「レーバー(labor)」と「ワーク(work)」は、共に「仕事」「労働」の意味を持つ英単語ですが、前者が、奴隷が苦役を課せられてイヤイヤ働く仕事ぶりを意味するのに対し、「ワーク」は自主的にイキイキ働く仕事ぶりを表します。
「レーバー」型の社員にとっての仕事は、単なる給料の対価でしかありませんし、こうした社員にとっては、目の前の困難な仕事は、単なる苦痛でしかありません。
その反対に「ワーク」型社員であれば、たとえどんなに困難な仕事であっても、その仕事に「楽しみ」を見出すことができます。そんな「ワーク」型社員の割合が多ければ多いほど、会社の総合力、成長力は高まるでしょう。
こんな逸話があります。
第一次世界大戦後、ユダヤ人排斥の空気が強い米国の町で、一人のユダヤ人が洋服店を開いた。すると、地元の子供たちが嫌がらせのために店の前で「ユダヤ人!」と叫んだ。そこである日、店主が「今度叫んだら十セントあげよう」と言うと、大喜びした子供たちはますます「ユダヤ人!」と叫ぶようになった。ところが翌日、翌々日と報酬を下げ、最終的に「もうあげられるのは一セントが限界だ」と言うと、子供たちは「あんまりだ」と言って二度と来なくなった、と言うお話です。
つまり、当初子供たちは、「ユダヤ人!」と叫んでからかうこと自体に「やりがい」を感じていたのですが、そこに金銭的報酬が加わることで、叫ぶ目的がお金を得ることに、すり替わったのです。結果、もはやお金が一セントしかもらえないとなると、叫ぶことに意味を見いだせなくなってしまいました。
この逸話を会社に当てはめれば、社員の働きぶりに対して、金銭の増減のみで報いようというやり方は「レーバー」型社員を生み出す、極言すれば社員から仕事の喜び、楽しみを奪うことになるのです。
結局、いかに社員が「楽しく」働ける職場環境を創るかという事は社員の真の幸福とは何かを考えることの中に、その答えがあるという事です。