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あや乃古典教室「茜さす紫の杜」

三鷹市&武蔵野市で、大学受験専用の古文・漢文塾を開講しました。古文教師の視点から、季節のいろいろを綴ります。

想夫恋⑱

2014-01-11 00:20:57 | 
この作業。
本当は、去年、やろうと思ってたんですが、
あまりに忙しすぎて、そこまで手が回りませんでした。

よって、「宣言しとかないと、やらないな」と思いますので、
書いておきます。

笠間書院の中世王朝物語全集シリーズの既刊は、
http://kasamashoin.jp/
全て買って、とりあえず読む!
ところまでは、
今年中に終わらせるノルマとしたいと思います。

で、この想夫恋特集は、
そのデータ次第では、
人知れず、勝手に改変&追加されていくという、
緩やかな現在進行形の、オソロシイ特集となります(笑)

また、センター古文は
「簡単には、原文が手に入らないものから出題する」という鉄則があり、
これまで、一定割合で擬古が出されてきた経緯があります。

笠間書院が、全集を刊行するにあたり、
どの程度、センターの出典に影響を与えてくるのか、
注目していきたいと思います。
去年は、センター直後、
新聞下段の広告欄に、「センター出題!」と広告打って、
中世王朝物語全集を、宣伝してましたからね>笠間書院

花盗人は③(現代版うぐいすの宿)

2013-03-01 23:28:39 | 
-花盗人は罪にはならない-

この言葉(思想?)自体は、
狂言の「花盗人」から来ているようです。

本家うぐいすの宿(大鏡)、狂言「花盗人」、現代版うぐいすの宿を、
成立年代順に並べてみると、
大鏡→狂言「花盗人」→現代版うぐいすの宿となり、
大鏡には適用できないが、
現代版うぐいすの宿には、適応出来そうです。

が、法律的にはどうあっても、窃盗罪が成立するので、
「花盗人は罪にはならないと言いますから」と、
盗られた方が穏便に事態を収拾しようとするのは有りでしょうが、
(かといって、高札立てた近所のおじさんを責めているわけではありません、念のため)

「花盗人は罪にはならないと言うし」と、それを理由に、
花を手折ったり、鉢ごと持っていくのは止めて下さいね。

これから、次々に花が咲く、美しい季節が来ます。
あるべき平安貴族の有様を見習って、
我々、現代の日本人も、
あくまで<風流に>季節を楽しみたいものですね。

花盗人は(現代版うぐいすの宿)②

2013-02-28 23:40:48 | 
当時、まだ若かった私は
(高校生ぐらいでしたでしょうか?)

「夜陰に乗じて、この言葉(花盗人は、罪にはならない)を、
立て札に書き添えたら、どうなるだろうか?」

思わず真剣に悩みました。

お茶目♪で許される雰囲気ではなく
(何しろ、盗人に告ぐ!ですから)
「火に油」なことは、注ぐ前から明白。

コワいので、やりませんでしたが。。。

今も昔も、人のやることは

・花を丹精込めて、育てる
・あまりに綺麗なので、人の目を引く
。ついつい、もらってしまう
・文を書いて、抗議する

さほど変わってないんだなぁ~と、思ったことでした。

皆さんは、
いきなり、人様の家の庭を掘り返したり、
鉢ごと失敬したりせずに、

そのお家の人との、会話の種にでもして、
季節の訪れを一緒に楽しんで下さいね。

花盗人は(現代版うぐいすの宿)

2013-02-27 23:55:25 | 
昔、近所に盆栽好きなお家がありました。

折々の花を丹精込めて育てて、家の前面に飾り、
道行く人たちの目を楽しませてくれていました。

ある日、買い物帰りに、
その家の前を通りかかると、「黒山の人だかり」がしている。

「何事?」と思って近づいてみると、立て札が立っているわけです。

ホント、五条の河原の立て札のような、立て札。
というより、高札に近い趣。

一気に、時代が吹っ飛んだような気分になりました。

そして、その立て札に、書いてあったには・・・・

「盗人に告ぐ!」

と、あるわけです。

盗人ですよ、盗人。

思わず、全文、読んじゃいました。
未だに、忘れられません。

(全文)
盗人に告ぐ!
手塩にかけた花を、なぜ盗む!
心あらば、返せ!

