国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第一回衆議院 運輸及び交通委員会 第2号から転載 7話目

2012-12-28 06:08:19 | 国鉄関連_国会審議
おはようございます。
本日も長文かつ旧字体ですがしばしお付き合いください。
国鉄の運賃値上げに関して、鉄道車内等における広告の可否などが質問に上がっている他、中盤以降では、運賃値上げに際して、老朽施設の改良などへの改善状況について説明がなされています。
 当時の世相を知る上で、かなり貴重な資料と言えます。

角田幸吉議員自由党所属の国会議員で、法学者かつ弁護士でした。国鉄における広告等を行うことで、特別会計の収支を少しでも改善できないかと言う視点で質問をしています。

最初に、鉄道広告の歴史を紐解いてみたいと思います。
鉄道広告のに関する歴史は古く、明治11年に「乗り物酔止薬「鎮嘔丹」が初の車内広告」となったという記述があります。ただ、当時は有料広告ではなく、許可制であったようです。
明治43年からは、ベンチやゴミ箱などにも広告を掲載、明治44年になって初めて「有料広告」が開始され(この制度は大正12年に中止されますが、その後昭和2年に復活)昭和17年まで続きます。
国鉄にあっても車内吊り広告等は大きな収入源にっていました。しかし、戦争激化により国鉄の有料広告は中止となります。
戦後は、昭和21年には有料広告が復活、今に至ると記されています。
実際には、角田議員が質問する前に既に有料広告は復活しているのですが、こうしたことも意識して読んでいないと見過ごしてしまうなぁと改めて思う次第です。
以下は、サイトを参考にしました。
参考URL https://www.musashino-ad.co.jp/column/ad_history.html

○角田(幸)委員 鐵道を特別會計としていく以上、赤字の補填はやはり鐵道的収入によつて補填するのが相當だと思いますが、お伺いしたいのは、鐵道官有物の中に廣告等をつるして、その収入を得ることができないかどうかという一點であります。これはむづかしいように承つておつたのでありますが、過般の新聞によりますと、はがきに廣告を刷つて入れて、そうしていくらかの収入を得て、逓信關係の収入の赤字の補填を新聞で見たのでありますけれども、鐵道については、その點についてどういうお考えであるか。
 もう一つは、私は今廣告の面でお尋ねしたのでありますが、他の方法によつて収入を得て、そうしてこの赤字の補填をする工夫について當局はどんなお考えであるか。その點を御説明願いたいのであります。
○伊能政府委員 鐵道廣告につきましては、御承知のように戰時中、各般の情報宣傳統制の影響を受けまして、非常に萎縮いたしておりました。それが終戰後、戰前の鐵道廣告状態に復帰いたしておりまするが、紙その他の状況から、必ずしも十分良好な成續をあげておりません。大體月間におきまして、最近七、八十萬圓ないし百萬圓近い収入をあげております。これにつきましては、施設の整備と相まちまして、鐵道沿線の廣告が日本の觀光事業その他から、戰前のようにあまりに亂脈な不統制な廣告になることを私も心配をいたしておりまするので、鐵道沿線、鐵道構内の施設を使う廣告につきましては、できる限り優美な全體の風光その他驛の美觀等とあまり背馳しないような適當な廣告を慫慂したいということで、堅實な廣告會社につきましては、できる限りの助成――と言つて別に助成金を出しておるわけではありますが、それと提携をいたしまして、鐵道廣告による収入の確保を實ははかつております。

更に、館 俊三議員は、社会党所属の議員で、北海道出身の元国鉄職員で、国労から選出された議員のようです。
議員が質問している内容として、運賃値上げと合理化がセットになっていることは評価していますが、運賃改訂が物価安定の視点から運賃家庭額を抑えられてしまっては十分な合理化も出来ないのではないかという質問をされており、これに対して、伊能繁次郎運輸事務官(後運輸事務次官)が、「赤字公債なり、あるいは一時借入金なりということで、補填していただくという考え方」を国からしてもらって単年度毎に補填する考え方を示しています。
以下は、
○館委員 簡單に一つ、もう濟んだようなことでありますが、從來の國鐵の經營の考え方は、建主改從とかいうことを言つておつたのでありますけれども、今度新たに合理化ということを言われております。この積極的合理化ということに鐵道從業員は非常に期待をもつている。ところが今度の運賃増収によつて積極的合理化ができるかどうかということですが、運賃は安本か物價廳の方面できまるということになつてくれば、鐵道の積極的改良という面についての實施ができるかできないか。從つて現實の収入からどういうふうな積極的合理化をお考えになつておるかという點をお尋ねしたいのであります。
○伊能政府委員 今囘の運賃値上げについて、鐵道に自主性があつたかないかという點につきましては、先ほど大臣から御説明がありましたように、インフレーシヨンのでき得る限りの抑止、健全財政の堅持竝びに公定價格制度を強力に推進するというような各段の經濟施策の一環として、新物價體系が設定せられ、その内容として鐵道運賃の値上げもああした限度にきまりましたので、しかるがゆえに國鐵の運賃値上げに自主性がなかつたとは申し上げられないと思います。國全體の總合政策としてかくのごとく從來個々ばらばらにきめられておつたものが一體としてきめられたところに、私どもは大きな進歩があり、また國有鐵道としては獨立採算制を強力に維持することはできませんでしたが、これが赤字については、いわゆる各般經營の合理化並びにその他によつても依然として殘るものにつきましては、國全體として、あるいは赤字公債なり、あるいは一時借入金なりということで、補填していただくという考え方で今日に至つたわけでございます。


