今年の初旬、取材で訪れた千葉県・茂原市で食べたカレー。 このカレー、ただのカレーではない。「もばらカレー」と銘打たれた立派なご当地カレーなのである。とは言っても町興しのために自治体と地域の飲食店が一体となって開発した、といった類のものではなく、地元ビジネスホテル併設の食堂が「茂原らしいカレーを」と自主的に開発し、供しているカレーである。牛すじをベースとしたコク深いルーに特徴があるらしい。茂原と牛すじの因果関係は定かではないが、郷土愛を感じさせる、なかなかに意欲的なカレーだと言える。 カレーのメニューはいくつか種類があって、プレーンな『もばらカレー』のほか、もばらカレーとカツを組み合わせた『カツカレー』、もばらカレーと卵でとじたカツを組み合わせた『煮カツカレー』の3種がその内訳。初訪店ということで、自分の中のセオリーに従い、プレーンな『もばらカレー』に決めかけたのだが、同行の編集氏が『煮カツカレー』をチョイスするという冒険に走ったため、メラメラと対抗心が燃え上がり、煮てない方の『カツカレー』をチョイスすることにした。 当たり前だが、『煮カツカレー』と『カツカレー』とでは大きくルックスが異なる。カツ丼をイメージしたものだろう、前者は漆器の丼に容れられており、“和”を感じさせるルックス。後者はルーとカツが別になった“後がけ方式”の、やや洋食的な色合いの強いルックス。ルーは“憧れのカレーポット”に容れらており、個人的にテンション3割増し。いずれもサラダと味噌汁、食後の珈琲まで付く。ちょっとした定食の体で悪くない。 味の方だが、メニューに記載された口上通り、コク深く果実系の甘みを感じるカレーだ。徹底的に煮込んだのであろう、牛すじは繊維状に煮溶けている。クドさは全く感じず、スパイスの刺激も控えめ。老若男女誰もが「美味しい」と感じる優しいカレーだと思う。事実、後から入店したおじいさん、そのまた後から入ってきたおばさん、いずれもプレーンな『もばらカレー』をオーダーしていた。1月の寒い日だが、窓からは陽が差し込み店内はポカポカと暖かい。そうした空間で世代の異なる人間たちがカレーを食べている。素敵な光景だな、と思いつつ、奥深くやさしいカレーを味わった。 |
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