ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Lauren Jenkins ローレン・ジェンキンス - No Saint

2019-04-13 | カントリー(女性)


カーリー・ピアーズを擁するBig Machine Labelが、またまた魅力的な
女性アーティスト、ローレン・ジェンキンスを送り込んできました。
まずは、モノクロでシンプルさが印象的なジャケットの真ん中にたたずむ
彼女のルックスに注目がいきますが、それ以上に心をとらえるのがその
個性的な歌声です。抑え目の歌唱では、この世の酸いも甘いも知り尽く
したかのような、スモーキーで情念のこもったフォークシンガ
ーのよう
に歌うかと思えば、声のピッチが上がるとテイラー・スウィフ
トを想起
させる切なく張りつめた歌声になるのです。並みのシンガー
はありま
せん。


このローレン、まず女優として世に知られるようになった人。1991年、
テキサス州Arlington生まれで、南カリフォルニア育ち。15歳の頃
には、地元イースト・コーストのクラブで自作曲をプレイしていま
した。そして17歳になると、定期的にニュー・ヨークでも歌うよう
になります。まもなく、プレイする事と演技の勉強を両立する目的で
ニュー・ヨークに移るのです。2009年に”Cigarette Girl ”でスクリ
ーン・デビュー。2010年には映画"N-Secure"やTVドラマにも出演す

るようになります。そのローレンに、2014年、Big Machineが目を
付けアーティスト契約を結んだのです。2016年には、まずEPをリ
ースしています。



女優さんの音楽となると、当たり障りないポップ調となるのがあり
がちなのですが、このアルバムはそうではありません。基本は、エ
ッジの効いたギターがフィーチャーされたコンテンポラリー・サウ
ンドに、オルタナ~アメリカーナ的陰影を帯びた深み有るスローを
織り交ぜた作風になってます。近年のトレンドであるR&B調とは無
縁、シャープで主張あるアルバムです。



オープニングの"Give Up the Ghost"、タイトルを連呼する冒頭や
要所のコーラスが強い印象を残す、かつてのニューウェーブ風のロ
ッキン・
チューンです。ローレンが、デボラ・ハリーみたくコケテ
ィッシ
ュに聴こえます。しっかり、フックの有るナンバーです。
続く"Youll Never Know"は、可憐なイントロで始まるポップ・チ
ューン。カントリー時代のテイラー・スウィフトがやりそうな曲で
コーラスだけ聴くとテイラー?かと思いそうですが、ヴァースの
塩辛い歌声で甘さに流れる事はありません。



3曲目以降で、スロー曲が増えてアメリカーナ色が出てきま
す。
"Makers Mark and You"、タイトル曲の"No Saint"、終盤でス
トリングス風シンセが盛り上げる、スケール大きい"Running
Out of Road"あたりです。タイトル曲は、聖書も引き合いに出し、
神から、酷な仕打ちをした恋人を忘れよ、と言われても”私は聖人で
はないの”と歌う、なかなか重い表現の曲です。ここ
に例えられる彼
女の反骨的な強さがアルバム全体に漂っていますね。その他
、アーシ
―な"Payday"、オーガニックなカントリーナンバー"Cadillac"など
カントリー・アルバムとして申し分ないバランスを保っています。



抑え目の歌唱に、ノラ・ジョーンズを思い浮かべる方も多いでしょう。
ノラ・ジョーンズとテイラー・スウィフトの声、ってすごいミック
スです。ここ最近のメジャー・カントリーにはないイメージの作品集
であり、なかなかスケール大きい才能を持つローレン・ジェンキンス
の活躍に期待したいと思います。




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