晴れときどき・・・

旧街道あるき、古戦場巡り、城攻め、図書館通いの4本立ての日々を綴ります。。

今年の65冊目「少女」

2013-09-02 19:27:16 | 読書日記
湊かなえの「少女」を読みました。279ページ。
 湊かなえさんらしく、女性の深層心理をこれでもかってくらいリアルに
抉り出すように書き込まれた作品です。
作者は、なんか女子高生に恨みでもあるのでしょうか(笑)
 
 伏線の張り方が上手くて、最後にはすっかり綺麗に回収されてしまいます。
このあたりは「告白」その他の作品同様作者の力量を感じます。
けれども全然後味は良くありません。
作中に「因果応報」とか「地獄」という言葉が出てきますが、
やりきれなさだけが残ってしまいます。

 自分に甘く、傷つくことに敏感で、
けれども他人を思いやる想像力に欠ける彼女らが
やがて年を重ねて大人になり、何食わぬ顔で人の親になるのかと思うと、
「この国は大丈夫なんだろうか」と不安になりました。

 いつのまにか「昭和」という言葉にセピア色がついて、
ノスタルジィと共に語られることが多くなりました。
携帯電話もインタネットも夢物語でしかなかったその時代に
日本地図の一番左端の地方都市で、
呆れるほどのほほんと「少女時代」を送った私には、
現代の子供達の生態はそれこそ絵空事のように感じられます。

 「大人は解かってくれない」と拗ねた我々の世代から、
「大人は利用すべきもの」と割り切る彼女達は、
心の傷さえも武器にに変えているようで、ため息が出ます。
鏡に映る自分の姿の不気味さに気がつかないのでしょうか?

 我々の時代とは圧倒的に耳に入る情報量が違うのに、
恐らくその年齢の子供達の処理能力はそれほど変わってないのではないでしょうか?
どうだろうと考えている間に答えが出てしまい、
たった一つの小さな失敗が致命傷になり、
連日、綱渡りを強いられているような緊張感の中に、
今の少女達は身をおいているように感じます。

 今の子供たちに必要なのは情報を取り入れる力よりも、
それらをシャットダウンする力なのでしょう。

 世間もそろそろ女子高生礼賛は止めた方がよいかと思いますが・・・。