そうか。。。鉢植え、盗まれたんだ。。。。

ところが、面倒なことに、
その時、ふと思い出した言葉があります↓

「花盗人は、罪にはならない」

鶯宿梅⑦

2013-02-27 00:28:56 | 
従来の平安貴族であれば、
良さそうな梅の木があったとしても、
いきなり人の家の庭を、
掘り返したりはしないはずです。

まずは、
「和歌など送って」ご機嫌伺いをして、
「お願いをする」という手順を踏むだろうと思います。

蔵人という、
帝の側近中の側近の系譜に連なる人たちや、
時の帝が、
つまりは「当時の一級の風流人であって良い人たち」が、
平安貴族らしからぬ、不躾な行為に及んだ。

そこに、
「風流」即ち平安貴族文化の基底をなす価値観の終焉の兆しと、
来るべき武士の世の到来の予兆を感じる。

あまりに穿った見方なのかもしれませんが、
そんな時代の足音を感じさせなくもないお話です。

鶯宿梅⑥

2013-02-27 00:27:21 | 
更に言えば、
この話は、村上天皇の御世の頃の話です。

醍醐・村上両天皇の御世は、
「延喜・天暦の治」と言われ、
後に、天皇親政の理想的時代と称えられた時代です。

が、一方で、日本史的には
「律令体制の崩壊がはっきりしてきた」時代でもあり、
「武士の世」到来の足音が、
ひたひたと迫ってくる時代でもありました。

武士の世の到来とは、
やわやわとした貴族文化の終焉でもありました。

貴族文化を代表する思想性や感性とは、何か。

それは「風流」であり
「花鳥風月を愛でる」心ではなかろうかと想います。

鶯宿梅(おうしゅくばい)⑤

2013-02-26 00:53:09 | 
更に、
「梅を育てていた家の家主が、紀貫之の娘だった」というのも、
一つのポイントかなと思います。

紀貫之。
ご存知の通り、「古今和歌集」の選者の一人で、有名な歌人です。
つまり、一級の風流人でもあった人です。

その系譜に連なり、
・和歌の一つも送ってお伺いを立てたわけでもなく
・いきなりやって来て、不法侵入し
・許可無く、人の庭を掘り返す(器物損壊行為に及ぶわ)
・挙句、窃盗罪すれすれ
の、諸々の不作法を、優雅に和歌で嗜めた貫之の娘。

あるべき平安貴族の姿です。

片や、いきなりやってきて、
不法侵入はするわ、
器物損壊行為に及ぶわ、
果ては窃盗罪まで侵しそうになった、時の帝の系譜。

その行為の無粋さを、際立たせる対照として、
「紀貫之」が引き合いに出されたのではないのかな?と思います。

つまり、「名の無い」人が住んでいたというのでは、インパクトが薄い。

その無粋さを、優雅に和歌で以って嗜めるには、
貫之の系譜ほど威力のあるものは、なかったのでしょう。

鶯宿梅(おうしゅくばい)④

2013-02-24 23:34:02 | 
一軒家で、お庭のある方へ

「うちの庭に、メジロ来ないかなぁ~」
思ったこと、ありませんか?

あの薄緑色のメジロが、まだ寒い冬、庭の木で遊ぶ。
それを、炬燵に入りながら、眺めている。
なんだか、憧れる光景ですよね。

あの薄緑色が、
まだ遠い春の緑を思わせるからなんでしょうか。

ところで、メジロ。

庭に木があり、
周囲の自然環境に恵まれた地域にお住まいなら、   
柑橘系の果物を、スパーンと輪切りにして、
庭の木の枝に差して置いて下さい。

メジロが、つつきに来てくれます。

ただ、ヒヨやモズも柑橘系が好物らしく、やって来て、
メジロその他と空中戦を演じてくれます。

大きさ的に、たいていメジロが負けますので、
ヒヨやモズの合間を縫って、やってくるメジロを、
ハラハラしながら応援することになってしまい、
人間の方は気が気ではなく、優雅な気分のかけらも味わえません。。。

