おおっ・・・・。
ここは、文学の匂いがするっ!!!
いざ・・・・。
そこは国際通りにある、半地下の喫茶店。
店内は程よく薄暗く、そして、こんがりロースターされたコーヒーまめーの香りが漂う文学な世界・・・。
オイラは入り口の側のBOX席を陣取る。
入ってきたお客さんに
「おお・・・文学かね・・・・。末恐ろしいボーイだ・・・」
と知らしめる為だ。
おねいさん、アイスコーシーで。
おやおや、文学にミルクとシロップは要らないよ。
文学はモカマターリの香りのするブラックじゃなきゃ。
心の中で優しく呟く。
フフフっ。
お店の方も訝しげにオイラを見ているよ。
オイラの文学っぷりに戦々恐々としているのだろう。
チリーン・・・。
入り口の安いチャイムが鳴る!!
来たっ!!!
今だっ!!
とくと見よっ!!!
オイラの文学をっ!!!
しかし、オイラは青ざめる・・・。
齢の位40半ば、チノパンに白のポロシャツをINに入れ、ハイウエスト・・・・そして怪しいボストンバック・・・・。
風貌は山下たつろうが竹内まりあに逃げられ、自暴自棄になり、ヒゲも剃らず、髪もザンバラな感じ・・・。
コイツ・・・・・
出来る・・・・・・。
ハンパない文学オーラである・・・・。
上目使いで店内とオイラを確認し、
左斜めの席に着く。
その距離3メートル。
そして、男はおもむろに、持っていたボストンバックから一冊のブックを取り出す・・・。
やはり、ブンガリストかっ!!!!
震える手でアイスコーシーを持ち、横目で男のブックを確認する。
しまったっ・・・・・。
上級者は・・・・・
ブックカバーを使うのか!!!!
ぐぬぬぅ・・・・。
流行の文庫本を堂々と見せていたオイラは、とんだお祭り野朗だぜ・・・・。
「ご注文は?」
「ホットココアで。」
な・・なにぃ・・・。
ホットココアだとぉ・・・!!!
灼熱の炎天下を歩いてきて、効いてるか効いてないか分らない微妙な温度のクーラーの中で
ホットココアだとぉ!!!
ダメだ・・・・。
勝てる気がしない・・・・。
ロシアの文豪 ドストエフスキー を ドエムダイスキー と覚え、
変態に仕立てあげていた俄か文学力では通用するわけがない・・・・・。
完全なる敗北である・・・・・・・。
そして・・・・・・
その後、居た堪れなくなったオイラは、
町の雑踏の中へ消えて行き、
二度とその地を踏む事は無かったという・・・。
おしまいおしまい。
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