ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

ケイン・ブラウン Kane Brown - Different Man

2022-09-17 | Kane Brown ケイン・ブラウン レビューまとめ

 

メインストリーム・カントリーの中で、独自のユニークな立ち位置でクロスオーバーな高い人気を誇るアーティストであるケイン・ブラウンが、フル・アルバムとしては「Experiment」から4年ぶりとなるサード作をリリースしました。間の2020年にEP「Mixtape, Vol. 1 」もリリースしていて、チャート上位に入る程話題になっていたとはいえ、この3作目はまさに待望と言うべきでしょう。個人的にもケインは、若々しくも複雑な深みを感じさせる歌声がお気に入りのシンガーですので、次はいつ出るのかと楽しみにしていました。

挿入される17曲の中には、昨年リリースされビルボード・カントリー・エアプレイで1位に輝いた"One Mississippi"や今年のカントリー・チャートを賑わせた"Like I Love Country Music"、さらに最新のポップ・フィールド向けシングル"Grand"やカントリー・シングル"Go Around"が含まれています。まずは"Like I Love Country Music"について、この曲が生まれた経緯についてケインが語っています。

 

 

゛この曲は2019年に書いたんだ。バスの前と後ろでそれぞれ集まって曲を作っていて、僕は後ろ側にいた。そして前にチームを覗きに行った時、ソングライター達は素晴らしいアイデアを持っていて、もう最初のヴァースが出来ていたんだ(注:おそらく、゛キミはフーチー・クーチーより熱いダンス≪下線は"Chattahoochee"からの引用≫を僕に見せてくれた/まるでアラン・ジャクソンの"Chattahoochee"を初めて聴いた時みたいだ/そんな気持ちは2度となかった。生涯のお気に入りなのさ/僕は、カントリーミュージックを愛するように君が好きなんだ゛の部分)。僕はそれに飛びついて仕上げたのさ。みんなこの曲に恋をしたよ゛レジェンド達の名前や曲名を散りばめつつ(歌詞にあるブルックス&ダンが登場)、ラウドなギター・リフに煽られつつもトラディショナルなシャッフル・ビートがしっかり息づくこの"Like I Love Country Music"は、ケインにとって8曲目のナンバー1ヒットとなっています。途中ブレイクも入ってライブ感たっぷりで、これ、良いですね。

 

 

アルバムの新曲の中で、やはり注目されるのが2曲のデュエット曲でしょう。その1曲が、アルバム・タイトルにもなった、ブレイク・シェルトンとのデュエット"Different Man"です、゛9時から5時の間の為に生まれた人生/死ぬまで働くんだ/痛い目にあいながら、男らしく生きることを学ぶ/女の子を見つけ、妻にする/フェンスを打ち立てて、白く塗る/もし違う人生プランがあるとしたらどうなんだ?//しかし、もし僕がステージのために生まれた人間だとしたら?/もし僕が照明に照らされるために生まれたのだとしたら?/もし僕が物語を書くために 選ばれていたとしたら?/型にはまった人生には向いてなかったんだ/もし、僕が違う人間だったとしたら?゛と続く歌詞が、ユニークなアコギのリズムに乗って歌われ、ありきたりなデュエット企画曲にはとどまらない作品と思います。

 

 

そしてもう1曲が、妻のケイトリンとのデュエットとなる"Thank God"です。実は何年も前から夫婦のデュエットの噂はあり、かつて"Mad at This World"という曲名でリリースされる予定も有りましたが、日の目を見ていませんでした。ケイトリンは、2019年にバークリー音楽大学で音楽ビジネスの学位を取得して卒業した経歴をもち、自身もシンガーとして活躍しています。曲想もケイトリンの歌声共々とても素直でスムースな感じで、変幻自在のケインもここではひたすら穏やかに歌っています。

 

 

アルバム全体としては、これまでのケインのイメージから大きく逸脱することなく、アウトロー・カントリー風の土の香り漂う男っぽさや力強さをベースにして、そこに歌唱力を活かしたバラード("Thank God")や、クロスオーバーするソフトなヒップ・ホップ("Grand")やブラコン、R&B調("See You Like I Do")を交えるという感じでまとめていると言えるでしょう。ただ、ケインといえばこれまでラップ/ヒップ・ホップ系アーティストとの交流に積極的で、そこが彼の売りの一つでしたが、今回そちらは控え目にみえて、特にアルバム後半はアコースティック基調("Whiskey Sour")だったり、90年代カントリーっぽい素直な曲想("Drunk or Dreamin'")が多いように聴こえました。カントリー側へ軸足を調整した、という感じです。

 

 

個人的には、ケインならではの深み有る歌声でじっくり聴かせる必殺のバラードがもう1,2曲聴きたかったというのが正直なところではありますが、それでもこの声で概ね新曲が1時間弱堪能できるので、ここしばらくはお気に入りになりそうです。

ケインは今年はすでに精力的にツアーを実施していますが、その8月のコンサートで素晴らしいイベントが有ったようです。ケインの敬愛するカントリー・レジェンド、ランディ・トラヴィスがステージに登場したのです。そして、お得意のランディの名曲"Three Wooden Crosses"を、体調の為に車椅子に座るランディに寄り添って歌ったようです。ランディは喜びで顔をほころばせたと、現地では報道されています。

 


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