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お母さんピアノを弾いてください

優しい母が認知症、強制入院。介護で体を壊し退職。弟とのメールのやりとり、詩や短歌で介護の現実を紹介していきます。

訪ねることの辛さ

2013-11-23 17:06:55 | Weblog
母のいる特養へ

正直告白すると、母のいるところへ行くのが辛くなっている。
夏の納涼祭での認知症の悪化に正直ショックなのだ。

ますます老化は進むので当たり前のことなんだけど、かつて母を尊敬していただけに
今の母を見るのが辛いのだ。

久しぶりに行くと母は最初誰が来たかのような顔をしていた。

辛すぎる。

母は子供の犬の本を与えられていたけど、コーヒーをこぼしてしまった。
体から排泄物のにおいもしていた。

母は雑巾を与えられるとひたすら拭きつづける、、。
まるで、仕事をしてるかのように。

疲れるとうつらうつらする。
頭が痛いと頭を押さえる。

正直泣きだしたくなる。

しばらくすると本を見始めた。
何を言っているのかわからない
ろれつが回らない。
鼻歌も歌っている。

やたら絵本を指でなぜている。


やがてその動きはピアノを弾いている指の動きになった。
鼻歌を歌いながら、ピアノを弾いている。
何の曲かはわからない、

はっとした。
音程がかすかについている
それは分散和音だった、、、。
ピアノはその動きにあっていた、、、。

母の鼻歌は、ピアノの分散和音の練習曲なのかもしれない。
あるいは何かの曲の伴奏譜なのかもしれない。

母の中の本来の母がまだ生きていたのだ。

母は91歳、癌である。
癌を体に入れながら、ピアノを頭の中で引きつづける母がいた。


「また来るよ」
そう言って僕は去った。


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お母さんピアノを弾いてください

タイトルとなった「お母さんピアノをひいてください」は抒情文芸平成13年春季号に掲載されたものです。 オリジナルモジュールで設置したので、常に上に来てしまうのですが、詩の形が崩れてしまいます。 妄想の中に一日いて おびえ閉じこもる母よ 死ぬほど私は辛いのです 小学生から大学まで首席の母 数カ国語を話し、独学で弾くピアノ 簡単なメロディーはすぐに採譜してしまう母私には できすぎた母だった 高等文官の娘に生まれ 私にも明治流の武士の作法を教えた母 母よ、あなたは私には重かった 父が浮気症でなかったら あなたはもっと幸せでおおらかに私を育てたろうに 悲しみとやり場のない怒り 私はもう子供じゃない 母には私はまだ十五の子供に見えるらしい 二度目の童子となった母 母を悲しませまいと自分を殺して生きてきた少年時 代、青年時代 母よ時には恨みもあるのです 私は普通の人なのです、あなたの家族のようなエリ ートにはなれません それもあなたの悲しみの一つです 私は独りです、それもあなたには悲しみですか 両親の不仲が私を学習に集中させなくなったほとん ど上の空の授業、とうとう不安神経症になった私 荒れた少年時代、机も椅子もよく投げた 立ち直らせてくれたのはあなただった 母よそのあなたが目の前で狂ってく なぜ、なぜ、なぜと叫ばずにおられない 心優しき弟はけなげに母をいたわり料理を作る 他の親族は己の主義に走り、以来家には無関心 挙げ句の果てに「お前達でやれ」とはそれがあなた の主義が出した正義ですか 私だって弱いのだ、いや本当に私は弱いのだでも仕 事でも、家でも強い自分を演じてきたそうしなきゃ 誰があなたをはげませたでしょう 私の救いはどこにある 私を慰める人はどこにいる 二度目の童子となった母 もう一度ピアノを弾いてください 私は歌うから、、、、、、。