*****************************************************************
取材・記事の執筆等はお気軽にお問い合わせください。
下記、入力フォームからお送りいただけると助かります。
http://jnrera3.webcrow.jp/contact.html

日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代
http://jnrera3.webcrow.jp/index.html
*****************************************************************

*******************以下は、審議録本文になります。*********************

○高瀬委員長代理 角田委員。
○角田(幸)委員 鐵道を特別會計としていく以上、赤字の補填はやはり鐵道的収入によつて補填するのが相當だと思いますが、お伺いしたいのは、鐵道官有物の中に廣告等をつるして、その収入を得ることができないかどうかという一點であります。これはむづかしいように承つておつたのでありますが、過般の新聞によりますと、はがきに廣告を刷つて入れて、そうしていくらかの収入を得て、逓信關係の収入の赤字の補填を新聞で見たのでありますけれども、鐵道については、その點についてどういうお考えであるか。
 もう一つは、私は今廣告の面でお尋ねしたのでありますが、他の方法によつて収入を得て、そうしてこの赤字の補填をする工夫について當局はどんなお考えであるか。その點を御説明願いたいのであります。
○伊能政府委員 鐵道廣告につきましては、御承知のように戰時中、各般の情報宣傳統制の影響を受けまして、非常に萎縮いたしておりました。それが終戰後、戰前の鐵道廣告状態に復帰いたしておりまするが、紙その他の状況から、必ずしも十分良好な成續をあげておりません。大體月間におきまして、最近七、八十萬圓ないし百萬圓近い収入をあげております。これにつきましては、施設の整備と相まちまして、鐵道沿線の廣告が日本の觀光事業その他から、戰前のようにあまりに亂脈な不統制な廣告になることを私も心配をいたしておりまするので、鐵道沿線、鐵道構内の施設を使う廣告につきましては、できる限り優美な全體の風光その他驛の美觀等とあまり背馳しないような適當な廣告を慫慂したいということで、堅實な廣告會社につきましては、できる限りの助成――と言つて別に助成金を出しておるわけではありますが、それと提携をいたしまして、鐵道廣告による収入の確保を實ははかつております。
 その他鐵道の収入、いわゆる雜収入の觀點といたしましては、鐵道構内における諸般の旅客荷主に對しましてサービスを與える營業がございます。それらにつきましても、當面の運輸、交通に支障のない限り、旅客、荷主にできる限りの利便を提供し得る範圍におきましては、これを認めようという考えで目下やつております。
 また公共用財産等につきましては、各般の制約がございますが、雜種財産竝びに不要品として決定を得ましたもの、しかもそれが鐵道では使用できませんが、民間の一部で使用できますようなスクラツプでありますとかその他のものにつきましては、毎年日本製鐵、神戸製鐵、日本鋼管、その他鐵道と取引のあります關係會社等に拂下げをいたしまして、若干でも雜収入による収入の補填をはかりたい。かように考えております。
○高瀬委員長代理 館君にお諮りいたしますが、御質疑は長く續きますか。實は午後一時から本會議で自由討議がありますので、この程度で散會したいと思いますが、簡單でしたらどうぞ。
○館委員 簡單に一つ、もう濟んだようなことでありますが、從來の國鐵の經營の考え方は、建主改從とかいうことを言つておつたのでありますけれども、今度新たに合理化ということを言われております。この積極的合理化ということに鐵道從業員は非常に期待をもつている。ところが今度の運賃増収によつて積極的合理化ができるかどうかということですが、運賃は安本か物價廳の方面できまるということになつてくれば、鐵道の積極的改良という面についての實施ができるかできないか。從つて現實の収入からどういうふうな積極的合理化をお考えになつておるかという點をお尋ねしたいのであります。
○伊能政府委員 今囘の運賃値上げについて、鐵道に自主性があつたかないかという點につきましては、先ほど大臣から御説明がありましたように、インフレーシヨンのでき得る限りの抑止、健全財政の堅持竝びに公定價格制度を強力に推進するというような各段の經濟施策の一環として、新物價體系が設定せられ、その内容として鐵道運賃の値上げもああした限度にきまりましたので、しかるがゆえに國鐵の運賃値上げに自主性がなかつたとは申し上げられないと思います。國全體の總合政策としてかくのごとく從來個々ばらばらにきめられておつたものが一體としてきめられたところに、私どもは大きな進歩があり、また國有鐵道としては獨立採算制を強力に維持することはできませんでしたが、これが赤字については、いわゆる各般經營の合理化並びにその他によつても依然として殘るものにつきましては、國全體として、あるいは赤字公債なり、あるいは一時借入金なりということで、補填していただくという考え方で今日に至つたわけでございます。
