江子(渡辺美佐子)の乗るハイヤーが、皮肉にもみゆきの父・新太郎をハネてしまう。幸いにも軽い脳震とうで済んだが、病院に付き添った道隆は駆け付けたみゆきの美しい横顔を見て密かに邪心を起こすのだった。一方、銀座を行く達也は沙江子に会った。沙江子は道隆の世話になる中、社員の達也を慕い始めていたのである。その後、道隆は山一商店を援助し、その上、みゆきは道隆の秘書として就職することか決まった。こうして達也は「必ず待っていてください。迎えにきますから」との言葉をみゆきに残して、高原の牧場へ旅立った。東京で働くみゆきはある日、道隆の重役会出席のため箱根へ同行する。だが道隆の卑劣な毒牙にかかって純潔を奪われてしまうのだった。

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上記の通り、若社長である道隆の毒牙にかかり、純潔を失ったみゆきは思い詰めてしまい、芦ノ湖で自殺を図ろうとするが、ストリップダンサーのサリー(潮けい子)に助けられる。しかし、結局みゆきは達也との別れを決意するが、クリスマスパーティーの夜も達也とデートするも、真実を言わずに、この日を最後に別れる決心をするところで映画は終わってしまう。その後の展開を見せず、ある意味余韻を残して終わったのだろうが、ちょっと正直消化不良のエンディングではあったし、真実を達也に告げないみゆきにも、なんとももどかしい気持ちであった。

ラストシーンは、達也とみゆきがそれぞれ背中を向けて、振り返らないという約束で別れる。これは『東京ラブストーリー』でカンチとリカが別れたラストシーンでも描かれたパターンだったが、メロドラマでは、こんな昔から同じことをやっていたのである。

こんなメロドラマの中で、個人的に特筆すべき点は下記3点。

1) まずは先程も触れたが、売り出し当時の南田洋子の美しさは、この映画の魅力の一つでもある。

2) 若社長、道隆の愛人役を演じる、渡辺美佐子の妖艶な美しさ。僕は結構渡辺美佐子が好きで、他にも多くの日活映画で芦川いづみとも共演しているので観ているが、ちょっと小悪魔的な愛人役をやらせたらピカイチである(笑)。今回も暗いメロドラマの中で際立つ役柄を見事に演じていた。

3) そして最後はやっぱり芦川いづみだ。1956年の作品にて、まだ芦川いづみ人気がピークに達する前の作品でもあり、少し初々しい芦川いづみが楽しめる(若い頃の芦川いづみは、より星野真里に激似である!)。この作品も決して出演シーンは多くない。全体でも数分に満たない登場シーンだ。達也が継ぐ実家の牧場で働く活発な女性、梨花を演じているが、牧場で馬に乗るシーンなどもあり、結構貴重なシーンを観ることが出来る。きっと、みゆきと別れた後、牧場に戻り、達也と梨花は結ばれたのではないかと勝手に想像してしまったが、こんなチョイ役にも関わらず、彼女がシーンに登場するだけで映画がぱっと明るくなるのだ。見事な輝きを放つ芦川いづみは本当に唯一無二の女優である。

また、おまけ情報だが、ストリッパーのサリーの恋人役である松本という男を演じているのが天本英世。そう、仮面ライダーの死神博士役で一躍有名になったあの天本英世である。こんな映画にも出ていたのかと驚いてしまった。そしてもう一人、寅さんの“おいちゃん”役で有名な下條正巳が若旦那をたぶらかす丸十の高橋役で出ていたのも面白い。古い当時の映画を観ていると、このような発見も結構あるのが楽しかったりする。

暗いメロドラマではあったが、前半は東京のオフィス風景なども登場し、総合的には当時の雰囲気や時代背景などを知る意味でも結構面白い映画であったし、芦川いづみファンとしても、牧場で働くいづみちゃんを確認出来た点で、収穫が得られた作品であった(笑)。