酒馬鹿三兄弟、次男の岸壁はしご酒

酒は飲んだら飲まれましょう、しかし仲良く。拙い酒と乱暴ポエトリ月夜の酩酊ランデブー

25年目のスピリッツ

2013-10-17 17:56:55 | 




葉子が、雲隠れしていた彼女が
子を孕んだらしい、
素晴らしい
加えて良いことに、それは俺の子供でない
相手の男の事は全く知らないので、
そいつにお祝いを言うわけではないが。

なにか昔、予感めいた事を思った気がするが、
女が子供を孕むのは必然でもあるだろう、
アフリカだとして、アフガニスタンだとしたって、
どんなに枯れようが荒もうが

この世にDNAと太陽がある限り、
人はこの運命から手は切れない、

どんなに荒涼で、見えない世界だとしても
男は跨り女は撓り愛に似たしかしそれほど高潔でもない一滴が
実ればまた人間だ、見渡せば、
呆れるほどの人間の数で
東京なら幾分うんざりするが
胎児のいる女には、見えなくても感じる新世界が有るだろう、

産まれて来た子供が笑う時、
誰かしらも、涼しい風が吹いた時の様な表情になる、
幼子が、この地上に足りない物をまだしっかりと持っているからかもしれない
やがて失ってしまうかもしれない道

答えにならない物を答える何かがタオに有るように
タオを通じて子供の心に見えるような気がした
ようやく道が何なのか、判りかけて来たようだ。

25年も飲み続けている酒を横に、
9杯目のタンカレーオンザロックを飲みながら。



そして俺は何を失くしたか知る気はしない







sails must be harder

2013-10-09 17:45:55 | 






あの娘の笑顔は、
夜の酒場で及第点だ
もっともくだを巻く酔った男たちの隣の席でではない

カウンター
の中で


ボトルから氷のグラスへ注ぐ、エヴァンウィリアムス
何事もない仕草でクールに決めている
しかし笑顔は発せられている

酔った中年たちはみっともないくらい
その振る舞いに見とれているが
むしろ彼女は、
その視線を無視しながら
愛嬌を振りまく事に長けている

噂が噂を呼び
時にはバーに、
夥しい人数の酔った男たちが
汚い札を握りしめ
殺到する夜もあるだろう、
どこかでグラスは割れ、
年増の娼婦たちは
ジェラシーでみだりにテーブルを汚し
些細な諍いも絶えない店で
それでもあの娘は
ボウモアやヘネシーやルイ13世を
クールにきめてボトルを振るだろう

どんな夜が来たとしても
この店は地上には無いので

つまり

その船の上では少々覚悟のいる事だろう


風にマストは大いに揺れる




船が長い一廻りを済まして
いつかここに戻る日があるとして
その時は

陸上の酒でもご馳走しよう










" Closet trilogy"

2013-10-04 12:03:30 | 




ガキの頃俺は押し入れに閉じ込められて有名になった
ガキの頃俺は押し入れに閉じ込められて本になった
ガキの頃俺は押し入れに閉じ込められて安らかだった





それから俺は押し入れが好きになった
中で夢想するようになった昼でも暗いそこはいつでも神聖な場所で
且つ最低の場所だった、

だから俺は進んで押し入れの中に入った
俺は1人になりたくて夢見たくて必死になって隠れてみた
そこには布団か、若しくは空虚なスペースしかなかったが
タオのように言えばその無用の用が
全てを備えていたわけさ!




もっとも神聖な場所はつまり最低な場所
もっとも気位の高い女は要するに濁った心
もっとも価値ある物は、価値が無いのと同じ



こう考えれば、人は退廃してゆくのだろうけど


逆にとらえれば
真理の魔法のように響くかも知れない


閉じ込められた懲罰の部屋は
俺を無限に自由にしてしまったわけだ
そこではなんでも出来たから、退屈することが無かった



だけど大人になった俺は狭くて暗いところがちっとも好きではない


きっと
自由では無くなったんだろう