「お昼、良かったらウチの社食で食べていきませんか? 今日、カレーなんですよ」 あまりにも嬉しすぎる取材先人事担当者からのお誘い。もちろん、ありがたくご相伴に預からせてもらうことにした。 ここは某県某所のとある企業。ある実績において日本一を堅持し続ける名門企業である。他社の採用担当が喉から手を出して欲しがるような有能な営業マンを多数擁する。それをまとめるトップも篤志に溢れ温かみがある。そうした温かみが末端――それこそ社食のマダムたちにまで――浸透している。今では希薄となった、本当の家族主義が根付いている。 食堂はカレーの香ばしい匂いに包まれていた。 瞬間的に口辺が弛緩しヨダレがあふれ出てくる。一刻も早くカレーにありつきたい。そしてどんなカレーを食べさせてくれるのかが愉しみでならない。ハァハァと息を荒げながら盆をもって列にならぶ。 さて、そのカレーだが人参やジャガイモ、玉ねぎがゴロゴロとはいった昔ながらのライスカレーである。くんかくんかと香りを嗅いでみたところによれば、どうやら即席カレーの中で一番好きな『バーモントカレー』のようだ。これは嬉しい。嬉しすぎる。 味の方も「これが食べたかったんだよ!」と叫びたくなるような優しく懐かしい味である。この日は朝食を抜いていたので極限まで腹が減っていた。その状況でこのライスカレーである。それもアメ色玉ねぎ(笑)やら、すり下ろしたリンゴ(笑)やら、チョコレートやらが混入された常軌を逸したカレーではなく、野菜をふんだんに使い、レシピ通り実直に作られたいにしえのライスカレーである。この状況でこのカレー。俺にとっては、究極のライスカレーだと言える。これほど幸せな昼食はない。 「究極のライスカレー」は、温かい人間が集う場所で、温かい人が調理し、気の置けない仲間と食べてこそ出会えるもの。とうぶん、こうしたカレーとは出会えそうにない。 こちらはその前日に食べたネパール料理店のダルバート風カレー。カレーはチキンとキーマ。これはこれで美味かった。 |
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