国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第一回衆議院 運輸及び交通委員会 第2号から転載 4話目

2012-12-25 21:05:27 | 国鉄関連_国会審議
いつも硬い文章ばかりですみません。
本日も、運輸及び交通委員会からの転載です。
国鉄における独立採算制について、他国との比較などが語られています。
これを読んでいますと、国鉄は基本的には独立採算制で行きたいのだが、物価抑制の方針が政府と示されたため、鉄道の収支と物価の上昇を考慮しなくてはならなくなり、結果的に累積した赤字が生まれる要素があること、これに対して、運輸省(当時は国鉄は運輸省の現業部門)としては、何年かに分けて経営合理化して赤字を償却したいと答弁しています。

> 鐵道事業は獨立採算制でやれるかどうかという基本的な考え方のようであります。鐵道企業は國有國營でなされますけれども、經理の面におきましては私はやはり獨立採算制のとれるような經營をしていきたいというのが建前だと思うのであります。しからば今囘の値上げによつて獨立採算ができるかどうかという問題につきましては、これは昨年以來の運賃値上げの思想は、どこまでも獨立採算を基本として考えたのであります。但しその計畫が起りまして、そうして今囘の新物價體系の一環としてこれが取上げられまして、鐵道會計の面ばかりでなしに、一般の物價體系とのつり合いをとるというところに重點が置かれたのでございます。

> 獨立採算制を完全にやろうという昨年からの希望は、今囘の値上げによつては解決されないということになると思うのでありまするが、これらの赤字はでき得べくば何年計畫というものを立てまして、そうしてこれを經營合理化その他の努力によりまして償却をしていくという方向に現在考えておるのであります。

ただし、運賃値上げが抑制されることから保全などに十分な経費が回せないのではないかと危惧しているのですが、実際に戦時中に粗製乱造された蒸気機関車のボイラー爆発事故や、戦時中から戦後にかけて製造された63形(桜木町事故を起こして73形に改番)など安全面では不安を抱えてる部分も多かったわけで、努力を払っていきますと言う言い回しは、官僚の独特の言い回しと言えそうです。

> 保守その他は収入をもつてやるかどうかということは、これは當然のことでありますが、さつき申し上げましたように、今囘の値上げで從來以上に餘計やれるかどうかということに對しましては、正確な數字はまだわかつておりません。私はむしろ危險に感じて心配しておるのでありますが、これからはすべてわれわれの努力によりまして、保險その他の整備、輸送力増強に對しては努力を拂つていきたいと思います。

なお、諸外国の鉄道の状況が書かれていますが、

アメリカは、全面的に民間企業として経営しており、コモンファンド(基金)もあるが基本的には不採算路線の休止などでしのいでおり、基本的にはそうした補填はないこと。
イギリスも民営中心であったが、ここにきて再び国営にするのではという議論がなされていること。
ドイツは国営、フランスは当時は民営が多かったと報告されている他、ソビエト(現・ロシア)が一般会計としていたが、最近は独立採算制を取り入れた等非常に興味深い内容が書かれています。

> ○伊能政府委員
各國の經營状態につきましては、御承知のようにアメリカは民營を全般的に實施をいたしております。今囘のような鐵道會社の赤字等につきましても、コンモン・フアンドのような制度もごこいますが、相互的な救濟施設といつたような場合も――現在までアメリカの鐵道は御承知のように一九三五年から三七年當時が最も自動車竝びに一般經濟界の不況のために困難を極めて時代でございましたが、その當時でもコンモン・フアンドによる金を放出するというようなことでなく、不經濟な線路の營業を停止するとか、各般の措置によつてどうやら切り抜けておるようでございます。最近におきましてはペンシルヴアニア・レールロードは百年近く經營上の赤字を出したことがなかつたのでありますが、運賃の値上げの際州商業委員會における審議が遲れましたために、初めて經營上若干赤字が出ております。しかしそれは積立金をもつて所定の五分の利益を配當をするというようなことでやつておりまして、御承知のようにアメリカはまつたく各會社それぞれ企業に應じた特殊採算制を民營としてとつております。