 それから經營の合理化についてどう考えておるかという問題でありますが、これは根本の問題としては、六十萬從業員が積極的にこの際國家の公器たる國鐵の使命を發揮するという勤勞意欲を振起していただくことによりまして、石炭の節約もきわめて強大なる力を發揮する、七%程度の節約を一〇%までやり得ますならば、七十萬トン程度の石炭が節約できる、それによつてわれわれの目標としております輸送力の増強が一層合理化によつて推進され、これによつて四十億近い増収も期待される。よつてもつて各般の人的、物的な方面にも異常な好影響を來してくる。また從事員の勤勞意欲の振起によりまして、サービスの面におきましても、從來とは著しく變つた體制に今後進み得るのではないか。また勤務時間その他につきましても、同じ八時間であつても集約した八時間勤勞ができるならば旅客、荷主に對する作業の面、また輸送の効率の面においても、逐次昔のような能率のよかつた時代に復元し得る。かように考えまして、根本的な經營の合理化については、勞働組合と眞に一體とならなければいかぬ。經營協議會を根幹として一つ一つ掘り下げていこうというのが私どもの態度でございます。
○館委員 私考えるのに、運賃の面ばかりから國鐵は總合制を主張されているのですが、國鐵の積極的な建設面において、安定本部において積極的なものがないのかということです。運賃の面からのみ制約されておる。ほんとうの國鐵の建設というものをわれわれ非常に望んでいるのですが、その面についての積極性がどういうふうになつているのか。
○伊能政府委員 さようなお尋ねと理解いたしませんのではなはだ失禮いたしました。この點につきましては、安定本部はかなりわれわれに協力をいたしてくれております。本年度五十數億の建設改良費を認め、電化につきましても、さいぜん御説明いたしましたような線、竝びに施設の整備改良の面につきましても、新たに新線の建設の面につきましても、相當な豫算を配付をしていただきました。また資材の面につきましても、安本としてでき得る限りのことをしてくれたのでありますが、當初財務次官がお話申しましたように、本年度の生産計畫七十萬トンの製鐵も、現状においてはとても七十萬トンできない。しかもセメント等においても供給が思うようにまいりません。その他資材についてもそうした日本政府だけでやり得ない。根本の日本自身の國力の問題に關連している面が非常に多いものでございますから、先だつての山陽線の事故等においても、何としても山陽線は五十キロに全部改良しなければいかぬということが、戰爭中からの輿論であつた、ところが鐵がないために、五十キロに改良することができない。安本自身も山陽線の改良は急務だといつて認めてくれておりますが、鐵の生産が現實に伴わない。從つて先般事故を起した箇所のごときも、三十七キロの箇所でありまして、惡天候による地盤等のゆるみも若干ありましたが、續いて三本長大列車が運轉せられたために、ほとんどめつたに起つたことのないような惰行運轉が起るというようなことであつたのであります。枕木の確保のごときも最近にない六百萬丁を年間に配當をするというような、安本の協力も得ておりますが、現實には公定價格の問題竝びに山自體における枕木の需給の問題等に制約せられまして、はたして四百萬丁もはいりますかどうですか。今囘の新物價體系におきましても、枕木についても若干の値上げをわれわれは再度お願いをして、安本等においてもその點は考慮いたしておりますが、一般建築用材との關連において枕木の需給がなかなか困難である。從つて安本がわくを六百萬丁に協力してくださつても、なかなか現物化しないというような状況で、これは安本自身としても政府の政策として日本經濟の復興には經濟白書にもございますように、輸送力の囘復がその根幹であるということも言つておりますので、できる限りのことはしてくれているのでありますが、なにせ全體の國力が弱つておりますために、輸入に仰がなければならぬ部分が非常に多い。製鐵のごときも重油の輸入によりまして石炭を整備するというような方策も進駐軍の協力を得てとつておるといふやうなことで、各般の面におきましてわれわれは豫算に認められた建設改良を急速に整備いたしたいと思つておりますが、なかなかいたしかねるというような状況であります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第一回衆議院 運輸及び交通... | トップ | 第一回衆議院 運輸及び交通... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国鉄関連_国会審議」カテゴリの最新記事