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春日井市の絵画教室、あとりえPOPアートスクールの教室風景や内容を中心に、アートについて広く記事にします。

風が吹くとき

2012-04-27 13:12:48 | アート紹介


マザーグースを久々に読んでいたんです。
大好きな谷川俊太郎訳を。

マザーグースと言えば、ご存知の通り人物の名前ではなく、イギリスで古くから伝わる童歌、ことわざ等の総称であり、マザーグース集はそれを編んだもの。

「ハンプティ・ダンプティ」や「ロンドン橋落ちた」など、わが国でも馴染みの詩や童歌がたくさん出てきます。

何のことはない可愛らしい詩も、紐解けば恐ろしかったりするのは万国共通。
日本ではかごめかごめや、花いちもんめなどが代表的でしょうか。
その辺りをここで詳しくお話しするつもりはありませんが、背景には死相感が漂います。

そのマザーグースの中に「When the wind blows」という詩があります。

「風が吹くとき」
風が吹いたらゆりかご揺れた。
枝が折れたらゆりかご墜ちた。
坊やとゆりかご一緒に墜ちた。

この後、坊やは亡くなり、葬儀屋も棺桶屋も儲かりました―。
となるのでしょうか。
「風が吹けば桶屋が儲かる。大風吹けば桶屋が喜ぶ」
これも万国共通でしたか。

この「風が吹くとき」の童歌を読んだとき、私はまったく同タイトルの絵本を思い出しました。

レイモンド・ブリッグズ作・画の絵本
「風が吹くとき」
です。
レイモンド・ブリッグズと言えば、代表作として「スノーマン」「寒がりやのサンタ」等があります。
欧米カートゥーンスタイルのコマ割絵本。
とはいえ漫画ではありません。
馴染みの大きな絵の絵本とは違い、やや読みづらいのですが、読み始めたら、それはそれでゆっくりとじっくりと、その世界に入り込む事ができる。

残念ながら、私はこの「風が吹くとき」を持っていませんでした。
ただ、昔から「寒がりやのサンタ」の世界観が大好きで「風が吹くとき」は、昔アニメ映画を何度も観たことがあり、レイモンド・ブリッグズを好きな作家として留めていたのです。
いつか欲しいなと、漠然と記憶していた思いを叶えねばならない時が来たな。
マザーグースを閉じ、早速注文することにしました。

それが先日届いたのです―

なんと表現しようか…
なんとも味のあるブリッグズの絵。
淡々と進む老夫婦の日常生活風景と会話。
進むにつれて、少しずつ色がなくなっていく世界。
老夫婦二人にしかわからない機微まで伝わる。
終わりまで寄り添う二人。
終わりまで可愛らしく、ユーモアがある老夫婦…


「風が吹くとき」は、核が落とされる三日前から始まり、急拵えの屋内シェルターで、老夫婦が寄り添い息絶えるまでのお話。


レイモンド・ブリッグズは「核廃絶」を訴えるために書いてはいないといいます。読後、私はそれに納得しました。

悲しくて切ない話ですが、読後感は柔らかく、核の恐ろしさよりも何よりも「老夫婦の愛」に感動していました。

脳天気でどこまでも優しいジムと、怒りっぽくも単純なヒルダの、優しい優しい話。
可愛い可愛い話。

レイモンド・ブリッグズに「何を思う?何を感じた?」とは聞かれていない。
そこから自由を委ねてもらった気がしました。

アニメ映画の日本語吹き替え版は、たった二人の登場人物を、森繁久弥と加藤治子の両名優が担い、この絵本の素晴らしさを余すことなく伝えていた事も確認できました。

ベストセラーでしたから、ご覧の方もお持ちの方もいらっしゃると思いますが、未読の方は是非とも、絵本を所有し、映像も観て頂きたいと思い、本日は記事にしました。

昨年の福島第一原発の事故以来、北朝鮮の核弾頭ミサイル実験、原発の再稼働問題等、私たちは「原子力」について、否応なく考えさせられ続けています。

先日、東日本大震災にまつわる「ある人」の奮闘記絵本を読みました。
自分がかわいくて仕方なく、自分はヒーローでも、打ちのめされて立ち上がる前提のヒーローで、啓蒙を押し付ける悲しい悲しいお話でした。
なんだか気分が滅入っていた時に与えられた「風が吹くとき」でした。

チェルノブイリの事故より前に描かれた本です。 もちろん福島など想像すらできなかった時に。

皆様に何かを促すつもりはありませんが、私は手元に置きたいと思いました。

いつでも眺められるように。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
スノーマン (グレープ)
2012-04-27 15:50:43
映画スノーマンはなかなか美しい映画でした。
ブリッグズさんの絵は素敵ですよね。
「風が吹くとき」は存在しか知りませんでした。いつも貴重な情報をありがとうございます。
さっそくDVDを注文してみます!
返信する
映画は (mimosa)
2012-04-27 16:33:54
15年ほど前に、地域のコミュニティーで、風が吹くときの鑑賞会を開きました。
大人もこどもも泣いていたのを覚えています。

絵本をまず、図書館で探してきます。
返信する
暗い話 (なみ)
2012-04-27 20:15:28
暗い話に可愛らしい絵は悲しくなりそう…
返信する
これ! (大吉)
2012-04-27 20:49:06
小学校の先生が「生活」の授業で使った本だ!
2ヶ月くらいやったから覚えてる!

すごく可愛らしい絵なのに、すごく悲しかったの覚えてるなぁ。
いい先生だったんだよね。
返信する
うんうん、 (えいごのせんせいHK)
2012-04-27 20:58:30
見た見た、絵本も映画も。

…うん……。

戦争はんたい!つながりで、
「MAUS」(マウス)アート・スピーゲルマン著
読んだ?アウシュビッツを生き抜いた人の息子が書いてる。これまたすごいです。いろんな意味で。
でも、絵はユダヤ人→ねずみ、ドイツ人→ねこ、ポーランド人→ぶた、という具合に書いてあるので「おへえ…」とならずに読めます。
うちに原書も翻訳版もあるから、いつでも貸すよ!!

映画は「ライフ・イズ・ビューティフル」がね…。これもアウシュビッツ系だけど。

…うーん………。

にんげんはきらいだ。

返信する
皆様 (ナカムラミオ)
2012-04-28 00:16:47
《グレープさん》
購入されたら感想聞かせてくださいね。
鯉のぼり上がりましたか?
気になってます。

《mimosaさん》
たくさんの方に観てもらいたいですよね。
その時に映画を観たこどもたちは、今どう思っているのでしょう…

《なみちゃん》
確かに悲しいお話を可愛らしい絵で描いてる。
でも多分それ越えてるから読んでみな。
《大吉さん》
先生はどんな授業をしたんだろう。
あれで小学生に授業は難しい。映画ならわかるけど。
こんどその辺聞かせてね。

《えいごのせんせー》
久しぶり!旦那退院おめでとうだけど、今日昼にすでに疲れて見えた(笑)
マウス貸してー!
アウシュビッツ、ホロコースト…
人間嫌いになるな。
ライフ・イズ・ビューティフル。
泣いてしもうた。
最後ね。「ドン!」

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