イギリスにおきましては第一囘の欧州大戰以後、鐵道統制の強化によりまして、たくさんの鐵道が四、五の大鐵道に統合をせられましたが、最近イギリスにおきましては御承知のごとく炭坑の國家管理、國營の問題が進捗いたしておりまして、次の問題としては鐵道の國營の問題が、私ども雜誌並びにその他の報告によつて見ても、重要な論議の對象になつております。

ヨーロツパ大陸におきましては、ドイツが御承知のごとくわが國の鐵道と同じように、ほとんど國營體制をとつております。フランスにおきましては國營よりも民營の方が多い。イタリーにおいてはやや國營の方が多いという状態であります。ソヴイエトにおきましては第一次歐洲大戰以後、革命の進捗とともに、一時經營につきまして特別會計制度、すなわち獨立採算制の基準を放棄をいたしまして、ソヴイエトの社會主義本來の思想から、収入と經營とを別格なものとして、一般會計的な制度で試験的にと言いますか、一度やつたことがあるのでございます。しかしその結果は能率その他に非常な弱體化を來しまして、施設の荒廢その他著しいものがあつたために、數年ならずしてそれをやめまして、現在に至るまでソヴイエトも特別會計として獨立採算制の基準をとつておるようでございます。


*************以下は、本文となります。***************************

○苫米地國務大臣 お尋ねの第一點は、鐵道事業は獨立採算制でやれるかどうかという基本的な考え方のようであります。鐵道企業は國有國營でなされますけれども、經理の面におきましては私はやはり獨立採算制のとれるような經營をしていきたいというのが建前だと思うのであります。しからば今囘の値上げによつて獨立採算ができるかどうかという問題につきましては、これは昨年以來の運賃値上げの思想は、どこまでも獨立採算を基本として考えたのであります。但しその計畫が起りまして、そうして今囘の新物價體系の一環としてこれが取上げられまして、鐵道會計の面ばかりでなしに、一般の物價體系とのつり合いをとるというところに重點が置かれたのでございます。その結果といたしまして、精密な計算はまだできておりません。すなわち新しい物價がどの程度になつたかということは、政府が發表いたしました物價は基本的なごく僅かなものにしか現われておりませんので、すべてわれわれの消費いたしまする物價がどの程度になつたかということはまだはつきりいたしません。それが全部わかれば精細にわれわれの計算がわかるのであります。その場合における結果を、大體豫想いたしますと相當の赤字が殘るというふうに考えておるのでございます。すなはち獨立採算制を完全にやろうという昨年からの希望は、今囘の値上げによつては解決されないということになると思うのでありまするが、これらの赤字はでき得べくば何年計畫というものを立てまして、そうしてこれを經營合理化その他の努力によりまして償却をしていくという方向に現在考えておるのであります。
 それから諸外國の實情についてはあとで長官からお答えをいたします。
 それから保守その他は収入をもつてやるかどうかということは、これは當然のことでありますが、さつき申し上げましたように、今囘の値上げで從來以上に餘計やれるかどうかということに對しましては、正確な數字はまだわかつておりません。私はむしろ危險に感じて心配しておるのでありますが、これからはすべてわれわれの努力によりまして、保險その他の整備、輸送力増強に對しては努力を拂つていきたいと思います。
 それから經營合理化の問題、具體的な面は長官からお答えいたしますが、配置轉換等によつて人員を整理するのじやないかというようなお考えにつきましては、今ある地方には過剰であり、ある地蔕では不足である。また業種によりまして餘つておるところと不足な部分がございまするから、これらはよく檢討いたしまして、また勞働組合ともよく檢討いたしまして、できるだけ合理化な配置を、またむりのない配置をいたしまして、そうしてこの事業の改善と業績の促進に當りたいと、こう思つております。
