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私の本棚

将来の夢は自分専用の図書館をもつこと。大好きな本に囲まれて暮らしたい。

春の雪

2015-05-06 21:07:13 | いまの本棚
川上未映子のインタビューに影響されたわけでもないはずだが、気づいたらその流れで読んでしまった、春の雪。
三島由紀夫は好きな作家だけれども、その中でも春の雪は特に好きな作品。
三島由紀夫節全開、かつややこしすぎず美しい。(私は三島の中でも金閣寺とかは難しく感じて苦手なので)

こんなに観念的に生きている人がいたらお目にかかりたい、と思わせられるのが三島由紀夫の描く登場人物に多いが、それをいかにじっと我慢して読み進めるのかが三島作品を読むときのコツというか、大事なところ。
と言いつつ私は根気がない方なので、しんどくなると適宜読み飛ばしてあらすじを追ってしまうことも多々ある。
今回は、慣れない仕事の気分転換にもなるのか、割と丁寧に読むことができた。
言葉遣いや、優美な世界を楽しむこともできる、良い読書になった。

ちなみに行定勲監督、主演が妻夫木聡と竹内結子、主題歌が宇多田ヒカルという布陣で映画化もされている。
ただの悲恋・純愛じゃない原作の複雑さは完全に失われてしまっているが、個人的には竹内結子の美しさとあの時代の重厚で華やか、どこか陰湿な感じのする和洋折衷の生活様式や服装を鑑賞する映画としてはまあまあかなと思っている。

初夜 イアン・マキューアン

2015-05-06 20:47:40 | いまの本棚
川上未映子の「きみは赤ちゃん」を読んだのが随分前に感じられるが、その出版に際してネット上で川上未映子のオススメの本がインタビューとともに特集されていた。その中で紹介されていた一冊。大当たり。
「ここにあげた3冊は、恋愛における最大瞬間風速とか降雨量とか、多くの点で相当極まっている作品ばかりだと思います。しかも物語だけではなく、恋愛を、それにまつわる様々なことを、どのように書くことが可能なのか──つまり小説という形でしかふれることのできない「恋愛」が、ここにはあります。」 honto作家インタビュー より引用:http://honto.jp/cp/hybrid/writers-interview/001-kawakamimieko/03.html
恋愛における最大瞬間風速なんて、素晴らしい表現だと思うのだ……!
勢いとか絶頂感とかって、恋愛には欠かせない。そして、意外とその瞬間の移り変わりに触れる小説は少ない。
(ちなみに、同じページの同じ恋愛小説コーナーにて、三島由紀夫の「春の雪」も紹介されていて、わかってるねえ!って感じ。偉そうだけど)

恋愛の残酷さ、といえばいいのか。
二人の人間が出会い、恋に落ちて、結婚し、その初夜から決定的に人生を分かたれるまでを、精緻に描いている。
読んでいて、懐かしい気持ちになる場面が多かった。
夫と付き合いだした当初や、行き違いから喧嘩が絶えなかった頃のことを思い出すような内容。
思い込み、人生観の違い、小さな秘密、意地の張り合いなど、ちいさなちいさな棘がどんどん刺さっていく感じ。
いたたまれない、刺々しい空気。
そんな時期があったことも忘れかけていたけれど、どうやらこれは万国共通らしい。
幸い私たちは関係を絶つことなく今に至り、かたやこの小説の二人は、という人生の不思議。
分かたれた人生がそれはそれで幸福であっても、失われたものへの鈍いかなしみ。
人生って残酷で美しい。

精緻に組み立てられた世界を楽しむ小説。小説として美しい。
こんな小説を一度書いてみたいと思う作家も多いんじゃないかな、と思った。

きみは赤ちゃん  川上未映子

2015-02-11 19:19:24 | いまの本棚
大きな節目となる試験が終わりました。
6年間の学習の、さまざまな意味で集大成となり、不思議な気持ちです。
試験に向けてもそれほど勉強をしていなかったのですが、本を思い切り読む気分でもなく、取っておいた本を早速読みました。

妊娠出産子育て、というのがここ最近の私のテーマでした。
二ノ宮知子の「おにぎり通信」も(まんがですが)とても面白く読みました。
田房永子の「ママだって、人間」もそういえば試験前に読んだ。
今回は別の視点から。
高校三年生の時もそうだった記憶がありますが、進学やら就職やらの節目のたび、私の中のフェミニズムがことさら燃え上がるようです。
仕事と子育ての両立やら、そういったことで悩み始めると(出産どころか妊娠の予定もないというのに!)暗澹たる気持ちになります。
いやもう、無理ゲー。
根性なしで、なにごともぎりぎり、運のよさだけで何事も切り抜けてきた私には、負荷の絶対量が大きすぎる。
できっこないと今から確信している。
少子化、するよねこんなんじゃ。当然の帰結だと感じます。

小説家が書いたエッセイなので、現実的なこともきちんと描きながら、妊婦の独特の気持ちを捉えて描いているのが良い。
体の変化のことや気持ちの移り変わり、出生前診断についても書いてあってかなり具体的、かつさすが作家の表現力。
実際その立場にならないとわからないことばかりなのだろうと思うし、実際筆者もそう述べている。
それにしてもあまりに妊娠出産子育ては未知で、かつ大きな負担を伴うものなので、見切り発車とはいえよくみんな頑張れるなあと感心してしまう。
妊娠してしまったらそうそうギブアップできないというだけだとは思うのだが。

出産前・産後の旦那さんとの関わりも参考になるところが多かった。
どうしたって自分を追い詰めてしまう(周囲に追い詰められてしまう)母親の姿と、なかなかそこまで背負うことのできない父親の姿。
筆者の旦那さんは非常に家事の育児もこなせる方のようだが、それでも筆者から見ると不満が噴出することも多かったようで、
これ、全然育児参加しない人の妻はどうしているんだろう・・・・とホラーな気持ちになった。
産後のお母さんは本当にきついとは聞いていたが、軽くエッセイを読んだだけで、私のちゃちな想定が打ち砕かれた。
正直こわすぎる。

リアルで、ほどよく文学的で、良い本でした。
また読み返すつもり。

あたたかい水の出るところ  木地雅映子

2014-11-23 12:22:06 | いまの本棚
「氷の海のガレオン/オルタ」の衝撃が忘れられず、同じ作者の本を読もうと思った。
ものの、作品数が本当に少なくて、迷った末に買った一冊。

感想は、いまいち。
「氷の海のガレオン/オルタ」でもそうだったけれども作者の語り口が独特で、あの作品では主人公のキャラクターを引き立てていたものの、
本来私が好きな文章ではないので、今回はそれが気になった。
軽いというか漫画的というか、ライトノベルのような。
展開の急さもついていけなかった理由かもしれない。
ただ、俺がお前の葬式をあげてやるっていう口説き文句は悪くないと思った。

ここは退屈迎えに来て  山内マリコ

2014-11-20 19:41:02 | いまの本棚
長かった試験期間がようやく終了。
すかっとするような、落ち込むような話を軽快に読み飛ばした。
タイトルどおり、イメージどおりのお話で安心して読めた。

田舎というよりは都会に近い場所で生まれ育ったので、田舎独特の息苦しさだったり、レパートリーの少なさだったりというのをきちんと理解しているわけではないけれども、
年頃の女二人の微妙な友情の話なんかはリアルだった。
思い詰めやすい乙女心とか、選択肢のない人生とか。
人間の情けなさをリアルに描ける作家は好きです。多少自分自身の心が痛みますが・・・・

文体の軽さも、内容にあっていればそこまで気にならないし、こういう軽い読書もこういうときには最適。