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私の本棚

将来の夢は自分専用の図書館をもつこと。大好きな本に囲まれて暮らしたい。

勝手にふるえてろ  綿矢りさ

2014-09-28 17:44:46 | いまの本棚
少し時間に余裕ができた。
というより、時間に余裕をつくる精神的な余裕ができた、といった方が正しい。
どんなに時間があっても無駄に過ごしてしまうことが多い私には、時間をめいっぱい使えるコンディションは貴重。

少し前から気になっていた、綿矢りさの比較的新しい作品。
「蹴りたい背中」で鮮烈なデビューを果たした彼女のその後。
ちなみに「蹴りたい背中」は、当時中学生(高校生?)の私にはさっぱり分からないままだった。
今回もまた残酷な恋のお話だった。

愛するのと愛されるのとどっちが幸せか、という言い古された言説への一つの答えである。
主人公は純粋かつ打算的で残酷で、取り囲む人々もそれに同じ。
自分に対して近視的な主人公にはしばしば嫌気がさすけれども、そのへんもリアルな描写である。
恋愛物語として失格なようにも思えるし、いっそこれぞ真の恋愛小説!という気もする。めまぐるしい。

言ってしまえば、主人公の良香は、中学時代の同級生(イチ)にずっと片思いをしながら恋愛経験をもたないまま26まで成長し、
あるとき会社の同期の男性(ニ)にアタックされるのだけれども、彼のことは全然好きになれず、
イチに再チャレンジしてみたり、ニの熱意にほだされて付き合ってみようとしたりする。
純情と焦り。意固地さと打算。思い込みと挑戦。
等身大で好感がもてるなんて表現するとあまりに安易だけれども、
良香のみっともなさ、生身な感じがこの小説の全てかもしれない。
なんてことはないが、意外と爽やかな読後感だった。
(ただ、年頃女性に多い特有の悩みを抱えながら読むと結構えぐられると思う)

『妥協とか同情とか、そんなあきらめの漂う感情とは違う。ふりむくのは、挑戦だ。
自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、自分への裏切りではなく、挑戦だ。』

この小説は、ラストシーンの勇敢さに尽きるような気がする。
辛酸なめ子による解説の、最後の一文が秀逸だった。



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