かかりつけのお坊さん 奮闘編

転勤も定年もリストラもない、失うものは何もない最強な坊主が日頃の“感謝”を言葉にこめて、日常を綴ります。

やっぱり、神はいない

2014-06-21 21:42:03 | 裏技・拾い読み


知的障害の息子を一人で育てている母親は、手遅れの乳がんだった。

「この子がおるやろ。そやから死ねんのよ。先生、助けて」

患者は彼にすがりついた。

しかし、がんはすでに肺に転移していて、救いようがなかった。

彼女は半年後に亡くなり、息子は施設に引き取られた。

夫のために尽くし、舅と姑を介護して、自分のことはいつも後まわしにしてきた女性は、胃がんだった。

手術をしたが、再発した。女性は力なく笑った。

「やっとこれから、ゆっくりできると思ってたのに」

21歳の青年は、肛門がんの末期で肺、脊椎、肝臓に転移し、あまりの激痛にモルヒネも効かず、麻酔薬さえ痛みのせいで効かなかった。

病室に呼吸のたびに呻き声が響く。

「痛い、苦しい、つらい、死なせて」

まじめに一生懸命生きている人が、何の落ち度もないのに、がんで死ぬ。

やっぱり神はいない、と彼は思った。(久坂部羊 「芥川症」より)


はたして、仏はどこにいるのか?

それとも、やっぱり神も仏もいないのか?


広島ブログ
 
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