昔の人は、一体、どうしていたんでしょうか。。。

何はともあれ、
「庭にメジロ!」という光景に憧れる方は、
是非一度、お試しになって下さい。

鶯宿梅(おうしゅくばい)③

2013-02-24 23:32:47 | 
-勅なれば いとも畏し うぐいすの宿はと 問えば いかが答へむ-

ここで、「うぐいす」と言われているのは、
現代的には「メジロ」です。

本来の「うぐいす」は、
灰色の何の変哲もない鳥です。

メジロを見かけた時は、
「おお!古文のうぐいすだ!」と思いつつも、
「メジロ」なのよねと思って下さいね。

鶯宿梅(おうしゅくばい)②

2013-02-24 00:56:50 | 

大鏡本文に
-色濃く咲きたる木の 様態うつくしきが侍りしを- と、あります。

「色濃く」とあるので、
この梅の木は「白梅ではなく、紅梅」ですね。

つまり
「実を取るためではなく、観賞用に植えられていた」梅なんです。

ちなみに、園芸の世界では
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と言います。

桜は、特段の低入れをしなくても、
季節になれば、勝手に花が咲くんです。

だけど、梅は
「手間隙かけて、丹精こめて、手入れをし、枝を整えないと、
まともには咲かない」木なんです。手が掛かるんです。

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というのは、それを表しています。

話を戻しますが、この大鏡の話は

色濃く咲きたる=紅梅の木=紅梅なので観賞用の梅の木
=だから、一層、手間隙かけて、
ここまで(様態うつくしき)になった梅の木
を、不法侵入して「掘り返した」という話なんです。

うわー無茶苦茶ですよね~

鶯宿梅(おうしゅくばい)①

2013-02-24 00:55:39 | 

-勅なれば いとも畏し うぐいすの宿はと 問えば いかが答へむ-

四鏡の一つ「大鏡」の話の中に、出てくる和歌です。
この和歌の出てくる話を、かいつまんで書くと

(あらまし)
-村上天皇の御世に、清涼殿の梅の木が枯れた。
よって「代わりを探して来い」と言われ、
大鏡の語り手の一人、夏山繁樹が京都中を捜し歩き、
ある家に、「良さげな」梅の木を見つけた。

「おお!これだ」と思ったので、掘り返したら、
その家から使いの誰かが出てきて(女の童でも出てきたんでしょうかね?)
文を差し出し、これを付けて、その梅を宮中に持って行けと言う。

何か理由があるんだろうと思って、言われたとおりに、宮中に持って行った。

宮中で帝が訝しがりながら、文を見ると上記の和歌が書いてある。
この家の主は誰だ?と近所に聞いたところ
「紀貫之の娘が住んでいる」とのことだった
-という話です。

この話のキモは
「勝手に、掘り返した」という辺りかなと、思っています。

家主の許可なく、人の家に入ってきて、庭を掘り返す。

今で言えば、
①不法侵入
②器物損壊(梅の木)
③窃盗罪
に該当しますよね。
(家主が許可したので、窃盗罪は成立しないかも。。。ですが)

「風流でなければいけない」平安人が、
しかも
「風流人としても、その頂点に立つべき帝が、何してんのよ!」というお話です。

この話は、いろいろと面白いので、続きます。

謡曲「東北」② 

2013-02-24 00:54:26 | 


「東北」の続きです。

「花は根に 鳥は古巣に帰るとて」と、謡にあります。

元々は

漢詩)
-花悔帰根無益悔 鳥期入谷定延期-

書き下し)
-花は根に帰らむことを悔ゆれども 悔ゆるに益なし
 鳥は谷に入らむことを期すれども 定めて期を延ぶらむ-
     (いらむ) (ごすれども)  (ごを)

訳)春が暮れたと思って、花は散ってしまいました。
今年は閏年で春がまだ一月あると知って、
散り落ちたことを悔やんだとしても、もうどうしようもありません。

うぐいすも、三月尽と聞いて谷の古巣に戻ろうと思っていましたが、
きっと出発を一月延ばしたに違いありません。


和漢朗詠集にも収録されており、
「花は根に」「鳥は古巣に」帰るという趣向は、
以後、多くの和歌が引きます。

例えば、以下の崇徳院の和歌が、その代表格です。

-花は根に 鳥はふる巣にかへるなり 春のとまりを知る人ぞなき-
                            (千載集)

謡曲の謡い本は、
先行する古典を巧みに織り込みながら、
情趣を作り出しているという好例かと思っています。

謡曲「東北」

2013-02-24 00:52:39 | 
-春の世の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる-