 それから今の地方鐵道、地方電車のことでありますが、これはやはり鐵道運賃の改定によりまして、それに準じた方向に向つてまいります。御了承願います。
○伊能政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げました殘りの部分につきまして、私から御説明を申し上げたいと思います。各國の經營状態につきましては、御承知のようにアメリカは民營を全般的に實施をいたしております。今囘のような鐵道會社の赤字等につきましても、コンモン・フアンドのような制度もごこいますが、相互的な救濟施設といつたような場合も――現在までアメリカの鐵道は御承知のように一九三五年から三七年當時が最も自動車竝びに一般經濟界の不況のために困難を極めて時代でございましたが、その當時でもコンモン・フアンドによる金を放出するというようなことでなく、不經濟な線路の營業を停止するとか、各般の措置によつてどうやら切り抜けておるようでございます。最近におきましてはペンシルヴアニア・レールロードは百年近く經營上の赤字を出したことがなかつたのでありますが、運賃の値上げの際州商業委員會における審議が遲れましたために、初めて經營上若干赤字が出ております。しかしそれは積立金をもつて所定の五分の利益を配當をするというようなことでやつておりまして、御承知のようにアメリカはまつたく各會社それぞれ企業に應じた特殊採算制を民營としてとつております。
 イギリスにおきましては第一囘の欧州大戰以後、鐵道統制の強化によりまして、たくさんの鐵道が四、五の大鐵道に統合をせられましたが、最近イギリスにおきましては御承知のごとく炭坑の國家管理、國營の問題が進捗いたしておりまして、次の問題としては鐵道の國營の問題が、私ども雜誌並びにその他の報告によつて見ても、重要な論議の對象になつております。現在のところまでは第二次世界大戰によります強度な國家管理の域から、一應戰爭が終つたことによつて運營の責任體制に移つておるというような状況でございます。
 ヨーロツパ大陸におきましては、ドイツが御承知のごとくわが國の鐵道と同じように、ほとんど國營體制をとつております。フランスにおきましては國營よりも民營の方が多い。イタリーにおいてはやや國營の方が多いという状態であります。ソヴイエトにおきましては第一次歐洲大戰以後、革命の進捗とともに、一時經營につきまして特別會計制度、すなわち獨立採算制の基準を放棄をいたしまして、ソヴイエトの社會主義本來の思想から、収入と經營とを別格なものとして、一般會計的な制度で試験的にと言いますか、一度やつたことがあるのでございます。しかしその結果は能率その他に非常な弱體化を來しまして、施設の荒廢その他著しいものがあつたために、數年ならずしてそれをやめまして、現在に至るまでソヴイエトも特別會計として獨立採算制の基準をとつておるようでございます。しかしこれは必ずしも現在私どもがやつておりまするような巖格な獨立採算制であるか、特別會計であるか等につきましては、なお研究の餘地があろうかと存じますが、原則として國營の國におきましては、いずれも特別會計として獨立採算制の方針が進められておるということについては、はつきり申し上げ得るのではなかろうか、かように考えております。
 それから第四點の、經營合理化に對する具體的な方策の點でございますが、私どもとして一番盡さなければならぬことは、國有鐵道本來の使命を一日も早く達成することであり、旅客、荷主に對して自由なサービスができるようにしなければならぬということであります。それには車輛並びに施設の整備を急速に、保守の復元と同時にやらなければいかぬ、かように考えて、折角努力をいたしております。車輛の面につきましても、電車のごときも、本年度新製車輛といたしまして三百輛以上のものをつくつております。客車についても新製車輛として同様でございます。また戰災客車の復舊改良につきましても、新製とほぼ同じ程度のものを目下急速につくらせております。また貨車につきましては通風車による野菜輸送でありますとか、冷藏車による鮮魚の輸送でありますとか、主として食糧品その他生活必需物資輸送のためにする特殊有蓋貨車の製作に重點を置いておるような次第でございます。