ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Kane Brown ケイン・ブラウン - Experiment

2019-04-20 | Kane Brown ケイン・ブラウン レビューまとめ
 
★2022年の3作目「Different Man」を取り上げました★ 

 善良な(?)日本のカントリー・ファンには、腕のタ
ゥーと鋭い目
つきを見た所で引いてしまう、かつてなく異質なアーティスト、
ケイ
ン・ブラウン。これは既に2作目で、カントリーだけでなくビルボー
ド200でも1位を獲得している程、人気を確立している彼。その人
気はダテではなく、その現代のクルーナーと呼びたいディープな歌声
は、このスタイルの王道をきっちり踏襲していると思います。

ルックスからそれとなく感じる通り、母親が白
人、父親がチェロキー
族の血が入ったアフロ・アメリカンという異人種の混血。8才頃にそ
の事でイジメに遭うようになり、ケンカもしたそうです。また、父親
が3才の頃から収監されており、実質、シングル・マザー家族で、ホ
ームレス状態になった時も有り、ジョージア州を数カ所渡り歩き、最
後はテネシー州のレッド・バンクに落ち着きました。ジョージア州に
いた時、 アメリカン・アイドル10で次点となったローレン・アラ
イーナLauren Alainaと同じクワイアで歌っていた事もあったよう。



幼少期からカントリーに親しんでいましたが、中学時代はR&Bにハ
 マったようです。しかし、学校のコンテストで、クリス・ヤングChris
 Youngの"Gettin You Home"
を歌って優勝して以降、カントリーを歌
うようになりました。アメリカン・アイドルとThe X Factorのオーディ
ションを一旦は受けますが、結局は自身の音楽をオンラインで試す道
を選びます。

 ケインは、ビリー・カリントンBilly Curringtonやアラン・ジャクソ
ンをカバーしたビデオを投稿し始め、Facebookで多くのフォローを獲
得しました。そして、ジョージ・ストレイトの"Check Yes or No"の
カバーで、7百万ビューを獲得したのです。これらの実績により、ま
ずマイナーのZone 4と契約。デビュー作となるEP「Closer」は、カ
ントリー・アルバム・チャートでトップ10に入るのです。続くシン
 グル"Used to Love You Sober"の成功も続き、ついに2016年、メジ
ャーRCAを契約にこぎつけます。

メジャー・デビュー作「Kane Brown」は、"Aint No Stopping Us Now"
や"Thunder in the Rain"らのシングルを放ち、アルバムはカントリー
で1位、オール・ジャンルでも10位をゲットしました。旧友、ロー
レン・アライーナとのデュエット"What Ifs"は、カントリー・シング
ルで1位になっています。



このプロフィールから見れば、絶妙な血統、カントリーを基盤に一時
R&Bに親しむという稀有な音楽的体験が、彼の実に個性的な音楽性
の元になっていることが理解できますね。オープニングの"Baby Come
Back to Me"辺りは、ディープなホンキー・トンク・クルーナ、トレ
ース・アドキンスTrace Adkinsがやりそうなナンバー。骨太のバック
にふさわしい重厚なバリトンで迫ります。素晴らしいのが、続く"Good
as You"。レトロなR&B調のシンプルなバックに、一転、テナー・ボ
イスで”僕はただ君のように良くなりたいんだ”と切々と思いを訴え
るのですが、時折"But"とかでバリトン・ボイスをかませる所にドキッ
としますね。2つの声を自在にコントロールする技はお見事。

"Lose It"はだいぶ華やかなコンテンポラリー・カントリーと云えるナ
ンバー。歌詞にセクシーなイメージが伴うのは、男性クルーナーの面目
躍如でしょう。"Homesick"は穏やかなカントリー・ミディアムですが、
続く"Weekend"は、80年代あたりの都会派ソウル~R&B風と、幅広い
スタイルを自然に、そしてクールに歌いこなしていくのがケインの個
性です。

”田舎の素朴さ”というステレオ・タイプからなかなか離れようとしな
いカントリー界では異端児ともいえる存在ですが、オールジャンルのチ
ャートを席巻しているポップやR&Bアーティストとタメを張れるくら
いクールで押しの強いルックスを持ちながら、歌心溢れる職人気質の歌
唱~これこそがカントリー的~を聴かせるクルーナーという、今や唯一
無二を言える存在感を放ってると思います。大昔、ジョー・サイモンと
 言う、ナッシュビルのバンドをバックに、ディープな声でメロディアス
に歌うサザン・ソウル・スター("The Chokin Kind"(Harlan Howard)、
"My Special Prayer"等 、特にSound Stage 7時代)がいましたが、
そのジャンルの無き現代、カントリー界にその伝統を受け継ぐタレント
がしっか存在している事がとてもうれしいのです。

Joe Simon






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