晴れときどき・・・

旧街道あるき、古戦場巡り、城攻め、図書館通いの4本立ての日々を綴ります。。

今年の73冊目「 わりなき恋」

2013-09-27 07:21:31 | 読書日記
岸恵子の「わりなき恋」を読みました。322ページ。

 女優でいくつになってもお美しい岸恵子さんが書いた
熟年女性の恋愛小説です。
どうしても主人公の女性は
岸恵子さんご本人の印象とダブってしまいます。
還暦を越えても50代ににも見えにないほど美しくて若々しくて、
仕事を持っていて経済的に裕福で、
語学に堪能で世界中をファーストクラスで飛び回る女性・・。

 冒頭の東京駅のホームに上がるエスカレーターから
まるでせり上がるように登場するシーンなんか、
まさに昭和の女優そのものの華やかさです。。

 それだけだとあまりにも現実場離れしすぎてドン引きするだけですが、
この女性が激しくも苦しい恋をすることで、
嫌味なだけの女だと思っていた読者は、
次第に彼女に自分と同じ血の通った
人間味を感じるようになっていくのではないでしょうか?

 「わりなき恋」とは「理屈や分別を越えて、どうしようもない恋。
どうにもならない恋、苦しくて耐えがたい焔のような恋のこと…」
と本文に書かれていました。
そんな恋愛を人はいくつになってもしてしまうのだと、
そのことが嬉しくもあり恐ろしくも感じました。
若い頃なら、受けた傷も修復できるでしょう。自然治癒力だってあります。
けれど年を重ねるにしたがって「コレが最後かも」と誰しも思うだろうし、
それだけに思いは深く切なさは倍増してしまいます。

 70歳を目前に控えてまさに「セカンドバージン」状態だった主人公は
10歳年下の妻子ある男性と恋に落ちてしまいます。
最初は情熱的で少々強引な男性に戸惑い自重しているものの、
次第にこの恋愛に賭けようと覚悟を決めていきます。
しかし男は社会的な地位も家庭も捨てられない。
捨てられないんですよね。
あっさり捨てるような男なら最初から好きになったりしないんです。
この図式は年齢に関係なく多分「不倫」と言われる恋愛模様では「鉄板」なんです。

 だからこそ、血を流すような努力の末に
女は自分から身を引かなくてはならない。
ピリオドは余計に愛した方が打たなくてはいけないのです。
男は捨てられたと傷つくけれど、
心には傷ではなくて甘酸っぱい思い出が残る。
この思い出こそが女が贈る渾身のプレゼントだと
果たして彼等は気が付いているでしょうか?