大體生活必需物資につきましては、鐵道に關しましてはほとんど一〇〇%の輸送を達成をいたしておるような次第でございます。おそらく、ただいま夏枯れでございますが、千萬トン輸送も大體官私鐵道輸送量としては達成し得られるのではないか、かように考えております。旅客の方につきましても、東京鐵道局のごときは、急行列車、あるいは青凾連絡船等を除きましては、現在のところ切符も自由に發賣をする方向に急速に進めておるような次第でございます。また行列の解消等につきましても、ただいま御指摘のございましたように、人員の配置轉換、ことに最近の切符の購入状況のごときは、早朝午前中に非常に多くて、夕刻以後におきましては、電車區間等のごとき、あるいは一般的にも非常に少くなりますので、從事員の勤務の體制も、從來のごとき状況ではいけない、かように感じまして、徹夜の人員を日勤にして、なるべくお客の殺到する時間にできるだけ多くの人を配置する。もちろんこのためには戰災を受けました驛所のごときは、まず驛の復舊からやつていかなければならぬのでございますが、さいぜん政務次官から御説明を申し上げましたように、現在の日本の國力が、いまだ鐵道のリサシテーション―復興を十分にやらしめ得るほど資材の配當を受け得ないという状態でございまして、從つて本年度五十一億という建設改良費の豫算を議會において御承認を願つたのでありますが、現實には物價の値上り、その他各般の状況、資材の不足等から、なかなか整備が十分進捗いたし兼ねておる。また日本全體として資材がないので、現在石炭竝びに鐵、肥料に對する政府の傾斜生産體制が強化されておりますために、他の産業に對しましては、鐵道等も何としてもやはり二次的に資材の配當を受けますので、その足らざるところは人をもつて補うというようなことで、私ども世間からごらんを願いますと、かなり鐵道の人員が多いようにも御批判をいただいておりますが、人員をもつて資材の不足を補はざるを得ないというような状況も、内部の詳細にわたりますれば、かなりあるような始末でございます。またサービスの改善その他經營の合理化の根幹の問題は、最近の敗戰後における日本全體の經營能力――ひとり國鐵のみならず、全般的な低下の問題もございますので、私どもとしては根本は教育にまたなければならないと考えまして、二萬程度の養成人員を各鐵道局に配分いたしております。これは戰時中におけるよりもさらに多い人員でございますが何分にも從事員の勤續年數が、かつたは平均七、八年でありましたものが、現在は三年程度、しかも非常に未熟な者が五〇%程度もおるというようなことで、一度はこれらは教習所の門を潜らして、鐵道精神を吹き込み、健全なる勞働者としての思想を植えつける。かように考えまして、目下やや長期にはわたりますが、教育制度の強化に全力を注ぎまして、現在軍の施設あるいは軍需會社等で事業を放棄しておりますような所を、戰災を受けた教習所の代に借りもしくは買収いたしまして相當に力を入れております。
 またさらに根本の問題として經營の合理化は、組合の協力なくしてはほんとうに心からその實力を發揮することができませんものでございますから、目下經營協議會の専門委員會といたしまして、業務改善委員會、人事委員會等をもちまして、毎日關係局長、課長と組合側の幹部とで協議をいたし、經營の合理化、勞働基準法の實施に伴う女子の配置轉換等につきましては、かなりつつこんだ意見を交換し、大體われわれの考え方を諒としてくれておりまして、相當組合側は強力に配置轉換をやつていこうというような考え方で進んでおります。當面の問題としては私ども輸送力の増強ということを大主眼點に考えておりますが、經營合理化の根本は、從事員の質を戰前の姿に復するという意味におきまして、教育の問題も組合との提携による促進が根幹ではないか、かような氣持で目下努力中でございます。

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