この和歌が、効果的に使われている
(と、勝手に私が思っている)謡曲に、
「東北(とうぼく)」があります。

「東北」自体は、和泉式部の庭に植えられた、梅の木の精の話です。

和泉式部が梅を好んだのも確かなようなんですが。

鬼や、コワいものが、デロデロ出てきたりしない、
ゆったりとした趣の曲で、安心していられるあたりが、
また良い。(コワい演目は、本当に怖かったりします)

話も押し迫った終盤、つまりクライマックスで、

-春の世の 闇はあやなし 梅の花。
香やは隠るる 香やは隠るる。げにや色に染み。
香に愛でし昔を。よしなや今更に。思ひ出れば 我ながら懐かしく。
恋しき涙を 遠近人(おちこちびと)に。漏らさんも恥ずかし。
暇(いとま)申さん。これまでぞ花は根に。鳥は旧巣に帰るぞとて。
方丈のともし火を。火宅とや。なほ人は見ん-と、

畳み掛けるように、謡い上げるのが気に入っています。

凡河内躬恒のこの和歌の、芸術的な一つの結晶として、
東北のこの謡があるのではないかなと、(勝手に)思っています。

こぼれ話)
もっとも、この「春の世の~」から始まる前段の
「所(ところ)は、九重の。東北の霊地にて。王城の鬼門を守りつつ~」というのが、
鼓の教本の、最初の方に出てきたりします。

なので、鼓打ちは、どのみち「(東北に)親しまざるをえない」という事情も、
あったりはするので、「贔屓目」のそしりは免れないかもしれませんが。。。。

春の夜の

2013-02-24 00:50:37 | 

-春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる-

吉野梅郷がとても気に入った私は、
ある年の梅の季節、ほぼ毎週のように梅郷に出かけ、
梅を見て、ご機嫌で過ごしていたんです。

ただ、季節が季節でまだまだ寒いので、
暖まることも必要。
というか、寒い。。。。。

梅郷には「梅の里九兵衛」という
「梅料理を出してくれて、梅風呂に入れる」食事所があるんですが、
「せっかく、梅の里に来て、梅に包まれてご機嫌なんだから、
梅料理食べて、梅風呂入るしかないでしょ!」と思い、
せっせと「九兵衛」に通ったんですね。

ある時、お店の人が
「お仕事か何かで、いらしているんですか?」

「ええ、梅の買い付けに」
思わず、言ってしまいましたが。。。

毎週、毎週、女一人で来て、
梅料理食べて、梅風呂入って帰るんですから、
そりゃあ、お店の方も不審がりますよね。。。。。

たいてい、どこにでも一人で行って、
食事の出来る私ですが、あの時ばかりは、少し反省しました。

お店の方、ごめんなさい。
ただたんに、梅が好きなだけなんです。

ちなみに、ここの梅風呂。

「梅と高麗にんじんのエキス」の入ったお風呂なので、
「梅が浮いている」わけではありません、念のため。

更に言えば数年前に「お風呂は、無期限休止」となってしまい、
とても残念な(寒いし)思いをしています。

各地の日帰り温泉に入っていますが、
本当に、湯冷めせずポカポカで、良いお風呂だったんです。
肺炎起こして体力を落とした冬は、
ここのお風呂に本当に助けられました(湯治代わりに利用させて頂きました)

梅の季節だけでも、再開して頂けないものかと、切に思います。

「花の香」と言えば、梅 ②

2013-02-24 00:48:28 | 

ある年、「梅の公園」で、
梅に包まれて過ごしていると、
梅の香りが大層強いことに気づきました。

帰宅後も、
衣服に梅の香りが染み込んでいて、
なかなか消えない。

「なるほど、だから「香と言えば、梅」なのか」
妙に納得しました。

桜に、そんな香りはありませんものね。

3月は、吉野梅郷で「梅祭り」が開かれます。

皆さんも、今年は、梅の香りを求めて、
お出かけになっては如何でしょうか?

今年は寒いので、梅の開花は、吉野では尚遅いだろうと思います。

お祭りも過ぎ、皆の関心が桜に移った4月頃、
「今を盛り」と人知れず、吉野の梅は咲き誇っているかもしれません。

4月頃、ひっそり訪れて、
梅の香りに包まれながら過ごすのも、また素敵ですよね。